バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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ハロウィンの花嫁①、あるいは神社騒動

 

 本日、私たちは風見さんの連絡を受け急遽日本へと来ていた。

 

 マモーの件の詳細の情報共有と、向こうから「内密にお伝えしたいことがあります」とのことで、急ぎブラジルから日本行きの便を取ったのだ。

 26時間のフライトを終え、比較的快適とはいえやはり窮屈なファーストクラスの座席から降りた私たちは、待ち合わせの時間まで暇つぶしにネットニュースを開いていた。

 

 首相退陣か。×◯選手45本目のホームラン。

 一般的なニュースに混じり、人の目を引く異様な記事が目に飛び込んでくる。

 

"28日の黒い異生物襲来を受け、神社本庁が新たに東都に神社を建設"

 

 思わず降谷さんと顔を見合わせた。

 

───お前、ついに神社持ちになるのか

───ままま待ってください、まだ僕の神社と決まったわけでは…

 

 急いで記事の続きを読み込む。

 

 どうやらあの一件を受け、神社を新しく創建することになったらしい。

 地球全土を襲った祟り神をお鎮めするため、という名目とのこと。

 きちんと神社本庁から階位を取得した神主さんが付く正式な神社で、現在は建設資金をクラウドファンディング中。

 しかも開始数時間で一千万円を軽く突破したらしい。

 

───面白そうだな。俺も資金投下しておこう。3億ぐらいでいいか?

───なんで僕に聞くんですか

───祭神に許可取っとくのが一番堅いだろ。お前の神社なんだし

───それはそうですが心が納得しない

 

 理不尽な状況にぶすくれていると、降谷さんがあれこれ言う前に公式のクラウドファンディングへの資金提供を完了していた。

 思わず詐欺じゃないよな?とサイトやら情報の詳細を確認したが、残念ながら本物であった。

 神職のお偉いさんは何がどうなってこんなことをすることを思いついたんだ。仕事が早すぎるだろ。

 

 私は完成予定図の神社画像を見ながら、うーんと悩ましく呻いた。

 

 こうなると、きちんと祭神の私がご利益等を管理しなければならないだろう。

 せっかく参拝者などがお守りを買ってくれたというのに何の効力もないのは流石に気が引ける。

 

 触手の一本でも潜ませて通り魔の撃退ぐらいは務め上げねば神の風上にも置けぬと言えるだろう。

 

 などと新たな神社に想いを馳せていると、ようやく風見さんが到着したらしい。

 走り寄ってくる見慣れた濃緑のスーツが見えてくる。

 

「降谷さん!」

「風見、健勝か?」

「はい。降谷さんもお元気そうでなによりです。この間の黒い触手騒ぎは本当に酷かったですからね」

 

 風見さんがしみじみ言ってハンカチで汗を拭った。

 若干以上に心当たりのある私と降谷さんは別の意味で汗が吹き出しそうだ。

 

「そ、そうなのか?」

「ええ。町中が大パニックで交通網も麻痺、逃げ惑う人々が警察署に殺到しまして」

「………あー、なんだ。大変だったな」

「ええ。幸いというか不思議というか、あれほどのパニックだったというのに怪我人はほとんど居らず、その点は幸運でしたが。…というより」

 

 言葉を切って、風見さんが困ったように眉を下げる。

 

「あの触手に取り込まれた後、病気や怪我が治った、という噂がどんどん拡散されておりまして」

「それは……そんなことありうるのか?」

「真偽はまだ定かではないのですが、交通の麻痺によって救急搬送者が亡くなったという報告も上がっていないそうなのです」

「……」

「他にも窓から飛び降りたのが原因の骨折が治っただとか、そういう話で巷は溢れかえっています」

 

 ちらり、と降谷さんが私を見やった。

 私はブンブンと首を横に振った。

 

 知らん知らん知らん!そんな便利な能力があったら私が最初に使ってるっつの!

 とはいえ、夢現でパニックに陥っていた人々を助けていたのは覚えがある。

 まさか本当に?……いやいや、嘘だろう。便利過ぎるしむしろ今その能力が実装されていないのが不条理だろう。

 祟り神モードでなくてはオミットされる能力とかピーキーすぎだろう。

 

 降谷さんがゴホン、と軽く咳払いをした。

 

「それで、俺に伝えたいことというのは何だ?」

「……それにつきましては車の中でご説明いたします」

 

 案内された空港からはやや遠い駐車場に停めてあった風見さんの車に私たちは乗り込み、東都の警視庁へと出発する。

 警視庁には秘密裏に会議室が設けられ、そこで黒田管理官と情報の共有が行われる予定になっている。

 

「先週のことになるのですが、例の観覧車爆破の被疑者が留置所から逃走しまして」

「なんだと!?それは…すでに身柄はとらえたのか」

「犯人は死亡しました。ニュースを知って独自に動いていた諸伏景光元刑事が被疑者の跡を追っていたのですが」

「!……それで、何故被疑者死亡ということになる」

「謎の第三者が、被疑者へ爆弾を仕掛けていたようで。諸伏元刑事も隙をつかれて同型の爆弾を首にはめられたようです」

 

 思わず息を呑む。

 降谷さんが気色ばんで風見さんの肩を掴んだ。

 

「ヒロはどこに!?無事なのか!」

「今は電波の届かない個室に避難して爆破を防いでいます。その場所は公安の管理下にあるため、ご案内することはできませんが」

「……いい。場所は察しがついている。会話したくなったら適当に忍び込むさ」

「それはやめてくださいね!私の仕事が増えるので!」

 

 ピシャリと風見さんが叫んだ。風見さんも随分と屈強になったものだ。

 とはいえ、降谷さんの方はといえば全然聞く気のない呑気な顔だが。

 おお風見さんに幸あれ。この顔は今夜あたりにでも忍び込もうかと考えている顔だぞ。

 

 はぁ、と風見さんがため息をついて肩を落とした。

 

「まったく、変なことばかりですよ。あの気味の悪い触手といい、江古田高校付近に打ち上げられた花火に似た謎の魔法陣といい」

「魔法陣、というと?」

「触手が現れたのと同時刻のことなのですが、都内にある江古田高校上空に謎の魔法陣が出現したらしいのです」

 

 絶対紅子さんだ……後で謝罪の一報を入れるべきだろうな。

 

「触手と同じくSNS上で多くの証拠写真が上がっており、便乗して可笑しなカルト商法が雨後の筍のように現れて……もうてんやわんやですよ」

「す、すまなかった風見……」

「いえ。降谷さんのせいじゃありませんから。要注意組織の炙り出しができたと思えば、まぁ」

 

 風見さんの後ろ姿はげっそりと痩せ細って見えた。

 よほどの激務だったのだろう。

 

 降谷さんも私もできるだけ小さくなっているより他なかったのであった。

 




・建設予定の神社
黒い触手の化け物を鎮めるため建設が予定されている新神社。
たぶん健康長寿や厄祓い等に御利益がある。
ネットでは「タタリ様」などと言われてバズり散らかしている。
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