バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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から紅の恋歌①

 

 季節は秋。山々が紅に染まる頃。

 

 とはいえ別にもうすぐ冬とかそういうわけではないし、なんなら10日前は春だったのでこのサザエさん時空も筋金入りである。

 

 今回の私たちの役割は、大阪見学に際しての子供達の引率役である。

 毛利さんの方は阿知波という不動産王との対談があるらしく、子供達につきっきりとはいかないからな。

 

 阿知波は一代で会社を築き上げた豪傑にして、百人一首会である皐月会の会長も勤めている。

 一代でそれだけ成り上がったのだから裏の部分もそれなりにあるだろうが……。

 軽い調査の結果、多少反社と繋がりがある程度だった。

 なんらかの物品取引ぐらいはしているだろうが、ズブズブとまではいかないというか。

 

 まぁ、この程度なら気にするほどのことでもあるまいよ。

 なにせここは畑で爆薬が取れるタイプのコナン世界である。

 酷いテロ行為でも働かない限り、警察にマークされることもなさそうだ。

 

 まぁなんにせよ、今日はTV局で阿知波会長との対談の撮影だ。

 

 現在、私たちは競技カルタの見学をしている最中である。

 最初は控え室で待っているはずだったのだが、毛利探偵が通りすがりのかわい子ちゃんにつられてカルタの撮影会場まで来てしまったのだ。

 

 確かに大人びたスタイルの子であったが、高校生相手に靡くとは、毛利探偵もなかなか犯罪的なことだ。

 

 ちなみに、かわい子ちゃんの名前は、一目見てすぐわかった。

 視界の先で百人一首の札が舞う。

 緊迫した空気。カメラ。マイク。それらの静かな駆動音さえ耳に入る、鋭敏な感覚。

 

 彼女の名は大岡紅葉。

 服部平次の未来のお嫁さんを主張する、恋する乙女である。

 

 

 

 さて、百人一首のリハーサル後は子供達と一旦控え室で休憩だ。

 

 わちゃわちゃと暇そうに足をぶらぶらさせたり私の肩によじ登ってきたりしてきたので、隣に座る歩美ちゃんの頭を撫でてやる。

 歩美ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。

 

 降谷さんがカバンから今朝買ったばかりの子供用百人一首を取り出し、子供達に掲げてみせた。

 

「みんな時間を持て余しているようだし、じゃあせっかくだし百人一首でもしてみるかい?」

「おー!!俺らもできるのかな?」

「やりますやります!ね、歩美ちゃん!」

「うん!歩美やりたい!」

 

 ここにくるまでに私が子供用の百人一首を買っておいたんだよな。

 子供達も暇だろうと思って、どうせなら旬のものをと先回りしたのだ。

 

 降谷さんなどは「何故百人一首…?あの利口な子供達ならできるとは思うが、興味を持ってくれるか…?」と疑問符を浮かべてはいたが。

 まぁそこは、劇場版に巻き込まれることを知っている私ならではの先回りというやつだ。

 

 先ほどまで目の前でかっこいい競技カルタを見ていた子供達はわぁっと飛びついた。

 まぁ、百人一首も覚えていない子供達が本格的にとはいかないが、簡単ないろはカルタのつもりでやるのがいいだろう。

 

「蘭さんもご一緒にどうぞ」

「ありがとうございます。あ、お茶入りましたのでどうぞ」

「ああ、どうも。お菓子も買ってありますので、そちらの袋からご自由に」

「安室さんも何から何までありがとうございます!みんなで食べられるようにお盆に広げますね」

 

 蘭さんがティーバッグで入れた緑茶を渡してくれたので、なごやかに降谷さんは受け取った。

 相変わらずええ子や、蘭ちゃん。

 

 ちなみに、私と降谷さんは百人一首は嗜む方である。

 

 深層心理で時々二人で遊ぶので、一応句自体と意味ぐらいは全て覚えている。

 ただし、降谷さんの記憶力とガチ度には私では遠く及ばない。

 瞬発力では私のほうがはるかに上だが、基礎知識の上でまったく相手にならないからだ。

 

 一部覚えた句だけは瞬発力で取れるものの、降谷さんなら競技カルタ会でもいいところまで行くのではないかというのが私の考えである。

 

 

 そんなふうにしばらく子供達と共にまったりとカルタを遊んでいれば、時刻はお昼にも近付いてくる。

 

 今日のお昼は服部君の案内で大阪の美味しいお好み焼き屋を紹介してくれるらしい。

 本場の人がイチオシするというのだから、これは楽しみだ。

 

 撮影を終え、帰ってきたコナン君と毛利探偵、平次君達が控え室に帰ってくれば、皆連れ立って街に繰り出す時間である。

 

 ゾロゾロと廊下を歩けば、TV局らしく撮影中と思しきお侍姿の役者さん達とすれ違う。

 何処となくざわついていて、不思議な情緒が感じられた。

 

 先頭を歩く服部君が肩越しに目線だけ向けてこちらに話しかけてくる。

 

「安室サンはなんで大阪に来たんや。忙しいんやろ、探偵のシゴト」

 

 含みのある声色はイタズラげで、探りを入れる気満々な好奇心に満ちている。

 

「そうでもないよ。それに、君がしっかり約束を守ってくれているのか、確認も兼ねているし」

「うっ……」

 

 じとっとした降谷さんの視線に、服部君は怒られたように肩をすくめて小さくなった。

 降谷さんの笑顔は相変わらず圧があるというか、私にはない怖さがあるよな。

 

 約束というのはもちろん、私達が公安であることを不用意に口出ししないという約束である。

 せやかて工藤とかって流れるようにバラされたら命に関わるからな。

 

 和葉ちゃんが「何々?二人で内緒話して」と興味津々で会話に加わったので、服部君が慌てて犬を追い払うような仕草でそっぽを向いた。

 

「アホ吐かせ!俺らは探偵同士大事な話があるんや!和葉は向こう行っとれ!」

「はぁ!?なんなん平次!」

 

 プンスカと怒る和葉ちゃんだが、それでも信頼からくる怒りであるのが見ていてよくわかる実に初々しい会話である。

 高校生の両片思いな痴話喧嘩からは肌にいい成分が出ているに違いない。

 降谷さんとニコニコニヤニヤしながら見守って。

 

 廊下を曲がるその瞬間。

 

 偶然、大岡紅葉さんが先頭を歩く服部君とぶつかり、一瞬空気が止まるような錯覚を覚える。

 

 大岡紅葉はしばし唖然とした後、滲む涙を湛えて笑った。

 そして「うちの、未来の旦那さん…!」という爆弾発言である。

 出会って五秒でラブ全開。他人の恋事情ってどうしてこんなに楽しいのか。

 

 全く覚えていない平次君だが、ウチの未来の旦那さん、とか言われて驚愕してもいたし、豊満な体に助平顔もしていた。

 

 一連の流れにやや不機嫌そうな顔をした降谷さんが、不満げに肩を怒らした。

 

───スタイルなんて、幼馴染で外見でなく内面を見て一途に思ってくれる子のことを思えばゴミのような不純物でしかないだろうに。これだから若造はものがわかってないな

───……ゼロって純愛好きだったんですね。初知りです。でもベルモットは意外と純愛タイプだと思うんですが…

───あの女の話はするな。虫唾が走る。それと、行きずりの女どものしつこいワンナイトのお誘いはもう懲り懲りだ。お前もそう思わないか?

───まぁ、僕も爛れた関係は苦手な方ですけど。大岡紅葉、でしたっけ。彼女も随分一途そうに見えましたよ?

───男なら一度抱いた思いを貫け。とはいえ、服部君にこの手の心配は無用だとは思うが

 

 一応降谷さんも服部君を認めてはいるらしい。主に恋愛の一途さで。

 何故私たちは高校生の恋愛評をしているのか。これがわからない。

 

 そういえば、逆ナンのお誘いはこの1ヶ月でも幾度もあったが、どれも降谷さんがうまくかわしていたな。

 やはりモテる男の価値観は違うというべきか、なんというか。

 ちょっとばかり地雷男の気配がひしひしとするのが笑いを誘うが、それはそれ。

 

 とりあえず私たちは蘭ちゃんと子供達と先に行くよ、と言ってコナンくんを残して先に進むこととする。

 コナン君は残って痴話喧嘩の見学に勤しむらしい。平次君のお目付け役ともいうべきか。

 

 

 そうして、ようやく。

 ビルの中に、緊急避難警報のけたたましいアナウンスが響き渡った。

 

 緊迫した空気と困惑したざわめきが満ちていく。

 蘭ちゃんが困った顔でスマホでニュースを確認し出したので、「何はともあれ急いで避難しましょう」と子供達を連れてビルの外へと手を引いてゆく。

 

 テレビ局の爆破で始まる、百人一首を取り巻く大事件。

 劇場版名探偵コナン、から紅の恋歌。

 

 その開幕のベルが鳴ったのである。

 




・降谷さん&バボ主
高校生の初々しい恋愛事情に悪質な笑いをニヤニヤと浮かべている。
それを側で見ているコナン君は「楽しんでんなーこの人…」と呆れたような視線を送っているとかいないとか。
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