バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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夢見る乙女の迷推理

 

 今日、ふなちと名乗る女子大生が探偵事務所に現れた。

 

 私が毛利さん宅の昼食を作って冷蔵庫に入れていた頃のことだ。

 今日の午後からは毛利さんから回された探偵の仕事があるため、早めに作っておいたのだ。

 

 冷蔵庫の中身を確認して、あらかじめ蘭ちゃんが確保しておいてくれたスペースに二人分の焼きうどんを入れれば、今日の分の私の家事手伝いは完了である。

 

 「僕は少しポアロでお茶してから帰るから、何か用事があったら下に来てくれ」と降谷さんがコナンくんに言い置いて、階段を軽快に下りる。

 毛利さんは昼間っからビールに競馬なので邪魔してはいけないモードだからな。

 「うん!いつもありがとう安室さん!」と良い返事をしたコナンくんが私を見送っている。

 

 そんなわけで、ポアロでぼんやりお茶していたら。

 

 上へ登る来客の足音と、しばらく後にその客を伴ってコナン君が上の階から出ていく足音がした。

 毛利探偵事務所への依頼客だろうか。

 だとしたら今は毛利探偵は酔っ払ってとても来客対応できる状態じゃないぞ。

 などと心配して様子を伺っていれば、足音の主はポアロへと入ってきた。

 

 あー、それとだ。

 真昼間っから茶店でくつろいでいる今の私をニートと言ってはいけない。

 これでもポアロで宝石花をちまちま彫っていたのだから、きちんと仕事はしていると注釈しておこう。

 

 来店したコナンくんは私の前までやってくると「この人が毛利のおじさんの弟子だよ」といってお客さんに私を紹介した。

 どうも、飲んだくれ毛利探偵に見切りをつけて私に依頼を持ってきたらしい。

 

 可愛らしい水色のワンピースに身を包んだ若い女性が、にっこりと私に微笑んで会釈する。

 

「そちらの方は初めましてー!そちらの石楠花の君主様に似たお方、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか!」

「僕は安室透。石楠花……というと、大手乙女ゲームの?そこまで似てるかなぁ」

 

 降谷さんが苦笑して頬をかいた。

 

 降谷さんの言葉に飛び上がって喜んだのは女性の方だ。

 降谷さんがゲームを知っていることがよほど嬉しいらしい。

 興奮に足をばたばたさせながら忙しなく動き回っている。

 初っ端からテンション高ぇなこの子。

 

「そうですご存知でしたか!!!かの業界を震撼させた話題作にして今年最新作など出る予定の!乙女ゲーム界の名作!!!」

「僕も前に無印をプレイしたよ。病弱な蜃気楼の君をめぐる伏線の張り方が丁寧で意外と楽しめたかな」

「なんと!!!男の方のプレイヤーは実に珍しい!!是非ともご感想をお聞かせ願いますでしょうか近くのカフェにでも寄ってじっくりねっちょり…!」

 

 「あ、失礼しました!私は中居芙奈子と申します!できればふなちと呼んでいただければ!」と女性は妄想がちかつ早口にそう言い切った。

 

 ああなるほど、彼女がそうか。

 一度見たら忘れられない乙女ゲームの夢女子にしてアニメオリジナルキャラ、中居芙奈子だ。

 

 ちなみに、降谷さんが乙女ゲーをプレイするに至ったのにはちゃんとした理由がある。

 

 一人宅飲み…という名の二人飲みの最中、私こと安室透の対人性能はどこまで通用するのか、という話になったのだが。

 例えばコミュニケーション系のゲームはどうだろうと話題になったのだ。

 もちろんゲームに適用されるはずがないというのに、酔っ払った降谷さんが勝手にノリで有名どころの乙女ゲームをいくつか購入。

 これだから酔っ払いはタチが悪いのだ。

 

 そのまま、翌日素早く届いたそれを購入者責任で降谷さんにやってもらうことになったわけだ。

 

 最初は虚無の顔でやっていた降谷さんだったが、意外と丁寧に作られたゲームに段々と引き込まれ。

 ついには二十七時間ものプレイ時間をしっかり完遂してしまったのである。

 私もうっかりと見入ってしまったのはご愛嬌。

 

「ねぇ、その話じゃなくて、犯罪計画の方はいいの?」

「あっ、そうでした江戸川様!詳しく話しますので現場へ向かいましょう!」

「江戸川様はやめない!?」

 

 盛り上がるふなち女史に、コナン君が待ったをかける。

 江戸川様は面白いかよ。原作からしてこんな呼び方だった気はするが、生で見ると面白さが違う。

 

 現場、と言って連れてこられたのは見ず知らずのアパートだ。

 

 なんでも、二日間行方しれずだった人のアパートから犯罪計画書が出てきて、びっくりして探偵事務所に駆け込んだとのこと。

 だが、部屋にあるのは小説の書き方指南本だったり資料集だったり、見るからに小説のネタっぽい。

 

「すごい熱量の計画書だな。トリックもしっかりしている。きちんと文章になっているものを読んでみたい気がするな」

「だね。結構面白そう」

 

 降谷さんの言葉にコナンくんが同意した。

 コナンくんの言葉の裏には「親父の小説ほどじゃねーけど」という言葉が透けて見えるようだ。

 この子も大概拗らせたファザコンなんだよな。

 

 だが、この計画書の作成者に小説の確かな才能があることはまざまざと感じさせられた。

 

 これが単なる推理小説のネタ本だという推理を伝えれば、来てからずっと盛り上がっていたふなちはへとへとと座り込んで「安心しましたぁぁああ!!ふなちは、ふなちは!」と叫び出した。

 あまり大声を出さない。お隣さんに怒鳴り込まれるよ。

 

 ………ふむ。

 

 瞬間、睨めつけるような視線が私たちをとらえた。

 コナンくんも気がついたようで、「あれ?」と言って振り返っている。

 降谷さんが鋭く目を細めて四方を確認した。

 

「間違いなく視線だったね。気配の位置からして……ここと、ここか」

「穴があるね。しかも二箇所も」

「ずいぶんぼろぼろのアパートだし、覗き放題だろうさ。ここの家主は無事の可能性は高いが……」

 

 降谷さんが言葉を切る。

 話についていけてない私だけが内部でぽかんとしている。

 ふなちとキャラは覚えているが、原作でどんな話があったかまでは覚えてないんだよなぁ!

 つまりどういうことだってばよ?

 

「どうする?あの計画書がもし実際に実行できる犯罪になってしまっていて、それを見ていた人間がいたとしたら」

「………先回りするのが吉かな。ゼロさん、ついてきてくれる?」

「勿論。取り越し苦労でなければそれが一番だ」

 

 コナンくんと降谷さんが頷き合い、オンボロアパートを出ようと立ち上がる。

 

「ふなちさん、これから僕は宝石店の石神に行くつもりだけど、君はどうする?」

「え、でもこれは小説でしかなく……いえ!ふっ、ふなちもご一緒させてください!」

「なら行こうか。分かってしまった以上、無視するのも店が可哀想だし」

 

 隣の住民の気配は既に外へ出ていっている。

 恐らく今から、小説に書かれた犯罪を丸々決行する予定なのだろう。

 先回りすれば十分に阻止可能…という認識で合ってるのか?

 

 まぁ、どういう計画にせよ崩すのは簡単だが。

 外から堂々と店に入って、犯人を適当に伸すだけだ。

 どうやら犯人はモデルガンを使うらしいし、わかっていれば蘭ちゃんあたりにだって十分阻止が可能だろう。

 

 実行現場となる宝石店へと移動しながら、ふなちがパチクリとまたたいた。

 

「ところで、安室様。さきほどからふなちの顔に何かついていますか?」

「………いや、ごめんね。なんでもなくて」

「そうですか?」

 

 深層心理にて、降谷さんが少しばかり納得し難いような難しい顔をして私の隣に座った。

 

───この女、俺に全く靡かないな

───どういう自負に満ちていたらその発言が出てくるのか分かりませんけど、たぶん二次元専門の子だと思いますよ

───変に好意を向けられるのも鬱陶しいが、全く意識されないのも癪に触る。少し揶揄ってみるか?

───なるほど。これが世に言うところの「おもしれー女」の概念ですか。勉強になりました…

 

 これだから地雷男って言われるんだよ!

 などと無言で突っ込みつつ。

 

 到着した宝石店ではちょうど宝石強盗が実行中だったので、のこのこやってきた犯人は私の回し蹴り一発でKOしたのだった。

 

 私達は遅れてやってきた高木刑事に犯人を引き渡し、そのまま三人で事情聴取タイムへ突入。

 ふなちのマシンガントークを聴きながら、私たちの午後の予定は大きくずれ込むことになるのであった。

 

「ほんっとーに二次元そのものと言いますか、石楠花の君主様とはちょっと毛色が違いまして、これはどちらかといえば昨年発売の丁寧系隠れヤンキーな金髪先輩キャラにクリソツというべきでしょう!主人公しか知らない隠された裏の顔があったりしませんでしょうか!!!」

 

 凄まじい早口に若干引き気味の降谷さんを添えて。

 

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