バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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ルパンVS複製人間④

 

 巨大な黒い蛆虫の群れの如き波打つものが、天を衝き地に満ち産声をあげている。

 それはどす黒く呪詛を漏らしながら醜い絶叫を上げ、空を陰鬱に染めていく。

 

 まさに終末。

 世界の終わりすら飲み込む光景を、ルパン達は呑気に額に手を当てて見上げていた。

 

「ありゃま、完全に暴走してら」

「安室のやつキレ過ぎだろ」

 

 帽子を押さえて次元がしゃがみ込む。

 安室が決定的に可笑しくなってしまってから、ルパン達は咄嗟に元いたホテルの窓から逃げ出してことなきを得ていた。

 

 彼から滲み出した黒い影はみるみるうちに大きくなり、ホテルを飲み込んだ。

 そして触手の集合体として何百メートルもの高さまで急速に成長し、その腕をどんどんと天へと伸ばして空を覆っていく。

 

 まるで全世界を邪悪な触手で包み込もうとしているかのようであった。

 

「ん?おいルパン、もしかしてあれ、こっちにくるんじゃねぇか?」

「うーん大パニック。安室ちゃんてばめちゃくちゃじゃん」

 

 触手が雨のように降りてくる。コロンビアの街を丸ごと覆い尽くすように。

 そのうちの一本が、ルパン達めがけて大木ほどもありそうな触手を差し向けてくる。

 

「あわわわわ。逃げろぉー!」

 

 五エ門がすかさず触手へと斬鉄剣を振るうが、ぴくりと片眉を上げて大きく後退する。

 「どうした五エ門!?」とルパンが問えば、むっつりと五エ門は口を開いた。

 

「手応えがない。これは非実体の幻覚のようなものなのであろう」

「うそぉ!?でもこれ絶対捕まったらやばいやつ!」

「避けるしかなかろう」

 

 障害物を透過し、猛烈な勢いで迫り来る触手をルパン達はひょいひょいと避けていく。

 ジャンプして瓦礫で高低差を作り、あるいは垂れたロープを使ってうまく受け流していくものの……限界は意外と早く訪れた。

 ルパンが避けきれず足を触手に取られたのだ。

 

「おわぁぁあああタースーケーテー!」

 

「ルパン!」と次元が銃を構え、何発か触手に向かって発砲するが、やはりダメージを与えられた様子はない。

触手はイソギンチャクに似てその太い先端が幾重にも細く分かれていく。

 そしてルパンの口に無理やりに侵入。そのまま内臓をかき混ぜるように蠢いた。

 ルパンの体が痙攣する。

 

 ぴたり、と触手の動きが止まり、するするとルパンを置いて去っていく。

 

 ぐったりとしたルパンが解放されて、半分気を失いかけているルパンが瓦礫の上に残される。

 次元があわてて駆け寄れば、ルパンは「こ、こんちくしょー安室のやつ!人違いだっての!!」と喚いた。

 

「人違い?」

「ありゃマモーを探してんだ。怒りは盲目ってな。あいつ、目が見えてねぇんだろ」

「………おいおい、マモーの本体はどこにあるかもわかってねぇんだろ。こんなこと全世界でやる気か?」

「そうとも。だから触手をあんな派手に伸ばしてんだろうな。ったく。キレるにもほどがあんだろうがよ」

 

 五エ門が鋭く目を尖らせて鯉口を切った。

 

「触手に攻撃が効かない以上、本体を正気に戻すしかあるまい。安室がどこにいるかわかるか」

「分からん。と言うかあの触手が溢れたから見失ってたが、さっきうちに来たマモーはどうしたよ」

 

 五エ門の問いに次元が答える。近場の瓦礫を蹴っ飛ばし、はぁとため息をつく。

 ルパンは首を振って肩をすくめた。

 

「そりゃ初撃で死んでんだろ。あそこに触手に祟り殺された無惨な死骸があんだからな」

「お、おお……安室……鎮まりたまえ…」

 

 少し離れたところには、瓦礫に埋もれるようにして事切れたマモーの死体が転がっていた。

 外観はまるで無傷だと言うのに、穴という穴から血やら内臓やらをダバダバとこぼして、まさに壮絶な死に様だ。

 次元が手をすり合わせてコミカルな動作で拝んだ。

 

「とりあえずあの触手の中心にいけば安室ちゃんたちがいるだろうな。で、いっぺんしばき倒してやれば正気に戻るだろ」

「だといいがな。だが俺らがどう近づくかだろ。あそこにゃ万と触手が蠢いてんだぞ」

「それは気にしなくていいぜ。一回マモーじゃないって判定受ければ、あれは無害なはずだ」

 

「ウゲーっ、じゃああれに一回は取り込まれろってことか!」と次元が身震いした。

 まだコンセントが生きていたらしく、ホテルのTVが速報を流している。

 

"緊急事態です!みなさん命を守る行動をとってください!"

"速報:謎の黒い巨大軟体生物が地球全土を襲撃"

 

ルパンがあちゃー、と両手で顔を覆った。

 

「あいつのためにも早めに制圧してやるか」

「おいルパン!?そんな飛び込んで───」

 

 とぷん、とルパンは黒い触手の根本からそこに飛び込んだ。

 中はまるで水中にでもいるようで、泳ぐように触手の中を進んでいけた。

 

 巨大な触手の柱の中央、浮かぶように揺らめく紅白の着物の男の姿がある。

 

 据わった眼は爛々と輝き、周囲にはどこから現れたのか太く長い注連縄が出鱈目に触手の中を漂っている。

 注連縄には呪詛のような落書きが所狭しと書き込まれ、白く神の清廉さを示すはずの紙垂は黒々と瞳の標が血で塗り込まれていた。

 

 神の瞳がルパンの姿を捉えた。

 

「な ンだ、小さキも の」

「いやぁ、この気色悪ィ触手の束、引っ込めてくれねーかな」

「なら''ぬ。これは神 罰 デあル」

「この俺の頼みでもかー?」

 

 にやり、とルパンがいつものように笑いかける。

 神はわずかに躊躇したようだった。

 

「………それは」

「安室、ちと冷静になろうぜ。マモーのやつは確かに許せねぇけどさ。こんな形でってのはお前自身望んでねぇはずだ。そうだろ」

「けれど、ゼロが苦しんだ。あんなにも酷い仕打ちを受けて、僕の覡が…」

「そりゃ俺らできっちり締め上げりゃ良いんだよ。まさか、奴と同じ外道にまで落ちるって話でもねぇんだろ」

 

 神なりし安室は黙って、ルパンの言葉を噛み締めている。

 ルパンは近づき、安室の肩を叩いた。

 

「一回降谷の話も聞いてやれよ。本当にそんなこと望んでんのかってな」

「………はい」

 

 ふっと瞳の光が失せる。

 そのまま眠るように意識を失い、落下していく安室の体をルパンは空中でなんとか受け止めた。

 

 結局ついてこなかったのか、触手の外で次元と五エ門は迫り来る触手を避けながら待っていた。

 その触手も、安室が意識を失ったのと同時にだんだんと端から宙に溶けて消えていく。

 

「ルパン!無事か!」

「おうよ。説得完了ってな。やっぱ根がいい子ちゃんだからな。すぐに聞いてくれたぜ」

「そうか、よかった……ったく、安室も世話かけやがって」

 

 ようやくタバコを咥えた次元は肺いっぱいに吸い込んで、力無く瓦礫の上に座り込んだ。

 厳しいながらも安心したらしい五エ門が刀を収め、「不肖の弟子だ」と瞳を伏せた。

 

「とりあえず逃げるか。地震とバケモンのせいで警察がたっくさん集まってんだろ。ルパン、下に置いてあった車に安室を放り込んでおけ」

「おうよ、この後罰として安室には飯を作らせるけど、五エ門はどうする?」

「拙者も同行する。これは懐石料理の一つでも作ってもらわねば割に合わん」

 

 

 一行はそんなこんなで街を後にする。

 地震の傷跡の残る街並みは、それでも蠢くことのない穏やかな空を取り戻していた。

 




・バボ主〈祟り神モード〉
黒い触手お化け。
帝とかも祟り殺すタイプ。
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