バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
釈放後は毛利さんの家で出前をとってのお祝い宴会が開かれることになった。
毛利さん一家だけでなく、園子嬢や少年探偵団の皆まで来ての一大事業だ。
わいわいと騒ぐには探偵事務所は手狭で、会場は途中で阿笠邸に変更になった。
その中心でもみくちゃにされるのは降谷さんと私である。
子供達に登られたり、毛利先生に肩を組まれたり。
その歓迎具合があまりに申し訳なくて、無理を言って付け合わせの料理は自分で振る舞わせてもらったりした。
降谷さんと交代交代で大量に作った力作は、皆にはかなりの好評だった。
しかも食材を自分で買い込んだのに気付いた毛利先生が「悪いな、安室」と金一封を渡してきて、もう嬉しいやら情けないやらで感情が大渋滞だ。
何もかもが温かくて、降谷さんと一緒に我知らず笑い合ったものだ。
組織の方も、出所して真っ先にジンから「災難だったな、ウルフドッグ」と連絡が来た。
処罰で高難易度の任務を与えられてジン自身も忙しいだろうに、手土産まで持ってメゾン木馬に訪れるのだから、この人も大概なものである。
ベルモットも大層心配していたようで、今度都内の超高級ディナーに誘ってくれるそうだ。
正装で行かなければならないのが少々面倒臭いのだが、ベルモットは「お祝いに仕立ててあげるわよ、そんなの」と服込みで奢りのつもりらしい。
まるまる1日は着せ替え人形になることを決意して、私は他人事のようにくつろぐ降谷さんをゴスゴスと肘打ちした。
まぁ、そんなふうに方々との絆を強めた延長線上に今がある。
本日は長野観光のために毛利さん一家と旅行だ。
ここでなぜか私もご一緒することになったのが謎ではあるが。
もちろん私は最初、家族水入らずでと断ったのだが。
「普段から料理作ったり掃除してもらったり世話になってんだ、もう家族みてーなもんだろ」と毛利探偵に無理やり連れてこられる形でここに来ている。
あったけぇ…などと降谷さんと一緒に拝み倒して、ありがたく同行している今現在だ。
きっと、私が一人暮らしで家族もいないと聞いて気を遣ってくれているのだろう。
私たちは一人暮らしではあるが、私たちは形式上二重人格であるため特に一人であるという感覚はなかった。
しかし、やはりわいわいと旅行を楽しむのは良いものだ。
川中島の古戦場跡をゆったりめぐる歩き旅は風情そのもの。
スマホで昼に食べる信州そばを選定する大役を任されたので、私は降谷さんと共にスマホを眺めながらああでもないこうでもないと店を物色していた。
そこで、不意に背後からかかる声に皆が振り向いた。
「久しぶり、蘭ちゃん」
「由衣刑事に大和警部!どうしたんですかこんなところで!」
振り向いた先にいたのは長野県警の三人組、すなわち由衣刑事に大和警部、諸伏警部の三人だ。
まさか事件じゃねぇだろうな、と訝しげな毛利探偵に由衣刑事は苦笑したようだった。
どうやら聞き込み調査のためにここにやってきていたらしい。
これは……事件があってそれどころじゃなくなり、信州そばは食べられなくなるフラグ…ッ!
私がゲンナリしているのを降谷さんが肩をポンと叩いて慰める。
───信州そばは事件解決後でも良いだろ?
───でもどうせ帰りにちょっと寄る形ですよね。狙いの店には行けないんだ…
───まあまあ、気にするな。また来ればいいじゃないか
───信州そば……
などと謎のコントをしている間にも、コナン君が鋭い目を大和敢助警部に向けている。
どうやら「大柄で隻眼」という条件に当てはまる人物、つまりはRUMを探しているらしい。
私は気を取り直してサッと表に出て、コナン君へ耳打ちした。
「違うよ。彼はRUMじゃない」
「……なら、安室さんが教えてくれる?誰がRUMなのか」
「いいよ」
「いいのかよ!?」
「相変わらずノーガード戦法だなアンタ…」とコナン君に呆れられてしまった。
相変わらずって言われるほどコナン君に何かを教えた覚えはないのだが、やはり記憶を失う前の私もこの手の対応は同じだったのだと思われる
というか、コナン君は天下の主人公。
情報を堰き止めておくとどんなスリルショックサスペンスが起こるか分からないし、この対応は当然なのよね。
私が内心で言い訳しているのをじっとり横目で降谷さんに見られながら、挨拶のため一歩前に出たのは諸伏警部だ。
「ところで、そちらの方とは初めまして、ですよね。長野県警の諸伏高明と申します」
「……安室透です。しがない探偵をやっています」
「コナン君が信用するほどの人物なのであれば、さぞ腕の立つ探偵なのでしょう。何かありましたらぜひ力をお借りしたいところです」
「そんな、僕は単なる毛利先生の弟子にすぎませんよ」
降谷さんの謙遜に、諸伏警部が鋭い視線を向けた。
言うなれば「初めましてじゃ、ないですよね。でも、そちらには事情がありそうだ。ここでは黙っておきましょう」というメッセージをバリバリに含んだ表情というか。
降谷さんと同じかそれ以上に根が激情型の諸伏警部だ。
こうして引いてもらっている分、ありがたいと思うべきなのだろう。
と、そんな話をしているうちに追加の人員がやってきた。
長野県警の刑事さん達三人組だ。
大和警部達とは班が違うようだが、確執もあるようなので仲がいいとは言えないように見える。
なるほど、と私は一つ頷いた。
これは原作イベント、「県警の黒い闇」だ。
たしか、この長野県警の刑事さん達は拳銃の横流しに手を染めていて。
それによって起きた犯罪被害者の遺族が、復讐のために刑事さん達を殺すのだったか。
用事のために去っていく刑事さん達を深層心理で確認しながら、私はそのまま見送った。
今は毛利さん達のため、川中島の戦場巡りに精を出すべき時だからな。
犯罪者の生き死ににかかずらうほど、私たちは暇ではない。
なお、戦場巡りという名目で山本勘介の名所巡りになってしまったのだが、案内が由衣刑事だから仕方ないものとする。
由衣さんの無意識のラブコメ要素が起こした必然というかなんというか。
道中、若干頬を染めてチラチラと大和警部を見る場面もあったりして、蘭ちゃんなどニッコニコであった。
ちなみに、諸伏警部なんかは露骨なじと目で大和警部を睨みつけていたのが味わい深い。
あれは間違いなく「じれってぇなコイツら!」と思っている顔だ。
早く幼馴染の諸伏警部が責任持ってやらしい雰囲気にしてくれ。拗れたらどうする気だ。
そうして、千曲川の橋まで来たあたりで、ものすごい臭いが鼻をついた。
肉を焼き過ぎた後の炭に似た匂いと、血の残り香。
私が顔を顰めたと同時に、降谷さんが深層心理で「なんだこの匂いは!?」と悪態をついた。
蘭ちゃんが心配そうにこちらを振り返る。
「どうかしました、安室さん?」
「……いや。その、凄い異臭がしたような気がして」
「異臭、ですか?」
蘭ちゃんが目を閉じて嗅覚に集中するも、この臭いはわからなかったようで首を傾げている。
だが、ここには間違い無く死体がある。
焼かれて砕かれ、灰と化した肉の匂いが、下から漂っているからだ。
降谷さんが辺りを見回せば、橋の欄干にビニール袋が引っかかっているのを見つけることができたようだ。
「あれです!あれが異臭の元だ!」
思わず駆け寄って手を伸ばすが、意外と下の方に繋いであって手が届かない。
なぜ降谷さんがこんなにも必死になっているか分からないまま、大和警部達が眉間に皺を寄せている。
そうこうしているうちに水に袋が落ち。
────中から溢れたのは、人の首と血糊で真っ赤に染まる、千曲川の姿であった。
・ジン
いつもの店でバーボンに好きなだけ奢った。
ほぼほぼ「俺の酒が飲めねぇのか」のノリで高い酒を貢ぎまくり、思い出のムービー(編集担当:ウォッカ)を見ながら深夜まで管を巻いていたようだ。
ジン「お前の爪はいつだって鋭い。わかるかバーボン、闇の最も深い場所に…」
バボ「(ポエム早く終わらないかな…)」