バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
現在、毛利一家とバニーガールのクラブに来ております。
周囲には可愛いバニーさん達が1人2人…わあ、いっぱい。
えらいこっちゃ。
実は元々はいつも通り毛利さん達の食事を作りに毛利探偵事務所を訪れていたのだが。
ちょうどお客さんが訪れていたところに出会したのだ。
どうやら結構な資産家のクライアントが脅迫状を送りつけられたらしく、毛利探偵の噂を聞きつけて事件解決を依頼したのだとか。
毛利探偵のご高名はシンガポールまで届くほどになっているし、こういう実入りのいい依頼も増えているのだろう。
良いことだ。
などと思っていたら、「安室!お前も来い!依頼だ!」と鶴の一声で弟子として勉強がてら同行することになった。
しかも依頼料の半分は私に振り込んでくれるとのことで、私達はとんでもないと反射で遠慮した。
流石に弟子の分際で半分ももらうわけにはいかないからな。
丁寧に二度辞退申し上げると、「俺の金が受け取れねーってのか!」とからみ酒みたいに言われてしまった。
結局、私達は押し切られる形で問答無用で金を受け取ることになったのであった。
どうも、毛利さんの様子からしていつも家事をしているお礼のつもりっぽいんだよな。
私達が好きでやっているだけな上にいつも謝礼は1000円ほどもらっているので構わないのに。
まあ、そんなわけでお客さんと共に集合場所だというバニーガールのクラブにやってきたわけだ。
どうやらいかがわしい行為は全面的に禁止。
皆穏やかにバニーガールとお酒を楽しんでいて、意外と民度が良い雰囲気だ。
資産家御用達な店だけあって、その辺りも徹底された店なのかもしれない。
ああ、そうだ。
依頼人に送られて来た脅迫状について話を移そう。
内容はシンプルだ。
『命が惜しくば黒ウサギ亭に近づくな』。
作りも今時新聞や雑誌の切り抜きが丁寧に貼り付けられてあって、実に古風なことだ。
見せられた脅迫状を拝見する。
チラリと視線を横にすれば、隣に座る執事さんから香り立つ悪意が感じ取れた。
それと同時に心配やら忠誠やら悲しみやらといった複雑極まりない心境が織り混ざり、複雑な心情を描いている。
ちなみに、今回の事件の真犯人は資産家付きのこの執事さんだ。
原作知識からすると資産家の主人がバニーガールに入れ込んでいるのを嘆いてお相手のバニーガールに毒を盛ったんだっけか。
実のところそのバニーガールさんは資産家さんの娘さんで、実際その密会は親子の交流だった、という結末なのだが。
ふぅむ、どうすべきか。
チラリとスマホを確認すると、つい先日RUMから送られて来たメールが画面に映り込んでいる。
「できれば工藤新一についての情報を集めてください」とRUMから依頼があったのだ。
というか、探れと言われても直接戦闘しかできない私に頼むことではないんだよね。
まぁ、事実工藤新一の関係者に一番近しいのは私なので間違った手でもないのだが。
降谷さんが視線をスマホに落とし、しばし目を伏せた。
───それで、どうする?工藤新一についてRUMは完璧に勘付いているようだが
───念のためコナン君が身を隠せる環境は整えるとして。彼がすぐさまどうこうなる事はないでしょうから、その間に毛利探偵他周囲の安全確保を進めましょう
──何故だ?RUMの能力であればコナン君が工藤新一であるとすぐにでも明らかに……いや、そうか
少しだけ考え込んだあと、降谷さんが唸った。
───工藤新一が幼児化しているなんてこと、組織内においても明らかにするわけにはいかないからか
───ええ。同じ仕組みを烏丸蓮耶が使っている可能性がある以上、「何故組織のNo.2が突然何の変哲もない子供を殺したのか?」なんて間違っても噂されるわけにはいかないでしょう
───それに、アポトキシン4869を摂取して生き残った貴重な被検体だ。殺すのはあまりに勿体無い、か
降谷さんも話すうちにコナン君を無意識に見つめていたらしく、コナン君が「なぁに、安室さん?」と首を傾げた。
ニコッと笑って降谷さんは「失礼、すこし席を外します」とだけ言ってお手洗いの方へ向かう。
コナン君も慌てて「僕も僕もっ!」と言ってついて来た。
聞きたければ場所を移すぞ、というメッセージは伝わったらしい。
バニーガールクラブのやや広めのトイレに着くと、無言で降谷さんはRUMから来たメール画面をすっと取り出して見せた。
画面の内容を確認してすぐ。
コナン君の表情は凍りついた。
「RUMならTVに映った君の姿が本物の工藤新一だと判別する程度楽な仕事だろうからな」
「………ッゼロさん達はどうするの?」
声に緊張が宿っている。
今コナン君の生殺与奪権を握っているのは私達だ。
彼も現状のまずさに焦っているに違いない。
コナン君の問いかけに、降谷さんが肩をすくめた。
「適当に当たり障りのないことを答えておくつもりさ。修学旅行中に事件に巻き込まれたらしい、とか」
「工藤新一が生きていると報告するの!?」
「そうだ。もうRUMは工藤新一生存を確信してるし、ここで嘘をついても何の利もないしな」
「……、蘭はどうなる?」
すぐさま最悪の想像に行き着いたらしい。
コナン君の顔から血の気が引いていく。
「事態があまりに動かなければ、当然誘き出すための餌に使われるだろう。君たちが恋仲なのは隣のいろは寿司で帰り際の高校生達を観察していればいつか気付くだろうし」
「……」
既に顔色は真っ青だ。
降谷さんてば、いくら自業自得とはいえ青少年をイジメ過ぎ、と手を引いて内面から急浮上。
不満げな降谷さんと入れ替わって表に出た。
私の雰囲気が変わったのに気付いたのか気付いていないのか、コナン君は俯いて拳を握っているままだ。
「───なんにせよ、今すぐ事態が動くことはないだろうさ。まだ調査段階だからね。それまでにこちらの体制を整えておけばいいだけの話だよ」
「……うん。毛利探偵事務所は離れたほうがいいのかな」
「僕達としては、一箇所でまとめて監視ができるから一緒にいて欲しいところかな。バラバラに動かれると対応が難しい」
「そっか。ありがとう、安室さん。それと、灰原には心配させたくねーから黙っておいてくれ」
ややあってから、強がって無理やり笑ったぎこちない表情でコナン君が顔を上げた。
「了解。でもどうせすぐに気がつくんじゃないかな。彼女、結構聡いからね」
「かもね」
コナン君は苦笑して私の意見に同意した。
それでも隠すのは、保護した初期の頃彼女がどれほど怯えていたかを知るが故のことだろう。
私…ウルフドッグの影に怯え、眠りにすら差し障りが出ていたと聞いている。
それを思えば、コナン君のやり方もある種優しさであることは察しがついた。
さて。
トイレから戻った頃には、食事が運ばれてきていた。
凄まじいプレッシャーだろうに、平然と食事を食べるコナン君の精神力は若くして見事なものだ。
こんだけ胆力と推理力に優れてて、どうして修学旅行でエキサイティングしてしまうのか。
やはりそれは神の思し召しと思うより他ないのである。
ちなみに、席に戻ってくる時ついでにそっと隣の執事さんのポケットからヒ素をスリ取っておいた。
毒殺用のヒ素だが、今回の殺人事件は勘違いと情報不足からくる誤解が原因となっている。
まあつまり、可哀想だから止めてあげようという親切心だ。
とはいえ、人間関係が込み入っているので、あとで情報面をフォローもする必要があるか。
ヒ素のあったポケットに小さなメモ用紙を入れておいて、今回のお仕事は完了である。
メモの内容は「彼女は諸岡の実の娘だ。殺すな」とだけ走り書きしただけだ。
和やかなバニーガールクラブ、黒うさぎ亭での夕飯は、結局何事も起こらず過ぎていった。
後日、娘さんに誠心誠意頭を下げる執事さんがいるのだが、それは私たちには知る由もないことである。