バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
あれからは色々あった。
TV中継も入っていたアクアタワー襲撃事件。
そこに突如現れた巨大な触手の山は当然のことながら世間を驚愕させた。
犯人グループの逃走用ジェット機がアクアタワーに突っ込みそうだったところ、触手に捕獲されてことなきを得たのもバッチリTVカメラに映っていたし。
タタリ様のご加護だ、謎の地球外生命体だとマスメディアは蜂の巣をつついたように騒ぎ立てた。
ことを更にややこしくしたのは助け出されたVIP達だ。
彼らは皆一様に無傷で、しかも「触手に助けられた」と口を揃えていうものだからあら大変。
タタリ様を祀る神社に巨額の寄付を申し出る要人もいたようで、好奇の目はアクアタワーだけでなく神社にも向くようになった。
ネットもそれに黙っているようなことは断じてない。
まさに世間はタタリ様ブーム。
メル◯リで手作りのぬいぐるみが売られたり、自作のアクスタを神棚に飾る人がY◯uTubeで実況したり。
やりたい放題の混沌具合よ。
それだけでなく、あの触手が世界を覆った事件により病や怪我が治った件についてだんだん明らかになってきたのも大きいだろう。
事件以後病院へ駆け込んだ人が誰も彼も持病ほか些細な怪我から重大な難病まで、綺麗さっぱり完治してしまう現象が多発したのだ。
原因不明。共通点も不明。
ただ一つ、全世界の人々と同じようにタタリ様に触手で巻かれたこと以外の何の接点もない。
というわけで、本格的にあれが現世利益をもたらす神格だということになってきていたのだ。
ネット上の戯言だと思われていたのがだんだんと事例が増えていくに従って真剣に議論されるようになり。
私は肩身が狭くなるばかりだ。
と、そんな折のこと。
降谷さんはふと思い出したように私に言ってきたのだ。
「そろそろ俺達の神社に行ってみないか?」と。
昼間のセーフティハウスでたまにはとカップラーメンを啜りながら、私はキッパリと断った。
「嫌ですよ。同人誌売り場に原作者本人が行くみたいじゃないですか」
「どんな例えだそれ。まぁいい。俺も神社の出来栄えはTVで見て気になっていたんだ。行くぞ」
「私の話聞いてくださいね!?」
何様俺様降谷様。
降谷さんが行くと言ったなら行かねばならぬ。
これすなわち世の真理である。かなしいね。
そんなわけで神社にやって参りました!!
凄まじい人の賑わいと喧騒、そして子連れも含めた客層の広さに思わず舌を巻く。
また、かなりの頻度で車椅子や松葉杖等の人が目に入ってくる。
彼らも参拝客だろう。
降谷さんが鼻高々と言った顔で満面の笑みを浮かべた。
「良い雰囲気じゃないか!俺たちの屋敷に空気も似てるし」
「ですね。というか鳥居をくぐった瞬間空気が変わりましたね。深層心理のあの水に潜る感覚に似ていたといいますか」
鳥居をくぐった瞬間、どうも深層心理に入った時と同じような不可思議な感覚をおぼえたのだ。
するりとネットで調べると、どうもこれはここに来る人間皆感じているもののようだ。
道理で子供達が鳥居の周辺をぐるぐると回っているはずだ。
この現象について掲示板等では「神の領域に入ったからだ」と皆話題にしているようだ。
X(旧Twit◯er)にも同様の書き込みが散見される。
参道中央をすすんでいけば、中程の目立つところに私達が送ったタタリ様の像が設置してあった。
小さな社に屋根つきで、実に高待遇だ。
多くの参拝客がタタリ様像を撫でた後、中央の小さな窪みのところに賽銭を突っ込んでから進んでいく。
そこは賽銭箱じゃないんだが…まあいいか。
長い参道を通って社務所の横を通り過ぎ、拝殿へと辿り着く。
本殿が遠くに見えて、そこにぽっかりと空白があるような妙な感じがした。
本殿に感じる気配に、降谷さんが首を傾げた。
───なんだあれ、あるべきものがそこに無いような、飯抜きカレーみたいな雰囲気を感じるんだが
───どんな例えですかそれ。僕としては座る者のいない最高級リクライニングチェアって感じですね
───そっちこそどんな例えだ
ちょっと触手でも置いてみますか、といたずら心が湧いて、そろーっと透明な触手を一本伸ばしてみる。
そうして実に良さげなリクライニングチェアに触手を座らせると。
すっぽり、と収まるべき場所に収まった満足感で満たされた。
大きなビーズクッションにズボッとハマったみたいな充足感だ。
ふにゃー、とつい満足感に気の抜けた顔になってしまう。
───おい、どうした安室?
───いやぁ、だってここすごい良いんですよ。めっちゃベストフィット…私ずっとここにいる…
───……なるほど。こうやって神社に神を滞在させておくわけだ。勉強になったな
───あーーーいい
大満足する私を放って肉体の主導権を奪った降谷さんが社務所に近寄っていく。
売られているお守り等を覗けば、厄除けに健康長寿、開運と各種取り揃えてあった。
ふむ。と一つ頷いて人の目がないうちに売られているお守りに透明な触手を数本滑り込ませる。
───開運はちょっと難しいですけど、厄を物理的に祓うくらいならできますのでね
───だな。やっぱり俺たちの名を冠する神社なら多少の責任は持たないと
触手の一部を相変わらず本殿のリクライニングチェアに残しながら、私達は社務所の品揃えを確認していく。
御朱印やお札、破魔矢、鈴など全てに触手を梱包。
在庫を保管する倉庫も見つけたので、そこには大型の触手を潜ませた。
ここから分裂して他のお守り等にも感染していく、という仕組みになっていく。
降谷さんがチラリと私の顔色を確認した。
───そんなに触手を出して大丈夫か?禿げたりしないのか?
───それは大丈夫。これは全世界を覆う触手ですよ?分社があと100社できても欠片も問題ありませんとも
───そうか。ならよかった。俺の相棒が禿げなのはやっぱりビジュアル的に良くないからな
ここに来てから終始満足顔の降谷さんだが、一応の懸念は解消されたらしい。
うんうん頷いてお守りの確認に戻っていく。
いいんですけど、別に触手が底を突いたって禿げるわけじゃないですからね…。
その時。
ふと後ろに不穏な気配を感じて振り返れば。
「あ、コナンくん」
「安室さん!来てたんだね!」
どうやら光の魔人も来ていたようだ。
一人なのか今は別行動なだけか、コナン君はてけてけと小さな足取りで近寄ってきた。
ちなみに、私の触手について既にコナン君には話し済みだ。
宇宙猫顔をされたが、コナン君からのコメントは「ルパンおじさんの界隈ってそういうの多いよね」という一言だけだった。
別に多くはないはずだが…いややっぱ多いか?
「今日は蘭姉ちゃんと園子姉ちゃんと参拝に来たんだ」
「そっか。ああ、鈴木会長の件があったからかな」
「うん。お礼を言いに来たんだって」
「照れるなぁ」
何となく気恥ずかしくなって頭をかけば、コナン君は何やらボソボソ小声で呟いている。
なになに?
ご本尊が普通に歩いてるのはバグでしかねーだろ?
あー、それはバグじゃなくて仕様です。
・タタリ様グッズ
柔らかタタリ様ぬいぐるみが人気。
御利益は無いがもちもちして気持ちいい。