バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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米国国防長官とお食事会

 

 本日は、米軍の国防長官に呼ばれてディナーである。

 

 場所はニューヨークの街を見下ろすビル最上階のレストラン。

 都市の喧騒が見下ろせるそこは絶景で、上から下までピシリと決めたウェイターが優雅に料理を運んでゆく。

 

 注がれるワインももちろん一級品。

 ミシュランに名を連ねるシェフが腕によりをかけたフルコースが運ばれてきて、私の舌を存分に楽しませる。

 料理界の石川五ェ門というか、齧っただけの私や降谷さんでは足元にも及ばないどこまでも深く丁寧な味だ。

 やはりどの界隈でも高みはいるものだ。

 

 感心しながらもぐもぐと頬張っていると、目の前の長官が徐に話を切り出した。

 

「やはり前向きな返答はもらえないかね」

「申し訳ありません、長官。ですが、今後とも良い関係を築いていけたらと思っています」

「そうだな。君の能力は素晴らしい。この間の中東での任務も素晴らしかった」

 

 長官は後ろになでつけた髪を気にしながら鷹揚に笑った。

 

 前回の任務は某武装勢力にてトップに立つ人物の暗殺だった。

 最近アジトの位置を把握したらしいのだが、大病院の地下に篭って手出しができない状態だったらしい。

 まさに人の盾、これを突破して無理に仕掛ければアメリカが非難にさらされかねないという状況だ。

 

 そこで私に任されたのが暗殺であった。

 

 件の大病院へと赴き、秘密裏にトップと周囲の幹部陣のみを暗殺すると言う難行を、私はきちんとこなしきった。

 気配の感知もままならない雑魚ばかりだったので楽なものだ。

 

 一応任務のために米軍で使われる最新機器を貸し出してもらったが、ほとんど使わずじまいだったからな。

 

 まぁ、これに関してはどうも私の動きや戦闘方法の研究も兼ねているようで、貸し出された装備からは無数の通信電波が発せられていた。

 私もタダで最新のテクノロジーを深層心理にコピーできるのでそこはトントンというところか。

 

 長官も実に人が悪いが、そのぐらいでなければ権力と悪意の渦巻く組織のトップには立てないのだろう。

 

 運ばれてきた乳飲み子牛のグリエを一口大に切った後、長官はこちらをまっすぐに見上げる。

 

「それで、『TATARI』の彫刻の方は納品できそうかね?」

「はい。50、試しに触手を多く入れたものをお渡しさせていただきます。単純に効果が二倍、とはいかないでしょうが…違いはまだはっきりしておりません」

「協力感謝するよ。効果はこちらで検証させてもらうとしよう」

 

 実は、タタリ様の本体が私であることは既に米国にはバレている。

 あのマモーの一件で米軍による最新のドローン兵器が私たちをとらえていたこと、タタリ出現後すぐに空軍の調査が入ったことで発覚してしまったのだ。

 

 もし事が公になれば、各国組織がそれこそハチの巣を突いたような騒ぎで私を捕えようとするだろう。

 ……まぁ、ルパン一味の通常運転と言われればそのとおりなのだが。

 

 面倒なのには違いないので、黙っていてもらう代わりにこうして多少の融通を利かせる関係となったのだ。

 

 向こうも私の力を警戒しているのか、意外なほど慎ましやかに対応してきている。

 満足そうに一口、柔らかく肉汁たっぷりのグリエを頬張ってから長官は頷いた。

 

「うむ。君と我が米国が組めば、同盟国たる日本の安全も必ずや守られるだろう。特に、この『TATARI』の力があれば、後方の医療的負担をグッと減らせる。それだけではない」

「……」

「世界各地の富の流れを手中に収めることができるのだ。健康と長寿、そんな人類の夢がちっぽけな彫刻の中に詰まっているとあらば、我々の幸運は疑いようもない」

「そうですね。いまや世界は神秘とオカルトに夢中と言っても過言ではありませんからね」

 

 タタリ様彫刻の効能はもはや広く人口に膾炙していると言って良い。

 

 それと同時に万能の魔法薬を前に問題点もだんだんと浮かび上がってきた。

 当たり前に富豪達が独占して医療格差が広がる事を懸念する声も大きい。

 医療の衰退、とくに貧しい人々に必要な医療の不足をもたらすのではないかとWHOから公式な発表もあった。

 

 五億という金は法外ではないが、一般人が努力して得られる額というわけでもない。

 富の格差が激しく無惨に死んでいく貧しい人々をよそに富裕層ばかりが病とは無縁とあらば、不満が噴出しても仕方あるまい。

 また、オカルトのみに頼り切って既存の医療ノウハウが失われていく懸念も医師達によって根強く訴えられている。

 

 万能薬も良いばかりではないという事だ。

 

 逆に高度医療の分野ではこれまで不治の病だった何百何千という病が治療可能のものになると、研究者が次々と旗を振ってその効果の究明に名乗りをあげている側面もある。

 ガン、遺伝病、各種神経難病から生活習慣病まで。

 

 それはまさに「現実を書き換えた」としか思えないメチャクチャさで治療をする触手の効能。

 

 これがもし科学によって再現可能となれば、人類の歴史はまた一歩大きく前進することだろう。

 そういう意味で、私は降谷さんとも相談して現状を静観しているのであった。

 

 力強く拳を握り、滔々と演説した長官は感極まったように震えてみせた。

 

 なお、不二子さんもこれを機に立場を拡大せんと国防長官に擦り寄っている模様。

 本当に強かだよね、不二子さん。

 

「ですが、あまり事を急ぎ過ぎぬように。タタリの力は神罰の力。一神教になぞらえて言うなら、代償の付き纏う悪魔の力だ。今、貴方は悪魔と契約しているという事をお忘れなく」

「………わかっているとも。私が悪魔に魂を売る程度で米国がこの世の頂点に立ち続けられるのなら、価値は十分にあろうというものだ」

 

 冷や汗の中に確かな信念をもって、長官は眦を強くした。

 この人もアクは強いが愛国心溢れる人なんだよな。

 ちょっと日本的価値観とは相容れないんだけど。

 

「今や世界は混迷の時期へと近づいてきている。米国はかつての権勢を失い、大企業が我が物顔で支配者面をしているのだからな」

「メガコープ、古い言い方だとGAFAとなりますか」

「……そうだ。神は終末の日に私を罰するだろう。だが、その前に米国が滅びては意味がないのだ。救世主の来るその日まで、米国こそが人々に正義と安寧をもたらすのだよ」

「貴方の決意に敬意を表します、長官」

 

 にっこりと笑って私はワインをゆっくりと回した。

 

 斜陽な米国が権勢を取り戻すためにタタリ様を使うなど、神格が強まっていた私ならそれを不敬と断じただろう。

 

 というか、本当ならその役割を日本に任せたかったのだがなぁ。

 現状日本にはそれを維持できるだけの国際的な体力がないので泣く泣く諦めたが。

 どうせ日本に情報を渡しても、政治的に途中で横槍が入ってしまうと思われる。

 

 降谷さんなどギリギリと歯軋りしながら米国にタタリ様彫刻を渡していたものだ。

 

 まぁ、日本に多少の融通を利かせるように米国自体と直接取引すれば良かろう、という考えで妥協したのだ。

 ついでに米国の行き過ぎも見張れるし、これぞ王手飛車取りというやつだ。

 

 

 そんなわけでその後、今後行う予定の幾つかの任務について情報を交換してからその場はお開きとなった。

 

 夜空を見上げ、ホテル1Fでタクシーを待つ間に物思いに耽る。

 またタタリ様の神格が高まるのは時間の問題。

 その前になんとか対抗策を見出さねば、私が私でなくなってしまう。

 

 降谷さんがするりと視線を不安げに這わせ、私に話しかけてきた。

 

───あの魔女だという女子高生に助力を願えないのか?俺たちの知ってるオカルト担当というと彼女ぐらいしか思い浮かばない

───そうですね。なにか良い手がないか聞いてみましょうか

 

 降谷さんの神域内神宮が完成してから如実に神格の高まりが遅くなったので、まだ多少の猶予はあるはずだ。

 なぜ神宮が神格を抑えられるのかは謎だが……。

 神宮内に入ると肌がビリビリするほどの自身の神性の高まりを感じるので、私に代わり力を溜め込むような性質があるのだとは思っている。

 

───なんにせよ、魔女に対策を聞いてからですね。何度も何度も師匠の手を煩わせるわけにはいきませんので

───だな。俺たちの肉体もボロボロになるし。もうちょっと穏当な手があるとありがたい

 

 どっぷりと日の暮れた外には都市の光が輝いている。

 私は魔女の連絡先を思い浮かべながら、その日一日を思ったのであった。

 




・国防長官
悪魔にせよ宇宙人にせよ、人類の未来すら決定しかねない超技術をこの人外が握っているということに戦慄を覚えている。
自分の対応で世界が変わる、という重圧に胃薬を飲む今日この頃。
無論だが黙っているとは言ったものの大統領を通して然るべき人物には連絡済み。
万が一の時のこの金髪の人外の処分方法を探っている。

・バボ主
長官が死ぬほど警戒していることにも気付いている。
そのうえで、「やれるものならやってみろ」という姿勢。神様度10%。
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