バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
直美・アルジェントらが逃げ出した後すぐ、ベルモットがジンへと連絡を入れてきた。
漏れ聞こえる声色がやや明るいあたり、原作通り老若認証を潰す許可をあの方から得られたらしい。
ジンが一通りの話を聞いてから電話を切る。
当然、次の任務は老若認証の完全破壊である。
潜水艦は急遽舵を切り、パシフィック・ブイへと向かうこととなった。
私は潜水艦が軌道に乗ったのを確認した後、人気のないところに移動してすぐに電話を回した。
「や、コナン君。シェリーは無事保護できたかい?」
『……安室さん。問題なく、な。けどやりすぎだぜアンタ。直美さんの父親である欧州議員を躊躇いなく殺るなんて』
「流石にあの場面で手心なんて加えられないよ。僕の任務って基本的に録画されてるから」
コナン君が怪訝な声をあげた。
中であった一連の事態については2人から既に聞き取ったらしい。
恐らくは触手の効果で父親も無事だろうが、それについてはまだFBIから連絡をもらってないようだ。
『……録画?組織から疑われてるのか?』
「逆だよ。あまりにも模範的過ぎて若手の研修資料代わりに使われてるからね」
『いやアンタ何やってんだよ!NOCだろ!』
「もうNOCじゃないよ。自称NOCだよ」
『同じだっつの!!』
相変わらずの鋭いツッコミである。
仕方ないだろうに。バレないように完璧に振る舞っていたらジンに気に入られちゃったのだから。
彼がほぼこの組織の実働部隊トップを務めている以上、どうしても私の組織における比重は大きくならざるを得ない。
とはいえ、ジンの趣味もあることは否定しないが。
最近の組織は若手の教育にも力を入れているのだが、私の仕事を映したDVDは、手順が分かりやすくはっきりしていると言うことで概ね好評だ。
武力制圧の動画に関しては「無理」「人間じゃない」「宇宙船を襲うエイリアンの挙動」などと言われているが、それに関しては仕方のないものとする。
私は咳払いして本題に戻った。
「とと、そうだ。本題を忘れるところだった。コナン君、早くパシフィック・ブイから避難するんだ」
『……え、まさかアンタの仕込みが上手くいきすぎたのか?たしかベルモットと組織のボスは老若認証をよく思ってないって…』
「僕は何もしてないよ。そんなことせずとも、組織は老若認証の破壊を決定した。ありがたいことだよ。───俺が公安だった過去もこれで秘密のままとなる。無論、君の正体もだ」
硬い色を纏ったままの降谷さんが代わりに答えた。
先日からなぜかピリピリしたままで、口数も少ない。
つられるようにコナン君の気配も尖ったものに変わっていく。
『そうだな。こっちも安心してるよ。あとの心配はパシフィック・ブイに潜り込んだピンガだけか……誰がピンガかはわかってるから、あとは真実を突きつけるだけだ』
「こっちで処分しておこうか?君にバレている以上、もう奴の失敗は確定しているようなものだし」
『却下だ!』
鋭い口調で叫ぶようにコナンくんは言った。
素朴にコナン君を慮っての発言だったが、彼を傷つけてしまったらしい。
何か不可解な違和感がある。
おかしい。
私はこの手の人の機微に一日の長があるはずだ。
意図してや仕方のない行動でない限り、こうしてひどく相手の心を読み違えることなんて無いのに。
気を抜きすぎているのか?まさか、その程度で意図を読み違えるほど耄碌しているつもりはない。
何故か人が小さク、弱く儚く感じらレるような気がする。
ふー、と細く息を吐いてからコナン君が言葉を搾り出した。
『アンタは手を出すな。俺がなんとかする』
「了解。健闘を祈るよ、コナン君。それと、ピンガはパシフィック・ブイのシステムにバックドアを仕掛けた。もうあの設備は通り抜け放題の蜂の巣だ」
『………今攻められたら一巻の終わり、か。わかった。心するよ』
「ハッキングに遭ってるのにネットを物理的に遮断してシステム総洗いしないなんて酷い怠慢だよね。物理線引っこ抜くのはセキュリティの義務なのに」
『国際的な信用を優先したんだろうが、それで撃沈されてりゃ世話ねぇよな。はぁ……とりあえずことが起こる前にピンガの身柄を押さえることにするか』
その後、軽くコナンくんと今後について相談した後手早く電話を切った。
背後から近付いてくる気配があったからだ。
気配は「ウルフドッグ」と一言言ってこちらを見る。
気配の正体はジンであった。
かなり距離のあるうちから電話を切ったので、私の不審な仕草に気付いた様子はない。
「てめーの失敗について話がある」
「……どのような処罰も受け入れましょう。此度の失敗は僕の責任だ」
「テメーに非はねぇ。だが、面子のために体裁は整える必要がある。俺も気は乗らないが、悪いなウルフドッグ」
本当に心配そうにぽつぽつと後悔するようにジンは言った。
寂しがりの犬をペットホテルに預ける時の飼い主みたいな顔だ。
「直美・アルジェントを殺れ。あの方が必要ないとした以上、奴に生きていてもらっては困る」
「了解しました。今度こそその任務、万全にこなしてみせます」
「奴がサツに匿われている以上、難しい任務になる。心してかかれ」
ジンは力強く命令した。
だが私は内心少々眉間に皺を寄せざるを得なかった。
これは困った事態になった。
急ぎ直美・アルジェントの死亡偽装をせねば、彼女を私が殺すハメになる。
そうなればコナン君からも灰原さんからも顰蹙を買うことになるだろう。
今直美・アルジェントは警視庁で保護されている状況だから、正式な部署に協力を要請するのが確実だろう。
黒田管理官に言って風見さんを動かすのが一番早そうだ。
ジンがその凶悪そうな相貌をさらに凶悪に吊り上げて、私に優しく声をかける。
「心配するな。テメーは優秀だ。この程度で切られることなんざありゃしねぇよ。」
「ジン……」
「テメーほど優秀な猟犬を俺は知らねぇ。組織とてそれぐらい知ってるはずだ」
優しいジンニキが労わるように私の肩に手を置いた。
でも、それはそれとして私は裏切り者なのでパシフィック・ブイ襲撃の件は黒田管理官に伝えるのでそのつもりで。
にっこり笑って、私は「ありがとうございます、ジン」と無邪気そうに笑うふりをしてみせた。
・タタリ様
小さきものが一匹二匹死のうがあまり気にしないタイプ。
目の前で苦悶の声を上げてれば可哀想なので癒すが、所詮戯れである。