バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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万馬券の分け前

 

 なんとなんと。

 毛利さんが百万円の万馬券を当て、隣のいろは寿司で豪遊していたらしい。

 

 毛利探偵事務所の元を訪れた私に、テイクアウトの寿司をお土産にそう語った毛利さんの瞳は輝いている。

 

 そりゃ馬券で100万当たれば顔の一つも輝くでしょうよ。

 

 宝石花の収入がある今の私たちにとっては端金だが、ガチャでSSRが出たと思えば額に関係なく嬉しさはひとしおだろう。

 

「お前はあの日仕事だっつってたからな、土産だよ。いろは寿司の特上持ち帰り!」

「い、いいんですか毛利先生!?そんな僕まで…」

「いいっていいって!ボーナスって奴だよ!」

 

 気前よく渡された特上寿司をおずおずと受け取れば、毛利さんは豪快に笑ったようだった。

 

 毛利さんは競馬だパチンコだでよく家計費を溶かすから、それよりも将来のために貯蓄をしてほしいのだが……。

 まあ、ビルの貸借料などこっそり蘭ちゃんの学費のために貯めているようだから、この心配は大きなお世話か。

 

 でも、時折食費まで溶かすのはいただけないと思うなどする。

 

 若干困り笑いをコナン君に向ければ、コナン君も財政状況は気になるのか「ははは」と苦笑いを漏らした。

 

 チラリと外を確認すれば、もう時刻は昼を過ぎている。

 降谷さんは少しだけ笑って、折衷案としてこう口を開いた。

 

「じゃあ、僕が昼ごはんを作りますよ。僕は寿司をいただきますので、ご一緒させてください」

「おう、いいぞー食え食え!この眠りの小五郎の奢りだ!」

「ありがとうございます毛利先生!」

 

 単なるお土産のつもりだったコナン君と毛利さんの分の富士宮焼きそばだが、どうやら無駄にならず済んだようだ。

 

 降谷さんがちゃちゃっと台所に立って袋を開け、調理の準備に取り掛かっている。

 これはついこの間任務で行った際に買ってきたもので、買ってきた野菜と麺に付属のタレを加えれば、美味しそうな郷土料理が完成する優れものだ。

 

 寿司も……うん。

 いろは寿司のそれは本職さんが握るだけあって文句なしに美味しいは美味しいのだが。

 どうしてもRUMの顔が頭にチラついて味に集中できないんだよな。

 

 台所に立つ私たちに、コソコソとコナン君が話しかけてくる。

 

「ねえねえ、念のための確認なんだけどさ、いろは寿司の店員さんである脇田兼則さんってさぁ」

「───あ、RUMだよ。本名は知らない」

「ぶっ!!!!」

 

 浮上して口を挟んだ私に、コナン君が勢いよく吹き出している。

 買ってきたビール缶を冷蔵庫にしまおうとしていた毛利さんが「汚ねぇな!!何しやがんだ小僧!」と怒っている。

 

「ほっ、本当!?」

「うん。『Time is money』が口癖でね。名前もそこから来ているそうだよ」

「時は、金なり…!」

「父の代からこの組織に仕え、驚異的な注意力と観察力でもって幼い時からコードネームを頂いた人間だ。決して油断してはいけないよ」

 

 ごくり、とコナン君が息を呑む。

 降谷さんが私に代わって言葉を続ける。

 

「───どうも、昔は写真記憶の能力を持っていたそうでな。左目で見た物を記憶と正確に照合できたそうだ」

「厄介だね。……下手をすればNOCを見るだけで炙り出せてしまうわけか」

「そうだ。俺がこの組織に入ったのはRUMがその能力を失ってからだが、それについては僥倖だった」

 

 「そうでなければ、俺がNOCであることも瞬く間にバレていただろうからな」と降谷さんが苦笑する。

 RUMの記憶力は厄介の一言だ。

 人力老若認証に近しいものがあり、あの方が重用したのもわかるというもの。

 

 毛利さんがコンビニのビニール袋を畳んでしまった後、ジト目で私たちを見た。

 

「なーにさっきからこそこそ話してんだ、オメーら」

「いえいえ!お寿司は美味しいよねとコナン君と話していたんですよ!」

「うんうん!」

 

 毛利探偵は訝しげな顔をしつつも、気にせぬよう流してくれた。

 この人はわかっていながら知らぬものとして飲み込む大人としての一面があるからな。

 だからこそここで堂々と情報共有することにしたわけだが。

 

 まぁ、それ以上に毛利探偵宅は常に私がアンテナを張っていて、盗聴器の類はないことを確認しているのもある。

 頻繁に来客のある下階の探偵事務所ではそうはいかない。

 

 ちゃちゃっと富士宮焼きそばを作り終えて二人に出せば、二人は美味しそうに「いただきます!」と唱和して食べ始めた。

 好評なようで何よりだ。

 

 そうして、流し込むように麺を食べ終わったらしい毛利探偵がまだ半分も食べ終わっていないコナン君を置いて立ち上がる。

 

 「少しタバコ買って来る」といって財布とスマホだけ持って出ていく。

 どうやら内密に話がしたい私とコナン君を慮って、二人きりにしてくれたらしい。

 

 私も席についてテイクアウトの特上寿司を開ければ、そこには穴子やサーモン、大トロ、いくらなどなど新鮮な海鮮が豪華絢爛に並んでいる。

 うーん、RUMの顔がチラついて食べづらい。

 

 脳裏にチラチラする隻眼の大男のイメージ映像をなんとか追い払い、寿司を口に運べば実に甘美な魚の旨みが広がった。

 降谷さんがそっと私に耳打ちする。

 

───このところは仕事も抑えがちだが、RUMにもかなり信頼されてきている。あとは烏丸蓮耶の所在さえつかめれば、組織とはおさらばできるんだがな

───アポトキシン4869で姿を変えている可能性が高い以上、行方を掴むのは困難を極めるでしょうね。なにせRUMにすら所在を連絡していないようですし

───チッ、あの魔女も口が硬いし。鬱陶しいな

 

 私たちが目指すのは組織の完全壊滅。

 つまりは組織のバックである烏丸グループに切り込むことが必要不可欠なのだ。

 

 ただ組織を潰すだけなら私一人で切り込めば済むことだが、それでは資金力を背景にまた復活してしまう。

 それでは意味がない。

 

 目指すは烏丸蓮耶の身柄確保、そして烏丸グループの一斉摘発である。

 

───というより、あのほとんどの被検体が死亡したアポトキシン4869を、仮にも組織のトップで大富豪の烏丸蓮耶が接種するということ自体がおかしいと思うんだがな

───現在のアポトキシン4869は焼け残った資料から復元された物でしょう?ベルモットが接種しているのもそうですが、元々は毒薬ではなく……

────不老長寿の薬だった可能性もある、と。はは、いよいよSFじみてきたな。不二子さんに情報だけでも売ればかなりの取引ができそうだ

 

 軽く思考を整理しながら、最後の一貫である穴子の照り焼きも食べ終わる。

 降谷さんといると何が便利かって、こういう時に会話して考えを形にできるところなんだよな。

 

 コナン君が隣で私をじーーっと見ながら何か教えて欲しそうにパタパタ足を動かしている。

 私が機密事項を考えているのがわかったらしい。

 

 降谷さんはにこっと私のフリをして微笑んでから、無言で重箱を片付け始めた。

 アポトキシン関連はまだブラフかもしれないし、裏が取れてない話はできないからな。

 私が主人公様に話すのは確かな情報だけだ。

 

 教えてもらえないことがわかったコナン君がぷくっと膨れてブスくれている。

 高校生の仕草じゃないが、コナン君には似合ってて可愛いんだよな。

 

「ねぇゼロさん。RUMがここに来た狙いってなんだと思う?」

「さあ。一番可能性が高いのは、俺達が張り付いているという小学生を見に来た、というところかな」

「ッ!!」

「一応、江戸川コナンはバーボンのお気に入りだとは伝えてある。そうそう行動は起こさないだろう」

「なるほど。守ってはくれるんだよね?」

「勿論。俺たちの蒔いた種だ。責任は取るさ」

 

 ふっと笑って降谷さんがコナン君に視線を合わせる。

 コナン君も同じく、挑戦的に笑んで見せた。

 視線には火花の散るような熱量と、それと同等の信頼が滲んでいる。

 

 探偵同士の理解り合い、みたいな感じで少しばかりジェラシーな私を添えて。

 

 バーボンは新参ながらその圧倒的な実力でもって重鎮の位置にまで上り詰めた、実働部隊の最重要幹部だ。

 RUMですらそうそう意見できない、組織の力の象徴。

 かのルパン三世の一味であるということは、それほどまでに重い意味を持つ。

 

「今晩RUMと会う約束があるから、念のため確認するか」

「!!盗聴器を持っていってくれたりはしない?」

「奴の用意周到さを考えるに、盗聴・盗撮発見機程度は準備していると見るべきだろう」

「そっか……気をつけてね」

 

 コナン君が至極残念そうに取り出した盗聴器のシールをしまった。

 盗聴器を常に持ち歩いてる小学生とかいうファンキーすぎる概念が出てきたな…。

 いや、今更か。コナン君だし。

 

 そんなことを考えながら、江戸前推理ショーの翌日昼は過ぎていくのであった。

 

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