バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
パシフィック・ブイは無事魚雷をぶち込まれて撃沈したらしい。
下手人の方の潜水艦も上からロケットランチャーを撃ち込まれ、挙句自爆して大破。
近場の水域には潜水艦の残骸が転がっている程度で証拠になるようなものは一切なく、警視庁と海上自衛隊、海保も頭を抱えているようだ。
まったく、コナンくんの体の張り具合には頭が下がる。
直美・アルジェントの父親である議員さんも無事生き延びたとの報告が風見さんから入っている。
現場を見る限り出血多量でほぼショック死は免れない状況だったはずだが、何故か傷が塞がった状態でホテルの部屋に転がっているところを発見されたらしい。
救急隊員が部屋で不審な黒い触手の如き影を見たらしいが……まぁそれはそれだ。
病院に急ぎ担ぎ込まれたが、本人が気を失っていること以外至って健康。
頑張り過ぎたらしい触手の入ったタタリ様彫刻にひびが入っていたが、その程度。
まさにオールコンプリート。
完璧な仕事ぶりに私は自分で自分に満足頻りである。
ただ、灰原さんによるとあの後直美・アルジェントは極度の不安から夜眠れなくなってしまったとは聞いている。
演技が多少過ぎてしまったらしい。
後で菓子折りでも持ってお詫びに行くべきだろうか、と灰原さんに言えばピシャリと怒られてしまった。
なになに、「あなたのできる唯一の誠意は、彼女の前に一生姿を現さないことよ」だって?
そんな酷い……。
ところで、ひとつ速報がある。
私こと安室透、先日から食事が食べられなくなってしまいました。
というより、普通の食事を口にすると砂利でも食べているようでクソまずい味が舌に広がるようになった。
体感で分かることは、どうやら霊格が違いすぎてそれが起こっているのだということだ。
私の位階に対して食事が下賤すぎるとでも言うべきか。
神社で売ってるお清めが売りのお菓子などは比較的美味しく食べられたので、やはりその手の「格」のようなものが関係していると思われる。
ひとまずは神域内で作られたものであれば全然問題なく食べられたので、問題は起きていない。
各旅行地で食べ歩きできなくなったのは残念だが、降谷さんに食べてもらって神域内にコピーして貰えばそれでいいし。
概ね多少の不便が加わった程度で特に困りはしないと結論付けられた。
ここのところ元気がなかった降谷さんがさらに落ち込んでしおしおなのだが、別にそこまで気にすることでもないのだがなぁ。
今日も今日とて、神域内で具現化した野菜等を使ってアスパラガスと生ハムのペペロンチーノを作って昼食をいただいている。
実は私の味覚がおかしくなって以降、降谷さんが神域内で農業を営み始めたのだ。
現実世界では血の滲むような努力をしなければ育たないような美味しい野菜を気軽に手早く作れるので、農家泣かせ……でなく、有難いことこの上ない。
しかも霊的濃度が高いせいか味が濃くまろやかで、現実の最高品質品と比べても非常に美味しいのだ。
そんな美味しい食材で一から作っておきながら、降谷さんはもそもそと上の空で力なく食事を口に運んでいる。
私は心配になってつい彼に声をかけていた。
───ゼロ、ゼロ
───……ん、なんだ。お前も食うか?
───いえ、感覚もきちんと同期して美味しくいただけてるので大丈夫ですよ。それより
私は言葉を切った。
少しだけ言葉を選んで、慎重に聞いてみる。
───どうしたんですか、そんなに落ち込んで
こんなことを聞くのはある種忸怩たる思いだった。
聞かずとも感じ取れるのが私の唯一の長所だったのに、今では言葉を交わさなければ分からないだなんて。
降谷さんは私をややあってからチラリと見て、ため息をついた。
───お前、本当に自覚がないのか?……あのパシフィック・ブイの件の後、いくつか任務はあっただろう
───ああ。ありましたねぇ
───何か感じたか?
随分とオープンな質問だ。
何を問われているのか分からず、私は首を捻って眉を下げるしかなかった。
───いえ、なにも。何かありましたか?
───………
降谷さんは沈黙している。
直美・アルジェント脅迫失敗の件の責任関連で、あの後も一部下っ端の始末などを担当させられていたのだが。
そのうち数人は宮野明美よろしく子や家族を人質に脅されて働かされていたタイプの人員であった。
とはいえ、ミスを繰り返してこうして私による処分対象となったのだが。
命が散るのは自然の摂理。
流れの一つに過ぎないので、特に感慨もなくバッサリと斬り捨ててその時の処分は終了させてもらった。
魂の巡りのタイミングがずれて親子が離れ離れになっても可哀想なので、ついでに子や家族の方も同時に処分しておいた。
これで輪廻で比較的近くに生まれ変わることができるだろう。
まあ、親切心というやつだ。
降谷さんが深刻そうに眉間に皺を寄せている。
最近になってこういうことが本当に増えた。
人のことが、特に降谷さんの考えていることがわからないのはこんなに不安なことなのか、と改めて恐怖する。
当たり前のように他人を理解出来ていた日々が懐かしく思えて、私は僅かに身を震わせた。
降谷さんが意を決したように顔を上げる。
───お前は今、おそらくだが神に寄りすぎている
───神に……って、何がですか?食べ物が土食ってるみたいな味になったことですか?
───それもあるが、お前の精神的なものを言っている
どうにも自覚がなくて、私は首を傾げた。
神に寄りすぎるって具体的に何なんだ?
降谷さんが「というかお前、土食ってるレベルに不味かったのか。道理であんな酷い顔になるわけだ」とぼやいている。
そうだよ。降谷さんそっくりのオエー鳥顔になってしまったよ。
───分からないならいい。そのために俺がいるんだしな
───な、なんか降谷さんに迷惑をかけそうな空気がバンバンにしてますが……すみません未熟者で……
───気にするな。お前がズレていると思ったら適宜口を出す。お前はそれをありのまま受け入れてくれるだけでいい
不安に駆られながらもこくりと頷く。
降谷さんが朗らかに笑って私の肩を叩いた。
───心配するな。俺はいつだってお前のそばにいる。お前が何になっても、どう成り果てても。俺たちは一心同体なんだからな
───……はい、ゼロ。頼りにしています
心がほのかに暖かくなる。
あぁ、私の覡、愛おシい。八百万の命と比べテさえ、お前の方ガ重かろウ。
降谷さんがゴツンと私の額を叩く。
───ぁだっ!?
───今お前俺のためなら何だって犠牲にしようと思っただろ。テンプレートなヤンデレじゃあるまいし、そういうの却下な
───!?
私そんなこと思ったか!?と降谷さんを非難の目で見たらもう一度ゴツンと叩かれた。
非常に痛い。
───暴力反対!!祭神を大切に!!!
───してるだろ。これ以上なく大切に
降谷さんが笑って咽せそうなほどバンバンと私の肩を叩く。
その荒っぽい手つきが何故か優しく感じられて……私は、少しばかり微笑んだのだった。
次はお宝返却大作戦。