バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
工藤邸にお呼ばれしたので、若干緊張している今現在。
ある日唐突に「明日新一にいちゃんの家に来れる?」とコナン君に誘われたのが始まりだ。
工藤優作氏が私に用事でもあるのか、はたまた有希子さんの方か。
何にせよ行かないと言う手はない状況だったので、私達は手土産の茶菓子を持って工藤邸を訪れたのだ。
そうして、蓋を開ければ当然と言えば当然だったが。
優雅にアフタヌーンティーを楽しむ赤井秀一とコナン君が部屋の中で私たちを歓迎していたのであった。
うげ、という顔をした降谷さんがくるりとUターンして、「帰る」と一言吐き捨てる。
予想ついてただろ、とは言ってはいけない。
わかっていても嫌なことぐらいある。
赤井秀一がカップをことりと小さな音とともに置き、ゆったりと微笑んだ。
「まあ待て降谷君。君のために紅茶も用意してある。少しゆっくりしていったらどうだ」
「断る。前も言ったが、お前と話すことは何もない───まぁそう言わずに。何か話したいことがあったんだと思いますし」
「そら、安室君もこう言っていることだし」
ギリギリと歯軋りをして降谷さんが振り返る。
よほど嫌なのだろう。
この嫌がり方は公安とFBIという対立とか性格が合わないだけじゃなく、前にあった会話や軋轢が原因だと思うのだが。
私が記憶を失っている間に一体何を話したのやら。
地雷を虱潰しに爆発させていくぐらいしないとこの嫌われ方はしないだろうに。
「で、何の用だ。つまらない事だったら貴様を消して俺は帰る」
「消すのか。物騒だな」
「いいから言え!!!」
シャッ!!!と降谷さんが吠えた。
もう沸騰している。瞬間湯沸かし器とラップタイムを競えるかもしれない。
少なくとも性格が合わないのは間違いない。
埒が明かないので降谷さんを中に引っ張り込み、代わりに私が表に出ることにする。
中に無理やり引き摺り込まれた降谷さんは、ブスくれて何やらもごもごと悪態をついては庭の小石を蹴っ飛ばしている。
面白いかよ。
「いやなに、組織のことについて聞きたくてな。ASACAという名前に聞き覚えは?」
「ありますよ。17年前の事件で───FBIなんかに情報をくれてやることはない───すみません、主人格ストップが出たのでこれ以上は」
「そうか。降谷君、本当にダメなのか?」
こてんと首を傾げて赤井秀一は純粋な瞳で聞き返した。
自分を完璧に愛らしい子犬とでも思い込んでいるかのような仕草だ。
そういう意図はなさそうなのだが、これは単純に兄弟か、あるいはコナン君の仕草がうつったと見える。
あっ、また降谷さんがオエー鳥のアスキーアートみたいになってしまった。
その顔気に入ったんかな……行儀悪いからやめて欲しいんだが。
ぐい、と我慢の限界に達した降谷さんが私を押し退けて表へ出てくる。
我慢の限界が早ぇよ。まだ三分も経ってないぞ。
「そのポーズをやめろ赤井秀一!虫唾が走る!───まあまあ。それで、他に用件がなければ僕たちはお暇しようと思うのですが」
「ふむ。そういえば君が多重人格の治療を始めたと聞いた」
ぴり、と降谷さんの気配が物騒な気配を帯びる。
それに気づいているのかいないのか、赤井さんは全く気にも止めずに言葉を続ける。
「………」
「それは記憶障害がきっかけだとも聞いている。一度休養を取ったらどうだと思ってな。米国なら、キャリアの穴があろうと君ほどの人物なら引く手数多だ。どうだ?」
「───ゼロ、ストップストップ、どうどう!それと赤井秀一、貴方もゼロを興奮させるようなことを言わないでください!」
「興奮?」
「ファイティングポーズはやめる!ですからその、ゼロ!暴れない!その、ゼロは日本第一主義の人間ですから、他国に勧誘するような真似はですね!」
「君たちは本当に愉快だな」
微笑ましそうな顔をするな舐めとんのか赤井秀一ィ!!!
ボクシングポーズで大暴れする降谷さんをなんとか深層心理に押し込めて私はあっぷあっぷと表に出ているのが精一杯だ。
ヤロウぶっ殺してやる!!!と降谷さんが吠えているのを、羽交い締めにして関節にロックをかける。
それでもギャンギャン吠えたてて唸る降谷さんはまさに暴れる小型犬そのものだ。
赤井さんの提案が善意100%だというのは痛いほど分かった。
同時に降谷さんとの相性が致命的に良くないことも思い知らされた。
赤井さんはなんというか、兄貴属性のおおらかさと生来のマイペースが融合して完成した超巨大マンモスみたいなナニカなのだ。
それが降谷さんの逆鱗を触れるどころか引っこ抜いて逆鱗で遊び始める的なサムシングとなって事態を悪化させている。
赤井秀一は騒然とする私たちを一ミリも気に留めずに紅茶をもう一口。
隣でコナン君が空気に徹している。
義理で同席はしたが、こんなこと関わりたくないと言った風体だ。
若くして正しい判断ができているな、などと現実逃避した思考が頭をよぎる。
「そうか。残念だ。君達とはいい同僚になれると思ったのだが…」
「諦めてください。ゼロの愛国心はかなりのものなので」
「だが、公安の中では君たちを疎ましく思う者もいるそうじゃないか」
沈黙。
ぴくり、と降谷さんが身じろぎしてから動きを止めた。
やばい。このままだと爆発する。
私はわかりやすく雰囲気を変えて、赤井秀一もわかるように不快感をあらわにした。
「……それを貴方に言われる筋合いはない。それを理由に陰るような愛国心なら、とうの昔に捨てている」
「失言だ。すまなかった」
赤井秀一が降参のポーズでぺこりと頭を下げた。
彼は空気が読めないわけじゃないのだ。
読んだ上で些事だろうと気にしていないだけの、厄介極まりない男なのだ。
だからこうして伝え方を工夫すればすぐに引いてくれる。
逆に言えば、降谷さんの反応は基本全部ただの癇癪だと思われているということだが。
可哀想に…降谷さん……。
「なんにせよ、17年前の事件について情報は渡せませんし、米国への勧誘も拒否しますので悪しからず」
「そうか、残念だ。なら詫びがわりにこの紅茶と茶菓子ぐらいは味わっていくといい」
「ありがたいお誘いですが、これ以上ここにいるとゼロが憤死しかねません。このあたりで僕はお暇するとしましょう」
軽く一礼して踵を返す。
背後で赤井さんがニコニコと機嫌良さげに茶菓子を口に運んだ気配がした。
「また来るといい。明美の命の恩人である君ならばいつだって歓迎しよう」
おおっと、中で降谷さんが「お前のために助けたんじゃないバーカバーカ!!」と小学生みたいなキレ方をしている。
落ち着け、IQが後退するほど怒るんじゃない。
「では、また会いましょう。赤井秀一」
「ああ。またな、安室君。降谷君によろしく頼む」
ぱたん、と工藤邸のドアを閉めて、姿が見えなくなると。
降谷さんが深層心理で手近にあるもの全てを蹴っ飛ばしながら憤りをあらわにした。
地味に片付けが面倒なものは自分で拾って戻しながら蹴っている。
根が几帳面なところが出てしまっていて面白い。
───ゼロ、行儀が悪い。中指は立てない
───あいつが悪い。俺は悪くない
───ゼロ。やめましょうゼロ!中指立てたままシャドーボクシングはやめましょう!
それから降谷さんは一時間は荒れていて、私はそのフォローに終始することになったのであった。
いいけど降谷さん、流石にポプテピピックみたいにキレるのやめようぜ……。
・赤井さん
今回は断られてしまったが、次は降谷零とお茶会がしたいなと思っている。(親愛100%)
可愛い好みの小型犬に酷く嫌われてるみたいな認識。