バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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RE:ゼロの執行人②

 

 私たち、逮捕されたなり。

 

 突然にやってきた降谷さんと面識のない公安の人員は、硬い表情で令状と形式的な宣言をして。

 あっけないほど簡単に手錠はかけられた。

 

 少々想定外だったのはそこにメゾン木馬の大家である杉浦さんが居合わせたことだ。

 

 彼は以前、木馬荘で火事が起きた時に私に助け出されていたらしく。

 それをとても恩義に思っており、慌てて駆け込んできてくれたのだ。

 

 「何かの間違いですよ!安室さんはそんな人では…!」と必死に庇う大家さんを尻目に、公安の人員は愛想笑いもせずに私を引っ立てるだけ。

 公安としてもかの凶暴なウルフドッグの連行に緊張しているのだろうが、流石にこれはいただけない。

 出所後は大家さんにも菓子折りを持って詫びに行かねば、と私は降谷さんと頷き合った。

 

 

 ちなみに。

 私の名はなるべくメディアには出さないように、黒田管理官には手は回してもらっている。

 特に「毛利小五郎の弟子」という部分は念入りに消す予定だ。

 知っている人は知っているため、これで不用意な誹謗中傷が全て防げるとは思っていないが……。

 

 だが、こんなことで不用意に毛利さんに迷惑をかけるのは本意ではないからな。

 できる限りのことはしておきたい。

 

 今回、私達が大人しく逮捕される選択肢をとったのは、公安への忠誠心を示す意味が大きい。

 

 実際のところ、私が秘密裏に海外へ飛ぶことなど楽なことだ。

 組織のルートでもルパンのルートでも、国外脱出の手など数えきれないほどある。

 それでもなお自ら不自由を選んだのは、あくまで公安の意向に沿っていると示すため。

 

 彼らが私達を犯人として逮捕するのだというのなら、その決定に従うのだという姿勢を彼らに見せるためだ。

 

 それに公安としても、「公安の汚点」とも呼ばれる殺人鬼が表沙汰になるのは避けたいだろうし。

 しかも潜入捜査中の犯罪が明るみに出るなど、世間で変な議論になりかねない。

 

 そのためか、ここのところの取り調べは基本事務的なものがほとんどだ。

 よくある泣き落としや脅しはまるでない、淡々としたものであった。

 

 この逮捕の本懐が私の動きを封じることであることをまざまざと表していて、それが心を重くもしていた。

 

 逮捕から2日ほど経ってからのこと。

 突如面会の時間が入れられて、降谷さんが「誰だ?」と顔を上げた。

 

 灰色の面会室に移動させられ、少々の時間が経過する。

 がちゃり、とドアノブを回す音だけが静かな部屋に響く。

 

 その中にあって、毛利さんの声は鮮烈な、一陣の風のような清涼さと性急さを纏っていた。

 

「安室!無事か!」

「……毛利先生、に、蘭さんまで!一体どうして」

「お前があんな大それたことやるはずがねぇってわかってたからな。師匠として助けにくるのは当たり前ってもんだ」

「それは、……」

 

 降谷さんが口籠る。

 

 「安心しろ。よく頑張ったな」と真剣な顔で毛利探偵がいうものだから、不意に涙が込み上げてくるような心地に囚われてしまう。

 

 降谷さんも同じなのか「毛利先生はまったく、敵わないな」と笑いを漏らして顔を上げたのだった。

 コナン君も隣で青い瞳を真摯な光で満たしながら、強く頷くものだから心強くて仕方がない。

 

「犯人は俺が必ず捕まえる。だから安心して待ってろ、安室!」

「……はい、毛利先生!」

「それと、今回はお前の弁護士になるやつを連れてきたんだ」

「弁護士?……まさか」

 

 もう一人、毛利さんの後ろ側から顔を見せる人がいる。

 小柄だが凛として、強い意志を感じさせる瞳は蘭さんにそっくりだ。

 

 「ええ、お久しぶりね」と言って微笑むのは妃英理。

 現在別居中の毛利さんの妻にして、法曹界の女王、敏腕弁護士その人だ。

 

「いつも蘭に代わって家事をしてくれていると聞いているわ。私からも礼を言わせて頂戴」

「そんな!僕はただ毛利先生の授業料の一環として家事を手伝わせていただいているだけで…」

「このダメ人間にためになる授業なんてできっこないわよ」

 

 なかなか辛辣な物言いに、横で毛利さんがぐぬぬと唸っている。

 蘭ちゃんがぐっと拳を握って妃さんと私とを交互に見た。

 

「お母さんがついてるから、絶対大丈夫ですよ、安室さん!」

「はは、ありがとうございます、蘭さんに妃弁護士」

「私にできる限りのことはするわ。それで、聞きたいのだけれど」

 

 妃弁護士は一呼吸おいてから、私をまっすぐと見た。

 

「やっていないのよね、貴方は」

「はい。僕はやっていない。そもそもエッジオブオーシャンを爆破する動機がない」

「でしょうね。しかも国際会議は一週間後。意図がわからない」

 

 ふむ、と妃弁護士は考え込んだ。

 今回のこれは難しさで他の追随を許さない公安の案件。

 今後の出方を考えているのだろう。

 

 降谷さんがやや様子を伺うように慎重に口を開く。

 

「個人的に、これは警察を狙った攻撃ではないかと考えています」

「警察?」

「あの時間帯にいるのは警察だけだ。国際会議場の爆破は警察の威信を失墜させるのに十分です」

「……なるほど。となると、組織的な犯行である線も十分に考えられる」

 

 コナン君が目を細めている。

 今回のこれは私怨も混じった思想犯、そして典型的なローン・オフェンダー(個人テロ)である。

 私も原作知識をもとに、できる限りの支援をしようと表へと出る。

 

「発火元はたぶんだけど、IoT化の一環としてガス線にアクセスできるようになっていたから、そこに不正アクセスした可能性は高そうだよ」

「!そうか、遠隔でも……そうなると犯人の特定は現状難しそうだね」

「そうなるね」

 

 今回の犯行は、事前に犯人を特定するのが非常に難しいものとなっている。

 匿名通信ソフトNorの匿名化解除方法なんかは、NAZUより教えてもらわない限りアクセスの解析が難しい。

 その点を解決したとして、無料Wifiから捨て端末でアクセスされてしまえば犯人の特定は困難を極める。

 

 ネットを介した犯罪の厄介さが全面に出た形になる。

 

 面会時間が過ぎ、コナン君達は名残惜しそうに口々に再会を誓って面会室の薄い扉を潜っていく。

 

 ああ、なんて温かな人たちなのか。

 単なるポッと出の不審な男をこうも親身に慕ってくれるなんて、少し心配になるほどだ。

 

 降谷さんが表で目を閉じて椅子に深く腰掛け、背もたれにもたれかかってとぷんと中に沈み込む。

 戻された留置場の個室は狭苦しく、ただベッドに腰掛ける程度しかやることもない。

 

───……暇だな、中で百人一首でもやるか?

───それ僕が一方的にボコボコにされるやつじゃないですか。もうちょっと手心を加えてくださいよ

───なんだ、自信がないのか?

───無いに決まってるでしょう!普通に日本トップクラスの腕前じゃ無いですか貴方!

 

 くすくすと笑って降谷さんは深層心理内に佇む武家屋敷の中央、私たちの憩いのリビングに降り立った。

 そして畳敷の底に座り込むと、私を肘で小さく小突く。

 

───お前は俺なんだから、この程度こなせて当然だ

───無茶言わないでくださいよ……僕らはお互いに苦手を埋め合う感じでいいじゃないですか。僕の方が苦手が多いですけど

───は?俺の方が助けられている点は多いが???

───なんでキレ気味なんですか

 

 理不尽にキレられた私はさっさと散らかったリビングを片付け、畳敷の床の上にカルタを並べ始めることとする。

 百人一首を御所望のようだが、一身上の都合でここはいろはガルタにすることとしよう。

 

───では、次の取り調べは三十分後ですから、それまで対戦と行きましょうか

───………子供用じゃないか。なんだこれ

───少年探偵団の皆用に前に買ったやつの写しです。ほら、二週間ほど前にやったアレです

───ああ、あれか

 

 随分訝しげにカルタを一枚手に取って裏表を確認している。

 いいだろ別に子供用で。私は実質一歳児の赤ちゃんなんだし、などと思ったのがいけなかったのか。

 

 くっくっく、と笑いを漏らしながら降谷さんが悪質な笑みを浮かべた。

 

───そうだな。今のお前は一歳児の赤ちゃんみたいなもんだしな……一歳か。俺が一歳の時は…まだ物心付く前だしなぁ

───悪口、聞こえてますよ

───レゴは誤飲の可能性もあるし、もう少し成長してからだな。音の出るベビーウォーカーとかか?

───はっ倒されたいんですか

 

 ジャッと刃を潰した鉄爪を具現化すれば、降谷さんは両手をあげて降参のポーズをとった。

 そして私の向かいに座ってから、ぼんやりと並べられていく札を眺める姿勢に入った。

 

 静かに一枚一枚、札が並べられていく。

 

───コナン君は、力になってくれるだろうか

───彼は身内には全力で取り組む人間ですから、問題ありませんよ。それに毛利探偵もいます

───……身内?俺たちがか?

 

 意外そうに降谷さんが瞬いた。

 これだけ家族感を出しておいて、彼が助けない選択肢はないだろうに。この人も変なところで鈍感だ。

 

 これは私見だが、コナン君の中での人の区分は割と大雑把に括られている。

 具体的には蘭ちゃん、敵、味方、その他ぐらいか。

 

 味方にいる限り、彼は分け隔てなく全力を注ぐだろう。

 特に今の私たちは蘭ちゃんに近しい。

 特別枠としてより一層の注力が期待できる。

 

 ……短いが、間違いなく私たちはそれだけの絆を結んできたのだ。

 

 こんなふうに打算に満ちた思いを巡らせてしまうあたり、私は彼の信頼に値しない、とは思ってしまうところだが。

 

───彼は全力を出しますよ。きっと、そうして事件を迷いなく解決していく。これまでそうだったように

───そうか。なら、心強いな

 

 降谷さんは少しだけ笑って、具現化した読み上げテープをぽすぽすと叩いた。

 

───ところで、こんなものまで用意していたのか。どれだけやりたかったんだ

───以前百人一首でボコボコにされたお礼参りをしたくて。こそこそ用意していました

───そうか。受けて立つ。いろはガルタになった程度で俺に勝つ気でいるなんて、100年早いことを教えてやろう

 

 わちゃわちゃと次の取り調べで呼ばれるまで30分。

 私は結局一枚も取れぬまま、降谷さんにコテンパンに打ちのめされた。

 

 しょげかえりながらカルタをしまう私に、降谷さんは実に満足げな笑みを浮かべたのだった。

 

 ちくせう。

 




・毛利探偵
眠らないしかっこいいので妃弁護士の好感度がガンガン上がっている。
事件解決後、この上がりきった株はガクンと下がり、再び別居することになる。

・コナン君
ルパンに電話した。ウルフドッグ勾留中の相棒は呼び出されたルパンになる模様。覚醒した毛利のおっちゃんを添えて。
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