バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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白の組織

 

 黒の組織で宴会が開催される時期がやってきた。

 

 すなわち年末である!忘年会の時期である!

 冬が来るのは今年20回目ぐらいだし、今年だってもう3年以上続いている気がしないでもないが、それはそれ。

 

 組織で毎年企画されている職場懇親の一環としての忘年会は、今年も開催される予定となっている。

 組織の忘年会とは、下っ端と幹部が集まって高級ホテルで飲み会する一年のビッグイベントだ。

 勿論スーツ等での出席が義務付けられ、銃の携帯は禁止。

 幹部以下勢揃いで交流をするそれは時々酒が入って粗相をする下っ端が後日処刑されたりする風物詩もある。

 

 勿論真面目な雰囲気もあり、壇上では今年度の決算と来年の組織運営方針が発表されたりもする。

 優秀な成績を残した下っ端の発表もあり、ここでの表彰が今後の幹部取り立てに関わってくる形になっている。

 最後にあの方による労いの言葉が読み上げられ、自由な歓談に移ると言った形だ。

 

 ウォッカとRUMはこの時期非常に忙しい。

 

 総務部門と経理部門とやりとりして宴会でスピーチする内容を詰めなきゃいけないし、表彰する下っ端の選定、承認も必要だ。

 その上で最近足のつきそうなアジトの移転もあったばかり。

 新たなアジトとして使うための工事や設営計画書の決裁申請が部門長から上がってきている。

 

 この辺りの処理を一手に引き受けている幹部格はウォッカとRUMだけなのできっと地獄にも似た忙しさなのだろう。

 ジンはその辺りさらっとウォッカにパスして現場指揮を担当にしている。

 彼は彼で確かに忙しいんだが、上から下にとウォッカの目の回るような忙しさには遠く及ぶまい。

 

 で、最近になると私……というか降谷さんもその事務処理の手伝いに駆り出されるようになった。

 

 私は事務処理能力は常人程度しかないからな。

 流石に彼らの域の判断は下せないが、伝書鳩程度の仕事ぐらいなら可能だ。

 手伝いぐらいにウォッカから仕事を割り振られ、それを降谷さんにチェックしてもらい結果を報告するだけの簡単なお仕事だ。

 

 ばばばばば、と高速で10の資料を確認していって、降谷さんは資料を袖机に置いて椅子の背もたれにもたれかかった。

 眉間の皺を揉むようにふーー、と息を吐く。

 

───ここの企画、予算の付け方がどう考えても可笑しいだろ。相場の三倍は使っている。どこに外注する気だ?

───つまり金が他に流れている可能性があると。このグループの責任者誰です?組織の金を使い込むなんて尋常じゃない度胸の持ち主ですね

───別に組織の膿なんて排除する義理はないが、点数稼ぎにはなるか。適当にウォッカに報告しておけ

───はい。僕も現場担当が本業なので手伝い程度ですが、こうして内部事情を知ることができる機会は貴重ですからね

 

 オフィスに偽装したアジトの一つでPCをシャットダウンしながら、降谷さんは立ち上がって大きく伸びをした。

 同室の下っ端達が身を小さくして目立たないように気配を消している。

 別に取って食ったりしないのに。

 

 そのままセキュリティカードをかざして部屋を出て、廊下に設置された自販機へと歩いてゆく。

 

 実はこのアジトには役員席として私の席が用意されている。

 ちょっと広めの高級机だったので、なんとなく意識高めをイメージして自己啓発系の本を置いてみたりもしてある。

 

 ちなみに先ほど気配を消していたように、バックオフィスを担当する下っ端達には距離を置かれている。

 現場の有名殺人鬼なんてそりゃ怖かろうとは思うのだが、少しばかり寂しい思いもあったり無かったり。

 

 自販機で買ったコーヒーをあおって眠気を飛ばしていれば、そこに背後からやってきたのは重役会議を終えたウォッカであった。

 

「おお、どうだバーボン。資料の方は」

「炎上してたって話のイタリアの新薬開発の件、やっぱり変でしたよ。機器購入価格として相場の三倍の金が使われる予定になってます」

「……ちっ、ふざけやがって。このあと責任者に電話でもするか。悪りぃが会議室押さえておいてくれねーか?」

「了解しました」

 

 スマホでアプリから連携する自組織開発の会議室予約システムから窓際の会議室5を取れば、「すまねぇな」とウォッカが頭をかいた。

 私はふと思い立ち、良い機会だと思いウォッカに質問してみることにした。

 

「そういえば、タタリ様は組織としてはノータッチなんですね」

「一応正規ルートから入手したものは研究チームに調査させてるぜ?だがオカルトは俺らの科学力じゃ範疇外だしな」

「まぁ、オカルトが範疇内のとこなんて旧マモーの所とかぐらいですからね」

「それに、あの方の判断で『競合他社が多すぎ、かつ最終的な組織の目標とは異なる』ってことでそこまで予算は投入しないことに決まったそうだ」

 

 流石の組織もガチオカルトに手を出すのは二の足を踏んでいるようだ。

 薬剤関係で若返りの薬なんて超級の技術を持っているからこその余裕とも言えるだろうか。

 

 ウォッカがコーヒーのブラックを自販機で購入し、下の取り出し口へと身を屈めた。

 

「それより、今年はもういいが来年の表彰式はどうするよ。お前から見ていい奴いるか?」

「最近は特には。僕を見るとみんな萎縮してしまいますし、可哀想なので意図して距離を置くようにしてますから」

「だよなぁ。最近は骨のある新入りが少なくていけねぇ。ウルフドッグの名に噛み付くぐらいの気概のある奴じゃねぇと上にはいけねぇからな」

 

 はぁ、とため息をついているとウォッカの苦労人さがよくわかる。

 この組織の庶務の半分はウォッカが回していると言っても過言ではないからな。

 私との仲を考えればできれば殺したくないが、組織にとっての重要度的に排除しないのも考えものだ。

 

 内心、私はうっそりと微笑んだ。

 

───少し、本格的に彼の本名を調べましょうか。神としてウォッカを『隠して』しまえば、殺さず排除できて証拠も残らないでしょう?

───馬鹿言え。奴と同居するなんて真っ平ごめんだ

───うっ……まぁそうですよね

───あと人間の皮は被り直しておけよ。タタリが出てるぞ

───ラジャです

 

 ぴしゃりと降谷さんに注意され、私はショボショボと内心小さくなった。

 「こういうところ触手の反応とそっくりなんだよな……やっぱり根が同一人物ということか」と降谷さんがぼやくものだから、余計に縮むより他ない。

 だってだって、神隠しできるようになったんだからしてみたいじゃん!

 

 缶を開け数秒で中身を飲み干し、空き缶を隣の空き缶用ゴミ箱に捨てたウォッカが背を向ける。

 どうやらまた業務に戻るようだ。

 軽くぴらぴらと手を振って歩き出す。

 

「じゃあ、俺は行くぜ。お前も遅くなる前に早いところ帰れよ!」

「ウォッカも栄養ドリンクの飲み過ぎにはお気をつけて」

「はは!せいぜいぶっ倒れないようには気をつけとくぜ!」

 

 部屋に戻っていくウォッカの後ろ姿を見ながら、私は年の変わり目をようやっと実感したのであった。

 

 忘年会、高級ホテルのディナーが存分に楽しめるので意外と楽しみなんだよな。

 

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