バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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太閤恋する名人戦①

 

 無事ウルフドッグの任務は終わったわけだが。

 

 組織では、概ね私たちの新たなやり方は好意的に受け止められた。

 

 というか、ジンなどは「ねぇ見て見て見て!うちのワンちゃんはこんなに賢いんだよ!!!」的サムシングで他の幹部に自慢して回っていた。

 恥ずかしいからやめてくれ。

 幹部陣も微笑ましそうに受け取るな、降谷さんなんて屈辱のあまり憤死しそうになっていただろうが。

 

 まぁ、それはともかくだ。

 

 最近、降谷さんが表に出ていることが増えた。

 

 「俺もたまには羽を伸ばしたい」とか色々理由をつけて、公安も組織の仕事もセーブしているようだ。

 公安は少なくはならないが、降谷さんが全て賄う形で決着。

 

 この間の飲み会ではジンとウォッカに記憶喪失を打ち明けたので、そちらも対処済みとなる。

 

 ジンもウォッカも私を随分心配してくれて、「お前は休暇を消化したがらねぇ」などと苦言を呈される始末。

 とんとん拍子に仕事が少なくなって、私もなんだか拍子抜けだった。

 

 ウォッカはいつもの通りの気遣いマンであったが、意外だったのはジンの方だ。

 ジンは私の記憶喪失に随分狼狽えていて、酒をこぼしたりおつまみを落としたりと露骨に動揺していた。

 落ち着け、それタバコ逆だから。

 

「例の任務も覚えてねぇのか、あれだ、お前が初めて敵のモツを壁に飾った…」

「……うーん、すみませんジン、覚えがなく…」

 

 あれってどれだよ。

 しかも「今度動画持ってくる」などと言ってジンはメモリアルムービー鑑賞会を設定してくるし。

 そのスプラッタ映像はしまってくれ、心底心配してる目でこっちを見るな頭可笑しくなるわ!

 

 ああ、それと私の三大仕事先の最後の一つことルパンについても話しておかなければ。

 

 ルパンの方に関しては、気がつけば降谷さんが連絡を済ませていて、不定期の休養が与えられる運びとなった。

 元々気が向けば集まるタイプの一味がルパン達だ。

 そこまで不自然ではない流れになる。

 

 加えて、昨日朝には目が覚めたらお見舞いの品ことビックジュエル(盗品)が枕元に置いてあった。

 気配には聡いつもりだったが、寝ている私達がまるで気付けないレベルの隠密ってルパン半端ねぇな、などと思う次第である。

 しかも私宛の手紙まで残してあった。

 

 内容は『初めまして安室ちゃん!』から始まる自己紹介と優秀だったというお褒めの言葉、そして五エ門が悲しんでいるからゆっくり療養しろとのご心配の言葉が添えてあった。

 

 というか、改めて五エ門に師事していたと言う事実に戦慄を覚えざるを得ない。

 えらいこっちゃ。道理で体が尋常じゃない駆動をするわけだよ。

 五エ門の弟子ということは、最低限弾丸斬りぐらいはせにゃあかんだろうが……。

 

 一応私の身体能力なら、全力で取り組めば弾道に武器を滑り込ませて弾くぐらいはできるだろう。

 しかし、戦闘ヘリの一斉掃射を全て切り落とすとなると、一体どれだけの絶技が必要か。

 

 考えることが多過ぎて身が入らない日々に、私は降谷さんの内側でうーんと頭を抱えるしかない。

 

 降谷さんもそれを分かっているのか、表に出るのに積極的だ。

 私のフォローをさせてばかりで申し訳ないと思いつつ。

 同時に、こうして私を必要としなくなる降谷さんを寂しく思う私もいる。

 

 転生者なんて流れものに頼る事なく自分を貫けるのはいい事なんだが、やはりエゴというやつは如何ともし難いものである。

 

 

 今日もまた、降谷さんが前に出たまま阿笠博士達と一緒に明治神宮に来ている。

 

 子供達は私に次々にじゃれつき、代わる代わる肩車を強請ったり腕を引いたり。

 コナン君の影響か、年相応よりもずっと利口に見えるが、それでも小学一年生。

 小生意気かつ可愛らしいことこの上ない。

 

 ただ、やはり私と違い降谷さんが表に出ていると雰囲気が固くなることは避けられない。

 やや遠慮がちになった子供達の様子から、コナン君も降谷さんが表に出ていることに気づいたらしい。

 

 「どうしたの、ゼロさん。最近ずっと表に出てるよね?」と興味津々に聞いてきた。

 

「なんのことかな、コナン君?───うん。そうだよ、最近はゼロが表の担当をすることになってね───だからお前はコナン君に是が非でも隠し事をしない方針はなんなんだ?」

「あはは。そういうことなら、もっとゼロさんはフレンドリーに振る舞ったほうがいいよ?なんかこう、笑顔だけど人を寄せ付けない感じだし」

「……そうか。安室ほど俺は人好きとはいかないからな、要精進、か」

 

 降谷さんが悔しそうに視線を逸らした。

 自分ならできるというプライドと自信があったが、それが達成されない現実に焦れている様子だ。

 このひと基本何でもできるもんな。

 できないことの方が少ないため、努力しても達成されない状況に慣れていないんだろう。

 

 ちなみに、この安室としての日常が最近の基本の私達の仕事となっている。

 コナン君がとんでもないことに巻き込まれないか見張ったり、子供達と遊んだり。

 ちょっと本格的にプー太郎に近くなってきたが、金に関しては問題ない。

 

 峰不二子さんからの依頼である宝石花の作成は続けているため、口座には自由に使える金が唸っているからな。

 

 地味にその金の一部は阿笠博士に流し込み、自由に研究に使ってもらっている。

 あの人は夢を追いかけて自由に発明してもらうのが一番だ。

 その中で時折金鉱石も霞むほどの大発明があるだけで、100倍以上のペイになるし。

 

 それが毎度事件に巻き込まれるコナン君の助けになるのなら、ここまで有益な金の使い方も流れもあるまい。

 

 そして今日もまた、やはりというべきか、鳴物入りで事件の方から飛び込んできた。

 

 いかにも不審そうにあたりをキョロキョロ見回し、焦りからか額に汗を滲ませる和装の男が一人。

 ここまで走ってきたのか、眉を顰めて肩で息をしている。

 

 その様子にすぐさま気づいたのか、コナン君が男に駆け寄った。

 

「大丈夫、太閤名人?何かあったの?」

「コナン君!?どうしてここに?」

「僕たちはパワースポット巡りだよ。それより、今日は山梨で名人戦の日だよね」

「そ、それは……いや、別に」

 

 羽田名人は口篭った。

 これでは何か事情があると言っているようなものだ。

 降谷さんはコナン君の隣に立ち、にっこりと微笑んだ。

 

「……貴方は?」

「僕は安室透、探偵をしています。見たところ、何か話せない事情がある様子。ですがそこまで気にする必要はありませんよ」

「どういうこと?」

「先入観、ですよ。今日太閤名人は名人戦で山梨にいるはず。そのように周囲が考えている限り、あなたは存在そのものが人々の死角になる」

「つまり、僕が羽田秀吉であることがバレることはない、と」

「ええ」

 

 胡散臭い笑顔だ。

 降谷さんの演じる安室はどうにも怪しげというか、腹の底を見せない側面が強い。

 じっとこちらを見つめ返した後、羽田名人はにっこり笑い返した。

 信頼はできないが、言っていることは一定程度信用がおけると判断したか。

 

 うーん、でも警戒されているなぁ。

 降谷さんは圧倒的に心が硬いというか、反射的に人との距離を保とうとするんだよな。

 それが自然と「下手に踏み込まないほうがいいんだろうな」と相手に察させてしまうのだ。

 

 表面上は親しみやすいのに踏み込ませない、どうにも掴みづらい、付き合いづらい顔となってしまっている。

 降谷さん自身、根本が人間不信なのだろうとは思うのだが。

 

 まったく、以前の私はこんな人とどうやって仲良くなったのやら。

 

 私は内側でじっと羽田名人を観察して、今後この切れ者とどう接していくべきかを思案した。

 

 彼、羽田秀吉は赤井さんの弟かつ最上級の知恵者だ。

 その思考速度はコナン君以上、あるいは工藤優作と並ぶかそれ以上かもしれない逸材だ。

 できればいい関係を築きたいが、情報を開示し過ぎれば民間人を危険に晒すことになる。

 特に彼は身を守る術を持たないから……ふむ。悩ましいな。

 

 羽田名人は私とコナン君とを交互に見てから、覚悟を決めたらしい。

 自身の巻き込まれている事件の一端を、ようやく話し始めたのだった。

 

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