バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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100万ドルの五稜星②

 

 翌朝。

 函館剣道大会へは行けなかった。

 

 というのも、ひどい二日酔いで私がダウンしていたからだ。

 吐き気でゲロゲロ。頭痛はひどいし、胸焼けで美味しい朝食もまともに入ってこない。

 私は一滴も飲んでないというのに酷い有様だ。

 

 いや、一滴も飲んでないというのは言い過ぎだな。

 降谷さんに絡みつかれて酒のなみなみと注がれた器を口に突っ込まれたので、飲んだと言えば飲んだ。

 「俺の酒が飲めないってのか!?」とパワハラされたので飲まざるを得ず。

 深層心理内で生成された日本酒、通称御神酒を飲んだら少し身体がポカポカと温まった気がした。

 

 で、今現在。

 幸せそうに酒瓶を抱えて寝こけている降谷さんはまだ目覚める気配はない。

 こんなに幸せそうな降谷さんをゲロゲロのデロデロにするのは気が引けたので、代わりに私が犠牲となっているというわけだ。

 

 体調もやっとさっき頭痛薬を飲んで落ち着いてきたところだ。

 あいにくと頭痛薬は手持ちになかったので、手早く深層心理で精製したものを取り出して飲んだ。

 

 すると驚くほどよく効いて、飲み下した瞬間にするすると痛みが消えていったのだ。

 効果が出るのがちょっと早すぎて怖かったが、薬としては優秀なので深くは考えないこととする。

 

 ……酒といい薬といい、深層心理で作ったものはどうにも変だ。

 深層心理で作った食べ物で風見さんが透明かつ二人になってしまった件を思えば、使用には慎重にならざるを得ないだろう。

 

 

 さて、気分も回復してきたところで街を散策しよう、と伸びをしたところで。

 

 パリン、と。

 窓から見える遠くのビルから、怪盗KIDがガラスを割って飛び出ていくのが見えた。

 確かあのビルもホテルだったような気がするが。

 

 あそこは最上階スイートがなかなかおしゃれなので泊まろうと思っていたが、海外の武器商人がいかつい部下をたくさん引き連れて泊まろうとしてたのでやめたのだったな。

 武器商人の名前は確かブライアン・D・カドクラ。

 今思えば「100万ドルの五稜星」に登場する悪役だ。

 

 遠くハンググライダーが港の方へ向かって風に乗って逃げていく。

 

 そうだ、KIDを追って行ってみようか。

 手首に阿笠博士作の巻取り式ワイヤーを装着して、私は一人頷いた。

 

 

 

 

 

 函館港中央埠頭まで追いかけていけば、ちょうど狐面の男にKIDが殺されかけていた。

 

 コスプレめいた古めかしい格好に狐面。手には刀と実になんというか、こう。

 

 キャラがモロ被りですわよ!!!

 

 警棒で急いで間に割って入り、振り上げられた刀を受け止めた。

 ガキリ、と鈍い音を立てて鉄製の警棒が刀の刃を痛めつける。

 男は少々慄いたようだった。

 

 私は冷徹に男へと言い放った。

 

「君も相当な腕前の持ち主だ。剣士として技量の差を感じ取ることぐらいはできただろう?」

「…………」

 

 この狐面の男の名は福城良衛。

 元高校教師で代々続く居合の師範だったか。

 つまりは型としての鍛錬こそ積んでいるものの、命を取り合う実戦経験に非常に乏しいということだ。

 

 狐面の男はじり、と私に隙がないか窺った。

 わざと少々の隙を晒してやればそこにすかさず打ち込んできたので、そのまま柄を蹴り上げて武装解除。

 

 みしりと相手の骨と肉が軋む嫌な音がする。

 

 もし師匠が相手なら、わざと晒した隙を利用してそのまま転がされた挙句膾切りにされていたところだ。

 

 私の背後でKIDが「あんた!なんで函館に…」と驚いたような声を漏らした。

 

 酷く痛めた腕を押さえて、狐面の男が一歩後退する。

 あれではもう剣は握れまい。

 

「まだやりますか。今度は遠慮なく意識を刈り取らせて頂きますけど」

「……!」

 

 数度辺りを確認した後、狐面の男はそのまま私たちから逃げるように走り去っていった。

 

 そこに入れ違いで入ってきたのはコナン君と服部君だ。

 「なんの騒ぎや!」と服部君が叫ぶ。

 そして私の姿を視界に入れて驚いて無遠慮に指差した。

 

「ああ!あんたはあん時の姉ちゃん!やのーて安室の兄ちゃんやないか!」

「安室の名を出すのはやめてね。僕一応国際指名手配犯だから」

「お、おう。すまんな。で、こんなところで何してんねん」

「そこのKIDが刀を持った物騒な男に襲われててね。通りがかりに助けた次第さ」

「なんやて!?」

 

 コナン君が腰を抜かして倒れ込んでいたKIDへと駆け寄った。

 

「おい、大丈夫かKID!」

「名探偵に心配されるほどのことはねぇよ。怪我する前にそこのフォックステイルさんが助けてくれたしな」

「そうか。……オメー、今度は何を狙ってんだ?命を狙われてまでさ」

「名探偵にゃ関係ないだろ。知りたきゃ自分で調べな……とはいえ、この狐さんなら俺の知らない情報も何かしら知ってそうだな」

 

 KIDも実に素直じゃない男だ。元々コナン君とはここで情報共有するつもりだったろうに、なにか理由をつけようとするとは。

 「ここいらでひとつ、情報交換といかねぇか?」と腕を広げるKIDに、一同は揃って首肯した。

 

 

 止めてあった列車の中に入り込み、その座席に適当に腰を下ろして各々が見つめ合う。

 

 KIDの目的は原作通り、父親が狙っていた斧江圭三郎の宝についての情報だった。

 コナン君達はそのKIDを追って、謎を解きに来たに過ぎない。

 

 KIDが向かいの席から半目で私を見やった。

 

「で、ルパン一味の狙いはなんだ?この時期に函館に来てんだ。無関係ってわけじゃないだろ」

「いやこれは完全に無関係。僕、観光に来ただけだから。僕の函館美食巡り計画が台無しだよ」

「……マジ?」

 

 信じられねー、とでもいいそうな様子に私は憤慨した。

 今更戦時中の暗号解読機に用なんてあるはずないだろ!函館の美食の方がよっぽど私には価値がある!

 いや、歴史的価値を思えば博物館垂涎の品だとは思うけれど、そうではなくて。

 

 私は重々しく頷いた。

 

「マジ。けど、昨日のうちにルパンに電話して、斧江圭三郎の財宝については確認したよ」

 

 それにすかさず食いついたのはコナン君だ。

 

「それってなんだったの!?」

「暗号解読機だったって。部屋いっぱいを占領するような、昔のね。場所も聞いてきたから今から行くつもりだけど、君たちも来る?」

 

 KIDとコナン君はお互い顔を見合わせた。

 そりゃ、お宝が暗号解読機って何、って話だよな。

 




・御神酒
神をも酔わせる神酒。大変美味。
飲んだ者の無事は保証しない。

・イブクイック(神域産)
頭痛に速攻!!!
内容成分が不明な物質に置き換わっている。
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