バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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炎の記憶③

 

 その頃、銭形警部には休職命令が正式に発令されていた。

 昨晩のトレーラー事故の規模の大きさに比して、懲戒処分としては軽い方だ。

 

 白馬警視総監が眉を下げて困ったように口を開く。

 

「君の逮捕を取り下げるだけでも中々に苦労した。君のやり方が悪いとは言わん。だが、今は伏して耐える時だ。いいね?」

「……総監」

 

 失礼しました、と頭を下げて苦渋の顔で銭形警部は頭を下げた。

 

 と、そんなことがあった夜だ。

 銭形警部は安い飲み屋台でただ飲んで飲んで飲み耽っていた。

 横には諸伏景光と一色まりやが並んで座っている。

 

「このワシでなくて誰がルパンを逮捕できるというのか!ワシは、ワシはぁ!!」

「まあまあ。もう一杯どうだ銭形警部。こんな時は飲むに限る」

 

 明らかに酔いつぶそうとしている諸伏の様子に、まりやは半目で笑いながらそっと見守るにとどめた。

 あれは煩くて迷惑なので潰れたほうがいいことは確かだ。

 

 ちらっとまだシラフの諸伏を見て、まりやは恐る恐る尋ねてみた。

 

「銭形さんと諸伏さんは一体どういう関係なの?」

「んー、そう軽々と話せることじゃないんだ。悪いな」

「そう……」

 

 優しげな相貌に反して隙のない立ち回りだ。

 そっけないというか、人とあまり距離を詰めないように意識しているというか。

 この人も只者ではない、とまりやは直感していた。

 

 ふ、と諸伏が笑う。

 

「でも、恩があるのは確かだ。俺と明美は銭形警部に助けられている。今もずっと」

「それってどういう…」

 

 諸伏はその整った容姿でウインクしてみせた。

 そんなチャーミングな仕草も実に様になる色男だ。

 

「世間には巨悪が多いってことさ。とはいえ、銭形警部と一緒に仕事をするようになって、巨悪の多さに辟易とする羽目にはなったがな」

 

 「今回も例に漏れん。ルパンの敵は面倒な奴らばかりだ」と銭形警部が頷いた。

 

「あのルパンを轢き潰そうと狙ったトレーラーの運転手、ありゃマイケル・スズキが手配した運転手だ。きな臭いとは思わんか?」

「そうだな。どう考えてもやり口が表の人間のものじゃない。マモーといい、でかい車で相手を潰そうとするのが最近の流行りなのか?」

 

 そういえば、まりやの方も危うく轢かれそうになったのだった。

 ぞ、と背筋に今更悪寒が走る。

 あんな車で轢き潰されていたら線の細いまりやなんてミンチになっていたことだろう。

 

 まりやは頭をブンブンと振って恐ろしい想像を振り払い、話題を変えるべく口を開いた。

 

「そういえば、昨日私の首を絞めたあの謎の男、諸伏さんの知り合いなの?」

「フォックステイルか。分別のある穏やかな奴なのだがな。ルパン一味のストッパーでもある」

「そんな人がどうして盗人なんてやってるのかしら」

「それは…」

 

 銭形警部が言い淀む。

 諸伏の持つビールジョッキに力が入っているのか、ぎ、と嫌な音を立てた。

 

 しばらくの沈黙ののち、静かな目線がまりやを捉える。

 

「君は恨んでないのか。あんな急に襲われて。俺もあんなことするとは思わなくてびっくりしたんだ」

「それは……びっくりはしたわよ。でも本気で絞めてないのも分かったし、彼自身驚いているようだったから疑問が先に立って…」

「そうか。君は本当に善良な人だな。銭形警部が気にいるのもわかる気がする」

 

 優しげに微笑むイケメンは、背景がボロい屋台でなければ随分と様になっただろう。

 夜景の美しいホテルの最上階とかが似合うはずだ。

 まりやは思わず赤面して視線を逸らした。

 

 すると。

 突然バターン!と盛大に後ろに倒れる銭形警部に二人とも飛び上がった。

 

「ちょ、ちょっと銭形警部!?」

「やっと落ちたか。こんな時は飲んで寝るに限るんだ。銭形警部は俺が運んでおくから気にしないでくれ」

「そんなわけにはいかないわよ。私も手伝うわ。ほら、そっち貸して」

「お、おお……」

 

 二人で銭形警部をアパートメントへと連行していくのは、風情にこそ欠けているもののまりやにとって何となく心躍るものがあった。

 

 

 

 

 

 

 古めかしい言い方をすると、アクアポリスなう、というやつだ。

 

 海に面した地下通路から、軽く斬鉄爪で掘り進める今現在。

 私たちは美術品保管庫まで一直線に進んでいる。

 

 昨日の夜にバーで不二子さんと五エ門師匠と合流したのだが、案の定彼女らも組んで徳川の財宝を狙っているようだった。

 まあ、五エ門師匠の方のメインはアクアポリスに他の美術品と一緒に保管されている斬鉄剣を取り戻すことだったが。

 

 斬鉄剣については、案の定女性に騙されて盗られて売られたらしい。

 師匠ともあろうものが情けない……という思いが表情に出てしまったようで、バーで会った時の五エ門師匠は「そんな目で拙者を見るな!!」と叫んだ。

 

 おお、哀れなり石川五エ門。

 そういう時もあるさ。

 

 アクアポリス突破に際して、電子セキュリティのかかった扉はバレないように次元さんが専用の機器を使ってハッキング。

 それ以外の天井などはするりと私が斬鉄爪で切り落とした。

 

 原作と違い手早く侵入が完了した美術品保管庫は静寂に包まれており、建設されたばかりらしい建材の匂いに満ちていた。

 

 

「この部屋のどこかに斬鉄剣がある!探すぞ次元!安室!!」

「はい師匠。高いところは私が触手で探すので、師匠は低いところを頼みます」

「うぅ……拙者は弟子に恵まれた…頼んだぞ安室!」

 

 五エ門師匠は本気で泣いている。

 師匠も涙しやすいところがなくはないが、この場合は剣を失って心がひどく傷付いていると言ったほうがいいか。

 意外と繊細な男、石川五エ門である。

 

 次元さんが見張り役をしながら私に問いかけてくる。

 

「なぁ、その触手ってのは触覚はあるもんなのか?」

「ええ。触られれば分かります。透過状態でもなんとなく触れる感じがありますし、通り抜けたものが何なのかも多少はわかるので」

「ほー、なら斬鉄剣探しにはピッタリだな」

「でも触手をにぎにぎと手慰みにしないでくださいね!ほら!右手を離す!」

「悪いなー、なんかひんやりしてて硬めのスライムみたいで楽しくてな」

 

 ぐにぐにと触手の一本を握る次元さんに、私は「キャー!変態!」と変声術による女性声で叫ぶにとどめた。

 

 今頃、上ではルパンが不二子さんと一緒にマイケル・スズキに追い詰められていることだろう。

 一応事前に伝えてはあるから大丈夫だとは思うが……若干の心配はやはり拭いきれない。

 

 遠くから五エ門師匠が「あった!!!あったぞ!!!」とクソデカボイスで叫ぶ声が聞こえてくる。

 どうやら斬鉄剣を手に入れることができたようだ。

 駆けつければ、斬鉄剣を抱き抱えてひしと泣き腫らしていた。

 

 私達が原作より早く着いた影響か、はたまたルパンが上手くやったのか。

 まだ追手は来ていないようだ。

 

「じゃ、斬鉄剣も取り返したし俺らもずらかるとするか」

「ええ次元さん。しかし師匠ってば、近付いてきた相手の狙いぐらい初見で見抜けないとその後の会話にも困るのに…どうやっていつも相手と話してるんです?」

「言うな。あと狙いを初見で見抜けるのはルパンとお主ぐらいのものだ」

「またまたぁ」

 

 などまったり会話しながらアクアポリスを後にしたのであった。

 




・触手
触感は冷えピタに似ている。
夏場などに額に当てると実に気持ちいいが、居心地悪そうに触手がうごつくのが若干のマイナスポイント。
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