バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
京極さんは大会に出場するため、朝早くからホテルを出て会場入りしたらしい。
それを伝える京極さんの様子はまだまだぎこちない態度であったので、間に入って老婆心を発動。
「京極さんは自分の勇姿で名誉挽回したいそうだよ」と伝えれば、園子嬢も照れながら乙女の顔で小さく頷いたようだった。
やっぱり、園子嬢もこうして彼が頑張っている姿が何より好きなのだろう。
京極さんが出て行った後、「真さんの勇姿を見逃すわけにはいかないわ!!!」と園子嬢も張り切ってホテルのTV中継に張り付いて応援モードに入った。
私はその間ずっとお仕事だ。
海賊対応のために不二子さんに頼んでいた物がおわったようで、連絡の電話が入ったのだ。
部屋の外に出て、扉の前の廊下で電話に出る。
着信は峰不二子さんからだ。
『調査、終わったわよ。送っておいた資料は見たかしら。たっぷり感謝してちょうだいね』
「勿論です不二子さん。完璧な仕事、ありがとうございます。貴方に頼んでよかった」
『そうね。あたしがあの辺りで活動してる海賊の首領とオトモダチじゃなかったら、もっとずっと時間がかかってたんだから』
声すら麗しき女盗賊が、ふふんと電話越しに胸を張るのがわかった。
不二子さんに頼んでいたのは海賊達の動きの確認と今日起きるであろうマリーナベイ襲撃対策のための各種手回しだ。
各海域に縄張りを持つ海賊達はみなバラバラに行動していて、連絡を取るのは容易なことでは無い。
世界各地に数多くの伝手のある不二子さんでなければ到底成し得ない仕事だった。
『情報は先にメールで送っておいた通りよ。リシとかいう子の手引きでマリーナベイサンズに乗り込んで、鈴木財閥のお嬢様を誘拐して身代金を取るんですって』
「正面からですか?それは……かなりの武力を必要としそうですが、武器代と人員の招集を含めて収支合うんですかね」
『今話題の宝石『紺青の拳』と、海賊同士の権力争いが絡み合ってなんとか成立した話みたいね。あたし、キャッシュで付けられない話は嫌いだわ』
呆れたように息を吐く不二子さんは吐息すらも艶やかだ。
不二子さんのお金信仰はどちらかといえば「裏切らないもの」を求めているが故のことだろう。
愛と裏切りの世界に生きる不二子さんらしい心情だ。
そういう意味でもルパンのことは真に愛していることは間違いない。
自分が何をしようがルパンは絶対に自分を裏切らないのだと信じていて、それ即ち彼女にとっての最大級の愛なのだ。
いつも恒例の裏切りだって、愛を確かめる行為に過ぎない。
だからルパンもしょうがないなと笑って嬉しそうに裏切りを受け入れるのだろう。
かーっ、この人たちはどうしてこんなに屈折しているのか。
私が失礼なこと考えていれば、それが伝わってしまったのか不二子さんがむくれたような声を出した。
『ああそれと。今回の件のお返しに宝石花の花束が欲しいわ、あたし』
「花束ですか!?何本ぐらいの…」
『100本。楽しみにしてるわよ』
チュッ、とリップ音を響かせたのは遊び心か。
しかし100本って。
宝石花がぶつかり合って壊れないよう工夫も必要だし、一般的な花束のサイズにしようと思ったらかなり大きな宝石が100個も必要だ。
質も妥協できないとなると……おお、蓄えがゴリっと削れる予感。
しかも花束って形が厄介だ。
何をどうしようが、後に聞きつけたルパンがヤキモチを焼くに決まっている。
私達はルパンにぶつぶつぐちぐち言われて、それ込みで不二子さんは楽しむつもりなのだろう。
私と降谷さんがげんなりしていると、上機嫌そうな不二子さんがコロコロと鈴の転がるような音で笑った。
『そうそう。それと、海賊のお友達みんなに伝えておいたわよ。鈴木園子の警護にフォックステイルが付いたって』
「ありがとうございます。助かりました。流石に大量の海賊がシンガポールに乗り込めば街も無事ですみませんからね」
『どこまで広まるかは賭けよ?中小の小物にまでは伝手はないし、情報伝達速度も海の上だからそこまで早いとは言い難いわ』
「それでも連絡をとっていただけただけで十分すぎるほどです。宝石花の花束、魂を込めて作らせていただきますよ」
私の感謝に、不二子さんはなぜか大きなため息をついた。
『本当に物好きよね、貴方たち。関係のない街がそんなに心配?身銭を切ってまで守ろうとするなんて』
「それじゃ苦労するわよ」と不二子さんは憂いを帯びた口調で言い切った。
どうやら私たちを心配してくれているらしい。
こういうところ、案外優しい人でもあるんだよな、不二子さん。
『降谷ちゃんも安室ちゃんもその優しさにつけ込まれちゃダメよ。貴方達は私の大事なビジネスパートナーなんだから』
そのようにして、不二子さんからの電話は切れたのだった。
さて、前提の話にはなるが。
実は不二子さんから調査情報を知らせるメールが来た時点で、鈴木次郎吉相談役には全て事情を連絡してある。
というのも、私の計画だと鈴木財閥に迷惑がかかるからだ。
私の計画では、「鈴木園子の護衛としてフォックステイルが付いた」「紺青の拳の取得にレオン・ローが失敗しそう」と不二子さんを通して海賊にひろめてもらうことを基本としている。
海賊とて営利目的で活動しているのは間違いない。
苦労に比べて得られる利益が少ないと見れば手を引くのは当然のことだ。
しかし、これはそのまま鈴木財閥が犯罪者であるフォックステイルを雇った、という醜聞に繋がる。
なので、長年鈴木財閥のトップに君臨し、今は相談役として酸いも甘いも噛み分ける鈴木次郎吉氏にまず連絡して、許可と判断を仰ぐことにしたのだ。
そもそも園子嬢の身の安全だけを考えれば早期帰国が一番だ。
以前に手に入れていた電話番号を利用して、鈴木次郎吉氏本人のスマホへと電話をかける。
電話に出た次郎吉氏は初めこそ訝しげだったが、さすがの柔軟性で話の流れを掴んだようだ。
私の進言にからからと笑って、竹を割ったような明快かつ覇気のある声で応えた。
『なぁに、こういう手合いはいつの世も湧き出してくるものじゃ。ここらで有事の際の対応力を見せておくのも鈴木財閥の利になるというものよ!』
「良いのですか。フォックステイルを雇うということは、あなた方が犯罪者と繋がっているということにもなりかねない」
『プラスとマイナスを考えれば、十分元の取れる手じゃわい。特に、お主のような善良な実力者と関係を結べるなら格安の部類じゃろうて』
そこまで言ってから、次郎吉氏は声を一段低く、より真摯かつ誠実に雰囲気を変えた。
『お主の立場からすれば、園子も街も放って1人で逃げてしまえば、そもそもワシに正体を明かさずに面倒もなく済んだことよ』
「……」
『お主のような善性の者が世の中にどれほどいるか。そしてそれが世界有数の強者であることがどれだけ稀有なことか。わからぬワシでは無いわい』
では、園子を頼んだぞ、世界に名高き大妖狐、フォックステイルよ。
そう、次郎吉氏は声色を強く言い切った。
まったく、老獪なお爺さんだ。
本音で話していたのも間違いないが、それと同時に「お前なら裏切らないよな?」と圧をかけていくのを忘れない強かさ。
魑魅魍魎渦巻く財界で長年トップを張り続けていただけのことはある。
そのあと、少しばかり商売交渉をしてから通話は終わった。
今後の連絡手段、宝石花の仕入れ契約、園子嬢のお父様である鈴木会長を入れての情報共有エトセトラ。
この後帰ってからは秘密裏に鈴木財閥首脳陣と話し合いの場が設けられる予定だ。
想定よりずっと話が大きくなってしまったあたり、完璧に抱き込もうとしている次郎吉氏に交渉で競り負けてしまった証だ。
私と降谷さんが口で負けるなんて、恐るべき次郎吉氏。
さて。
コナン君に情報を転送すれば、あとは現地警察に連絡してくれるだろう。
リシ・ラマナサンについても既に布石は打ってある。
なんにせよ、レオン・ローの動きはどうやら予定通りのようだ。
動くとしたら今夜、原作通りになることだろう。
しばらく園子嬢の警護に勤しんでいると、11時ごろ。
部屋に備え付けの電話が鳴り響いた。
フロントから電話のようだ。
なんでも、「アムロ様に用事があるとのことでお客様がいらっしゃっています。フロントまでお越しください」とのこと。
うーん、これは多分呼び出した隙にこの部屋に侵入して園子嬢を害するパターンかな、と私と降谷さんは顔を見合わせた。
降谷さんが眉間に皺を寄せて唸った。
───動きとしてはここから離れないで良いよな?食い下がられたらどうする?
───ここまで上がってきてもらうことにしましょう。廊下で立ち話させれば良いんですよ
───それもそうだな
と、ここからの描写はつまらないので巻でいこう。
対応の結果、許可を得てホテルのこの階まで登ってきたならずもの達は、到着した瞬間私に殴りかかって来たので適当に全員倒して警察に引き渡した。
拳銃持ちもいたが、発砲されては面倒なので動く前にハイキックを入れて意識を刈り取っておく。
この程度で私の守りを抜けると思っているだなんて舐めているのか?
その後も毒入りルームサービス料理やら単純な殴り込みやらよりどりみどりだったが、全てかわしておいた。
レオン・ローが主犯の小細工だとは思うが、やり口が雑すぎるだろう。
どうせ今夜街が火の海になるからとたかを括っているらしい。
若干不安げな園子嬢も、TVで順調に勝ち進む京極さんの勇姿を見て「あたしも弱気じゃ居られないわ!」と気合を入れ直したらしかった。
そうして、海賊が訪れる少し前。午後四時ごろ。
京極さんは見事、優勝を勝ち取ったのであった。
次回で紺青の拳編は終わりになります。