バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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県警の黒い闇②

 

 死体発見からの警官たちの動きは迅速だった。

 

 素早くあたりを封鎖し、応援を呼んで現場検証に入る。

 そうして現場に到着した黒田管理官を、私達は知らぬふりで初対面の様相で迎え入れた。

 

 黒田管理官はチラリと私に目を向けた後、上原刑事に何食わぬ顔で話しかけた。

 

「ふむ。第一発見者は上原達だと聞いていたが…民間人もいたのか」

「ええ。彼がはじめに死体の異臭に気がついたので、一部始終は私たちも確認しています」

「そうか。……名前をお伺いしてもよろしいかな」

「毛利探偵の弟子をしています、安室透です。今回は驚きました。変な匂いはしているとは思いましたが、まさか死体だなんて…」

 

 「周囲に聞かせるための会話」が上滑りして、どこか奇妙な空気で周囲を満たしていく。

 

 またコナン君が驚愕に満ちた顔をしているが、これはたぶん誤解しているなぁ。

 「少し失礼」と言い置いてから、こそこそとコナン君を連れ出して耳打ちする。

 

「黒田管理官は僕の上司だよ。安心して」

「そ、そうなんだ……それ、意味がどっちにも取れるんだけど」

「うん。今のは僕の言い方が悪かった。───俺の公安としての上司だ。つまり、裏の理事官だな」

「っ!……なるほど」

 

 コナン君がようやく得心がいったという顔で頷いた。

 きちんとRUMがいたら教えるんだから、見る人見る人疑わなくてもいいのに。

 

 少しだけホッとした様子でコナン君がぎこちなく微笑んだ。

 

「それにしてもすごい偶然だね、組織のNo2と裏の理事官がどちらも同じ特徴を持つなんて」

「理事官もかつて色々あったそうだからな。組織がらみの事件で長年意識を失っていたそうだ」

「それって!?」

「詳しくは俺も知らない。詳しくは黒田管理官に直接聞いてくれ」

 

 チラリと後ろにいる諸伏警部を確認すると、彼は依然として私を鋭く観察していた。

 

 以前、彼の弟──諸伏景光の死亡を偽装した際、降谷さんが彼に死亡の連絡だけはしておいたと聞いている。

 斬鉄により無惨に切り裂かれた携帯電話を、彼宛に送ったらしい。

 

 ここから秘された裏社会の恐怖の象徴、ウルフドッグに辿り着くのは至難の業だが……。

 彼の熱意と鋭い頭脳にかかれば、辿り着けないわけでもない。

 

 …………。

 

 恨まれただろうか。

 

 だが、今彼に諸伏景光の生存を知られるわけにはいかない。

 双方の身の安全のためにも、今諸伏景光が生きているのだとバレるわけにはいかないのだ。

 

 

 そんなふうに葛藤している横で、長野県警ではキツツキ会と呼ばれる集まりについて話題は移っていた。

 その実態が拳銃横流しの甘い蜜を啜る者たちの集まりだということを知る私は、ふむふむと内容を聞き流すことに徹する。

 

 私たちも探偵として由衣刑事と同行することになったが。

 さて、今後どう動くべきか。

 

 大和警部と諸伏警部はすでに犯人の目星がついているみたいだし、あとは追加で殺される被害者を助けるかどうかだけだ。

 

───どうしました、ゼロ

───俺は、……いや。なんでもない

 

 降谷さんが無言で長野県警の面々へと注意を向けている。

 親友を目の前で殺されたという大和警部に思うところがあるのか。

 はたまた諸伏景光の兄に合わせる顔がないと嘆いているのか。

 降谷さんならぬ我が身ではわからないことばかりだ。

 

 ……今回の「県警の黒い闇」に登場する被害者は、はっきり言ってクズである。

 

 拳銃を横流しして私腹を肥やす、警察としての使命感を忘れた悪党。

 コナン君からしてみれば、どんなクズだとして、助けるのが正解なのだろうが。

 

 そっと、みて見ぬふりをすることに私は決めて、瞳を伏せた。

 

 この世に正義があるのならば、私の手など借りずともこの犯罪者たちは助かるはずだろうと。

 神を試すような真似をして、私は静観のスタンスを崩すことなく降谷さんの隣に寄り添っていた。

 

 

 鹿野警部補が背後から首を絞められているのが見つかったのは、そのすぐ後だった。

 

 犯人からのメッセージと思われるメールも残っている。

 「キツツキは残り3羽、だそうだ」と大和警部が眉間に皺を寄せて口を閉じる。

 

 話を聞いて考え込むコナン君の前で、大和警部と諸伏警部が揉める一幕もあったが、コナン君の推理を翳らせることはなかった。

 

 余人がどう捉えるのかはわからないが、あれは見るからにわざと揉めたように装っていたからな。

 表情も声のトーンも非常に強い信頼感に裏打ちされていた。

 あれで仲違いしたと言い張るには無理がある。

 

 おそらく、警察内部に犯人がいると当たりをつけて、一芝居打つことで犯人を誘い出そうとしているのだろう。

 

 コナン君もそれを理解しているのか、鋭い視線で私に声をかけてきた。

 

「ねぇ、犯人はわかった?」

「僕はあのお芝居を見て、警察内部にいるんだろうなと思ったぐらいかなあ」

「え、犯人の目星がついてないのにあれがお芝居だと分かったの!?」

 

 コナン君が驚いたようにこちらを振り返った。

 そりゃまぁ、この程度の腹芸が読めなくてRUMと楽しく会話なんてできやしないからな。

 

「───こいつの社交界スキルは半端じゃないからな。俺も見習いたいんだが、中々習得が難しくてな」

「なんというか、見れば見るほど不思議だよね。同一人物なのに、こんなに得意不得意がはっきり分かれててさ」

「俺も自分でもそう思う」

 

 うーんと二人して悩んでいるのがおかしくて、私はニコニコと無言を貫いた。

 実態は異物混入ですまないな。

 

 

 

 事態は流れ、進んでいく。

 被害者候補である刑事さんが一人、近場の妻女山に向かったそうで、急いで警官達で向かうことになった。

 コナン君とそのお目付役の私達という二人組で黒田管理官の車に乗り込めば、私たちのペアに由衣さんが微笑ましそうな顔をした。

 

 どうも一緒に行動しすぎて、この短期間でニコイチと思われてしまったようだ。

 コナン君も、大人が一緒にいるという名目を手に入れられて動きやすいのか私にずっと引っ付いているし。

 

 さて。

 妻女山で見た大道芸については、原作を参照してもらうこととしよう。

 ようは自身が死んだように見せかけて崖下に落ち、別の死体とすり替わった赤井さんと同系列のトリックが繰り広げられたわけだが。

 そんなもの、コナン君からすれば一目で見抜けるものに過ぎない。

 

 しかし、犯人は意外と頭も切れるようだ。

 諸々のトリックもそうだし、それをうまく行動に移す度胸もそうだ。

 

 帰りの車内で、降谷さんはこっそりとコナン君と黒田管理官へと耳打ちした。

 

「───まだ秋山は死んでいないと思われます」

「やはりトリックは先ほどのクロスした縄か」

「おそらく。安室が、生命の気配が崖下で動いていると証言しています。ここで一夜を明かすのだと思われますが」

「念のため聞くが、気のせい、という可能性は?」

「気配などという感覚論が信用置けないのは重々承知しています。ですが、安室はルパン一味として石川五エ門と同等かそれ以上の気配察知の実績があります」

「そうか。ならば、確かだろう」

 

 自分でもルパンと仕事をご一緒しているなど今でも信じられないが、その実績は人に信じさせる証拠としては十分だ。

 

 少なくとも気配を消す心得のない人物の、めちゃくちゃはっきりした気配が崖下に感じられたからな。

 

 しかし、紐ありバンジーとはいえ、犯人も命を張るものだ。

 いくら死んだふりをして逃げるためとはいえ、崖の壁面に激突すれば命がないだろうに。

 

 黒田管理官が鷹のように鋭い瞳で、バックミラー越しに私を見た。

 

「お前は今後どう動く、バーボン」

「静観に徹しようかと。諸伏警部達に狙いがあるようですし、わざわざ動くまでもないかと」

「……表の事件でお前をあまり関わらせるわけにはいかないからな。いいだろう。それと」

 

 黒田管理官は言葉を切った。

 ピリッとした冷たい空気が車内に満ちる。

 

「そこの眠りの小五郎の知恵袋は、きちんと制御できているようだからな。引き続き貢献してもらうとしよう」

「……ええ。ジャジャ馬ではありますが、他の追随を許さない優秀なS(エス)ですから」

「そうか。頼んだぞ」

 

 ストレートにジャジャ馬と言われ、コナン君がぷくっとむくれて降谷さんの足を軽く蹴ったのだった。

 




・黒田管理官
公安の舵取りに大忙し。
バーボンの公安への忠誠は疑っていないため、「ここで狂犬のリードを手放すのは愚策だ」と周囲を説得して回っている。
江戸川コナンの存在がキーとなるか、と内心コナン君を値踏みしている。
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