バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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黒鉄の魚影④

 

 無事に灰原さんを攫う任務は完了した。

 

 潜水艦の中の人員が今どこにいるのか気配察知で細かく把握しながら、位置取りを決める。

 ここなら変な横槍も入らないだろう。

 

 コナン君から鬼電がかかってきていたので戯れに出れば、「どういうつもりだバーボン!」と怒号が響いた。

 そんなの任務以外に無いでしょうに。

 

「灰原哀が宮野志保だとバレたんだよ。コナン君も分かっている通り、老若認証でね」

『!!じゃあやっぱり幼児化もバレて…』

「それはまだ保留っぽいかな。組織も半信半疑なんだ、幼児化なんてファンタジー」

『お前が言うか……?』

 

 マジトーンでコナン君が突っ込んだが無視。

 別に触手が出る人間がいたって構わないだろ!!

 

「まぁ、最悪の展開になる前に僕が何とかするからいいよ」

『……どうするつもりだ?俺の正体がバレるのは時間の問題だし、あんただって調べられれば公安に所属していたことが明るみに出ちまうはずだ』

「情報を握ってる人間を全員消して適当に逃げ───冗談冗談。それじゃ組織壊滅という僕の目標も果たせなくなっちゃうからね」

 

 コナン君が電話の向こうで絶句したのが分かったので前言撤回。

 これもまた本気ではあったのだが、それは表に出さないこととする。

 コナン君は奥歯をやや噛み締めたようだった。

 

『冗談でもんなこと言うんじゃねーよ。分かったな』

「了解。でも状況が最悪なのは変わらない。幸いなことにベルモットもある意味立場は同じだから、老若認証の信憑性を失墜させることには協力してくれそうだ」

『そうか、アイツもジョディ先生の目撃証言がある通り、老化の無い身……それがバレるのは好ましくないってわけか!』

「それに組織のボスも、現在組織員に対してすら身を隠しているところだ。そのために同様の薬を使っている可能性もある。老若認証の精度は頭が痛い問題だろう」

『!!!』

 

 コナン君は驚愕に息を呑んだ後、「……おい、それ俺に言っていい情報か?」と呆れたように言った。

 

「僕はノーガード主義なんでね。こんなのどうせ僕の憶測だし、気にしなくていいよ」

『安室さんさぁ……それ降谷さんに言っていいか聞いた?』

 

 隣の降谷さんを見れば、深層心理内で大きなため息をついて首を振っているところだった。

 なぜ。

 

「───こいつの口の軽さはもうどうしようもない。どうせ、安室自身が未来を知った上で喋ってもいいと判断したんだ。それを信じるだけさ」

『降谷さんも苦労してるね…』

「君にも苦労してるぞ、死神少年。何故いつもピンポイントで渦中にいるんだ。今回だって何故かパシフィック・ブイにいるし。何かの呪いなのか?」

『それを僕に聞かれても』

 

 コナン君は地味にすっとぼけた。

 とりあえず灰原さんの様子を見る、ということを約束して電話を切る。

 

 彼も灰原さんが無事なことを確認して少しホッとしているようだった。

 

 

 

 

 

 直美・アルジェントの目が覚めたということで、協力させるよう脅しかける作業の開始である。

 

 主担当はウォッカのはずだったが、急遽別の任務が入ったらしくバタバタと慌てて潜水艦を後にした。

 なので後続として私が指名されたのだが、そこでもウォッカの世話焼きな性質が炸裂した。

 

「いいか、あの女が多少反抗的でも腹を掻っ捌くことのないようにな。オメェなら心配ないとは思うが、大まかな台本も用意しといた。使ってくれ」

 

 そう言って脅しかけのFAQみたいな資料を手渡してくる。

 どうやら直前に急いで書き上げたものらしい。

 手書きのそれは几帳面な字でとても読みやすい。

 

「いつも助かります、ウォッカ。大丈夫、きちんと彼女から色好い返事を引き出させてみせます」

「おお!頼むぜバーボン!っと、俺はもう行かなきゃなんねぇ。キールは指示待ち女だが、よく言い聞かせりゃ小間使い程度にはなる。上手く使えよ」

「はい。任せてください」

 

 にっこり笑い、肩をバンバン叩いてウォッカは去っていった。

 相変わらずオカンの概念みたいに気の利く男である。

 

 現在、艦内の幹部は私とキールのみ。

 

 キールが直美・アルジェントをモニターのある部屋に連れてきていた。

 もう準備は整っていると言うことなのだろう。

 

 私が部屋に入れば、直美以下二人の視線が私に突き刺さる。

 

 ウォッカから先ほど渡されたインカムからは「いつでも行けるよ」とキャンティの声が聞こえてくる。

 

 私はモニターの電源を入れ、直美・アルジェントに歩み寄った。

 

「ごきげんよう。直美・アルジェント。初めまして、バーボンといいます」

「………」

「単刀直入に言えば、貴方には組織のため老若認証を改修・改善する技術者として働いてほしいと思っています」

「さっきから言ってる通り、断るわ。貴方達に老若認証は渡さない」

「……困りましたねぇ」

 

 私は首を傾げ、彼女にモニターが見えるように一歩脇に退いた。

 

「今、このモニターに映っているのはとあるEU評議会議員です。新聞にコーヒー。実に優雅な仕事風景だ」

「っ!父をどうする気?」

「どうするかは貴方が決めるんですよ?気高く信念を貫いて最愛の肉親の無惨な最期を見届けるもよし。愛のもとに現実に妥協するもよし」

 

 私は優雅に嗤って、直美・アルジェントの耳元で囁きかけた。

 

「貴方が、決めるんです」

「……この卑怯者!!私の意思は変わらないわ!」

「ま、それも一つの選択ですよね。僕は貴方の意思を尊重しますよ」

 

 ぱんぱん、と手を叩く。

 あらかじめキャンティに伝えておいた合図だ。

 

 私は無駄を好まない。

 あとちょっとで撃たれると分かっていても直美・アルジェントが意思を曲げないことをわかっているので、この辺は巻きでいくつもりだった。

 

 ゆっくりしている議員に、あっけなく銃弾が撃ち込まれる。

 

 音のないモニターの向こうでイタリア系男性であるアルジェント氏が、血飛沫をあげて床へと倒れ伏した。

 血溜まりがホテルの絨毯を赤く染めていく。

 

「い、ぁ………いやぁああああああ!!!」

「おや、何を嘆いているんです?貴方が殺したのに。躊躇いなく引き金を引く姿に僕は感動していたんですよ?」

「違う!私は、父さんの意思を継いでッ!」

「そう、意思を継いで平和のために老若認証を守り切った。貴方の意思だ。貴方が彼を殺したんだ───でしょう?直美・アルジェント」

 

 ぱちぱちぱち、と拍手する。

 白々しい乾いた音がこだまする。

 

「いや、いや、いや……」

「あーあ、貴方のせいでアルジェント氏は死んだんだ。可哀想に。胸を撃たれると、まず呼吸ができなくなるんですよ。激痛と苦しみで地上で溺れるように」

「止めて!……違う、違うの…!」

「ははは。次は誰を殺すんです?貴方の母親あたりいっときます?」

「!!!」

 

 くすくす笑ってわざとらしく革靴の音を響かせながら部屋の中を歩く。

 降谷さんは一言も言葉を発しない。

 ただ黙って、ことの終わりを見ているだけだ。

 

 キールが拳を握りしめる音がやけに耳についた。

 

「止めて!母には手を出さないで!」

「貴方の色好い返事を期待してますよ」

 

 

 それを最後に、1回目の交渉はお開きとなった。

 

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