バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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お宝返却大作戦④

 

 朝日の下に光り輝くサグラダ・ファミリアが、トリックダイヤの溜め込んだ光でもって町中に音楽を響かせている。

 

「いいですね。目の保養になります。あー、なんか彫刻で新しいモチーフに挑戦してみましょうか」

「いいけれど、その前にきっちり納品は済ませてちょうだいね」

「………どうせもう僕の作品のクオリティなんて誰も求めてはいないんですから、適当に彫っちゃ駄目ですかね」

「論外よ。神は細部に宿るんじゃなかったの?」

 

 最近の私の作品なんて、ほぼタタリ様の付属品だ。

 せっかく私が細部の細部まで作り込んだ彫刻も、研究機関によって粉々に粉砕されて分析器にかけられる始末。

 

 そして投げ出された野良触手がベソをかきながら海を超え、はるばる私のところにショボショボと戻ってくるのだ。

 許さんぞスタンフォード大学め。触手が可哀想だとは思わんのか。

 

 と、そんな感じで閑話休題。

 

 ルパンと合流してから、私達は静かなサグラダファミリアの朝にトリックダイヤの設置を行った。

 事前にロシアンマフィア側の戦力も削いであったため銃撃戦もほとんど起こらず、呆気ないほど静かに私達の計画は成った。

 

 町中を光らせ、音を奏でるガウディの仕掛けへと魅入っていれば、その5分ほどしかない歴史上唯一無二のショーは静かに幕を下ろしていく。

 まるで一時の夢のような仕掛けだ。

 この余韻だけで、ガウディという人物がどれほどの才覚を持つ天性の芸術家かというのがわかるというもの。

 

 私は街に沈黙が訪れてなお、しばらくの間そのカーテンコールの喧騒にすら聞き惚れていた。

 

 不二子さんがするりと前に出て、私達のいるサグラダ・ファミリア最上階のダイヤをおもむろにスポっと取り外した

 

「じゃ、ダイヤは回収して、と」

「あー、ちょっと、不二子ちゃん?」

 

 ルパンが焦ったようにそれを止めようとするが、不二子さんは軽くダイヤに口付けして微笑むのみ。

 

「なんでも、これって降ってきた宇宙船の破片をカッティングして作ったそうじゃない。これで彫刻を作ったら良さそうじゃない?」

「……い、いや、ガウディの作品を毀損なんてそんな罰当たりなこと私にはできませんよ」

「もうガウディの仕掛けは終わったじゃない。あとはただの宝石として奪い合われるだけの定めのものに、貴方が新しい命を吹き込むの」

 

 不二子さんが私を睨んだ。決意は固そうだ。

 

 どうせこのまま彫らないままでいても不二子さんの手で何処ぞへと安値で卸されるだけなので、ここはガウディに謝り倒すつもりでカッティングするしかあるまい。

 仕方ないなぁ、と私はため息をついた。

 

 斬鉄爪の壊れて外れていた刃の一本を懐から取り出し、トリックダイヤを手のひらに乗せる。

 

───ゼロ

───ああ。さっきスケッチしたサグラダファミリアの図案がある。それで行こうか

 

 神経を集中させる。こればっかりは失敗が許されない全身全霊。

 緊張に汗が一筋、頬を伝う。

 

「シッ…………と、よし。金属並みに硬いですねトリックダイヤ。お陰で細かいところも彫りやすかったですが」

「できたの?」

「ええ。あとは細かい切り屑を払えば……うん。完成です」

 

 先ほど見たサグラダファミリアの完成形を緻密に再現した美しい逸品だ。

 加えてカッティングの具合で内側に光を溜め込む性質を使い、内部にオルゴールのような機構を持たせてある。

 

 まぁ、このオルゴール機構に関しては偶然……というより、サグラダファミリアに細部まで似せたら自然とそうなったものではあるが。

 摩訶不思議なこともあるものである。

 

 朝日にかざせば、溜め込んだ日の光を動力に彫刻から心地いい音楽が流れ出す。

 光が輪郭をかたどるように筋を残し、サグラダ・ファミリアの神聖さを際立たせる。

 

 ひゅう、とルパンが口笛を吹いた。

 

「凄ぇ……こりゃあのガウディの光の宝を再現する小さなアルバムだな。俺様盗みたくなっちまうかも!」

「うーん、180億からというところかしら。唯一無二のトリックダイヤにて奇跡の朝を再現した至宝。いいわね、素敵よ狐ちゃん」

「やだなー、不二子ちゃんてば。こういうのは俺たちだけでこっそり静かに楽しむのが筋ってもんじゃねーの?」

「冗談。これはあたしのなの」

 

 残念そうなルパンを尻目に、ホクホク顔の不二子さんがご満悦の様子でサグラダ・ファミリアの彫刻を持ち上げた。

 

 さしてそれに興味がなさそうな五エ門師匠が、私が持ったままの彫刻用にとってあった斬鉄爪の一本を見据えて口を開いた。

 

「安室。斬鉄爪の修理がそろそろ完了する。残りの爪片を渡せ」

「ありがとうございます師匠。やはり己の得物の大切さは失って気付きますね」

「お主もまだまだ未熟。修行を欠かすなよ」

「はい、精進します」

 

 斬鉄爪の一本を手渡せば、師匠はそれを丁寧に……筒状のこんにゃくへINしてジップロックに入れ、懐にしまった。

 

「コンニャク!?えっ、師匠今懐からどでかいこんにゃくを取り出しませんでした!?」

「これが一番怪我をしないのでな。お主も緊急のために一つぐらい持っておくといい」

「えぇ……いやかなり合理的なのはわかりますが」

 

 ちょっと想定外過ぎる保管方法に私は驚愕して目を瞬かせるしか無かった。

 それと同時に、今後のために修理方法を聞くのもいいかもしれないと思うなどする。

 

 私達はそんなこんなで帰途につく。

 ガウディのお宝はバルセロナの街の人に忘れえぬ芸術を見せつけて、日常へと溶けて消えた。

 

 私達も、そのような芸術をいつか作りたいものだ。

 

 そう降谷さんと頷きあって、今回の任務は完了なのである。

 




・サグラダファミリアの彫刻
宇宙船の破片から彫り出され、光でもって音楽を奏でる神秘の一品。
ガウディをリスペクトした作品と言われており、「11/1の奇跡」と謳われるバルセロナでの異変を美しく再現している。
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