バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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ハロウィンの花嫁②

「よ、ヒロ」

 

 公安が秘密裏に築いた地下施設の一角。

 私たちはそこにちょろっと忍び込み、その透明な檻の中にいる幼馴染へと笑顔を向けた。

 

 ルパンから直接教えを受けた降谷さんなら、この程度のセキュリティなら目を瞑ってたって突破できる。

 

 防護室では声も完璧に遮断されているのを忘れているのか、諸伏さんはパクパクと何事か喋ろうとして、慌てて電話の受話器をとった。

 

『ゼロ!どうしてここに!』

「お前の様子を見に来た。もう首輪付きじゃなくなったと言うのに首輪をつけられるとは、失態だな、ヒロ」

『ああ。してやられたよ。明美を狙われた。それで俺が庇っている隙に、な』

「……そうか」

 

 諸伏さんに爆弾をつけた犯人──プラーミャの悪辣なやり方にまたじわりと怒りが湧いてきて。

 そこで降谷さんにそっと声をかけられる。

 

───いい。安室、お前が心を乱す必要はない

───ですが、

───お前は俺の頼れる相棒なんだ。どんと構えててくれ

───……はい

 

 ふうと一つ息を吐き出せば、燃え盛るような怒りも段々と小さくなっていった。

 どうも最近怒りやすくなっている。

 少しのことでガリガリと心を削られるように怒りが湧き上がってくるのだ。

 これもあの触手の後遺症のようなものだとは思われるが、また五エ門師匠に扱かれるかもしれないと思うと気が重い。

 

 暗くなった空気を変えるように、殊更明るいトーンで諸伏さんが話題を切り出した。

 

『そう言えば、あの爆弾犯を見て思い出したんだが、三年前のあの日、まだ降谷は目が覚めてなかったんだよな?』

「あの日?」

 

 首を傾げる降谷さんとともに、私も何の話かと耳をそばだてる。

 

『ああ。松田が死ぬ前日、俺たちは萩原の墓参りに行ってたんだが。その時はまだお前は寝てただろ?』

「っ、そういえば確か代わりに俺のフリをした安室が参加してたって聞いていたが」

『そうだ。かなり無理があったから俺も結構フォローしたけどな。割と皆訝しんでたが…過酷な業務だってことで触れないでもらっていたんだ』

「───その節はお世話になりました」

 

 あの日の流れは原作とそう代わりない。

 時間に遅れたフリをして接触を少なくし、ただできるだけ無言を貫いて言葉少なに接していただけだ。

 警察学校組の手前、プラーミャとの戦いの際は銃を使うフリをしていたため手間取ったが。

 二人っきりになった瞬間鉤爪とワイヤーを使って適当にプラーミャの肩をズタズタに引き裂いてやったからな。

 

 手榴弾を投げられもしたが、逆に手榴弾の方へプラーミャを放り投げてやったので私は無傷と言っていい。

 

 それも何とか避けたプラーミャが、人でも殺しそうな顔で「貴様……!」と歯軋りしたが、ルパン界隈の敵と比べれば楽な相手だった。

 

 その後私に気が向きすぎていたプラーミャは遅れてきた諸伏さんに太腿を狙撃された。

 それでついに不利を悟ったのか、閃光弾を使い這う這うの体で逃げ出したのであった。

 

『なんにせよ、お前が無事でよかったよ。プラーミャが狙うとしたら、まずお前の方だからな』

「俺も、お前が間違っても爆破されてなくて一安心してるところだ。犯人は早急に捕まえるからしばらくそこで待っててくれ」

『ああ。お前が動いてくれるなら百人力だな』

 

 諸伏さんと降谷さんが、特殊ガラス越しに拳をつき合わせてにっと笑い合う。

 その友情の確かさを目の当たりにして、私は思わず微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 外に出れば、こっそり地下施設に忍び込もうとしていたコナン君とバッタリと鉢合わせした。

 

「うーん回収」

「うわぁぁあ!?安室さん!?どうしてここに!?」

「それは僕のセリフだよ。ここで何を調べていたのかな?」

「それはその……謎の爆弾犯のプラーミャを追っていて…成り行きで」

 

 やっぱりプラーミャを追っていたらしい。

 おおかた爆弾犯を公安が追う理由を調べている最中に、諸伏さんの苦境を銭形警部を通して知ったのだろう。

 

 どうせプラーミャが狙うとしたら、銭形警部と諸伏さんが別れたタイミングだ。

 降谷さんが深くため息をついて問答無用でコナン君を抱き上げた。

 

 

「───ここにはヒロしかいないから、君は俺と一緒に来るんだ。情報共有はするから」

「!?なら爆弾を取り付けられた元公安の男ってやっぱりヒロさんなんだ!ということはプラーミャのもう一つの狙いは間違いなく降谷さん…!」

「おい、推理をどんどん進めるんじゃない。まず俺の話を聞いてからにしてくれ」

 

 相変わらず推理すればフルスロットルのコナン君だ。

 ほぼ正解の推理をだらだらと口から垂れ流し、なにやら思索に耽っている。

 

 そのままコナン君を連行して阿笠邸へと向かえば、今日は少年探偵団諸君はいないらしくしんと静まり返った阿笠邸内は静寂で満たされていた。

 

 そしてリビングでのんびりと紅茶を飲んでいた灰原さんが私たちを見た瞬間、口から茶を吹き出しそうになった。

 

「貴方ね、国際指名手配犯になったんじゃなかったの!?何呑気に博士の家に来てるのよ!」

「いや、この辺でゆっくり話せる場所なんてここぐらいしかなくてね。ついでに変装もしておきたいんだけど、更衣室を借りられるかな?」

 

 阿笠博士は困った顔をしながらも「貸すぐらいなら別に構わんが…」と言って頷いた。

 やっぱりこう言うところ優しいよね、阿笠博士。

 

 ありがたく更衣室を借りてお馴染み室井ララの姿(大和撫子Ver)をとって外へ出ると、あまりの違いようにか灰原さんがあんぐりと口を開けて固まっていた。

 半笑いのコナン君を添えて。

 

「貴方、話には聞いてたけどやっぱりベルモットさながらの変装技術ね」

「そりゃ、そのベルモットに教えを乞うた技術だからね。便利だよ、変声術は中途半端にしか使えないけど」

「なんつーか、美人だよな。変な人とか寄ってこないの?」

「モデルのお誘いとかは一度あったかなぁ。その手の話は素顔の時の方が多いけど───だな。名刺を押し付けられてまったく辟易とさせられた」

 

 分かるぅーみたいなしたり顔で頷くコナン君に妙な笑いを覚えてしまう。

 かの名探偵工藤新一なら、それはもう引く手数多だったことだろう。

 

 コナン君が向かい側に座ってお盆にコップをいくつか乗せて持ってきている。

 どうやら長くなると思って茶を用意してくれたらしい。

 根が育ちの良い優しいいい子なんだよな、コナン君。

 

「で、プラーミャの件は安室さん達とはどう関わってくるの?」

「難しいな。一言で言うなら、プラーミャの狙いは僕と諸伏さんだ。三年前に一度会っていてね、その時に恨みを買った」

「なぜ?」

「軽く引き裂いてやったから、かな。遠慮なくやったから手足に障害でも出たんだろうね」

 

 うげ、と言う顔をしてコナン君が絶句した。

 

「仕方ないだろう?無人の廃ビルを大型の爆弾で吹き飛ばそうとしてたんだから」

「そりゃ僕は別にかまわないけどさ……あ。忘れてた。そう言えば安室さんに渡すものがあったんだった」

 

 徐にコナン君が立ち上がり、隣の机の上に置かれた紙束を重そうに持ち上げる。

 

 はい、と渡されたのは原稿用紙の束であった。

 まだ書きかけらしく、一般的な文庫本三分の一程度の量だろうか。

 

「イギリスでのお礼も兼ねて、親父が書いてる新作の途中。タイトルはまだ決めてないらしいけど、「緋色の真相」ぐらいにしようかなって親父は言ってた」

「───とすると、あの忌々しいFBIが主役の話の続編か」

「三巻目。二巻目は貴方が主役だったでしょ、降谷さん」

 

 むすっと黙り込む降谷さんは相変わらずの他国嫌いだ。

 タイトルからして完結編だろうと思われる。

 

 パラパラと読んでいけば、ダークヒーローな元公安の男が主人公たる捜査官と直接対決に至る燃える系アクションに重厚な推理を乗せた作品であった。

 読めば読むほど引き込まれる文章力に、豊かな語彙、緻密な伏線にと途中までしかないのが悔やまれるレベルの作品だ。

 

「ありがとうコナン君。続きが楽しみだよ。これは優作さんに返しておいてくれ」

「うん。それと、あの時かかった費用もきっちりあとで返すよ。口座は足がつくだろうし、現金払いの方がいい?」

「あー、お金は別にいいよ。それより、これが出来上がったら初版のサイン本が欲しいかな」

「そんなんでいいの?わかった。親父に伝えておくよ」

 

 足がつくとか軽く言い出すコナン君に、灰原さんが軽く笑って「貴方もすっかり犯罪者ね、子狐さん」「バーロォ!んなんじゃねーよ!」と漫才を繰り広げた。

 仲良し仲良し。

 

 ほう、と安堵につく息にわずかな黒い呪詛が乗った気がした。

 




・タタリ様
その荒々しい見た目に反してほぼ実害がない(何なら治療もしてくれる)神様。
ネットでは「人間を可愛がりにきた迷惑上位存在」などと言われており、猫に構いすぎて嫌われる人間ミームみたいなものが流行り出している。


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