バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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から紅の恋歌②

 

 騒然とするTV局前でスタッフさんに聞けば、情報は錯綜していたもののすぐに答えは見つかった。

 

「何があったんですか?」

「ああ、なんでも爆破予告があったらしくて。危ないから中に戻っては行けませんよ!」

「!」

 

 TV局の爆破予告とはまた、大規模事件につながる事案だこと。

 一緒に避難してきた子供達も不安そうに身を寄せ合っている。

 

 内側で降谷さんが不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 

───また爆弾か。いい加減にして欲しいものだ。分をわきまえないテロリストどもめ!

───公安が叩かれないといいんですけど

───無理だろうな。たとえ単独犯だとして、個人テロ(ローン・オフェンダー)は公安の領域だ。これも失態として取り沙汰されるだろうさ

 

 降谷さんは腕を組んだまま吐き捨てるように呟いた。

 イライラと足を鳴らしているのを見るに、後始末の処理に今から頭を悩ませているのだろう。

 

 その後しばらくしてコナンくんと毛利さんが建物を飛び出してきた。

 が、遅れた服部くんを迎えにいくと言い出したので慌てて腕を掴んで引き止める。

 

「コナン君!危険だ!」

「けど服部がまだ中にいる可能性があるんだ!」

「ッ、なるほど、それは緊急事態だね」

 

 この子はまったく!己の身を顧みないにも程がある。

 だが、原作を考えるにここでコナン君の助けなくば服部君は死を待つばかりなのは間違いない。

 

「……仕方ない。僕から離れるなよ。君の持つ秘密道具の有用性は確かだし、窮地における頭の回転も信頼はしているからな」

「邪魔にはならないから、任せてよ」

 

 ため息と共に折れて見せれば、コナン君はにっと微笑んだようだった。

 これだから「背後から近づいてくるもう一人の仲間に気づかなかった!」とか大失敗やらかすんだぞ君。

 

───本当に行くのか安室。危険すぎないか?

───嫌な予感がします。おそらく服部君はこのままでは死は確実かと

───!!俺たちが行けばまだ間に合うと?

───あなたの身体を危険に晒すことになり申し訳ありませんが、どうか許可を

───それは別に構わない。おまえの身体でもあるんだしな。だが、気をつけろよ

───ええ

 

 装備は阿笠博士の発明品である巻取り式のフック。

 それに、鉄爪の一つを取り出して嵌め込んだ小ぶりのサバイバルナイフひとつだけ。

 しかしこれさえあれば頑張れば斬鉄も可能なので、装備としては十分だろう。

 

 コナン君と共に人の流れに逆らい、まずは地下駐車場へ走る。

 駐車場は元から人が少なかったのか、誰かに見咎められることなくスムーズに来ることができた。

 

 犯人追跡メガネの発信状況を確認し、コナン君が青ざめる。

 

「まさか服部、まだ中にいるのか!?」

「そのようだね。だがもう中の人間はほとんど避難が完了する。今駆けつけた警察も中に投入したようだし……爆発が起こるなら、もうす、」

 

 と、そこまで言ったところで酷い轟音が地下駐車場全体を揺らした。

 始まったようだ。

 

 コナン君が顔を上げ、「一旦外に出よう!」と走り出す。

 もはや頭脳の回転は全開。

 誰かを助けるために己の全てを賭けられる、この子の正しさの光が眩いばかりに煌めいている。

 

 慌ててコナン君の後を追って外へ出れば、向かいのビルを指差してコナン君がこちらを振り返るところだった。

 

「安室さん!あそこまで登れる?」

「任せて、得意分野だよ」

 

 悲鳴とざわめきが交差するその場にあって、注目から外れたビルの側面は人々の心理的な死角に成り果てている。

 これならば、私がのぼったとして誰も気づくことはないだろう。

 

 アンカーを射出し、ビル側面にサバイバルナイフを突き立てて足場として軽々と登っていく。

 もうもうと黒い煙が立ち込めるそこは死地。

 一呼吸で肺が焼けそうになる場所で、しかし服部君達はうまく場所を見つけて生きていた。

 

「あんた、安室サン!?工藤も、……どうやってここに来たんや!?」

「普通にビル側面から登ってね。じゃ、降りるよ二人とも」

「ホンマかいな…さすがはルパン三世の一味やで」

「それも言わないように!!で、和葉ちゃんは無事かい?」

「う、うん。アタシは平気や。それより平次が…」

「アホか!お前が先や和葉!そんだけ煙吸っといて、限界やろが!」

 

 この極限場面でキャッキャする二人を問答無用で抱えて、かつコナン君を加えて巻取り式フックを持つ方の手で軽く支える。

 体重的には大人三人分。流石にこの重さだ。

 いくら阿笠博士の発明品とは言えコナン君のサスペンダーで補強しなければなるまいよ。

 

 コナン君が私の視線を受け、阿吽の呼吸でサスペンダーを近くの鉄骨に繋ぎ直す。

 こういう所、コナン君の頭の回転の早さが生きるよね。

 

「おい、無茶やろ何人抱えとると思ってんねん!」

「今は時間が勝負だ。大人しく抱えられてほしい。決して離さないと誓うから、動かずじっとしていて」

 

 うんしょ、と片腕ずつ二人、コナン君を肩に一人、合計三人乗せての大所帯だ。

 流石に重さを感じるが、動けないほどではない。

 

 ビル端までやってくると、右肩に担ぎ上げた和葉ちゃんが小さく悲鳴を上げた。

 

「……う、うそやろ!この高さをアタシ達降りるん!?」

「和葉姉ちゃん、大丈夫。僕たちを信じて!」

 

 コナン君がこの窮地に柔らかく笑って和葉ちゃんの手を握る。

 それでようやく和葉ちゃんの肩の力が抜けたらしい。

 ぎゅっと私の左肩を強く掴んでくる。

 

 むすっとした服部君は、「なんや、お子様がええんか」などと嫉妬心全開でコナン君を睨んだ。

 私はいいのだろうか…などと思えど、まぁ遠くのイケメンより近くのライバルという考え方は分からなくもない。

 

 そのままスルスルと降りていけば、途中、爆発のため頭上から鉄筋がいくつか落ちてくる。

 両手は塞がっているため斬鉄で斬り払うのは不可能。

 

 素早く壁を蹴りながら横へ飛んで、そのまま三角飛びの要領で生垣をクッションに着地すれば、脱出成功である。

 今回はTV局の建物が他と比べてそこまで高層でなかったのが功を奏した。

 

 これで30階以上もあればもっとずっと脱出に手間取ったことだろう。

 

 そのまま駆け寄ってきた消防隊員が口々に「大丈夫かい君達!」「なんて無茶を!」と私達を仮設テントの方へ案内してきた。

 

 これは後でみっちり怒られる奴だろうなぁ、と今からゲンナリする。

 私の持ってた道具とコナン君の持ってたサスペンダーに関しては、後で公安を通じて口封じをせねばならないか。

 あまり公にしていい類のものではない大発明だし。

 

 あのサイズでほぼ無限とも言えるレベルで伸び、かつしなやかで埒外に強靭。

 MI6もびっくりの玉手箱みたいなアイテムだらけだからなぁ。

 地味に災害救助現場で鬼ほど活躍しそうな気がする。

 後で阿笠博士に打診してみようか、などと他所ごとを考えつつ。

 

 爆破テロの可能性もある今回の件を公安にも情報共有しなければ。

 

 避難所に到着すれば、心配して駆け寄ってきた蘭ちゃん達から少し離れて私たちは通話を始めた。

 服部君はどうやら大滝警部と話中のようだったが、こそこそと離れていく私に鋭い視線を送ったようだ。

 

 なお、コナン君は当然のように一緒にいるものとする。

 

 にこーっと満面の笑みでこちらを見てくるコナン君に、降谷さんが大きなため息をついた。

 電話を一コール。すぐにつながる。

 

「風見、大阪の日売テレビで起こった爆破事件について調べてくれ」

『え、その……わかりました。調査後至急お伝えします!』

「頼んだぞ」

 

 出た瞬間に依頼だけ、しかも返事を待つまでもなくぶつ切りという相変わらずの電話スタイルな降谷さんである。

 それを受ける風見さんも哀れだが、貴重な情報源だから仕方ないと考えるべきか。

 

 風見さんも風見さんで、何も聞かずにひとまず依頼を了承する話の早さはいいところだが、それじゃいつまで経っても事情を教えてもらえないぞ。

 

 短い通話を終えてスマホをポケットにしまうと、コナン君がキュルンとした顔でこちらを見た。

 物言いたげというより、目は口ほどに物を言うと表現した方が適切か。

 

「……心配しなくてもどうせ君なら大阪府警本部長の息子さんから情報が来るだろう?」

「えぇー、だってぇ」

「まったく。一応僕からも情報は伝えるけど、何か分かったら走り出す前に僕にも教えること。いいかい?」

「うん!」

 

 元気一杯の返事で頷くが、一ミリも信用がおけないのがコナン君クオリティである。

 

 これは盗聴器を仕込んだ方が早いな、などと頷きあう私と降谷さんなのであった。

 

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