バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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から紅の恋歌③

 

 超速報!

 明後日の大会で勝ったほうが平次君に先に告白することになった!!!

 

 大岡紅葉さんと和葉ちゃんの戦いのゴングが今、目の前で鳴り響いたのだ!

 ついワクワクと手に汗を握ってしまったが、普通に最悪の野次馬である。

 降谷さんはといえば、隣でむむむと唸って深層心理で腕を組んでいる。

 

───気の強い女は苦手だ。若い頃からあの様子では、意中の男を射止めるのは至難の業だぞ

───ゼロの好みはともかくとして。これは面白くなってきましたね

───ん?お前、色恋沙汰を見るのが好きなのか?

───まぁ、人並みには。特にこの辺りのバランスは人間関係の超重要事項ですから、疎いと一発で酷い恨みを買いますし

───なるほど。さすが人間関係のプロフェッショナル。俺も見習わないとな

 

 気恥ずかしいことを言ってくれる。

 確かに私は人と仲良くなるのが得意な方だが、プロフェッショナルという言葉は少々誇大だ。

 

 さて、私の方もそんなこんなしているうちに風見さんからの折り返し電話が来ていた。

 

 どうやら大阪府警も混乱しているみたいで情報が錯綜しているらしく、風見さんの方でもまだまだ情報が集まっていないらしい。

 白昼堂々の大爆発だったからな。救助やTV対応、被害状況の確認などでてんてこ舞いだろう。

 

 コナン君がすうっと今回の真犯人・阿知波会長のところに吸い込まれていきそうになっていたので、ちょいちょいと手招きする

 

「なに?風見さんから連絡あったの?」

「そっちはまだ進展はないってさ。はい、盗聴アプリ入れるからスマホ出して」

「え?」

「君は集中すると連絡忘れるだろう?これなら楽だと思って」

「いやいやいや、楽って……」

 

 ドン引きされてしまったが、これは降谷さんと相談した上で決めたより良いソリューションというやつなのである。

 「そうか、そういうことだったのか!!」とか言って電話の折り返しなんかせずにピュッと現場を駆け抜けてしまう名探偵なら、こちらの方がずっと早いしヤキモキせずに済む。

 

 にっこり微笑む私たちに、コナン君は釈然としない顔をしながらも、素直にスマホを出した。

 そこで素直にスマホを出すあたり、倫理観がゆるゆるの私たちの関係なのである。

 

 私はするっと片耳のインカムを装着、コナン君を「じゃあ行ってらっしゃい」と言って送り出した。

 リスを連れた警部と仲良くするんだよ……。

 

 

 

 

 

 その後は、コナン君&平次君のペアと別れて、蘭ちゃん達と到着したのは近場のホテルだ。

 大きな和室が二連に連なっている豪華な作りに喜んだのか、広々とした部屋で子供達がわっとかけだした。

 

 ここは蘭ちゃん達の部屋で、一応私たちは同階の別部屋をとっている。

 うら若き乙女達と同室になるわけにはいかないからな。

 

 蘭ちゃんと和葉ちゃんは早速特訓開始といくのか、札を並べながら今日会った大岡紅葉について雑談を交わしている。

 「なんなんあの女!?」という怒りから服部君の惚気話まで。

 高校生の甘酸っぱい両片思いが詰まっている。

 

 これは私も一枚首を突っ込まねば、と使命感に燃えて降谷さんに声をかけた。

 

───和葉ちゃんのお相手、降谷さんがしてくれませんか?

───あー、別に構わないが、何故だ?

───こういう時に力にならねば大人が廃るでしょう!

───なるほど。野次馬根性というわけか。そういうことなら了解した

 

 なにやら曲解されているが、これは大人としての義務であって決して野次馬などという低俗なものでは略。

 表に出た降谷さんがにこやかに和葉ちゃんに話しかける。

 

「よければ、僕が練習のお相手をしましょうか?」

「……え、ほんまに?安室さん百人一首できるん?」

「ええ、趣味で普段からやっていましたので、練習相手ぐらいなら」

 

 きょとんと瞬く和葉ちゃんは、こうして正面から見ると随分な美人さんだ。

 服部君の彼女という印象が強いから学校でも粉かけられずに済んでいるのだろうが。

 

 ちなみにだが、降谷さんは本気で強い。

 

 写真記憶みたいに盤面全てを覚えている上、決まり字から機械みたいに正確に札を狙うのでまったくもって手も足も出ない。

 私では丸暗記した札を反射神経勝負で数枚手に入れるくらいしかできないほどだ。

 

 「じゃあ少し、お願いします!」と私達が相手ということで、恐る恐る和葉ちゃんが頭を下げた。

 これはきちんと降谷さんが相手ということがどういうことなのか、和葉ちゃんにも理解してもらわねばなるまい。

 読手を蘭ちゃんにまかせ、降谷さんが並べられた札へとざっと目を通した。

 

 これはこの一瞬で全部位置を覚えたな。

 

「じゃあいくよ。ながから…」

 

 風切音。

 かるたが、舞う。

 

「……ッ!?」

「一枚目。本番は百戦錬磨の人たちが相手だ。僕よりもっと早く来るつもりで、ね」

「…はいっ!」

 

 早すぎだろ、などとぼんやり思う。

 今頃コナン君は阿知波さんに張り付いている頃だろうか。

 

 

 そんなわけで。

 後ほど元百人一首クイーンである服部君のお母様がきた後も「ふむ。あたしは相手やなく、後ろで和葉ちゃんの指導に徹した方が良さそうやわ」などと引き続きお相手を任せられてしまった。

 

「え、いえ。僕のこれは我流も我流。元クイーンの貴方がいるのであれば、お相手は貴方の方が…」

「あんたさんが何者なのかは知りまへんけど、少し見ただけで超一流なのは分かります。なら、和葉ちゃんのためにもより良いものを目に焼き付けてもらうのが一番」

「そ、そうですか……?」

「それに、あたしも指導に徹することで教えられることも増えますさかい、一石二鳥や」

 

 そう言ってスタスタとお茶を入れに行ってしまったから、降谷さんも困惑していたようだった。

 そういうもんやろか……?でも降谷さんがマジで強いのは本当だし、妥当っちゃ妥当か。

 

 

 それからは一晩中特訓に次ぐ特訓だ。

 

 いや、別に一晩ぐらい百人一首したところで体力的になんの問題もないが。

 すごいのは降谷さんの完璧すぎる猛攻に必死で喰らいつく和葉ちゃんの方だろう。

 

 あまりに的確すぎて心が折れそうになるだろうに、諦めることなく食らいついていく。

 特に彼女、体力と精神力が半端ない。

 体力の鬼たる降谷さんに疲れ果てながらでもついていくんだから、それこそ女子高生離れしているだろう。

 

 後ろで見ていた服部君のお母様の指導でメキメキと腕を上げていく和葉ちゃん。

 時には降谷さんから札を取るほどの快挙を見せた。

 

 しかし朝の日差しが差し込む頃には、彼女の体力も限界だ。

 パチンと手を叩き、服部君のお母様の「ほな、すこし休憩しよか」の声と共に、彼女は倒れ込むように寝落ちたようだった。

 

───お疲れ様でした、ゼロ。少し休みますか?

───この程度疲れたのうちにも入らないさ。俺もいい頭の体操になった

───しかしあの子、凄い精神力ですね。貴方についていくなんて

───あの喰らいつくガッツは刑事向きだな。合気道も嗜むというし、将来はぜひ警察官になってもらいたいところだ

 

 などと雑談しながら、服部君のお母様と共にお粥を作りに台所に立つ。

 ご母堂が私達の分まで粥を作ろうとしてくれたので、降谷さんが慌てて間に割って入った。

 

 「ああ、服部さんはここで休んでください。ここは僕が作りますよ」と疲れの見える服部君のお母様を休ませてひとっ走り。

 材料を買い込んでさっとお粥を作る降谷さんの姿は生き生きとしている。

 

 心配そうに服部君のお母様が眉をハの字に曲げた。

 

「あんたさんこそ、一晩中付きっきりで相手して、休まんと大丈夫なん?」

「いえ。僕は普段体力仕事で慣れてますので。ああ、おかゆは鮭にしますか、それとも卵でとじますか?」

「おおきに。それは作り手に任せますさかい、お好きな方を」

「ははは。わかりました」

 

 そのように多少の会話をして、コンビニで買ってきた惣菜とともに軽くおかゆを作って腹を満たした。

 

 あとはじきに皆が起き出してきて、朝食の時間だ。

 今日は大阪観光らしく、子供達を伴う足取りは軽い。

 

 どうやら今日は蘭ちゃんが子供達を引率するらしく、強めに「安室さんは和葉ちゃんをお願いします!」と言い切られてしまった。

 

「蘭さん、いいんですか本当に。子供達を任せてしまっても」

「いいんです。安室さんは和葉ちゃんの練習に付き合ってあげてください。絶対優勝、しなきゃいけませんから!」

「なるほど、あんなことがありましたもんね」

 

 苦笑する降谷さんに、ふんす、と蘭ちゃんが鼻息荒く燃えている。

 そりゃ勝った方が服部君に告白するなんてルール設定しちゃったもんな。

 ここで負ければ恋争奪戦で大きくスタートで遅れを取る。

 必ず勝ち取っておきたいステップというものだ。

 

 後ろから出てきた和葉ちゃんは、ホテルの朝食を取り終えてすっかり元気になったようだ。

 しかし様子が少しばかり意気に欠け、むむむと口をつぐんで視線を下に落としている。

 

「ほんま強いで安室さん。練習しても練習しても先が見えへん…あたし上達してるんやろかってちょっと弱気になってまうくらいや」

「そうなんだ…安室さん、本当に強かったんですね…!」

「いやいや、和葉ちゃんもグングン上達してきて、僕も余裕そうな顔を必死で取り繕ってるぐらいですよ」

 

 パタパタと手を振るも、キラキラとした目の和葉ちゃんに押されて降谷さんも勢いがない。

 尊敬の眼差しなんて部下からのそれで慣れてるだろうに、妙なところでウブなことだ。

 

 と、そこに優雅に現れる影が二つ。

 

「へぇ、素人さんに相手してもろとったんやねぇ。余裕があってええなぁ」

「あっ、あんたは!大岡紅葉!」

 

 きーっと和葉ちゃんが吠えたてた。

 現れたのは話題の的、大岡紅葉と、その執事である元公安・伊織無我である。

 確か伊織さんは風見さんの同期だったんだったか。

 私を見るなり、伊織さんは一瞬目を鋭くして観察の姿勢に入った。

 

 噂ぐらいは聞いているのかもしれない。

 公安が生み出した怪物にして真性の殺人鬼、降谷零。

 少し前に公安での噂をちょいとばかり掬ってみたが、どれもこれも酷いものだった。

 

 そりゃとんでもない組織で任務ばかりこなしていたから流言飛語は数限りないとは思っていたが。

 まさか「公安の汚点」だなどと。

 ふざけたことを抜かすものだ。

 

 殺人なんて好きでやってるわけなかろうに、名誉毀損にも程がある。

 

 降谷さんと伊織さんが静かに視線を交わしている間にも女子同士の熾烈な舌戦は進んでいく。

 

「なんや、そないに練習相手にも困っとるんやったら、うちがあいてになりましょか?」

「───お嬢様」

 

 私に突っかかろうとする紅葉さんに、伊織さんがスッと前に出てインターセプト。

 どうやら危険だと判断したらしい。

 

「なんやの伊織。今良いところで……」

「もうお時間です。車に戻りましょう」

 

 こちらを油断なく観察しながらの声には、静かな警戒感が香っている。

 「それでは、失礼します。皆様方」と言って去っていく後ろ姿を見ながら、私は降谷さんに視線を送った。

 

───どうやら僕たちのことを知っているみたいですね

───だな。何者だ、あの執事

───念のため調べてみましょうか。足元を掬われても事なので

───ああ。後で風見に連絡するとしよう

 

 調べるまでもなく風見さんに連絡した時点でわかるとは思うが、それはそれ。

 私は降谷さんに同意して、恋する乙女が去っていく後ろ姿を見送ったのだった。

 

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