バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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ルパンVS複製人間③

 

 あれから島を探ると、宮殿の一室に軟禁された不二子さんと再会することができた。

 

 裏切ってナンボの女怪盗である彼女には珍しくバツが悪そうな顔で私を見ている。

 もしかしたら降谷零のクローンの最期を見たのかもしれない。

 

 また怒りが湧き上がり、ビシリと南国風宮殿の壁にヒビが入った。

 ルパンが困ったように間に割って入りパタパタと腕を振るう。

 

「いい加減落ち着けって安室ちゃん。不二子に当たんなよ?」

「分かってます。分かっていますが……少し時間をください。僕もゼロも正直、飲み込むには時間がかかりそうだ」

 

 「外の空気を吸ってきます」と言って踵を返せば、ルパンは止めることなく見送ってくれた。

 というか、ルパンもルパンで勝手に自分のコピーを作られた身の上なんだが、怒りは湧かないのだろうか。

 不思議である。

 

 ずんずんと長い青ざめた石色の廊下を進んでいけば、降谷さんが恐る恐ると言った様子で私に話しかけてきた。

 降谷さんもなんだか私が爆発物にでもなったような顔をしている。

 そんなに私は冷静じゃないのか。まぁ、その通りだろう。

 

 なにせ降谷さんが殺されているのだ。それもいく人もいく人も。

 

───なぁ、安室。俺のコピーが殺される分にはいい。奴はお前も殺したのか?

───非常に特殊かつ後天的な人格である僕を再現できたかは正直分かりません。つまり、僕を殺したのかは、判然としないとしか

───……俺はどんな形であれお前が無事ならそれでいい。コピーの俺もそう考えているはずだ

 

 降谷さんは宥めるように私の頭に手を置いた。

 「心残りは、お前の無事をコピーに教えてやれなかったことだったが」と言って自嘲する。

 

 転生者たる私は魂で思考し、魂で記憶する。

 クローンではコピーしようがない以上、完璧に再現されるのは降谷さんのみ。

 

 きっと混乱しただろう。絶望しただろう。たった一人見知らぬ宮殿に放り出されて、わけもわからぬまま命を狙われて。

 その挙句、ゴミのように殺され捨てられて。

 

 その苦悩、悲痛を思えばどんな形であれ赦すなどできようはずもない。

 

 と、その時。

 スマホの衛星通信が着信音を鳴り立てた。

 通話の相手を悟り、素早く降谷さんへと交代する。

 

「はい。こちら降谷零です」

『どうだったかね、降谷君。マモーの本拠地は』

 

 米国軍の長官からの通話だ。

 こんなふうに直通で話をすることになるとは思わなかったが、相手を思えばそれも当然か。

 

 マモーは己の居城から核兵器を各地へとばら撒き、世界を破滅させると米国を脅していたのだ。

 そりゃあトップ自らが情報を得ようとしても不思議じゃない緊急事態だろう。

 私たちは長官と取引して、マモーの居城を調査する代わりにしばらくの間活動を大目に見てもらうことを決めた。

 

 世界の危機は日本の危機。降谷さんとしても日本の危機は避けたかったため、利害が一致した形だ。

 

「ここはどうやら研究がメインで行われていた施設のようですね。データはすでに消去済みでしたが……念のため、調査後には施設を焼き払ったほうが良いでしょう」

『それほどまでの研究が行われていたと?』

「倫理上の問題だけでなく、世界を一変しかねない超技術の山ですよ。ここまでの技術力がありながら米国から研究データを脅し取ろうとした意味が理解できないほどに」

 

 むむむと長官は唸った。

 自国の技術を低く見られたという思いと、それほどの超技術がその手の内にあるのだという興奮がうっすらと透けている。

 

『それほどまでに欲している何かがあった、ということかね』

「様子を見るに、詳細は不明ですが焦ってもいたのでしょうね」

『マモー本人はいたのか?』

「いえ。島にいたのは『影武者』だけでした。現地勢力と銃撃戦となり、すでに死亡しています」

 

 「生かして身柄を捕らえられずすみません」と降谷さんが謝罪すると、長官は残念そうに鼻を鳴らした。

 

「その代わり、側近の男を一人拘束しています。受け渡したいのですが、この島に来られる予定はありますか」

『もう1時間ほどで軍が到着する手筈となっている。その時に引き渡しをお願いしたい』

「かしこまりました。それまでに得たデータはまとめてそちらにお送りさせていただきます」

『ありがとう。本当に君は優秀な男だな。我が国のエージェントになってもらえないのが惜しいばかりだ。待遇は応相談だぞ?』

 

 リップサービスもあるのだろうが、やはり名残惜しそうだ。

 降谷さんが丁寧にお断り申し上げて電話を切れば、ちょうど腕につけた斬鉄爪が目に入った。

 

 その爪は右側が一本欠けてしまっている。

 

 電話に出てきた側近の男とは、特殊合金のチョッキを着ていたフリンチという男のことだ。

 五エ門師匠が相手をするまでもない力量の男だったので私が相手をしたのだが。

 うっかりまともに切ろうとして斬鉄爪の片方が折れてしまったのだ。

 一応、そのあと魂の紐ですかさず縛り上げたので無傷で捕えることはできた。

 

 その後、大事な斬鉄爪を折ってしまって五エ門師匠には烈火の如く怒られた。

 この頃妖術に構ってばかりだったから気が弛んでいるとか、基礎的な技術が疎かになっていたとか。

 どれも身につまされるご意見だったので、これは帰ってから修行漬けの日々が始まることだろう。

 

 またあの死線をくぐる毎日が始まると思うと憂鬱だ。

 

 

 

 

 

 カリブの小さな島から帰ってすぐ。

 夜景に浮かぶコロンビアの街並みも実に風情があって美しい。

 

 私たちはコロンビアの港近くにあるホテルで一泊休憩をとっていた。

 

「おい安室。この肌にビリビリ来るやつ、なんとかなんねーのか」

「うっ……すみません。僕も原因がわからなくて」

「どう見たってオメェがピリピリしてるのが原因だろうが。いいからさっさと寝ろ!」

 

 はい……と次元さんに頭を下げて私は身を小さくした。

 どうも今日一日中、私の近くにいる人間は肌に妙な刺激を感じてしまうらしい。

 原因はおそらく私が殺気立ち過ぎているため。

 

 降谷さんが表に出ればそれも収まるのだが、降谷さんは今日は早く寝ると言って深層心理の屋敷の中に篭ってしまっている。

 彼も疲れたのだろうし、仕方のないことではある。

 

 どうもいたたまれない気持ちで身を小さくしていた、その時である。

 

 ぬう、と青ざめた肌色の手が窓枠にかかり、人の上半身が地上10階にあるこの部屋の中へ入ってくる。

 ふははは、と奇妙なエコーのかかった笑い声。

 

 ふたたび現れたマモーの遠隔子機が、突如宙に浮きながら怪しげに窓からこちらの部屋へと入り込んできたのだ。

 マモーの不健康そうな肌と白い髪が夜の空にぼんやりと浮かび、さながら幽霊でも現れたかのようだ。

 

 ルパンが飛び起き、次元さんが銃を構え、五エ門師匠が鯉口を切る。

 部屋には冷たい殺気が漂い出す。

 

 マモーはエコーするような念波を含んだ不思議な声で宣言した。

 

「さあ、来るんだフォックステイル。お前は本物だ。一万年の時を生きた私ですら初めて見た、本物の力の主なのだ」

 

 一瞬前に出かかったルパンを押し止め、私はマモーと対峙した。

 

「不二子さんはいいんです?あなた、ご執心だったんでしょう?」

「われわれ神のいざこざに巻き込まれれば、か弱い彼女では命を落とすかもしれない。まずはことが済んでからと思ってね」

「賢明です。取るに足らぬ紛い物とばかり思ってましたが、少しばかり評価しましょうか」

 

 轟々と燃える炎の如き怒りが再び身を焦がしていく。

 

 島をくまなく探索すれば、降谷さんの遺体らしきものはなんとか発見できた。

 金髪の頭が体から斧のようなもので切り取られ、雑に掘られた穴に捨てられていただけだが。

 

 自然と口角が吊り上がる。全能感が体に満ちる。

 何故か降谷さんが口を出してこないのを疑問に思いながら、私は三日月の如くに目を細めて嗤った。

 

───安室、おい安室!俺の声が聞こえないのか!くそっ、心理の底から出られない!どうして…

 

「紛い物だと?いいだろう。では、私の力を見せよう。君と並び立つに相応しい神の力、神の罰をその目に焼き付けるといい!」

 

 言い終えた瞬間、地が揺れた。

 

 轟々と揺れる音に、脆いホテルの石壁がどんどんと崩れ落ちていく。

 コロンビア中が大騒動なのだろう。下階から悲鳴のようなものが聞こえてくる。

 

「な……地震だと?まさか、本物……なのか?」

「──!」

 

 次元さんが怯え、五エ門師匠が目を見開いてせせら笑うマモーを凝視している。

 ルパンが「どういうカラクリだ」と冷静に睨め付けているが、その額には一筋の汗が垂れていた。

 

 私は崩れ落ちたホテルの片側から身を乗り出し、斬鉄爪を振り上げた。

 

 怒りが加速する。ああ、ああ、腸が煮え繰り返る。

 こんなもの地下核実験施設の起こした地震だというのに、何が神の怒りなのか、何が我が力なのか。

 

 黄泉と世界とを渡る転生者〈カミ〉としての力が、死んでいった降谷さんのクローンの苦痛、絶望、狂乱の嘆きを感知する。

 

『どこだ、どこだ安室!なんだここは、いったい何があったと言うんだ!?』

『ぁあああああ止めろ!!頭が、割れっ、ぐっ、ぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?』

『深層心理に入れない…!あいつは、あいつは大丈夫なのか!?くそ、あの変な機械のせいか!?無事でいてくれ安室…!』

 

 その今際の叫びどれもこれもが、私を探し、私の無事を願い、私との再会を望む切なる声だった。

 銃撃に倒れ、あるいは首を落とされ、ゴミのように殺されていく降谷零のクローンたち。

 

 その最後の願いを、私は感じ取っていた。

 

 ああ。

 

 ペテン師が神を騙り、覡を弑し、我ガ 身に 並バ"""んト 言ふ,,,ノか?

 

 は ハハはは、ふふ。

 

 

「死 ネ」

 

 




・バボ主
祟る系。

・降谷さん
相棒が無事なら別にそれでいい派。
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