バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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お宝返却大作戦③

 

 ルパンによるお宝返却大作戦は無事完了したらしい。

 

 送られてきた返却を証明する写真の最後の一枚を確認して、不二子さんは妖艶に微笑んだ。

 ウィリアムズ氏の財産を代理で管理しているゴーンド弁護士が、写真を見て事務的に頷いた。

 現在のところ、トリックダイヤは彼に預けられているといってもいい状況だ。

 

 美しいスーツ姿で不二子さんは微笑んでいる。

 私にチラリと視線を向けた後、不二子さんが口を開く。

 

「そういえば、頼んでいるタタリ様彫刻の進捗はどう?」

「今やっと400個ほど完成したところです。残り200個。もう見るのも嫌になってきましたよ……」

「そう?なら残念なお知らせだけど」

「まさか追加発注?」

「その通り。追加で500頼むわ。急ぎお願いね」

 

 ちゅっ、と投げキッスをされても嬉しくも何ともない酷い依頼である。

 私はゲンナリとしてため息をついた。

 

 私のタタリ様化現象は一息つけたものの、タタリ様ブーム自体は今もなおとんでもない勢いで拡散している。

 

 特に凄まじいのは、私が狐の彫刻師名義で出している触手入りタタリ様彫刻の売れ行きだ。

 

 噂が噂を呼び、老齢のマフィアのドンやら何処ぞの国会議員やらがこぞって買い求めている。

 またその購入の目的もストレートに富裕層の治療のためもあれば、最近になって政府の研究のための購入も増えている。

 

 米国が政府機関単位で30個も一度に購入したのには目を見開いたものだ。

 

 ニュースの話題だと、治療と偽ってこっそり重症者をタタリ様彫刻で治し、浮いた治療費や設備費を不正に受給していた事件が発覚したばかりだ。

 何処の世界も悪いことを考える人が出るものである。

 

 最新の秘宝、と呼ばれて名高いタタリ様彫刻のため、身を狙われたのも一度ではない。

 

 そしてその流通の鍵を握っている不二子さんにどれだけの金がうなりをあげているかも、私はよく把握していた。

 

「トリックダイヤで得られる金なんて、今の不二子さんからしたら端金でしょう。どうしてこんな危ない橋を渡ろうと思ったんです?」

「あら。金はあればあるほどいいのよ?そして……そうね。私もルパンのことを笑えないとでもいうのかしら」

「刺激が欲しくなった、と」

「それよそれ。守りに入ったらどうも据わりが悪くて。私もまだまだ若いってことね」

「不二子さんはいつだって若く美しい。その代償に血が危険を欲するのならば、それは仕方のないことでしょうね」

「あらお上手」

 

 不二子さんは機嫌良さそうにふふふと笑った。

 お互いがお互いのことをよくわかっているため緊張は抜かない。

 しかし、ビジネスライクとしてこれ以上良好なものはないため、ある種リラックスしてことにあたることのできる空気を彼女は気に入っているようだった。

 

 つまり、いつまでもお友達でいましょうね、というやつだ。

 

 と、そこへ一つ剣呑な影が近づいてくるのに私は気がついた。

 ピリピリと伏せた気配に穿つような殺気。かなりの使い手だ。

 

「気配が隣の部屋に近づいています。何者かがこのタイミングを嗅ぎつけたのでしょう」

 

 私はそう言って立ち上がり、鉄爪を取り出した。

 不二子さんもごく小型の拳銃を腰から取り出して構える。

 

「斬りますか?」

「お願い。今トリックダイヤを奪われるわけにはいかないわ」

「承知しました。敵は速やかに切り捨てましょう」

 

 まず先手必勝。

 扉を蹴破って背後から爪を振るえば、その先にいたのは銃を構えた初老の男性であった。

 手には資料の入った袋を持っている。

 

 どうやらゴーンド氏から奪い取ったらしい。

 老いた身とは思えない機敏な動きでバックステップし、爪の一撃をかわしてのける。

 

 腕を私へとまっすぐ向けた瞬間、目にも留まらぬ三発の銃声。

 早撃ちコンマ何秒か、という絶技で私の目と脳幹をピンポイントで狙ってくる。

 

 次元さんに勝るとも劣らない凄まじい銃の腕前だ。

 しかも関節どころか重心と私の動きを読み切って、的確に爪で弾けない位置を狙って補助弾を放つ巧妙さよ。

 

 在野に居ていいレベルの達人じゃないというか、名が知れてないのが圧倒的に可笑しい凄まじさだ。

 

 が、やはりよる年波には勝てないのだろう。

 動きが本人の想定しているものと僅かにずれている。

 目も現役時代より霞んでいるはずだ。狙いが粗く、ブレが生じている。

 

 だから私に負けるのだ。

 

 体を捻って全弾をうまく切り落とし、急いでエレベーターに乗る男の足をエレベーターのドアごとバッサリと切り捨てる。

 

 斬鉄爪じゃないため鉄が切りにくくて仕方がない。

 私はビリビリと痺れる右手を押さえ、倒れ伏す男から角2封筒を取り上げた。

 

「多少血に濡れましたが、封筒に守られていたので問題はないかと」

「ご苦労様、狐ちゃん」

 

 労りの言葉を受けながら封筒の中身を取り出せば、そこには数枚の資料とUSBが入っていた。

 どうやらこのUSBがダイヤの在処を記したデータのようだ。

 

「では、後腐れないよう第三者に奪われる前に早めに見てみるとしましょうか」

「そうね。もうこんなの懲り懲りだもの。早いところダイヤを手に入れましょう」

 

 持っていたPCを開いて差し込めば、自動的に動画は再生され始めた。

 

 原作通りに用意周到なウィリアムズ氏はルパンにしか分からない問題を仕掛けていたらしく、唐突に安っぽく編集されたTV番組みたいな三択問題が始まった。

 「……ねぇ、わかる?」と不安そうな不二子さんに聞かれたものの、原作を知る私には容易いことだ。

 

「分かりませんが、勘でいくなら3番ですね。ライバルの怪盗とトイレットペーパーを奪い合うとか、稚気を含んだ感じが実にルパンって雰囲気じゃないですか?」

「うぅん……貴方の勘に任せるわ」

 

 お手上げ、と言った感じで不二子さんは息をついた。

 男って何で皆こうなの、という呆れを含んでいるようにも聞こえる。

 

 いいじゃないか、トイレットペーパーをどちらが先に盗めるか勝負。男子小学生の夏休みみたいで。

 

 果たして、その回答は正解であった。

 ウィリアムズ氏も3択ということで当てずっぽうでクリアされることぐらいは考慮に入れていたのだろう。

 

 トリックダイヤの在処は「俺の愛しい人の娘の家」にあること、そしてそれをサグラダファミリアのてっぺんに嵌め込むとすごいお宝が見られるということを伝えて終了したのだった。

 これまた私ならばわかるものの、本来ルパンでしか分からない内容である。

 

「どうします?このまま売っぱらってもいいですけど、どうせなら見ていきません?マーク・ウィリアムズが知るというガウディのお宝……危険を冒す価値があると思いませんか?」

 

 彼女の意を汲んでニヤリと微笑めば、彼女もまた女盗賊の顔で同じように微笑んでみせた。

 

「わかるの?トリックダイヤの場所」

「その前にルパンと合流しましょうか。これまでのウィリアムズ氏の用意周到さを思えば、彼がおそらく先に見つけてると思うので」

「………それはそうね。なら、ルパンに会うのが先決。頼んだわよ狐ちゃん」

「お任せください」

 

 ふっとイタズラげに笑い合って、私たちはゴーンド氏の事務所を後にしたのだった。

 




・タタリ様彫刻
世間では「その出来栄えにこそ神の力が宿るのでは?」と考察される緻密かつ見事な彫刻。
彫刻の複製のために何千何万という会社や個人が鎬を削っているが、未だ治療効果を再現できたものは存在しない。
研究も盛んに行われ、その万能さに医療界が絶句している模様。
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