バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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番外 魔術列車殺人事件①

 

 旅だ!食欲の秋だ!北海道旅行だ!!

 

 本日、パーっと打ち上げで少し趣ある寝台列車の旅へとやってまいりました私達です。

 一号車の一室のみであるスイートタイプの豪華客室の予約取り合戦を無事に勝ち抜き、私達は待ちに待った北海道旅行の旅へと来ていた。

 

 正面の広い窓ガラスからは外を眺めることができ、明るいグレーと落ち着いた木目調の部屋は電車旅ながらゆったりと快適だ。

 ソファに座りながらの眺めを楽しめるし、シャワールームもトイレも完備。

 食事も豪華でいうことなしだ。

 

 ニコニコ上機嫌な降谷さんが部屋の様子をぐるりと見回して言う。

 

───いつもは飛行機でファーストクラスだったが、これはこれで味があっていい旅だな。

───ですね。時間もゆったりあるので、列車の中を少し回った後は彫刻でもしていましょうか

───だな。そうだ、素材は久々に木で、風呂に浮かべる用の檜で作るとか楽しそうじゃないか?触って楽しめて、香りもいいおもちゃだ

───いいですね!木ならかなり原価も安くできますし、大量生産して子供達に配るとかできるかもしれません

 

 専用のデザインさえ決めれば後は外注で作ってもらうのもいいだろう。

 工場生産でさらに安くできれば、私達はブランド名さえ貸し出せばいいのだし。

 

 などと商業的な計画に思いを馳せていれば、降谷さんが深層心理でペラリと食事処一覧を開いているのが目に入った。

 

 今晩の夕食をどこのレストランで取るか、まだ考えていたらしい。

 

 今日は北海道に着いたらホテルに荷物を預け、散策に出る予定だ。

 もう幾度目かの北海道だが、幾度来ても食事が美味しいのが良いところだ。

 朝食が豪華なのもグッド。

 

 予定通りまったり付属の机で彫刻を楽しみながら車窓からの景色を写真に撮ること数十分。

 

 そのとき。

 緊急の連絡を知らせるベルが車内に鳴り響いた。

 

 どうやら車内に爆発物が仕掛けられているとかで、落ち着いて避難をと呼び掛けられている。

 

───また爆弾か。やっぱり火薬が畑で取れてるとしか思えないぞ…

───いや、C-4が木にたわわになってるんでしょうね。収穫期は春。台風等で誘爆するのでその場合は早めに収穫するんです

───真面目に考えるのはやめろ。なら畑火薬はアレか、種蒔きの時期は4月で実が小さいうちに傷まないようネットをかけるのか

 

 クソくだらない雑談をしながら、そんなことおくびにも出さずスタコラサッサと避難する。

 ちなみに、姿は室井ララの変装状態だ。

 一人旅だったが、万が一の場合に備えて一番慣れていて変装しやすい姿を選んだのだ。

 

───変装取ってなくて本当に良かった……ああ、そう言えば作りかけの彫刻を置いてきてしまったな

───まぁそのくらいはいいでしょう。どうせ手持ち無沙汰で作ってただけのものです。あとで回収できれば御の字ということで。

 

 降谷さんが子供も怪我しない丸い形の木彫りおもちゃのデザインを仕上げているところ、私が古い図面で適当に彫った翡翠の九尾狐だ。

 柔らかさすら感じる毛並みを、とこだわっていたら妙にふさふさになってしまった。

 

 と、そんなふうにブツブツと内心で話し合いながら列車を出れば、途中、刺すような視線を感じた。

 

 するり、とそちらをさりげなく確認すれば、真ん中で分けた黒髪の冴えない眼鏡の男がこちらをじっと見つめている。

 男は私がみていることに気づいたのか、こちらへ向かってにっこりと笑いかけてきた。

 

「見事な変装ですね。さぞや名のあるマジシャンに師事したとお見受けします」

「……!」

 

 一瞬で、私たちの変装が見破られた。

 その事に思わず戦慄し、しかし平静を装って首を傾げる。

 

「えーっと、なんのことですかね?どちらさまでしょうか…?」

「そして、それを指摘されても眉ひとつ動かさない胆力。貴方、何者ですか?」

 

 内心わずかに眉間に皺を浮かべ、私は歯噛みした。

 

 間違いない。

 この男、地獄の傀儡師こと高遠遥一だ。

 とするとこの爆弾騒ぎは「魔術列車殺人事件」だろうか。

 

 はぁ、と息を吐き出して焦りと混乱を鎮める。

 おそらく、この男は私が何者かは分かっていない。

 

 高遠は事前乗客名簿でもどこかで盗み見て、唯一身元の定かでない私が自身の仕事の邪魔する存在かどうか確かめにきたのだろう。

 

 パンっと背後の列車から花びらの爆発が見えた。

 ざわめく乗客に混じって、高遠遥一がそれを見上げて「綺麗ですね」と白々しく言った。

 

 私は笑った。

 

 居合の要領で目に見えない速度で男の頬に一筋、非常に浅い傷をつける。

 するり、と血が滴る感触でようやく斬られた事に気付いたのだろう。

 頬の傷をなぞって驚愕の表情を浮かべている。

 

 これはいわゆる威嚇だ。

 下手にこちらに手を出すなら殺す、という攻撃的なメッセージ。

 そして私の正体がフォックステイルだと言うヒントにもなっている。

 

 爪をしまいこみ、そっと妖艶に微笑んで、私は高遠の問いかけに答えた。

 

「そうですね。血のように赤い薔薇は、僕の好むところでもありますから」

 

 

 

 

 

 高遠遥一から見て、その男は不可解の極みだった。

 

 これ見よがしな偽名。マスクを使った完璧な変装術。

 何よりその目だ。

 

 高遠は己の人を見る目に自信があった。

 特に人の欲望には一家言あると思っている。

 

 その高遠から見て……男の目にあったのは、愛だった。

 よくある題材だ。そんなものを目に浮かべる人間なんて街を歩けば五万と見つかる。

 

 しかし、それはただの愛でもなければ博愛でも友愛でもない。

 それは、人形でも愛でるような、遥か上位のものとして全てのものに傲慢に愛を注ぐ上位者の瞳だった。

 

 ごく自然に、自分が他のものより上位にあると信じて疑わない。

 だというのに、自分を人だと思い込んで傷付いてみたり恐れてみたり。

 人の皮を被った化物が、それを自覚せず人として過ごしているような不気味さに吐き気がする。

 

 

 だから高遠遥一はその男を警戒する。

 

 芸術とは美の極致を求める行為。

 犯罪芸術は死をもって描く究極の美。

 

 死の向こう側よりやってきた怪物に、芸術の舞台を台無しにされたくなかったからだ。

 

 つるりと頬の傷を撫ぜて高遠は嗤う。

 何をどうされたか全くわからなかった。ただこの化け物は高遠を傷付けられるし、容易に殺せるのだと証明しただけ。

 

 化け物に背を向け、高遠は歩き出す。

 芸術の場にケダモノは不要。人の知恵をもってして、なんとしてでもこの怪物を討ち果たす、と。

 

 そう心のたもとで誓いを立てて。

 




・高遠遥一のバボ主観
よくわからん上位者。お前に愛される筋合いはない。
化け物は芸術を解さない(持論)

・バボ主
原作キャラは基本的に好感度高い。
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