バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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炎の記憶②

 白昼堂々警視庁へ侵入して、お宝の警備データと日程をいただきにきた今現在。

 私は「銭形警部の部下」という名目で冴えない男の警官の格好をしている。

 

 無論ルパンは銭形警部の格好だ。

 

 そこへ白馬警視総監がやってきて「やあやあ、聞いたよ。ルパン相手にお宝を守ったんだってね」と親しげに話しかけてくる。

 どうやら白馬警視総監と銭形警部は知り合いらしい。

 

 警視総監という役柄はルパン原作と違う人物であるはずだが、やはり銭形警部を気にかけているところは変わらないようだ。

 穏やかに「活躍を楽しみにしているよ」と労わってから、部屋を出ていった。

 

 ただ、流石の警視総監もルパンの変装は分からなかったご様子。

 彼の変装は体格すらほとんど無視した謎技術で成り立っている。

 

 それだけの完璧さでも警視庁の出口で本物の銭形警部にばったり出くわす運命力がルパンってところである。

 銭形警部はそれを二度見してから「そこの銭形を捕まえろ!!!ルパンだ!!!」と叫んだ。

 何かのコントか?

 

 その後ろを諸伏さんと明美さんが連れ立って歩いていたのだが、目を白黒させて二人の銭形警部を見比べている。

 本物と見比べて遜色ないって、怪盗KIDもそうだがすごい技術だよな。

 

 そして今作のメインヒロイン、一色まりやが二人の銭形警部がお互いに偽物だと言い合っている様子をパシャリとカメラに収めている。

 いい写真が撮れたようでホクホク顔だ。

 

 彼女は子供の頃に受けた遺伝子療法により、予知能力が備わっているキーパーソンだ。

 彼女の親である一色博士が凄まじい研究者で、遺伝子にかけてはマモーにも並ぶ大発見を………。

 

 瞬間。

 なぜか急激な怒りが込み上げてきて、私は思考を切って無意識に踏み込んでいた。

 

 一色まりやを腰の触手で首を絞めて、遠慮なく体ごと持ち上げる。

 冷徹な殺意が首をもたげる。

 

「不敬。神を覗キ見ルか」

「ぐっ、かはっ……!」

 

 一色まりやが苦しそうに咳き込んで、私はその様子に仄暗い満足感を覚えた。

 

 遠い意識に「お、おい安室ちゃん!?」と焦ったようなルパンの声が聞こえて、ハッと意識が戻ってくる。

 何で私はまりやさんの首を絞めているんだ!?

 まりやさんを急いで離す……前に、鋭い回し蹴りが私に向かって放たれた。

 

 蹴りを放ったのは諸伏さんだ。

 完全にふいをつかれ、蹴りが顔を掠めてマスクを剥ぎ取られてしまう。

 

 諸伏さんが驚きに目を見開いた。

 

「ゼロ!?」

「すみません諸伏さん!弁明させてください!僕もさっきの行動は自分でもよくわかっておらず!」

「それは別にいいが、今警視庁から出てきたよな!?」

「───そっちはルパンとの仕事だ!悪く思うなヒロ!」

 

 体勢を素早く立て直し、大きく後ろに飛ぶ。

 まりやさんに駆け寄った明美さんが倒れ伏すまりやさんを抱き起こした。

 

「大丈夫一色さん!」

「ゴホッ、一体何なの!?貴方、今見えた景色は……」

 

 何が見えたのか定かではない。

 だが、何かを見られたことに謎の憤りが胸を支配した。

 

 そうこうしているうちに銭形警部がルパンを組み伏せて叫ぶ。

 ルパンも困惑顔だ。

 

「逮捕だルパーン!それにフォックステイル!何の罪もない子女を襲うとは見損なったぞ!」

「ホントどうしたよおめぇ、今さっき触手まみれモードだったよな?」

「僕も分からないんですってば!!とりあえずずらかりましょう!」

「おうともよー」

 

 気の抜けた声でヒュンッと銭形警部のつけた手錠から抜け出て、パンツ一丁のままルパンが走り出す。

 私もその後に続いて走れば、銭形警部の姿はだんだんと遠くなっていった。

 

 

 多くの謎を残して、私たちは一色まりやさんと一旦のお別れとなった。

 それに思うところがないわけではない。

 

 気を取り直し、さっきついでに警視庁から盗ってきた黒の組織の任務で必要な情報をジンへと送信する。

 このデータに関しては実際には組織の利益とならないことは確定している。

 具体的には骨折り損のくたびれもうけ。

 

 なので遠慮なくジンにデータを送れば、「早かったじゃねぇか、流石はウルフドッグ。サツの一匹や二匹引き裂いてきたか?」と相変わらず上機嫌そうな電話がかかってきた。

 

「いえ、あまり目立つのは避けた方がよさそうだったので」

『いい子だ。皆が皆テメェみたいに物分かりがいいなら良かったんだがな。今度のサシ飲みは俺の奢りにしてやるから楽しみにしてろよ』

 

 その声は彼にしては実に柔らかい。

 

 絶対これ、「取ってこい」が出来た犬を褒める感じのノリだ。

 

 しかし、本当にさっきのは何だったんだろうか。

 無言で考え込む降谷さんをよそに、私はぽやっと空を見つめながらルパンを追って走っていた。

 

 

 

 

 

 さて、その夜。

 お次は「乾の慶喜」だ。

 

 トラック5台で運搬される「乾の慶喜」を奪う時がやってきた。

 降谷さんが運転役。ルパンが直接乗り込み、次元さんが銃器での遊撃という割り振りとなっている。

 

 トラックのうち一台に潜んでいた銭形警部の指示で一時車が包囲され動けなくなりそうになったものの。

 私が斬るまでもなく軽くタイヤを撃ち抜いた次元さんによって、包囲網を無事脱出することができた。

 追加のトラックが私たちの車を轢き潰そうとしたが、それも次元さんの銃弾によって軽くリタイア。

 やはり次元さんは堅実な仕事ぶりがクールで有能だよね。

 

 ふと、斜め後ろにまりやちゃんの車が見える。

 ここに居合わせたのももしかしたら予知によるものなのかもしれない。

 

 そう思った瞬間、また胸をカアッと謎の不快感が支配した。

 

「不敬。不敬。二度、神を不躾に見上げルか。神罰が下されよウぞ───それだけお前に興味があるってことだろう。許してやれ」

 

 降谷さんが深層心理の袂で軽く私の肩を叩いた。

 私は憤慨して立ち上がる。

 

「否ヤ。神の忠告を無視しているんですよ?処罰が妥当では?」

「というか、あの力は本人の意思で制御可能なのか?もし不可能なら彼女に悪意はなかったと言うことだと思うぞ」

「それは、そう、ですね」

 

 怒りが収まるにつれ、今の自分の会話がいかに可笑しかったかがだんだん頭に入ってくる。

 すまし顔で運転する降谷さんにばっと頭を下げて謝罪した。

 

───……私、ヤバくないです?絶対これなんか変な触手の後遺症ですよね?

───俺は構わない…というかお前に必要不可欠な相棒感が出て満足したけどな。覡だったか?いいじゃないか。うん

 

 ぷすぷすと満足笑いを堪えた充実感を醸し出す降谷さんの実に強かなことよ。

 貴方がそれでいいなら私も否やは無いんだが、本当にいいのかそれで。

 

 銃で追っ手を蹴散らしながら隣の席の次元さんがリボルバーに弾薬を詰め直している。

 

「おーい、オメーら運転に集中しろ。仕事中だぞ」

「っと、すまない。で、ルパンはまだ戻らないのか」

「あっちのトラックの上で用心棒とドタバタやってるぜ。ありゃ中々の腕前だな」

 

 見れば、長髪を後ろでひとまとめにしたガタイのいい男が、ルパンをタコ殴りにしていた。

 素手という分野でルパンをほぼ圧倒するとは、粗野な見た目に反してまさに達人と言っていい用心棒のようだ。

 

 

 と、そんなこんなをしているうちに後方からさらっと現れた五エ門先生に「乾の慶喜」を掻っ攫われ、私たちの盗みは二度目の失敗となるのであった。

 




・神
根が祟り神。
許可なく神の未来を見るなど不敬極まりない。
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