バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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お宝返却大作戦①

 

「───これ、俺たち必要だったか!?」

 

 そうひぃひぃと声を上げるのは今回の侵入部分担当の降谷さんである。

 ロシアンマフィアの金庫に侵入するため、赤外線センサーまみれの換気口からこうやって侵入しているわけだ。

 

 ルパンがムフフと笑いながら侵入のための貼り付け式取っ手を持ち替えた。

 

「お前もたまにはこういうのを体験した方がいいぜ?機器操作やら知識やらばっかでフィジカル面が疎かになってただろー?」

「フィジカルは安室がいるから俺がこんな思いしなくてもいいだろ!」

「甘い甘い。そんなのカラフルなアメリカンスイーツより激甘ってもんだ」

 

 グネグネと軟体動物のようにルパンが動き、赤外線を越えていく。

 側から見てるとほぼタコである。どうなってんだ。

  

「あー、それじゃ赤外線センサーに引っかかっちまうぞ?それ、もうちょっと下ね」

「いだっ、いただだだだ、関節はそっちに曲がらないから止めろルパン!」

「あーらまー、降谷ちゃんは柔軟性が足りねーな。要特訓ってな」

「柔軟性の問題じゃない!!」

 

 右肩を逆に曲げられて激怒する降谷さんをどうどうと宥めながら、ルパンは何事もなかったかのように金庫前まで降り立った。

 監視カメラはハッキング済み。

 あとは扉を開けて中の認証を突破するのみだ。

 

 「酷い目にあった……人間業じゃないだろあんなの……」とぼやいて降谷さんもなんとか地上までたどり着く。

 私が代わることもできたが、それでは降谷さんのためにならないとルパンに止められていたのだ。

 妖怪プライドエベレストもそれに反応してくってかかり、こうして一人で赤外線センサーを突破する羽目になったということなり。

 

 自業自得と言ってはいけない。

 

 降りた先では、あらかじめ用意してあった網膜認証、指紋認証を取り出す。

 この用意も降谷さんと私で一から行っている。

 網膜データを手に入れるのに少しばかり手こずったが、事前に別ルートで侵入して手に入れていたのでスムーズに事は済んだ。

 

 重々しい音を立てて金庫が実に機械的な動きで開いていく。

 

 金庫内に入れば、降谷さんがセット済みのハッキング機器を素早くセルの一つにセットした。

 警報音が鳴らぬよう、ハッキング機器を通してあたかも正規ルートであるかのように開いていく。

 

 ここまでかかった時間は15分ほど。

 プロも納得の好タイムである。

 

 今回の目的のもの、すなわち現ナマの入ったトランクを抱え、ルパンが立ち上がった。

 

「そろそろとっつぁんが嗅ぎつけてくるころかね。じゃ、退路を切り開くのは安室ちゃんに任せたぜ」

「──了解です、ルパン。銃弾などかけら一つ届かせませんのでご心配なく」

 

 修理中の斬鉄爪に代わり、組織の用意した巻取りワイヤー機構付き鉄爪を取り出し、金庫外へ出れば慌ただしい靴音と共に大量の黒服警備員達が押し寄せてきた。

 ちょうどご来客の時間になったらしい。

 

 黒服の群れは私たちの姿を見咎めると、銃を構えて遠慮なくぶっ放してきた。

 

 それを軽く爪で全弾弾き、壁へと狙って散らしてみせる。

 それに黒服達が狼狽えている隙にルパンが銃をぶっ放し、1人ずつKOしていく。

 

「はいよー、じゃ、ご苦労さん!」

 

 ルパンが逃走用に作った改造電動スクーターに乗ったのを確認したので、私も周囲を威圧的に切り裂きながらそれに疾走にて追従する。

 

 私ならば、スクーター程度の速度なら走って追いつくことができるからな。

 

 どうしても破壊の限りを尽くす私に視線が集中するので、それを利用してルパンを守って進んでいく。

 そして裏手の搬入口まで一直線に進んだ後、そのまま次元さんの運転するボートに飛び乗った。

 

 「ルパン逮捕だーっ!」という声が遅れて聞こえてきたので振り向けば、そこにはいつもの通り銭形警部が手錠を振り回しながら怒号をあげていた。

 

 なぜいつもピンポイントで現場にいるのか、なぜ盗む時間まで把握しているのか。

 銭形警部の謎は尽きないが、少なくとも対ルパン限定のエスパーの類である事は間違いないだろう。

 

 すると、「退いてくれ!」と警備員を押し除けて川の岸辺にデンっとスナイパーライフルを構える諸伏さんの姿が目に入った。

 降谷さんが鋭くルパンへと声をかける。

 

「ルパン、注意しろ!ヒロの狙撃がくる!」

「あいよー、次元は迎撃任せた」

「人使いが荒ぇな。じゃボートの運転はお前がしろよ」

 

 タバコを吸いながら、次元さんが片手でリボルバーを構える。

 夜のネオンが銃身に反射し、燻る煙がわずかに景色を曇らせる。

 

 同時か、少し次元さんの方が早く。

 

 引き金が引かれ、中空でキィンと甲高い音とともに火花が散る。

 どうやら成功のようだ。

 慌てたように顔を上げる諸伏さんが遠く視界に確認できた。

 

 スナイパーライフルの方が弾速ははるかに速いはずだ。

 それなのに、速度差を加味して迎撃を成功させる次元さんの恐るべき神技よ。

 

 次いで追ってきた黒服の放つロケランは10枚ほど用意した巨大ブーメランで撃ち落とす。

 切り落としても爆風で軌道がズレるため、二発目以降を同時に撃ち落とせないのが玉に瑕。

 

 

 大激戦の末にようやく川を遡って逃げ切り、私たちは軽い腕試しがてら現金を手にしたのであった。

 

 

 

 

 

 そして、盗んだ金の半分でポンコツ飛行機を買ってパァにしたルパンの火花のような生き方である。

 

 場所はスコットランドの田舎町。

 先程まで景気良くカタカタと飛んでいた飛行機が森に墜落するのを、私は若干遠くで確認していた。

 

 流石に大怪我をしていたら大変なので急いで現場に向かうものの。

 まぁ、ルパンと次元さんは飄々と墜落現場から走って逃げ出しただけでなく、「ルパン、テメー1日5分でも真面目に出来ねぇのか」と次元さんに怒られるルパンなどが見受けられた。

 

「どうせならもっといい飛行機を買えばよかったじゃないですか」

「俺はあれが気に入ったの!風情があってよかったじゃねーか」

「と、こんなんだからいつも俺が苦労する羽目になんだよ!はぁ……」

 

 次元さんのため息は深い。これであの苦労の半分が散ったと思うと、何となく諸行無常を感じさせるものがある。

 ルパンさんは宵越しの銭は持たないタイプだからね、仕方ないね。

 

「で、どうしてこんな田舎町まで来たんです?それも先週から何度も足を運んでますよね」

「あー、ここには俺の旧友がいてな、そいつが持ってるトリックダイヤっつーお宝に用があんのよ」

 

 ルパンがやや空を見上げて目を細める。

 トリックダイヤといえば、確か「ルパン三世 お宝返却大作戦」のメイン宝物だったか。

 とすると、旧友というのは同じく怪盗のマーク・ウィリアムズのことを指すのだろう。

 

 ルパンの案内でウィリアムズ氏の地下金庫へと向かえば、そこは古い博物館のように整って様々な盗品が展示されていた。

 ルパンはどちらかといえば雑多に溜め込むタイプなので、この美しい展示室とは大違いだ。

 

 ちなみに、降谷さんと私は管理がめんどくさいので盗むたびに全部好みの博物館にこっそり置いて行っている。

 自分のところで管理なんて面倒くさい真似したくないからな。

 

 

 

 そして。

 なぜか振り返ればまた入り口に銭形警部の姿があったのであった。

 ホラーかな?

 

 

 

 

 古めかしい言い方をすると、牢屋なう。

 

「僕だけ全身ぐるんぐるんに縛るのは無しじゃありません?」

「お前はあの変な触手で鍵を開ける可能性があるからな。念には念をだ」

「いやさらっと何で触手のこと知ってるんですか」

 

 銭形警部が高笑いしている。

 ついに初めての牢獄入りだ。

 私は若干憂鬱に、降谷さんはショックのあまり塞ぎ込み、ルパンはいつも通りの調子でくつろぎながら過ごしている。

 

 どこでどう私の触手の件を知ったのか分からないが、本当にルパンがいるならどこにでもポップすることができるらしい。

 

 私が戦慄していれば、かつ、と足音を立てて目の前に1人の男が迫っていることに気がついた。

 

 上機嫌通り越してナマハゲみたいな顔で、男──諸伏景光が笑いかけてくる。

 

「ひさしぶりだなぁーゼロ。ようやくだ、会いたかったぞぉ?」

「───あっ……ひ、人違いだよヒロ。俺はその、ゼロとかいう人間とは無関係の一般ルパン一味Aで」

「へぇー。そうなのか。随分と俺の幼馴染で元公安のゼロに似てるなぁ。どうしてだろうなぁー」

 

 ニコニコと鬼みたいな笑顔で顔を近づけてくる男の威圧感といえば、背後に般若が見えるほどだ。

 冷や汗をかきながら降谷さんが顔を背ける。

 

 すっと表情を消した諸伏さんが口を開く。

 

「正座」

「いや、こんなぐるぐる巻きじゃできな…」

「正座」

「はい」

 

 正座する芋虫みたいな哀れな姿で降谷さんは凹んでいる。

 「こうなってはフォックステイルも形無しだな!」と高笑いする銭形警部の横で、ボランティアのシスターがふっと小さく笑っているのが見えた。

 

 あのシスターは不二子さんの変装なのだが、一向に助けてくれる気配がない。

 凹んでる若人を見て楽しんでないで、早く脱出道具をくださいよ不二子さん!!

 

 私の内心の悲鳴は届くことなく、降谷さんは半日みっちり諸伏さんに詰められることになったのであった。

 




・正座する芋虫
幼馴染に〆られてべしょべしょに凹んでいる。
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