バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
今日は早朝の任務を終えた後、遅い朝ごはん兼昼ごはんの時間である。
作るのは降谷さんだ。
何がいい?と聞かれたので「卵とじうどん、とかどうでしょう?」と答えたら。
生生姜をすりおろすところから始める降谷さんの力の入れようは流石の一言だ。
最終的に香り立つ生姜かきたまあんかけが出来上がり、私はわーいと深層心理内で囃し立てた。
「ほら、できたから食え」と遠慮する私を表まで引き摺り出した降谷さんは、代わりに奥へと引っ込んでいく。
出来立てほかほかのうどんは実に美味しいが、製作者が食べた方がいいのに、とちょっぴり狼狽える私である。
視覚的なイメージは別途あれど、どちらが表にいても五感に関してはほぼ降谷さんと共有している。
深層心理の奥にいればその限りではないが、私だって中にいれば味はわかるのに。
降谷さんははふはふとうどんを食べる私を見ながら満足げに頷くばかりだ。
どうも降谷さんは料理を人に食べてもらうのが好きな様子である。
そうして美味しく昼ごはんを食べ終わって一時間ほどまったりした後は、今日の分のトレーニングの時間である。
ジャージに着替えて、玄関で軽く準備体操。
いつもランダムに違うルートで走ったりしているが、今日は日本橋を通るコースを走ることとする。
表に出るのは降谷さんだ。
私も変わろうとしたことがあるが、断固として拒否されてしまった。
これは俺の趣味だから、とのこと。
───しかし、懐かしいな。前もあったんだ。お前が俺のトレーニングを変わろうって言い出したこと
───そうなんですか?やっぱり僕ばっかり楽してるみたいで気になりますよね
───……お前にはいつも実戦で活躍してもらってるんだ。メンテナンスぐらい俺にさせてくれ
やや切ないような、悲しみの滲む声で微笑まれてしまっては私もこれ以上突っ込むことはできない。
早く記憶を取り戻さねば。
そう思って話題を逸らし、ただまったりと雑談しながらランニングを続けていると。
日本橋に通りかかるころ。
学校帰りらしい少年探偵団が、ちょうど日本橋の上でほよっとコチラを見ていたのだった。
「安室さん!?」とコナン君が私たちの姿を見て驚いたような声を出す。
「やぁ、君たち。こんにちは」
「どうして安室さんがここに?」
「単に僕のトレーニングコースなだけさ。今日は偶然走り込みが午後になったけど、いつもこの辺を走り込みに使ってるんだ」
「そうなんだ…」
コナン君が釈然としないような顔でむむむと唸っている。
いや、今回は本当に偶然だから信じてほしい。
元太君、光彦君、歩美ちゃんの小学生(真)トリオの方はといえば、私達を見てぱあっと顔を明るくした。
そしてわっと走り寄ってくる。
背中によじ登ってくる元太君を、降谷さんはよいしょとそのまま肩車してあげたようだ。
元太君はかなり重量がある方だが、降谷さんは片手で鍛えた成人男性も支えられるタイプのゴリラ。
この程度の重量なら余裕綽々ということらしい。
重さゆえか肩車に慣れてないらしく、元太君は大層ご満悦でバタバタと暴れた。
「コラ、落ちる、落ちるから暴れないで…」
「元太君ずるいですよ!」
「歩美も、歩美も!!!」
光彦君達がブーブー文句を言っているのが聞こえるが、流石に降谷さんの体は一つしかないからな。
三人を一気に持ち上げるのもできなくはないが、危険だから子供思いの降谷さんはしないだろう。
わぁわぁと騒ぐ子供達を宥めながらコナン君を見ると、どうやら何かのメモに書かれた暗号を解読中らしい。
メモ帳に階段状に書かれたそれを真剣に見る姿は小学生らしからぬ知性を深々と湛えている。
降谷さんが元太君を肩車したままメモ帳を覗き込む。
「それ、……なるほど、地下鉄か」
「やっぱりゼロさんならわかるか」
その言葉で私も遅れて、これが原作事件だということに思考が行き着く。
ああ、たしか「コナンと平次、恋の暗号」とかだったか。
だが内容はうろ覚えだ。
麻薬密売でマトリが解決してくれていたのは覚えているが、暗号の解読方法はさっぱりだ。
劇場版は印象深いから覚えてるのだが、原作漫画は話数が多いからな。
「ところでさぁ」とコナン君が今思いついたように私達を見上げて声をかけてくる。
「領域外の妹について何か知ってることってあったりする?」
「領域外……?思い当たることがないな」
降谷さんがコチラに視線を向けたので、代わりに私が表へと浮上する。
「ああ、sisterのテリトリー外だよ。おしゃれな言い回しだよね」
「SISッ!!ということは、つまり……え、でも、写真に写ってるのは少女で…」
「君という前例もあるじゃないか」
sisterという単語においてter.(領域)を含まない。
つまりはSIS。
イギリスの諜報機関のことである。
深層心理で降谷さんが感心したように声を出した。
───安室お前、やっぱり頭も回るな
───冗談はやめてください。こんなの勘が八割ですよ
───なら、そういうことにしておこうか
いやまじで原作知識なだけだから、探偵要素は私にはないんです……!
まぁ、なんにせよ今回はマトリに任せておけばいいか。
そのように私は結論づけて、走り込みの続きに戻ろうと元太君を肩から下ろす。
元太君が至極ガッカリした顔で口をへの字にまげた。
また今度な、また今度。
『ん?なんや、公安の兄ちゃんもおったんか』
「ああ、服部。今通りかかって……で、そっちは怪しげな人はわかったのかよ」
『アホ。今探しとるところや』
漏れ聞こえるスマホの通話音声を私の鋭敏な耳が捉える。
ブッ、と私は思わず吹き出しそうになった。
もっとも口が軽そうな服部君に公安バレしとるんかワレェ!
どういう経緯か知らんが、釘の一つぐらい刺しておかねばならんだろう。
表に素早く浮上した降谷さんが、私に代わりコナン君のスマホを素早く取り上げて通話を変わる。
「それ。外では絶対口に出さないように。僕の命がかかってるから」
『え、あ、ああ。すまへん、すまへん…』
「肝に銘じてくれ。口に出したら和葉ちゃんの命が無い、と考える程度には深刻にな」
『う……肝に銘じます…』
わざわざ降谷さんが出ての忠告に、服部君は気付いたのか気付いてないのか。
キツく釘を刺せば服部君はしょげかえったようだった。
若人をいじめたいわけじゃ無いが、こう、やっぱり不安は不安だからな。
せやかて工藤と同じノリでバラされては敵わん。
というか、降谷さんの口調隠す気なかったな……。
いや、二重人格なんて公安に比べたら秘密でもなんでも無いけどさ。
「それより、暗号の方は解けたのかい、コナン君」
「それはうん、大体は。あとは現地で麻薬の密売人を見つけるだけだから」
すらすらとこれまでの推理を見せてくれるコナン君の推理のキレは相変わらずだ。
電話越しにむすっとしている服部くんは、どうやら同じ答えに辿り着いていると言いたいのだろう。
それでも声を出さないあたり、さっきの釘が聞いているのか。
まぁ、答えがわかってるならもう私たちがいる意味はないな。
「そっか。じゃあ僕はこの辺で。僕は行くよ」
「え、もう行っちゃうの!?」
歩美ちゃんが足にひっついて悲しそうな声を出した。
ずいぶん好かれているな。あまり交流はないと思ったが、そうではないのか?
「最近、安室のにーちゃんはなんかそっけねーな」
「!……いや、帰ってしなきゃならないことがあるからね。またゲームでもしようか」
その言葉に、わあっと子供達が歓声を上げた。
いくら表面上演じることができていても、やはり子供にも悟られるほど以前の私と降谷さんは違うということらしい。
なんとかしたほうがいいのだが、ふむ。
どうすればよいのやら。