バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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緋色の弾丸③

 

 日本WSG協会のビル前にて、コナン君とぶらぶらしている今現在。

 

 私はぼんやりと会の開催を待っていた。

 

 実は今日が来るまでに結構悩んだのだ。

 私がイベントキャンセルした関係で、園子さんがコナン君達へ真空超電導リニアの体験乗車チケットをプレゼントすることもなくなった。

 

 だから、代わりに私の持つチケットからプレゼントしようと思っていた。

 

 しかし、残念ながら私の持つチケット、これはたぶん狐の彫刻師こと私の関係者を洗い出そうとする各国機関の罠なのだ。

 下手にプレゼントしては、コナン君の住所誕生日好きな食べ物ありとあらゆる情報が丸裸にされてしまう。

 

 それでは困るということで、泣く泣く自粛したのだが……。

 

 試乗会当日、普通に昴さん経由でチケットをもらったコナン君は平然とこの場に出現したのであった。

 なんなら隣に昴さんもいる。似合わない爽やかな笑い方で話しかけても来る。

 

「お久しぶりですね。ご健勝そうでなによりです」

 

 ハイネックで隠した首元から沖矢昴としての声が聞こえてくる。

 幸い季節は冬に入りかけているので暑くはないだろうが、やはり変装は疲れるものだ。

 春夏秋冬365日欠かさず変装を続ける沖矢さんには頭が下がる思いだ。

 

 ただし、深層心理の降谷さんは「FBIはさっさと国に帰れ。シッシッ」とすげない感じだ。

 もはやそういう芸風なのだと思われる。

 

「沖矢さんじゃないですか。もしかして貴方も試乗会チケットを誰かからいただいたんですか?」

「ええ。あいにく用事で壮行会には出られませんでしたが、ブライアン国防長官から代理での出席を頼まれましてね」

「ははは……。もうこれ一昨日の壮行会の延長戦ですよね。顔ぶれ的に」

「ですねぇ。新名古屋駅から芝浜駅までの25分間、あなたの隣はどなたが座る予定なんです?」

 

 楽しそうに聞いてくる昴さんに、コナン君がゲンナリした顔をしている。

 まさに今この場は高度な政治戦が行われている真っ最中だ。

 実際あちこちから一言も聞き漏らすまいと視線が突き刺さり、ICレコーダーが起動し、隠しカメラはあちこちに設置されている。

 

 私はため息をついて昴さんの質問に答えた。

 

「現アメリカ大統領のバーンズ氏です。IOC理事会員も兼任されてるみたいですね。……もうめちゃくちゃですよ。どんだけ僕の隣に座りたいんですか」

「25分間も行方も掴めず正体不明の君とサシで話ができるんだ。それは何にも代え難いアドバンテージだろうさ」

 

 ようやく会が始まったのだろう。

 前でスーツ姿の女性が1人で自己紹介している。

 白鳩舞子、つまりは原作緋色の弾丸にて犯人だった二人組のうちの1人だ。

 井上の方は警察に結局釈放してはもらえなかったらしい。

 

 こんな世界の要人の入れ食いみたいな場所で凶行を働いたのだから当然か。

 日本警察は赤っ恥をかかされた形になるので、簡単には許してもらえないだろう。

 

 その後はぞろぞろと病院にバスで移動して、何の変哲もない健康診断が始まる行程となっている。

 なお、バスにて私の隣は不自然に人で固められていた。

 その上TVで見覚えのある欧州議長に「やぁ、奇遇ですな」と全然奇遇じゃない感じに話しかけられるなどもした。ちくしょう。

 

 10分ほどの移動時間だったが、飛び交う話題は超濃厚。

 今後のEU圏への彫刻の輸出予定や技術提供の有無など政治的な話が渦巻き、静まり返ったバス内で誰もが耳をそば立てている。

 勘弁してくれ。

 

 欧州議長の目がギラついていて怖いので、仕方なく「彫刻の治癒能力は彫刻に宿る霊的な私の力が賄っておりまして」と情報カードを一枚切る。

 「ほう!」と議長がひっくり返った声を上げた!

 ボイスレコーダーを起動しているらしい後ろの人員が集音マイクの感度を上げる様子を見せている。

 

「それでは、像が破壊されると治癒の力が失われる現象についてはあなたの力がなんらかの形で抜け落ちてしまったからですかな?」

「ええ。あくまで彫刻は依代。神の宿る家にすぎませんから」

「なるほど。スピリッツの分野はまだ科学では解明できていない。そちらの方面の解析が先ということか……」

 

 と、そんな感じの話を10分。肩が凝ることこの上ない。

 実はこの分霊の事実を話したのは議長さんが初だ。

 その証拠に、と言って私は議長に新顔、タタリ様ぬいぐるみを手渡した。

 

 最近帰ってきた触手の1匹が「キィキィ(新しいお家が欲しいです!)」と言って止まなかったので、ついでに夜なべして作った一品だ。

 ふわふわでもふもふ。うごうごと触手の意思で勝手に動くナマモノである。

 

 これは愛らしい!といって議長が豪快に笑ったのだが、目が全然笑っていなかった。

 

 バスは尋常じゃない数の警備員に囲まれた道を走り、病院へと入っていく。

 周囲の交通整理も行われており、もはや次はないと言った万全な警戒体制だ。

 

 さて。

 議長と別れて検査の待合室ではアラン・マッケンジー会長と一緒になった。

 コナン君も近場にいたのは豪運か、何かの死神的運命力か、再び同室となる。

 

 マッケンジー会長にしきりに今後の米国との関係を聞かれながら、一通りの検査を終えて控室へと帰ってくる。

 もう帰りたいと思いつつ、まだリニモ試乗は先なんだよなぁとすっぱい顔になり。

 

 瞬間。

 圧倒的な死の気配が、上から降ってきた。

 

「!?!?まずい、コナン君!逃げるんだ!」

「へ……?」

 

 少し遅れて換気口からクエンチの煙が噴き出してくる。

 

 素早く扉を開けて、コナン君とアランさんの手をとって皆に「こっちです!」と窓のある部屋へと案内する。

 背後でクエンチの煙をまともに吸ったのか、どさどさと床に倒れる音がする。

 幾人かの要人が逃げ切れず初撃で意識を失ったらしい。

 

 私はまだ咳き込んでいる人を先導して叫んだ。

 

「あの窓から外へ!絶対に煙を吸わないで!」

 

 ゲホゲホと一緒に窓から外へ出た人々を置いて、私は再度中へと入る。

 私にとって息を止めるのは得意技だ。

 

 気を失った要人達を抱えて一人一人運び出していれば、ガスマスクを被った警備隊が廊下をかけて10人前後泡を食ったようにやってきた。

 

「大丈夫ですか!?」

「僕とここにいる人たちはなんとか。ですがまだ中に取り残されている人がいます」

「そちらは現在我々で救出中です。あなた方が無事でよかった」

 

 「あれはなんだったんだ?」とマッケンジー会長が冷や汗を流しながらひとりごちた。

 それにコナン君が代わりに答える。

 もちろん流暢な、年に見合わぬ語彙の豊かなクイーンズイングリッシュで。

 

「クエンチ、ってやつみたいだね。知り合いの人に聞いたんだけど、MRIに使われている液体ヘリウムがなんらかの原因で気化しちゃったんだと思う」

「それでは、倒れた原因は窒息だと?」

「たぶんね。普通なら換気設備が作動するはずなのに、それが逆流して僕らのいた部屋にヘリウムが流れ込んでた」

 

 コナン君はまだ煙の漏れ出る病院を見上げて目を鋭く細めた。

 

「室井さんと警備の人の助けがなきゃ、僕たち死んでたよ。間違いなく」

 

 Oh……と喉を締められたような声はマッケンジー会長のものだった。

 

 原作と違い、気を失った後の換気が起動していなかった。

 井上修のシステムを熟知していなかったのかやけになっていたのかはわからない。

 しかし実際問題、犯人──おそらく白鳩舞子は私達をマッケンジー氏ごと殺そうとしたのだ。

 

 「コナン君、無事ですか!?」と別室にいた昴さんが駆けてくる。

 担架がいくつも運び込まれ、病院内に運ばれていくぐったりとした窒息者達の群れを見て、昴は額に手をやったようだった。

 

「これは……日本警察は大丈夫なのか?」

「大丈夫じゃないよねきっと。今日の午後には記者会見とかじゃないかな……」

 

 昴さんとコナン君の哀れみのこもった声に、

降谷さんが歯軋りしながら「他人事みたいな顔しやがって無責任なFBIめ!」と内心で吠えたのであった。

 




・タタリ様ぬいぐるみ
うごうごと自走する触手のぬいぐるみ。
人懐っこく、寝てる人間の腕の中にすっぽり収まるのが好き。
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