バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
前略。
地獄の傀儡師、高遠遥一にバリバリの殺気を向けられてしまった。
あれは完全にターゲティングされてしまったな。
命を狙われるなんていつものことだが、今後はトリックを使った七面倒な暗殺にも注意せねばならぬと思うとやや憂鬱だ。
私はため息をついて己のスマホを取る。
本当は今回の私たちの滞在先は函館なのだが、このまま事件の舞台である終点の死骨ヶ原に行ってしまおう。
取ってあったホテルは当日キャンセルになってしまうので、キャンセル代に加えてお詫びにもう少し追加料金を支払う旨を伝えねばなるまい。
と、連絡しようとしたら背後から降谷さんに肩を掴まれた。
片手には函館のパンフレットが握られている。
───べつにあんなの気にするほどのことはないだろう。警察もいることだし、俺達は予定通り函館でゆっくりしよう
その瞳には美味いもんを食べたいという食欲が滲んでいる。
降谷さんも逞しくなったものである。
原作を目の前にして、一応私も反論はする。
───でもあれ、たぶん相当な頭脳の殺人犯ですよ?きっと危険…
───あの頭の回る、金田一と言ったか。高校生探偵もいるんだろう。なら俺たちが出張らなくても問題ないさ
言外に、パンフレットに載っていたあの美味い餃子の店に行くのだと目が訴えている。
無論だが、対立した場合折れるのは私である。
あなたがそう言うのなら…と電話を下ろし、私達は予定通り函館で下車する事にした。
私達は函館朝食戦争で豪華な食事達を吟味する旅に出るのだ。
バリバリに敵意を燃やしてくれた地獄の傀儡師には悪いが、関わるのはまた今度という事にしてもらおう。
まぁ、どうせ今回の被害者は死んでも後腐れない連中ばかりだしな。
すまんな金田一君。高遠とは君一人で対決してくれ。
心の中で謝罪していたちょうどその時、私達のいるコンパートメントがノックされた。
返事を待たずかちゃりと扉を開けたのは、噂の金田一君だ。
「やっぱりあんただったのか、室井ララさん」
金田一君が刺すような視線で私を見た。
「やぁ、久しぶりだね」
「爆発物の調査のために全席を確認したんだが、見覚えのある美しい作りかけの彫刻が置いてあったんでね。あんたで間違いないだろうと踏んでたんだ」
「ははは。あの爆弾騒ぎにはびっくりしたよ」
これは本当だ。
地味に爆弾がトラウマな私達は、割と避難時にわたわたしていたのは間違いない。
金田一君が視線を鋭くする。
「なぜ前回、あの島を抜け出したんだ」
「それ、半分以上分かってて聞いてるだろう?」
答えは簡単、警察に捕まると面倒だから。
脛に傷のある人間だと言うことぐらい、金田一君も察しはついているはずだ。
「いくら変装できても、体格を誤魔化すのは難しい。あんたは男で、かつ前に大雨の時メイクが緩んで少しだけ浅黒い地肌が見えていた」
「うん。それで?」
「アンタが狐の彫刻師だって言うことは確定だとして。Y◯uTubeで確認したところ、狐の彫刻師は刀や刃物の扱いも超一流なのは有名な話だ」
授業をサボって屋上で日夜Y◯uTube見てる金田一君か……。
成績低そう。偏見である。
どうでもいい思考に浸る私に気づかず、金田一君は推理を展開させる。
「浅黒い肌の男で、斬鉄すら可能な剣士。それはかのルパン一味のフォックステイルに違いない」
決定的な推理を口にして、金田一君は私をまっすぐに見つめている。
私はやや笑って備え付けのソファから立ち上がった。
「君にしては荒っぽい推理だね。そんな推理いくらでも反論が出てくることくらい、予想がついているだろう?」
「分かってるさ。だが、それでまず否定が出てこないことが、この穴だらけの推理を補強している」
深層心理内でふっと嗤って、降谷さんが素早く表へと浮上してきた。
そして私を押し除けて一言、威圧的に目を細めて宣言する。
「それで、俺に何のようだ。まさか世間話をしに来たんじゃないだろう?」
金田一君は思わず息を呑んだようだった。
私の様子の変わりように驚いたのか、正直にフォックステイルだと認めたのが意外だったのか。
それともその両方か。
なお、降谷さんはそれだけ言ってさっさと朝食マップを見るのに深層心理内に戻っていってしまった。
なんだこれ、水戸の御老公が印籠出すシーンだけ見る人みたいになってたぞ。
決め台詞だけ言ってさっさと帰るなんて水戸黄門の風上にも置けない立ち振る舞いである。
もっと視聴者に配慮して。
金田一君は持ってきた証拠品であるマリオネットと脅迫状を私に突きつけて問いかけてきた。
「……なら、アンタに聞きたい。この脅迫状とねじれたマリオネットについて何か知らないか?実はさっきマジシャンの山神さんが殺されているのが発見されたんだ」
「それはまた物騒な。でも、この手のものが犯行を予告している、という一般論以外にわかることはないなぁ。…ただ」
言葉を切る。
さっきの緊張に満ちた一瞬の邂逅を思い出す。
「犯人らしき人には会ったよ」
「!!それは本当か」
「もちろん詳細は伏せるよ。僕は証拠のない話をする気はないからね。けど、どうも芸術に深い興味を持つ人のようだったから気になってね」
「……芸術?」
「そう。美にこだわりのある人。殺人トリックもそうしたこだわりから生まれている可能性が高いね」
金田一君は黙り込んだ。
つまり美という観点で殺人を行い、時に非合理なこともするという推理泣かせな犯人である可能性が出てきたからだ。
私は立ち尽くして考え込む金田一君にしっしっと手を振った。
「さぁ、帰った帰った。この悪魔の彫刻をあげるから、あとは君たちで考えるんだね」
さっき高遠のことを考えながら降谷さんと適当に作った彫刻をポイと投げて手渡せば、慌てて金田一君は両手でそれをキャッチする。
「んなっ、急に投げんなよ!落ちちまったらどうすんだ!」
「そんなに気にしなくて良いよ。それは土産物屋にでも売ってるような安原石で作ったやつだし、二、三億ってとこだろうから」
「十分高いっつの!!!」
ひぃ!と金田一君の悲鳴が上がる。
いくらでも作れるから本当に気にしなくていいのに。
美しい黒のオニキスで作った悪魔が傀儡を繰る姿を彫ったおどろおどろしい一作だ。
オニキスで作ったのは、艶やかな黒が悪魔の羽にぴったりだったため。
羽を広げる悪魔は今にも飛び立ちそうに体を浮かせている。
改めて彫刻を見た金田一君は「やっぱりアンタ……」とだけ言って、チラリともう一度だけ私を見てから部屋を後にした。
さて、函館に着いたら食い倒れ大会だ。
楽しみ楽しみ。
・降谷零
美味いもんに目が眩んでいる。
・バボ主
高遠君すまんやで!