バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
本日。
私は組織に呼び出されて、他の幹部と共に夜遅くに埠頭に集まることになった。
車を止めてみれば廃倉庫の中には幹部がずらり。
ウォッカ、ジン、キール、キャンティ、コルン……。
ネームドは皆揃っていると言っていいほどの顔ぶれだ。
私はベルモットを乗せて送迎係として車で来たのだが、視線が集まる中降りるのはなかなかに気まずかった。
ベルモットの身支度に時間がかかったので仕方ないのだが、重役出勤はやはり気が重い。
そんな中、優雅に妖艶に銀幕の舞台をゆくが如く車を降りるベルモットの胆力は流石の一言だ。
集まる視線を完璧にいなし、私へと歩み寄るとチュッと頬に一つキスを落とした。
「いい子だったわね、キティ。送ってくれてありがとう」
「気にしないでくださいベルモット。これも僕が好きでしていることなので」
「もう!やっぱりあなたは可愛いわね」
ベルモットは上機嫌で私を抱きしめた。豊満な胸が当たり、何となく役得な気持ちになる。
ただし、降谷さんはまたオエー鳥のアスキーアート顔をしているのだが。
気に入ったんかなその表情…。
ジンがチッ、と軽く舌打ちしてから周囲を見渡した。
どうやら全員揃ったようだ。
「大きな仕事がある。あの方からの命令だ」
埃の積もった机の上に放られた資料は、数年前に建設が完了したICPOの建設した国際監視施設パシフィック・ブイのものだ。
ジンは放られた資料を見やって、目だけでそれを皆に確認するように指示する。
「ここに搭載された最新の顔認証ソフト、老若認証の制作者を誘拐して組織のものとする命令が下された」
壁にもたれかかってつまらなさそうな顔をしていたキャンティが遠くからピラピラと手を振った。
あれは「誰か資料を取ってきてくれ」の意だ。
仕方ないので私が資料のコピーを2部机から取って渡せば、キャンティは「サンキュー!」と軽く言って隣のコルンにも渡した。
相変わらずのものぐさである。
「へえ。で、あたいたちは何をすればいいんだい?」
「欧州へ飛べ。そこにいる制作者の女の家族の身柄を押さえろ。コルンもな。後々聞き分けのない女を脅すときに使う予定だ」
了解、とだけキャンティは答えてまたくっちゃくっちゃとガムを噛む作業に戻った。
キャンティとコルンはこういうところを巻きかつ要点を押さえて話を進めてくれるから助かる。
本人達は何をすればいいかだけ知りたいだけだろうが、会議時間の短縮に一役ばかりでなく貢献しているからな。
ベルモットがそれを面白くなさそうに見てから口を開いた。
「誘拐ね。制作者は深い深い海の底、パシフィックブイの中にいるんでしょう?なら私が職員に変装、という形になるかしら」
「兄貴の計画だとそうなるな。だがあそこは出入りがかなり厳しい。俺が潜水艦で直接乗り付ける手筈になっているから、そこから泳いで現地へ向かってくれ」
「となると、変装は使えないわね……」
ジンの代わりに答えたのはウォッカだ。
計画の立案にはジンの他にもウォッカが大きく絡んだようだ。
まぁ、ジンの計画なんて「殺せ」ぐらいのものだから、こうして丁寧な行動計画がついているあたりウォッカの手が入っているとは思っていたが。
「ま、もしキュラソーのやつが居りゃあ内部に直接侵入してソースコードを丸ごと盗み出せたんだがな」
「いない人間の話をしても仕方ありませんよ。で、結局誘拐は誰が行くんです?もう決まってるんですよね」
キュラソーの話になりかけたので素早く私が話をインターセプト。
実はキュラソーは現在、私の恩人であるMI6のおじさんを通してイギリス諜報機関MI6に再就職している。
職業柄近況を聞くことはできないが、きっとうまくやっていることだろう。
ウォッカは夜中でも変わらぬ黒いサングラスの向こうで目をパチクリさせた。
「兄貴と相談して、ベルモットとバーボンに行ってもらうつもりだぜ。ピンガは内部から手引き。俺は誘拐に使う潜水艦の監督だ」
「ふん。そこの野犬に誘拐なんて高尚なことができるのかよ。間違って腹かっさばいちまったじゃ話になんねぇんだが?」
「ピンガ。ナマ言ってんじゃねぇよ」
ウォッカに嗜められているピンガだが、実はこの現場では最年少だ。
跳ねっ返り感が強いがこう見えて任務には忠実。
SEとしての腕もたしかと優秀な人員である。
だが、同じく若く見える私に何故かいつも反発してくるのが玉に瑕。
勝手にライバル視しているのもあるのだろうが、鬱陶しいことこの上ない。
私はできるだけ冷酷そうに聞こえる声でせせら笑った。
「ピンガ。僕に突っかかるのはいいですが、仕事はきちんとこなしてくださいよ。でなければ裂かれるのはあなたの腹だということをお忘れなく」
「はっ、言われずともそのぐらい軽くこなしてやるよ」
ピンガの強気な発言に不快げに眉を顰めたのは、私ではなく側で聞いていたジンの方であった。
突如ジンが重苦しいまでの殺気を放ち、ピンガへと銃を突きつけた。
びくりとピンガの肩が揺れる。
「一昨日のドイツのユーロポール拠点侵入で失敗したガキが偉そうなこと言うじゃねぇか。そのせいで俺は予定にない殺しをする羽目になった」
「っ……」
「じゃれつく相手はよくよく考えることだ。長生きしたけりゃな」
ジンはそれだけ言って、チラッと私を見て実に凶悪そうにニッと微笑んだ。
お前のことは俺がわかってるぜ感ただよう渾身の笑みだ。
うーんこれ私はどう答えりゃ良いんだ?
ウォッカはウォッカで、部下のことを思う兄貴かっけー!とでも言いたげにぱあっと顔を明るくしている。
コントかよ。
ウォッカが停滞する空気に気づいてゴホンと咳払いをした。
「ともかく、これで役割はわかっただろ。残りのキールは俺の補佐で潜水艦内で待機だ。ベルモットとバーボンは頼んだぜ」
「了解。最悪見られても目撃生存者をゼロにすればいいんですから、楽なものですよ」
「まったく頼もしいぜ!だが極力殺しは無しにしろよ、後が面倒だからな」
「ははは、冗談ですよ。そうなれば警察組織も本腰入れてきて鬱陶しいことになりそうですし、スマートな任務を心がけます」
私がニコッと笑えばピンガが横で唾を吐き捨てた。
何でこうも嫌われてるんだ私は。
いや、彼が私のわざとらしい良い子ちゃんぶりを忌々しく思っているのはわかっているけれども!
今更彼相手にだけキャラ変なんて出来ないから仕方ないんだよなぁ。
あ、この場合の良い子ちゃんとは、組織における良い子の定義を参照することとする。
具体的にはよく殺し、よく言うことを聞き、よく悪事を働く子のことを指す。
と、その時私のスマホに着信があった。
ウォッカが意外そうな目で私を見ている。
私がスマホをマナーモードにし忘れたのを意外に思ったらしい。
気が緩んできてるのは確かなので少しだけ反省。
「あ、すみません。切りますのでどうぞおかまいなく」
「こんな時間にどうしたよ。もう夜中だぜ?」
「アメリカの雑誌企画で僕の彫刻が取り上げられることになってまして。その打ち合わせの連絡だと思います」
「ああ、アメリカってなると向こうは朝か」
とある情報誌で狐の彫刻師特集が組まれるということで、不二子さんを通じて私に取材の予定が入っているのだ。
取材とはいえいつも通り顔出しはNG。
チベットスナギツネのマスクを被ったままの撮影になる。
取材用にその場での彫刻披露も予定していて、その様子は動画として撮影されて雑誌社の公式HPにアップされる予定らしい。
「石ころなんざ切り刻んでる姿をありがたがってるやつの気がしれねぇな。お前は肉を切り裂いてこそだ。なぁ、ウルフドッグ?」
「肉の方が流動性に富んでますしね。斬ってて味わい深いのはそうかもしれません」
「は、今回はおとなしい任務が多いが、次は思う存分暴れられる任務を用意しておく。楽しみにしておけ」
まことに上機嫌らしくジンは凶悪極まりない笑みを浮かべている。
無限に機嫌が良くなってくなこの人も。
対して面白くなさそうな顔をするのはピンガ。興味なさそうなキャンティとコルン。
そして先ほどから黙ったままのキールは先日の任務で負った肩の怪我を押さえながら、眉間に皺を刻んでいる。
この場で何かを言うつもりはないようだ。
ただ鋭い視線だけが私を貫いている。
とまあ。
そんなこんなで場はぐだぐだと解散になった。
ベルモットは帰りは予定があるようで、ジンと共にドイツのアマガエルに乗って帰って行った。
キャンティとコルンは連れ立ってダッジ・バイパーに乗り、他の面々も次々解散。私は一人残された。
夜はもうとっぷりと更けている。
計画の決行は明後日の10時。
私はコナンくんに連絡するかしないか若干逡巡してから、スマホをポケットにしまったのであった。
・ジンニキ
愛犬家。基本的に機嫌がいい。
ウルフドッグのためなら頑張って良い任務を用意する。
・ピンガ
アンチ。
バーボンのSNSアカウントを見つけたら荒らしてやろうと思っている。