バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

229 / 333
修学旅行アフター

 

 工藤君が帰ってきた!

 そして工藤新一が生きていたと全国ニュースになっている!

 

 コナン君に電話したものの、ずっと通話中で繋がらない状態だった。

 この緊急事態を鎮めるのに、向こうも忙しいのだと思われる。

 

 ウォッカからも電話があり、「このニュースの工藤新一とかいうヤロー、前に俺とジンの兄貴が殺したやつかもしれねぇ!」と焦ったような声が聞こえてきた。

 ジンは殺したやつの名前は覚えてないが、ウォッカはしっかり覚えているということだ。

 とんでもねーなおい、絶体絶命じゃないか。

 

 一応、私はまあまあとウォッカを宥めて落ち着いたような声を出して見せたが。

 

「けれど間違いなく殺したんでしょう?死者復活が絵空事である以上、誤報と考えた方が現実味があるのでは?」

『けどよぉ…』

「殺されかけたというのにこんな堂々と活動する人間がいるとは思えませんし、他人の空似の可能性が高いかと思いますよ?」

『そ、そうだな。よっぽどのバカじゃなけりゃ俺らにビビって隠れ潜むに決まってる。悪いなバーボン、俺も焦ってたみてぇだ』

「いえいえ。そりゃ亡霊が出れば焦るのもわかりますよ。一応、僕も関係者周りを見張っておきます」

『すまねぇな、助かる!』

 

 などと上手く煙にまいておいた。

 がっつり言いくるめだが、もっともだと思ったウォッカは納得したようだった。

 

 よっぽどのバカ、工藤新一。

 

 仕方ないだろ高校の修学旅行は人生に一度きりなんだから。

 死ぬ思いをしてでもいく価値はあるだろ!!!

 

 何に対しての言い訳かよくわからないが、そのように内心で叫んでおく。

 

 この工藤新一生存発覚に関しても、原作通りであれば特に心配いらないはずだ。

 たしかこの後工藤夫妻の工作で大元のネットの目撃証言が撤回され、ニュースに映ったそっくりさんも「沖田総司だった」とされることになる。

 そうして生存説は下火になるわけだ。

 私が出るまでもない、ということでもある。

 

 降谷さんがはぁ…と特大のため息を内側でついてる。

 

───しかしコナン君は時々ものすごいバカになるよな。まったく、生き急ぎ過ぎだろうに

───仕方ありませんよ。聡明ではありますが、まだ高校生の子ですから。恋と己の興味に従って突っ走ってしまっただけでしょう。これはきちんと注意してやれなかった僕の責任でもあります

───まぁ、そうだな。修学旅行に行くと聞いた段階で俺からガツンと言ってやるべきだったか

 

 髪をかき上げて降谷さんが頭痛を堪えるように頭を押さえる。

 本当色々どうかしてるからな。特に潜入捜査官的な立場からすれば。

 

 だが、かの神はこの世界をサスペンスラブコメディと定義した。

 なのでコナン君の行動はラブコメとして何も間違っていないのである。

 

 ああ、そうそう。

 ちなみに、今私たちはルパンのアジトでせっせと彫刻を制作中だ。

 

 金持ちオークション用の10輪はすでに完成済み。

 今は海外のホテルに納品する予定になっている巨大動植物モニュメントの制作に取り掛かっている。

 ルパンのアジトで作っているのは、巨大モニュメントが自宅のメゾン木馬では入りきらなかったからだ。

 

 御影石をガンガン削って、薄く草花を一枚一枚形作っていく。

 本物とほぼ同等の薄さに、葉脈すら浮かんで見える作りは斬鉄の要領だからこそできる神秘の御技である。

 

 斬鉄爪の切れ味も相まって、他のどんな技術でもたどり着けない薄さと繊細さが売りのこの商品、好事家の間でもかなりの話題となっている。

 

 他の工房でもどうやらなんとか技術を模倣できないか調査がされているようだが、そもそもこれは斬鉄という剣技の極地から派生した技術。

 割れやすい部分も展性も、物理法則のなにもかもを無視して刃の軌跡通りに物体を切り落とす斬鉄の技。

 それだからこそ成り立つ繊細な彫刻は、よっぽど埒外の科学力がなければ再現できまい。

 

 内側で降谷さんがデザインした設計図を投影してくれている。

 降谷さん、この手のセンスほんと良いんだよな。絵も上手いし。

 

 降谷さんが次に彫るバラの拡大図を内側から拡大展開してくれている。

 

───このあたりはアンティーク風の鍵にバラの蔓を絡ませてみた。かなり細かい。行けるか?

───デザインが鬼畜過ぎるんですが。やれますけど。コンマ05mmでもズレたら全部おじゃんですよ?

───でもこの方が格好よくないか?

───それは確かに

 

 あらゆる部分で常に高みを目指すプライドエベレストは、デザインの面でも妥協を許さない。

 回を経るごとに頭が爆発しそうなデザインへと進化していくのだが、これも完成すれば莫大な金と名声が入ってくるだろうから頑張る甲斐はある。

 

 コツコツ彫刻を進めていくこと数時間。

 突然、誰もいないはずのアジト内の一角に明かりが灯った。

 誰かが電気をつけたようだ。

 

 ぬっ、と入り口から顔を出したのは着物姿に斬鉄剣を小脇に抱えた痩躯の男。

 石川五エ門その人だ。

 五エ門師匠は私の姿を見て予想外だという顔をしてから、ツカツカとこちらへと寄ってくる。

 

「居たのか、安室。いや、今のお主にとって拙者は初めて会う人間になるか」

「一応ゼロの方には記憶があるのであなたが誰なのかはわかります。お久しぶりですね、五エ門師匠」

 

 師匠は若干眉をハの字に下げて口を一文字に引き締めた。

 「無理に前の自分に合わせずとも良い」と言ってくれる気遣いがありがたい。

 

「それは不二子から依頼されている彫刻か。デカいな。そして優美で生命力に溢れている」

「ありがとうございます。地道な作業ですが楽しいものですよ」

 

 ……人を斬るよりずっと。

 そんな含意が伝わってしまったのか、ますます五エ門師匠は眉を顰めて瞳を伏せた。

 

「そも、お主は本来戦う者ではない。出会った時の獣の如き在り方は、今思えば手負いであるが故の荒々しさであった」

「………そう、なんでしょうか」

「くれぐれも無理はするな。今のお主には、かつてあった不退転の覚悟が消え失せている」

 

 本音を言えばその覚悟を早いところ取り戻したいところなのだが、それは現状高望みと言わざるを得ない。

 

 ああ、集中力が切れてきた。

 これ以上続ければ彫刻に致命的なミスをしかねない。

 

 ふう、と斬鉄爪の一つをセットしたペン型彫刻刀を机に置く

 伸びをすれば随分と肩が凝っている。

 

 私は五エ門師匠の方を振り返って少しだけ笑いかけた。

 

「師匠、少し手合わせしませんか?今の僕がどれだけ動けるか確認したいので」

「よかろう。拙者も軽く汗を流したいと思っておったところだ。」

「ありがとうございます。ところで…ここへは何の用で来たんです?あまり稼働率の高いアジトではありませんよね」

 

 はっ、と目を見開いて五エ門師匠は固まった。

 どうやら用事を忘れていたらしい。

 五エ門師匠って時々うっかり侍なところがあるよな。

 

「不覚。ここには破れた道着の代えを取りに来たのだが…まあよかろう。手合わせするのに支障はない」

 

 そう言って、五エ門師匠は腕を組み直した。

 確かこのアジトの地下倉庫には五エ門師匠がいつも着ている着物がコンテナ単位で大量に置いてあるはずだが。

 そんなにどうすんだ、と思ったが盗みの仕事でよくダメになってるので意外と消費は早いらしい。

 

「では、向こう側でやりましょうか。緊張しますね…私としては初めての手合わせの気持ちです」

「全力で来い。お主の身体がどこまで覚えているのか見極めよう」

 

 五エ門師匠は珍しくも、その常の仏頂面を柔らかく解し、笑ったのだった。

 




・手合わせの結果
ボコボコにされた。徹底的に指導され直した結果、バボ主の動きはかなり良くなったとのこと。

・生き急ぎ野郎、工藤新一
噂は収束して一命は取り留めた。
後で降谷さんからこんこんと説教される運命にある。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。