バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
勾留中は暇だ。
外は警官によりガチガチに固めてあるし、面会どころか取調べの回数だって限定的。
ウルフドッグの所業にもルパン一味の件にも触れずとなると、取り調べる必要性すら薄いのはわかるが。
なんのために私はここにいるわけ?と少々虚無感に襲われざるを得ない。
一応、これでも公安側は私がルパン一味だということはわかっている。
かの斬り裂ける大妖狐、フォックステイルがどれだけ人外じみたスペックの怪物か、理解はしているのだ。
万が一にも逃げ出されぬようにバリスティックシールドで固めた警備員が留置場をわんさか固めているし、私の両手も常にしっかりと固定されている。
暇つぶしに、足をパタパタと揺らしながら深層心理内で内職している降谷さんへと声をかける。
───ゼロ、例えばですけど、あなたならここから逃げ出せます?
───俺だけでも部屋から出ること自体は可能だ。鍵や手錠は簡易的なものだしな。
───そのあとは?
───お前に代わって警備員を薙ぎ倒しながら小ぶりでも何か押収物なんかの刃物を手に入れればいい。そこから壁を切り抜けて突破できる
───なるほど。僕では手錠が突破できませんし、やはりゼロがいてこそですね
───馬鹿言え。俺だけでこの数の警備員を突破できるはずがない。お前がいてこその間違いだよ
などと和気藹々と話しつつも、降谷さんは手元の資料に集中したままだ。
どうやら以前に見た羽場二三一の資料を読み返しているらしい。
羽場の件は降谷さんが判断を下したからな。
今回の件と関わってくると進言したのは私なのだから、降谷さんの行動は当然のことだ。
と、その時のことである。
唐突にポッカリと天井に穴が空いた。
ぽっかりと切り取られたように黒い正円が天井に出現し、そこからおもむろにルパンが降ってくる。
「!?!?!?」
「よぉ、安室ちゃん達!久しぶり〜!」
ニヤッと笑う姿は余裕綽々。
一片の疲れすら見せず、隣人に挨拶にでもきたかのような気軽さで留置場に侵入する姿はまさに神出鬼没の大泥棒。
さすがルパン三世、自由度が桁違いだ。
綺麗な穴だから、もしかしたら上に石川五エ門が控えているのかもしれない。
それとも事前に仕込んでいたか。
思えばここに案内してきた警官の人もサル顔だった気がしないでもない。
疑えば疑うほどドツボにハマるあたり、まさにルパン三世である。
ルパンは友達の新居に遊びにでもきたかのように気軽に部屋を見渡して口を開いた。
「それにしても、こーんな狭苦しくて辛気臭いところによく義理だけで入ってられるってもんだ。降谷ちゃんてば相変わらず律儀だこと」
「下手に抵抗すれば公安との軋轢はより大きくなる。俺たちが公安の制御下にあると示すのは重要なことだ」
「だからぁ、それが律儀だって言ってんの!」
やれやれ、と頑迷な小僧に呆れるような表情でルパンは肩をすくめた。
そしてチラリと外を確認してから、何処からともなく取り出したパイプ椅子を広げて座る。
さっきまで持ってなかっただろそれ。
何処から取り出したんだ。
「捜査は順調のようだぜ。この分なら明日にでも釈放されるんじゃねぇか?」
「ッ!爆破テロの真犯人に目処がついたということか!?」
「あのお子様ホンット人使いが荒くて困っちゃう。急に連絡してきたかと思えば『Norの匿名化解除っておじさんできる!?』だとよ」
「まぁ俺様プロだから?そのぐらいちょちょいのちょいだけど」とルパンはパイプ椅子をギシギシと言わせながら頭の後ろで腕を組んだ。
随分こき使われたのだろう。
コナン君は基本信頼している人間の扱いが雑だからな。
集中すると事件に一直線というべきか。
「それに惑星探査機へのハッキングをしろだとかやれあそこへ連れてけだとか。忙しないったらありゃしねぇ。それにあのちょび髭も無茶ばっかり言いやがる」
「コナン君に協力してくれていたのか。毛利先生にも……すまない。この借りは必ず返す」
「おう。安室ちゃんともども、今後しっかり働いてもらうからそのつもりでいろよ」
やや目を細め、ふっと笑ったルパンの表情にある無形の深みの暖かさよ。
「部屋の陰気臭さがうつる前に出てこいよ。待ってるぜ」
「………言われなくとも」
私たちは、思ったよりずっとルパンに随分な心配をかけてしまったようだ。
これは本気で大きな借りを作ってしまったな。
この閉鎖された空間において、捜査の進捗はまるでわからない。
昨日も今日もまるで違いない、形式的な尋問が繰り返されるばかりで、日付の感覚すら曖昧だ。
しかしこの口ぶりからすると、外では大きな捕物が行われていたらしいことは痛いほどよくわかった。
「あ、それと。あのまっくろくろすけ共にはちゃんと言っとけよ」
「何がだ?」
「警視庁を爆破しようとしてやがったからな。あのお子様と俺でちょいとばかしやりあった。すぐ引いたあたりは賢明な奴らなんだろうが、随分な愛犬家だこと」
にしししし、と含み笑いでもってルパンは組織の連中をそう揶揄した。
愛犬家ってなんだ愛犬家って。
気になって、私は降谷さんに代わり深層心理から急浮上する。
「まさか、ジンが僕達を取り戻そうとして行動を起こしたということですか?」
「おっ、安室ちゃん初めましてー。そうそう。独断専行らしくてよ、RUMとかいう怖ぁいおじちゃんに怒られてたぜ」
「ジン、馬鹿な真似を……」
思ったより冷徹な声が出てしまう。
ただの同僚でしかない人間に、そこまで心を砕く人間だったとは思いもよらなかった。
それとも、私の記憶のない間に確かな絆を結んでいたのだろうか。
記憶のない私には判断がつかない。
RUM直々のお叱りとなれば、いくらジンといえど処罰は免れないだろう。
まっくろくろすけども、とルパンは言っていた。
複数幹部が関わっていたということか?
それとも独断で下っ端を動員した?
悪い想像に思考が空回りする。
この状況では確かめる術もないのが焦りを加速させる。
ただ、どちらにせよ詮の無いことだ。
私がNOCであるという事実は変わりない。
何がどうあれ裏切る相手であり、今もなお裏切り続けている相手でしかないのだから。
じっと俯く私に、ルパンが大袈裟に首を振って「損するタチだこと」と言って立ち上がり背を向けた。
取り残されたパイプ椅子がポツンと取り残される。
「じゃあな、出所祝いはまた送っとくから、よろしくな!」
「……ああ、すまなかった。ルパン三世」
降谷さんが深々と頭を下げた。
私も同じく、深層心理の内側で頭を下げる。
その後は予想通りの流れだけだった。
一夜明けて朝、私は何も言われることなく外へとあっさり放り出された。
謝罪もなく、また釈明もなく。
ただ「出ろ」とだけ硬い顔で言われて放置された私たちは、久しぶりの朝日が眩しくて立ち尽くすしかない。
一応釈放の連絡は行っていたのか、迎えにきた毛利探偵とコナン君が私たちをそっと出迎えてくれた。
コナン君と毛利さんもあちこち傷だらけ。
包帯にガーゼにまみれた姿は痛々しくて、思わず言葉を失ってしまう。
頬にガーゼを貼り付けたコナン君が、一歩出てわたしたちにやわらかく微笑む。
「お帰りなさい、安室さん」
一瞬、降谷さんは口籠った。
家族でもないのにこれを言っていいものか。
だが、彼らが望んでいるのなら、そう返事をするのが筋だろうとわずかな迷いを振り払って。
「ただいま。コナン君に毛利先生」
・劇場版ルパコナ2
サミット会場を狙った爆弾犯をルパン&コナン&毛利探偵で追うミステリーアクション。
おっちゃんの正確無比な銃撃戦に次元が「やるねぇ」とか感嘆の声をあげたり、ギリギリの一瞬で他国の軍事衛星にハッキングして落下する惑星探査機を狙撃するルパンなど見どころ満載。