バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
カラオケ屋にて熱唱する今現在、とても充実しております。
今日は完全なるオフで、毛利宅の守りを盗聴器その他に任せて休日を満喫している最中だ。
旅行に行く手もあったのだが、今回は近場でカラオケにしけ込むことに決定した。
ストレス発散したい、ということで私のぼやきが通った形だ。
降谷さんも学生時代を思い出して乗り気だったし、こういう童心に返る試みもたまには良いものだ。
今日の昼を無気力にダラダラして過ごしてから、ふとついさっき思い立ち。
すぐさま近場のカラオケをフリータイムで予約してINという流れである。
人数は一人……とはいえ、ヒトカラの皮を被った二人カラオケなのは間違いない。
喉は一つしかないからデュエットができないのが玉に瑕か。
歌う曲は今流行りの新進気鋭アイドルのものから沖野ヨーコの定番曲まで節操がない。
幅広い話題に対応できるように、という職業病的なところが大きいが、単純に歌にこだわりがないとも言う。
いや、降谷さんはこだわりが強いか。
私が海外も含めた定番曲を歌うのに対して、降谷さんは頑なに日本の曲ばかり選んでるんだよな。
降谷さんは謎にウキウキでデンモクを操作している。
カラオケに来るのは配属後すぐに警察学校組で集まって以来とのことで、懐かしさが大爆発しているらしい。
そりゃ降谷さんもイキイキし出すわけだ。
降谷さんがふぅむと並ぶ曲名の一つを指し示して言った。
───次、俺はTWO-MIXの曲を原曲のキーで行く
───あまりに無謀すぎません?歌えるわけないですよね。裏声でも届きませんよ普通に
───できるようになればヒロに見せる一発芸としては十分じゃないか?
───完全にノリが大学生ですよゼロ。見た目相応のテンションになってます
───あ???
ガチトーンでヤンキー仕草をかました降谷さんが私に鋭いガンを飛ばしてくる。
急にキレるじゃん?
いや十割私の失言が悪いと言われればその通りだけれど。
などとわちゃわちゃ言い争っているうちにも、降谷さんがどんどん日本の曲を予約一覧に入れていく。
外国語の歌詞でも歌えるだろうに、意地でも歌わないつもりらしい。
というか私も歌いたいんだが。入れすぎだよ降谷さん。
ちなみに、持ってくる飲み物は初回降谷さん、次に私と順番に選ぶ権利が回ってくる方式だ。
最初はほうじ茶だったので、次はよく知られたメーカーのやや甘めの紅茶にしようかと考えている。
私が感じている空腹を降谷さんも感じているのか、降谷さんがサイドメニューの一覧を開いて声をかけて来た。
───小腹が減ったな。なんか摘むか?
───ポテトチーズ餅とか良さそうですね。揚げ物盛り合わせでもいいですけど
───おっ、いいな。唐揚げもついてるし、そうしよう。たこ焼きの方も捨て難いが、そちらは家で今晩作るか
───この間買ったたこ焼き機の出番ですね
───まだコツが掴めないからな…要練習だ。とても人前に出せたものじゃない
不満そうな降谷さんがたこ焼きを思い出して小さく唸った。
一回目に焼いた時は形こそ崩れていたが、味は抜群に美味しかったのだが。
完璧主義な降谷さんらしい不満だ。
たぶん今夜練習を重ねて、余ったたこ焼きを明日朝に毛利宅に持っていくことになるだろう。
ああ、そろそろドリンクがなくなって来た。次は私がドリンクを選ぶ番だ。
狭い個室を出て少し歩いたところにフリードリンクスペースがある
立ち上がった降谷さんが、そこへと向かってとことこと気軽に歩いてゆく。
そうして、角を曲がってすぐ。
ドン、と。
角を曲がった出会い頭に、うっかり他のカラオケ客と接触してしまった。
「キャ!?」という女性の悲鳴と、甘い飲み物のかかるベタついた感触。
見れば、ぶつかった相手は髪をふたつに結んだ見覚えのある小柄の可愛らしい女性だったようだ。
メロン味の炭酸水が私たちの白い服にかかり、緑色のしみになって服に広がっていく。
降谷さんが尻餅をついた女性を慌てて助け起こした。
「す、すみません、大丈夫ですか!?」
「こちらこそ前を見てなくて…服を汚してしまってすみません!!」
女性の方も私たちの服に染み込んだジュースを見て、わたわたと頭を下げたようだ。
狭く入りくんだカラオケ店内では仕方のない事故だ。
焦って必死の顔で濡れタオルを使って服を拭ってくれているが、ここまで広範囲に濡れては脱いで洗ったほうが早いだろう。
降谷さんも「……気を抜き過ぎていたな」と内心で落ち込んでいる。
そこまで来てからようやく降谷さんも目の前の女性が誰なのか気づいたらしく、ふと顔を上げて口を開いた。
「ところで、あなたは警視庁交通部の…三池さん、ですよね?」
「えっ、なんで知って……ああ!少年探偵団の子供達とよく一緒にいるお兄さんですね!」
「はい。安室透と言います。いつも子供達を見守ってくださりありがとうございます」
三池苗子。
警視庁交通部の女性警官で、小柄で可愛らしい見た目のサブキャラクターだ。
警視庁捜査一課の千葉刑事とは幼馴染で、よく唯一神の定めたるイチャラブ幼馴染両片思いをやっている。
一応、以前に少年探偵団を引率する中で会ったことがある関係だ。
三池さんは申し訳なさそうにもう一度頭を下げた。
「あの、クリーニング代はお支払いしますので!」
「そんなに気にしないでください。クリーニングに出すほど高い服でもないですし、ね?」
降谷さんが苦笑して三池さんの提案を断っている。
なお、高い服ではないというのは嘘だ。
ベルモットが浴びるように貢いでいったブランド物の服で、値段は知らないが10万ほどだろう。
ああ、あの時は着せ替え人形と化すこと二時間。
苦痛の時が思い起こされて、私は思わず苦い顔になってしまう。
と、そのように私たちがペコペコしあっていると、奥の方から三池さんを呼ぶ声がした。
「いつまでドリンク選んでるのよ苗子ー!」という声と同時に、やや小太りの女性が心配そうに三つ隣のブースから出てくる。
彼女は…見覚えがあるが、いまいち思い出せない。
『目標は警視庁交通部』?だめだ、うろ覚えで断定はできないし、名前もよくわからない。
小太りの女性は私のシャツに刺繍されたブランド名を確認して目を見開いたようだった。
どうやらこれがメンズのハイブランドであることを知っていたらしい。
というか、すごい観察力だ。
刑事として優秀なんだな、ということが細かい所作から伝わって来て降谷さんと一緒にニッコリしてしまう。
やや警戒した調子でこちらに来た彼女は三池さんから事情を聞いた後、女性は三池さんと一緒になって頭を下げて「連れが大変失礼しました!」と謝罪した。
「いえいえ。あの、本当に僕は大丈夫ですから。不幸な事故ですし、お気になさらず」
「で、ですが…」
「うーん。では、……そうですね。これからも子どもたちをどうか見守ってください。彼らは賢い子達ですが、どうしても危険に巻き込まれがちだ。あなた達のような刑事さんが見守ってくださると僕としても心強いですから」
降谷さんが柔らかく笑って言う。
それでようやく三池さん達は安心したようだ。
なんと優しい人たちなのか。
元々、彼女は三池さんが万が一良くない輩に絡まれていたら守ろうと思って前に出ていたのだろう。
それが知り合いだと気づいて共に謝る選択をすぐに選んだ。
そこには確かな友情があったし、警官としての責務が染み付いていた。
ただし。
もしこれが原作回である『標的は警視庁交通部』だとしたら、このカラオケの帰りにこの女性は命を落とすこととなる。
私は降谷さんにこっそり耳打ちした。
───ゼロ。このあと近くの公園に寄りませんか?
───別に構わないが、いつもの勘か?
───ええ。放っておくとよろしくないことが起きそうなので
───了解した。まったく、お前の勘がつくづく羨ましいよ。俺になぜ実装されないんだ?
───それは僕に聞かれましても
殺人現場となる予定の公園に先回りし、犯人を止める。
この優しい空間は三池さんのためにも守る価値があるのだと、私がそう判断したからだ。
途中からもう1人が加わり、三人になった警視庁交通部の面々がペコペコと謝るのを宥めながら。
私たちは自分たちの個室に戻り、彼女達の気配を確認しながら公園へと向かったのであった。
・歌唱力
降谷さん:上手い。時々ネタ曲に走る。日本の童謡とかを歌うのが好き。仮面ヤイバーの曲とか熱唱してる。
バボ主:普通。全世界のヒットチャートを上から順に歌う。TWO-MIXは聞き専。