バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
ついに開催の運びとなった日本開催のオリンピック!
……でなくて、WSG(ワールド・スポーツ・ゲームス)。
その協賛企業壮行会に呼ばれた私は、芝浜ビューホテルの大宴会場にやってきていた。
今回は狐の彫刻家として会場に彫刻を提供したので、その関係でのお招きになる。
辺りを見回せば原作よりなんだか随分と物々しい警備だが、これは私が会場にくるということを加味しての警備増加らしい。
なにせ私はかの奇跡の彫刻、タタリ様像の制作者だ。
身柄を押さえたいなんて悪人は万といるし、せめてお近づきになりたいと願う人間はその百倍はいると見ていい。
ホテルのロビーから見える外には、新しく建設されたリニア発着専用駅の芝浜駅。
そしてスポーツをモチーフにした大きな彫刻がのぞいている。
八種の代表スポーツを織り交ぜた写実的で躍動感のある彫刻は大きく優雅だ。
今回は雨風に打たれてもいいように、墓石として知られる御影石──花崗岩を使っている。
10m四方の花崗岩の塊は流石に硬かったが、ついに五エ門師匠の手で復活を遂げた斬鉄爪にかかればなんのその。
無事美しく彫り終えたその場所は、新たな観光名所となることを期待されている。
───しかし、室井ララの顔も軽率に使えなくなったな。これで正式に室井ララは狐の彫刻師の正体だ
───ですね。せっかく使いやすい変装だったのに。それにちゃんとした美人ですし
───女体化した黒目黒髪の俺と言ったところだからな。美人なのは当たり前だ
───自信に漲ってますねー
さて、今回は室井ララ名義なのだが、周囲には園子さんの父親である鈴木財閥会長のほか、各国スポーツに関わるさまざまな有力者が揃っている。
見れば、この場では原作では動画挨拶だけだったはずの国際WSG協会会長のアラン・マッケンジーまでいるではないか。
というか、スポーツにかこつけてむりやりねじ込んできたらしい各界重鎮がウヨウヨいる。
白いお髭のジェントルメン、貴方はOPEC(石油輸出国機構)の会長ですね?スポーツとご関係があるとは知らず、私も勉強不足でした。
……最近サッカー協会の会長に就任したと、成程。
一事が万事こんな感じなので、私としても肩身が狭いばかりである。
降谷さんはと言えば、「俺の相棒だからまぁ、このぐらいはな」とすごく満足そうにしておられる模様。
なんとか人混みを突破して、今回私を招いてくれた鈴木会長へと挨拶に行く。
はたして、鈴木会長の方も世界の重鎮に囲まれて非常に忙しそうではあったが。
私との太いパイプがあるということで、そのパイプ目当てで鈴木財閥に近づいた線もかなりあるのだろう。
国際色豊かな顔ぶれが口を開いて何事か話している。
隙を見て人が捌けた瞬間に、鈴木会長に後ろから声をかけた。
「今回はお招きいただきありがとうございます、鈴木会長」
「おお、君か。構わないよ。こちらこそ世界に名だたる名彫刻家、そしてかの治癒の彫刻の製作者として多忙だろうに、わざわざ御足労感謝するよ」
ふくよかな体をゆらして快活に笑う鈴木会長は人当たりが良さそうだ。
それに観察してみても内面が実にオープンで立場が明快な人であることがわかる。
私と接する目的が、タタリ様という治癒の彫刻が目当てだということは他と変わらない。
しかし、それを隠さず「君はどうするかね?」と優しく問いかけるようなスタンスは話が早くて実に好ましい。
鈴木次郎吉相談役ほどの老獪さは無いが、彼は彼で大財閥の会長を務めるだけのことはあるということなのだろう。
と、瞬間。
バチン、となんらかの電気音。
急な停電にあたりが黒に染まって見える。
私が訓練された暗順応で辺りを見回せば、下手人がスタンガンを振り翳しているのが見えた。
暗闇にまだまだ対応できていない人々の合間を縫って、こちらに近寄ってきていたのだ。
私は静かに犯人の後ろへと回り込む。
確かな加害の証拠を掴むため、あえて鈴木会長が襲われてから片をつけることとする。
鈴木会長に重篤な心臓病の類がないことは知っている。
ならば一度のスタンガンでそう酷いことにはなるまいよ。
バチ、と二度目の電気音。こちらはスタンガンの音だろう。
ほとんど停電の騒ぎに紛れて消えてしまいそうな音だったが、至近距離にいた私にはよく聞こえた。
そうして倒れた鈴木会長を給仕用のワゴンに入れようとしたその時。
ホテルスタッフに扮した下手人を程々に力の入れた回し蹴りにて捉えた。
ごき、と脇腹から肋骨にかけてが折れる異音が足を通して伝わってくる。
横っ腹を蹴り上げられた男はもんどりうって倒れ込んだ。
一発KO、泡を吹いて痙攣する男を見下ろす。
次いで電気が戻る。
白日の元に晒されたのは、リニア開発のチーフエンジニア・井上修が絨毯の上で無惨に伸びている姿であった。
しまったな、うっかりチャートを崩壊させてしまった……。
「室井さん、父を助けてくれて本当にありがとうございます!」
「そんな、構いませんよ。僕も咄嗟のことでしたので」
「いえ、このお礼は必ずさせてください!鈴木財閥を挙げて必ず報いてみせますから!」
涙ぐんだ鈴木園子嬢が鈴木会長にしがみついて叫んだ。
困ったように病室のベッドの上で微笑む鈴木会長だが、顔色の悪さは隠しきれない。
周囲にはコナン君とお馴染み少年探偵団の子供達がわいわいと話に花を咲かせている。
元気そうでなによりだ。
なお、コナン君が「居たんなら言えよ」とでも言いたげな半目でこちらを睨んでいる。
すまんて。
そんな中、扉が開いた先にいたのは目暮警部だ。
病室にやってきた目暮警部は後ろに佐藤刑事と高木刑事を連れて、ふぅと重いため息をついた。
「君が蹴りで伸した井上という男だがね、黙秘を貫いておるそうだ」
「でしょうね。あの暗闇の中では証言者は僕しか居ませんし」
「だが不自然に指紋のついていないスタンガンと、手袋をした井上。そしてあの位置に手袋をしたものは奴しかいなかった点。それらを鑑みれば、犯人が井上であることは明らかだ」
眦を強め燃えるような瞳で断じる目暮警部が帽子の鍔を深く下ろす。
原作の数段上の要人ばかりが集まるこの会場で不手際があったことを関係各所から怒られているのだろう。
高木刑事もしょぼしょぼに顔色が悪いし、佐藤刑事も気配が硬い。
鈴木会長がベッドから身を起こして私へと微笑んだ。
「室井君、せっかくのパーティでこんなことになってすまないね」
「鈴木会長こそお身体を大事にしてください。怪我をされる前にお守りできずすみません」
「いやいや。犯人は私のことをワゴンで連れ去るつもりだったというじゃないか。もし連れ去られていたら命すら無かったかもしれない。ありがとう、君は命の恩人だよ」
鈴木会長は深々と頭を下げた。
私は原作で彼が攫われたとしても無事だということを知っていたが、彼らはそうではない。
彼らの心配を少しでも軽減できて嬉しく思う。
ぴょい、と顔を上げたコナン君が「ねぇ犯人の狙いはなんだったのかな」とかわい子ぶりっ子の声で殺伐とした内容を聞いた。
そして「コラ坊主!」と盛大に毛利探偵のゲンコツを喰らうが、本人としてはなんの反省もしていない模様。
相変わらずの強かさである。
高木刑事がぺらりと資料をめくって代わりに答えた。
「関係があるかはまだ調査中なんだけど、三塚製菓の社長も最近同様に誘拐未遂にあってるんだ。どちらもこのWSGのスポンサーになっているらしくてね」
「………」
考え込むコナン君が顎に手をやっている。
同様の事件が15年前も起こっていたことはまぁ、今は伝える必要はないだろう。
・警察
上にすごく怒られている。
どっかの狐のせいで世界の偉い人見本市みたいな会場だったので、その場での誘拐未遂とか許されない模様。
今は犯人の片割れである井上を締め上げている。