バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
今日も今日とて組織の任務でとある研究施設に突入中。
組織におけるバーボンの役割は、側仕えを除くと「強襲・強奪」という超攻撃型だ。
私の取り柄がそれしかなかったというのもあるが。
私は幽霊のように降谷零に取り憑いているのだが。
それは外部から肉体をポルターガイストで動かしているようなものなのだ。
脳を介して体を動かしているのでは無く、寄生生物に似ているというか。
それ故に、脳がかけたリミッターを超えて肉体を十全に動かせたりする。
基礎として鍛え上げられた彼本人の肉体と合わせれば、並ぶもののない埒外のスペックを発揮する。
……まぁ、動かすのが私なので肉体の本能に従った大変獣臭い動きしかできないんだけどね!
両手にはめた機構付きの鉤爪で天井を這い、猫のように床へ着地。
足音ひとつ立てることなく電子錠付きの扉と相対する。
鉤爪を思い切り一振り。
バキバキと音を立てて扉が無理やり切り裂かれ、用をなさなくなったそれを足で蹴り飛ばす。
ちなみにだが、武器が鉤爪なのは極限まで肉体頼りな私に長物を扱うのは無理だったからだ。
飛び道具も苦手。
肉体にできるだけ近い、手甲とかメリケンサックとかがベスト。
そこを「テメェに似合いの武器だ」と悪ふざけしたジンに鉤爪にされてしまったのであった。
獣だけに爪ってか。うるせえわ。
ただし肉体こそしなやかな肉食獣の如きだが、私の内心はほぼちいかわである。
わぁ……ぁ…。怖い怖いって銃持った人間が角から出てきたどうしようこんなの怖すぎる!
壊された電子錠の断末魔か、けたたましいサイレンの音が研究所一帯に響き渡る。
どうやらこの侵入は既に白日の元に晒されることとなったらしい。
遠くから「侵入者だ!」「殺せ!」と物騒な雄叫びが聞こえてくる。
何はともあれ、今のうちにデータを奪取しなければ。
支給された小さなUSBを標的のPCへと差し込む。
小さなウィンドウが立ち上がってデータのコピーが始まるが、思ったより時間がかかっている。
このままではここに警備員がたどり着く方が早いと見た。
獲物を狙うチーターのようにドアの横で伏せ、鉤爪を構える。
ちなみに、この鉤爪は組織が開発したもので小型ながら巻取り式のフックも付属している。
うまく両手を使えば調査兵団の真似事もできる優れものだ。
「この部屋だ!!」
大声と共に複数人の足音がする。来客である。
内心はめっちゃビビって飛び上がりそう。
何あいつサブマシンガン一丁に拳銃二丁ももってるやんけ。紛争地帯か!!
もう一人は拳銃だけだが総合格闘技嗜んでますよ感出してるし。
さすがは黒の組織に楯突こうって考えるだけのことはある。
ええいままよ!
瞬間。
降谷零たる肉体は冷静冷徹に武装した獲物へと飛びかかった。
「グ、な、なに…ギャッ!!」
「なっ、貴様はブギェァア!?!?」
悪人どもが派手に血飛沫をあげて倒れ、私はついにたまらず涙声で悲鳴を上げた。
「な、南無三んんん!!!血が、血が……任務ですみません許してくださいぃぃ!!!」
今は心の底で眠りについている降谷零本人が見たら卒倒しそうな情けなさである。
私はマジに一般人なので何回やってもこういうのは慣れないんだよ!
対峙するのは悪人ばっかだからそこまで良心も傷まないが、なにぶんグロテスクかつ猟奇的。
血も涙も規制のないR-18G真っ盛りに、私は目を瞑ることもできず涙目で鉤爪を振るった。
今目を瞑ると私が死ぬ!私の生のため死ぬがよい悪人ども!!!
と、そうこうしているうちにデータは無事に奪取完了。
USBを抜き取り、切り捨てた黒服5人を部屋の脇に寄せて手を合わせてから部屋を後にする。
手近な窓を破って鉤爪の機構からアンカーを投擲。
平たい屋根へと到達したら木々の枝を伝って空を渡る。
周囲は武装した人間で溢れかえっていたが、私の猿並みの動きは想定外だったらしい。
無事に警戒圏内を抜け出し、私を待つベルモットのところまで辿り着いた。
ベルモットは暗闇に紛れるような黒いタイトドレスを纏い、軽やかにアスファルトへと着地した私の方へと振り向いた。
「あら。早かったじゃない、バーボン。データはきちんと取ってこれたかしら?」
「つつがなく。どうぞ、ベルモット」
USBを渡すとベルモットは深く妖艶で麗しい笑みを浮かべた。
そして私の髪を優しく撫ぜ、顎をくすぐる。
「良い子ね。取ってこいが出来る子にはご褒美をあげないと」
「は、恥ずかしいですベルモット。そんな…」
「ご褒美は何が良い?」
美人のドアップは心臓に悪い。毎回なんだが、ベルモットは私をペット扱いしているところがある。
本物の降谷さんが知ったらと思うととても恐ろしい。プライドエベレスト男にキティ扱いは本当に地雷でしかない。
断るにも、ベルモットほどの幹部のお気に入りという立場は捨てがたいもので。
いまいち拒否しきれずにズルズルとここまで来てしまっている。
「ご褒美…」
「ええバーボン。組織の優秀なブラックドッグ」
「なら、またベルモットの買い物について行ってもいいですか?」
「買い物?」
予想外のことを聞いた、という顔でぱちくりとベルモットは瞬きした。
日頃、ベルモットは荷物持ちとしてよく私を連れ歩いている。
センスのいい美しい服をたくさん見れるし、ハリウッド女優ベルモットのファッションショーとか金出しても付いて行きたい奴沢山おるやろ。
とまぁ、そんなわけで彼女の荷物持ちは嫌いではないのだ。
時々降谷さんによく似合うセンスいい服も私用で買ってくれるし。
なにより血生臭くないのが良い。
「本当に貴方は可愛い子ね、バーボン。いいわ、明後日なら空いているから一緒に行きましょう?」
「ええ!ありがとうございます、ベルモット!」
そんなわけで今日の任務はおしまい。
未だ降谷さんはこの肉体の底で目を覚さないまま揺蕩っている中、私はせっせと組織内で地位を固める。
それもこれも、起きてきた降谷さんが無事潜入捜査を完遂できるよう補佐のため。
夜は刻々と更けていく。
目覚めの日は遠く、私はずるずると未明の空を眺めるばかり。
それでも諦めないのは、これでもちっぽけなプライドというものがあるからだろう。
頑張ってる人を助けたいという、善を思うプライドだ。