バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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三倍界王拳!!!


黒鉄の魚影③

 

 時刻は午前1時。八丈島にあるホテルにやって参りました。

 

 メンバーは私、ウォッカ、ピンガの3人である。

 気の乗らないベルモットとキールに代わり、私が一応応援のため来たという感じだ。

 役割分担としては、すぐにでも発車できるよう車で待つウォッカ、そして実働担当のピンガ、その護衛の私という形だ。

 

 念の為キャンティもはるばる欧州から来てくれて、狙撃で援護してくれるらしい。

 人一人攫うのにここまで幹部尽くしは逆に珍しいぐらいの豪華さである。

 

 なお、顔見知りの私が蘭ちゃんに顔を見られるといけないので、軽く変装済みだ。

 

 静まり返ったホテルの受付を通り過ぎ、廊下を淡々と渡って部屋の前へ。

 その匂い立つような組織の気配を感じて扉を開け逃げようとした灰原さんは、その前に立つ私と対面し愕然とした表情をしたようだった。

 

「っ、」

「おやすみなさい、シェリー」

 

 何か言う前に素早く手刀で意識を落とし、灰原さんをピンガへと優しく渡す。

 ピンガはチッと鋭く舌打ちした。

 

「俺がやるっつってんだろ。でしゃばるんじゃねぇよ犬っころ」

「仕方ないでしょう今のは。それにしてもタイミングが良かったですね、ピッキングに時間をかけなくて済みました」

「……俺らを察知して逃げようとしてたのかは分からねぇが、何にせよ運のないガキだ」

 

 灰原さんを雑に俵抱きにするピンガにちょっとばかり眉を顰めつつ、元来た通路を辿ってホテルの外へ。

 実にスムーズな任務だ。

 とはいえ、おそらくコナン君も灰原さんが倒れる音や私達の会話を探偵バッジ越しに聞いていただろう。

 

 そのままホテルを出て大型の4WDに乗り込もうとすれば───上から、硬くみなぎった闘志が降ってきた。

 

 果たしてそれは、二階から私の脳天に踵落としを決めようとしている戦闘民族蘭ちゃんであった。

 軽く右手を上げて彼女のふくらはぎを掴み、渾身のかかと落としを軽く受け流す。

 蘭ちゃんはわずかに目を見開いた。

 

 続けて私の掴んでいる点を軸にした見事な回し蹴りが私の側頭部に迫る。

 これもやや首を傾げることで回避。

 掴んだ右手でもって蘭ちゃんを隣の乗用車めがけて投げ飛ばせば、彼女はぐるりと体を反転させて軽業師のように着地した。

 

 そして勢いをそのままにボンネットを踏み込み、体当たりじみた右ストレート。

 

 拳の右側面を打ち払い、蘭ちゃんのボディ前面へと回り込む。

 「しまっ……!」と蘭ちゃんが失策を悟って身を固くした。

 

 できるだけ全力で手加減した左フックを腹に一発。

 彼女は私の腰を弱く蹴ることで咄嗟に後ろへ飛び、その拳を最大限弱めてみせた。

 

 咳き込みながら大きく後ろへ後退し、蘭ちゃんは油断なくもう一度私を見据えた。

 

 ……本当に困ったな。

 

 半端に実力者ゆえ、手加減して仕留めることができない。

 だがあまり力を入れすぎれば後遺症が残りかねないとなると、私ではどうしようもない。

 

 向こうは向こうで私が手加減に手加減を重ねていることは重々承知なのだろう。

 愕然とこちらを見据えて息を荒らげている。

 

 と、そこでコナン君が走り寄ってくる気配を察知する。

 こちらへ向く銃弾の如き鋭い殺気の方向性を思えば、蘭ちゃんがキャンティに狙われているのだろう。 

 

 丁度いい、と私は待ちの姿勢で構えを解いた。

 

 どすん、と。

 目の前でコナン君がタックルするように蘭ちゃんを押し倒す。

 銃弾は蘭ちゃんを掠めるようにアスファルトを抉り、角度の関係で偶然こちらへ跳弾してきたので───斬鉄爪で軽く打ち払う。

 

 コナン君が目を見開いた。

 

 その隙を狙い、私もピンガとウォッカの乗り込む4WDのボンネットの上へと素早く乗り上がった。

 ピンガが「はぁ!?!?」とドスの利いた声で叫んだ。

 

「早く車を出してください」

「いやお前、普通に乗れよ!?振り落とされんぞ!」

「ここの方が状況に対応しやすいんですよ。ルパン一味の石川五エ門だってよくここに乗ってるの見ませんか?いいから早く、ウォッカ」

「お、おう!」

 

 車は急発進。

 私は車の上で片膝立ちになりながらコナン君の動向を注視した。

 追ってきたのは阿笠博士の黄色いビートルだ。

 

 古い車だと言うのにバリバリの現役どころかカーチェイスまでするその姿は若干の感動を禁じ得ない。

 

 でも飛び道具がないのでそれだけだ。

 あそこからサブマシンガンの一つや二つ撃たれたら私の出番が始まるのだが、そんなものあるはずもなく。

 ただ単にいつもの癖で車の上で待機してしまっただけの図である。

 

 恥ずかしさに居た堪れない気持ちになりながらも、「大勢としては判断に間違いはないから!」と自分を鼓舞する。

 

 ウォッカが上の私に向けて車の窓を開けて叫んだ。

 

「森の中を突っ切る!振り落とされんなよ!」

「大丈夫、あなたは気にせず運転に専念してください」

 

 ここらで阿笠博士にはひと足先に脱落してもらうとするか。

 

 折りたたみ式の巨大なブーメラン状の武器を取り出し、私は4WDの上で構えた。

 狙うはタイヤ。

 これ以上の博士の深入りを避けさせるため、パンクさせて安全に脱落させる心づもりだ。

 

「………、シッ!」

 

 思い切り刃のついたブーメランを投げれば、それは太い木々を薙ぎ払いながらビートルの右前輪をわずかに切りつけた。

 うん、狙い通り。

 

 タイヤを取られた阿笠博士の車はよろめきながらも木々にぶつかることなく停車することができたようだった。

 遠くなっていく黄色い車体にホッとひと息つくと、後部座席のピンガが窓越しに私に向かって叫んできた。

 

「何なんだよさっきから!あの黄色い車のジジイといいお前と互角の化け物女といい!」

「知りませんよ。でもようやく撒けたようで良かったです。これから潜水艦の方に逃げるんでしょう、ピンガの方は少女の潜水用具の準備をお願いします」

「テメーに指図される謂れはねぇよ!」

 

 追ってくるコナン君のことを考えると憂鬱な気持ちになりながら、私は師匠を見習って車の上で胡座をかいた。

 




・蘭ちゃん
戦慄している。
「……あの人、全然本気じゃなかった…!」
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