バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
あれから、コナン君とは順調に仲を深めてきている。
本職の探偵という事で合う話もあるし、依頼人の個人情報に触れない程度にぼかして仕事内容を語れば、コナン君は熱心に聞き入ってくれた。
また、ここ数日でコナン君の代理のスピーカー役にも抜擢されたり、話には事欠かない。
誰にどう推理を伝えようか右往左往する彼があまりにも気の毒だったので、ちょっぴり後ろから声をかけた形だ。
「必要なんだろう?大人の探偵役」とウィンクして胸元の蝶ネクタイ型変声機をトンとつついて見せれば、コナン君は目に見えて動揺した。
「な、なんのこと?」
「君がとても頭のいい少年だってことは見てれば分かる。ギフテッドとか言ったっけ?君も苦労してるんだろうなぁって言うのは伝わって来たよ」
「……どういうつもりなの」
「つもりも何も、探偵のよしみというやつさ」
必死で「あれれぇ~?」ってやってるのに全然答えにたどり着けない目暮警部と毛利探偵の愉快なペアに焦れていたのはなにも彼だけではない。
「なぜ自明のことに気付かない!?それでも捜査一課か!!」と内側で頭を掻きむしってる人がいたからな。
私も一回目のコナン君の「ねえこれおかしくなあい?」で気付けたので、頭の出来はそこそこだと信じたい。
それで晴れてスピーカー役として勤めを果たせば、「……ありがと、安室さん」「君もね、小さな探偵君」と微笑み合う仲となることができた。
とはいえ、彼の真実を追う瞳から逃れられたかといえばそうではなく。
「……安室さん、分かってたよね。犯人があの人だって」
そう言って私を見上げる瞳は鋭く、まるで嘘や隠し事が丸ごと暴かれてしまったかのような錯覚に陥る。
私は勿体ぶって答えた。
「どうだろう。彼がそうかな、とは思ってたけど」
「毛利のおじさんに何のために近づいたの?」
確信的な口調だった。
私が毛利探偵より優れた頭脳を持っていると確信して、その上で私の意図を問いただしている。
ここでとぼけるのも簡単だが、それでは遠回りにしかならない。
私はやや直裁的に、嘘のないよう言葉を選んだ。
「うーん。探偵なら誰でも良かったところはあるんだよね。僕、探偵としては本当に駆け出しだし」
「貴方が駆け出し?それにしては尾行も犯人の捕縛も随分上手だね」
──形式に則っていて、まるで本職の刑事さんみたいだったよ。
そう突き付ける彼の眼光は鋭く、射抜かれるような衝撃を受ける瞳だった。
降谷さんと変わっていた私をたった一瞬見ただけで、そこまで気付くとは。
日本警察の救世主の名は伊達ではない。
「褒めてくれてありがとう。でも、僕が探偵の師匠を必要としていたのは本当だよ?今は……別の目的がないと言えば嘘になるけど」
「目的って?」
「君を観察すること。君みたいに興味深い存在、なかなかいないよ?」
そう言ってにっこりと、うっそりと微笑んで見せる。
ギクリ、とコナン君が露骨に警戒し出したので、可笑しくてふふふと笑いがこぼれた。
虐めたくなる小動物感である。
中で降谷さんが「優秀な日本国民の小学生を弄ぶなんて悪趣味だぞ!」と怒っているのでこれ以上はしないけど。
「なんてね!別に変なことは企んでないからそう気負わないで」
「変なことって?」
「君に危害を加えるとか、悪い人の考えそうなことだよ」
「ふぅん……あっちょっと、髪ぐしゃぐしゃにしないでよ!」
信じてなさそうな生返事を非難するようわっしゃわしゃに頭を撫でれば、コナン君はギーギーと抗議した。
思わず愉快で声を上げて笑ってしまう。
いぢめる?って小首傾げてくるみたいな絶妙な可愛さだ。
「確かに、僕は嘘つきだ。けど君と敵対したくないっていうのは本当だよ」
ここに来てようやく真摯に、誠実に言葉を紡ぐ。
それが伝わるかは定かではないが、かの主人公に少しでも心の隅に留め置いてくれたなら嬉しい。
なにせ主人公と敵対とか負けフラグでしかないからな!
「君と、仲良くなりたい」
「……小学生相手に何言ってんのさ」
「大人になると友達が少なくてね。どうだい、コナン君。寂しい大人を憐れんで仲良くしてくれないかな」
「別に、進んで無碍にしたいわけじゃないよ。毛利のおじさんの弟子でもあるし」
そこまで聞いてようやく、コナン君は肩の力を抜いたらしかった。
私も主人公との安定的な関係成立にほっと一息ついた。
彼との関係如何で成功する計画か否かが決まってくるからな。
月影島にも一緒に行く予定だ。
目的は観光。原作の有名シーンを見たいという以上の理由は無い。
非業の死を遂げたピアニストの遺言である暗号の規則性とかきっと降谷さんなら一瞬で把握して「『ワガムスコセイジヘ』?」と読み解いてみせるんだろうな。
ルパンに教えを受けていてその道の技術もぐんぐん伸びているようだし。
しかし最近ルパンに煽られ過ぎて血管切れそうになっているのはいただけないが。
意外と純真な正義感の強いプライドエベレスト男とルパンおじさんの相性が良いはずもない。
「うひひひひ!」と愉快そうに笑うルパンと大恥かかされた挙句「俺はもう帰る!!!」と絶叫する降谷零の姿はもうルパンのアジトの風物詩にすらなっている。
酒飲んでタバコ吸って後は寝るだけだった次元大介が「テメーらもう少し静かにできねぇのか!」と苦言を呈すほどカオスな状況だ。
回想する私を訝しげに見上げて、コナン君はクルリと背を向けた。
「まぁいいや。帰るよ安室さん。おじさんたちももう行っちゃったし」
「了解、師匠。行こうか」
コナン君は勢いよく振り返って叫んだ。
「いや待って師匠って何!?」
「僕は毛利小五郎の弟子だよ?君は眠りの小五郎だろう?」
「語弊がある!!!さっきから性格悪いよ安室さん!」
「おかしいなぁ。僕ワンコみたいで人懐こいと言われたことはあるけど、性格悪いなんて初めて言われたよ」
「それはそれでどうなのさ……。ったく、僕は師匠なんてしないからね!」
それは残念。
私が降谷さんより推理力が残念なのは本当だし、これを機に私も脳の使い方を学ぼうと思ったのだが。
探偵の師匠・江戸川コナンとか凄い豪華じゃない?
「君が師匠なら僕ももっとスキルアップできると思ったんだけどなぁ、いや本気で」
「却下!ほら、くだらないこと言ってないで早く行くよ!」
「はーい」
そんな感じで私たちは帰路に就く。
夜の道は暗いけれど、毛利小五郎の運転するレンタカーの中は賑やかで快適だった。