バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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炎の記憶①

 

 季節は夏。じいじいと蝉の鳴く7/28のことである。

 

 ここは東都にあるアジトの一つ、

 私はコンビニのビニール袋を片手に、みすぼらしいランニングシャツ姿のルパンに声をかけた。

 

「ルパン、要望のカップ酒買ってきましたよ」

「おー、あんがとさん安室ちゃん。オメーもかき氷いるか?」

「いただきます。というかルパン、その格好なんとかしません?」

「わっかんねーかな?これが夏の風情ってもんなの!」

 

 ルパンはそう言い張って胸を張った。

 汗でぐっしょりのヨレヨレのランニングシャツが扇風機の風を浴びている。

 私は無言で開けっぱなしの窓をピシャリと閉めて、部屋に備え付けのクーラーのスイッチをオンにした。

 せめてクーラーはつけてくれ。死ぬ。

 

 さて、今回の狙いは徳川将軍徳川慶喜を写した2枚のガラス乾板である「巽の慶喜」と「乾の慶喜」だ。

 特に「巽の慶喜」についてはすでに先日盗みに失敗しているので、今度の狙いは「乾の慶喜」の方になる。

 

 むすっとなぜか膨れっ面で話を聞いていた次元さんが、ルパンの示した資料を手でつまみながら目線を上げた。

 

「で、この2枚が揃うと徳川家の財宝のありかを示すってわけか」

「眉唾感半端なくないです?絶対警視庁の罠ですよ」

「まぁ俺もそこまでは言わねぇが。なんか裏があるようには思うな」

「何だってんだよ二人とも感じ悪いなー」

 

 ルパンがぷくりと頬を膨らませたが、実際罠なんだよな。

 

 「巽の慶喜」と「乾の慶喜」。

 これはアニメスペシャル、ルパン三世炎の記憶に違いない。

 

 ルパン三世炎の記憶とは、徳川埋蔵金…ではなく、アクアポリス地下にて秘密裏に研究される遺伝子工学を用いた兵器作成を巡る話だ。

 今回の悪役であるマイケル・スズキは、予知能力をもたらす遺伝子配列の情報を手に入れて予知能力兵を作る……なんて計画を立てている らしい。

 

 つまりまた人造人間案件であり、私の神経を逆撫でする超胸糞事件なのである。

 あーー、許せん。触手が黒く染まりそう。

 

 考えていたら腰回りから出していた九つの触手がじわり、と黒く染まりかける。

 

 すかさず降谷さんがぱしんと私の頭をはたいた。

 

───安室、また地雷原に送り込まれるぞ

───!?ヒィ!

 

 しゅん、と色が元に戻る。

 この触手の出しっぱなしは、私の新たな修行であり、精神を均一に保てとの五エ門師匠が課した課題でもある。

 

 仕方がないのでそのまま手持ち無沙汰に離れたところにある手入れ用具一式を触手で掴んだ。

 手元へ引き寄せ、斬鉄爪の手入れに入るためだ。

 

 「それ便利だよなー。マジックハンドー、なんつって」とルパンがどう言う手品か背中からマジックハンドを四つほど生やした。

 カチカチと動かして、私の出しっぱなしの触手と握手する。

 

 ごほん、と次元さんが咳払いした。

 

「で、五エ門はどうした。連絡つかねぇのか」

「あー五エ門ねぇ。なんか連絡取れないんだよなぁ。安室ちゃんはどう?」

「五エ門師匠なら連絡くらい付きますけど……今は仕事に関わるのは無理だと思いますよ」

「え、どうしたんだあいつ」

「なんでも、斬鉄剣が盗まれたらしくて。すごい形相で出ていったんです。それで僕はルパンのところに逃げ込んできたんですよ」

「おわ……えらいこった。じゃああいつ超絶不機嫌だろ」

「そりゃもう。話しかけるのも憚られる有様でした。自己嫌悪も入っているかとは思いますが」

 

 危うく私の地雷原走り込み修行が復活するところだった。

 師匠も並走の二人修行だ。いらないにも程がある。

 

 そう言えば、私が心を乱したせいで生まれたタタリ様。

 あの神社の建設が完了したそうだ。

 コナン世界の土木建築の素早さには本当に頭が下がる。

 きちんと休日あるんかな、どころか1日48時間働かされてないよな?と言うぐらいには早いからな。

 

 一応、前に作った黒曜石の彫刻は既に神社に奉納済みだ。

 境内に飾ってくれるそうなので、今度どんな感じになっているのか見に行くつもりだ。

 

 ふと、机の上に並んでいる四本の酒瓶に気が付いたのか、次元さんが瓶を手に取ってラベルをまじまじと見た。

 

「お、こりゃ酒か。見ない銘柄だな」

「次元さん今は虫歯でしたよね?」

「そうだが…話の変え方がえらく唐突だな。それに最近オメー未来予知を隠さなくなってきたし」

 

 呆れたような言い方だが、ここがルパン一味で未来予知が悪用されないと理解しているがためだ。

 他なら最低限隠すポーズぐらいする。

 

「知ってる相手に隠す意味もないので。で、これが何かと言いますと、御神酒です。僕が作った、と言ってもいいかもしれませんね。つまりメイドイン僕です」

「なんだオメー産の酒って。酒蔵でも作ったのか?」

「僕が超能力的な何かで具現化したみたいなものですよ。もちろん普通に飲めますよ」

「…………ほー」

 

 次元さんが早くも宇宙猫になってしまった。

 まだ不調を治す話にも辿り着いてないのに。

 

 私は背後に宇宙を背負う次元さんを無視して、そのまま言葉を続けた。

 

「この僕の作った酒には人の不調を治す力があるんです。それを今テスト中でして」

「ツッコミ所が多い!」

「ま、よーするに安室ちゃんの作った酒は美味いし滋養強壮にいいってわけだ。改良の結果一週間酔い潰れることも無くなったしな」

「ここに漕ぎ着けるまで幾度もルパンが犠牲になりましたからね…」

「ま、何てったって味は絶品だったもんな」

 

 紙コップに少しばかり注いで次元さんに渡せば、彼は恐る恐るだが受け取ってくれた。

 

「どうぞ。たぶん虫歯にも効きますよ」

「多分ってオメーなぁ……まぁいい。酒は貰う」

 

 怯えているのに酒の魅力には勝てなかったらしい。

 そのままそろそろと一口で飲み干すと、ぷはー、と次元さんは気持ちよさそうに息をついた。

 

「おーっ!こりゃいい!ルパンが言うだけあるな!日本酒は普段飲まねぇが、これはこれでいい!おめーが作ってんだろ、一瓶融通しちゃくれねぇか」

「いいですよ。───ついでに味を捨てて医薬効果に偏らせた養命酒もつけておく。緊急の怪我等に使え」

「おう、すまねぇな降谷」

 

 養命酒の方はあれだ、ポーション的な立ち位置なので飲んでて美味しいものではない。

 だがその分治療効果は抜群、のはず。

 実験できないのでその辺はまぁ追々ね。

 

 そこまで話したところで効果が現れてきたようだ。

 「………お!」と言って次元さんがおもむろにかき氷をかっこんだ。

 

「治った!治ったぞ!!!これで治療に行かなくて済む!」

「それはよかった」

 

 よっぽど嬉しかったのだろう。

 次元さんはウキウキと肩を揺らしてかき氷を楽しんでいる。

 

 夏の季節に必須のクーラーが効いてきて、部屋もずいぶん涼しくなった。

 この部屋の平穏ぐらいに、今回の事件も平穏無事で済めばいいのだが。

 




・神社に飾られている御神像
触手が数本仕込まれている。
祈って触れると体の悪い箇所が治るという。
「祈りには真摯に答えなければいけませんからね」
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