バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
伸びやかな晴れ渡る空に奔るサイレン、怒号が遠くに置き去りにされてゆく今日。
車内にみっちり詰まった札束を外へ放り出して、高速道路は札束の紙飛沫で輝いている。
この札の名前はゴート札。
世界で最も有名な偽札である。
次元さんを見習って盛大にばあっと札束を車外に放り投げれば、後続車が狼狽えたように蛇行した。
そりゃ突然前の車が大量の紙幣を投げ始めれば動揺の一つぐらいするわな。
次元さんが心底悔しそうに「このっこのっ!!」と途中で地団駄を踏みながら札をくしゃくしゃに丸めて捨てている。
やっぱり本職の泥棒にとって盗みが無駄足になるのは相当堪えるらしい。
まあこんだけ盗んで全部偽札ではそりゃあな。
なお、その横で胡乱な顔をして偽札の細部を犯人追跡メガネで詳細確認するコナン君もあり。
若干へにゃっとした顔をしたルパンが口を開いた。
「悪いな安室ちゃん達。ハズレ仕事引かせちまってよ」
「構いませんよ。いい運動になりましたし。それに」
言葉を切ってから降谷さんに交代する。
「───むしろ俺達にとっては大当たりの部類だな。あのゴート札の本物をお目にかかれるとは。分析のためにいくつかもらって行っても構わないか?」
「どーぞどーぞ、全部持ってってかまわねぇぜ」
「あっ、僕も僕も!」
コナン君が元気よく手をあげて精巧な偽札の引き取りを望んだ。
どうやら後学のために家に保管するつもりらしい。
もしかしたら工藤優作氏に情報を共有するのかもしれない。
モナコの公営カジノに潜り込んだ今回の作業は、実にスムーズな仕事だった。
追っ手の車は全て事前の工作で破壊済み。
ぶっすりとむくれたコナン君も、小狐面姿で逃走ルートの案内とサッカーボールによる警備員排除に尽力してくれた。
ちなみに、コナン君が今回作業に参加しているのは、「あらゆるスキルを磨きたい」というコナン君たってのお願いによるものだ。
全てが高水準でまとまっているルパン達と行動するなら、コナン君もスキル磨きにはちょうどいいと判断したらしい。
まあ、犯罪を自ら進んでやるのはかなりの抵抗感があったようだが。
札束が偽物だったと知ってからは随分コナン君の機嫌も良くなった。
うん。
自分で参加しといて機嫌が底辺になるのはやめて欲しいところではあったのだが、それは仕方ないことか。
───しかし精巧な偽札だな。よっぽどの資金源と、偽札造りのノウハウがないとここまでのものにはならないはずだ
───ですね。何百年も前から偽札業に手を出している組織のようですから、その辺は抜かりないのでしょうね
ナポレオンの資金源になっていたと言う話もあるくらいだし、闇の深さで言えば黒の組織以上の歴史ある組織だ。
のんびりと車を走らせていると、水平線から朝日が登ってくる。
運転席のルパンが少しだけ朝日を眺めてから、タバコを一つ手に取った。
「次はどこへ行くんです?」
「近場のカリオストロ公国でも行こっかなー、ぐらいか?気分だけど」
「気分ですか。なら僕たちも折角なのでお供します。ルパンがそう言う時ってとんでもない大事件の始まりなことが多いですし」
「えー、そう?」
心外だとでも言うような顔をして、ルパンは眉間に皺を寄せた。
でもそう言って軽く出かけては巨大裏組織を壊滅させて来たこと結構あるじゃん?
今回もゴート札の本拠地撃滅とかいう組織犯罪対策課も仰天のウルトラCを繰り出すんだし、私の言うことも間違ってはいないんだよな。
そう、このゴート札を巡るカリオストロ公国での動乱は、かの有名な「劇場版ルパン三世 カリオストロの城」に間違いない。
というか、このレベルの精巧な紙幣を見て偽札だと一目で気付くなんて、さすがはルパン三世。
私や降谷さんどころか、観察に徹したコナン君でも言われてもまだ分からないと言うのに。
そんなわけで、だ。
車で一時間ほど。
札を捨て切った後は、ぷらぷらカリオストロ公国を探索だ。
古いヨーロッパの街並みが残るここは観光としてもかなりの好立地で、山と湖とに挟まれた街並みが実に美しい。
入国の際は娘と夫婦、祖父に化けて四人家族に変装した。
もちろん娘はコナン君だ。
降谷さんが妻役、金髪のややチャラそうな夫役がルパンになる。
なり切ったコナン君は実に可愛らしいもので、門番の人もニコニコとほんわかしていた。
国内に入れば、あとは1日でぐるりと回れる広さしかないほどの小さな国だ。
私達とコナン君は街中で車を降ろしてもらい、あとは散策するだけだ。
「じゃあ僕達は街で少し散策してますよ」
「おー、俺らは引き続きドライブでもしてるぜ。後で宿に集合な」
「はい。いってらっしゃい」
コナン君と手を繋ぎ、街並みに紛れ込む。
車の通りにくい細い道が多いからか、歩行者はかなり多く賑わっている。観光客らしいスーツケースの複数人連れも間々見かける。
コナン君がぼんやりと辺りを見て回りながら問いかけた。
「どうしてルパンおじさん達と別れたの?僕らも一緒にドライブすればいいのに」
「工藤新一として蘭ちゃんにおしゃれなヨーロッパ土産、買いたくない?」
「…それは」
やや顔を赤く染めて俯く姿は蘭ちゃんのことを思い浮かべているのが丸わかりだ。
青春だのぉ。
そのまま街で民芸品などの買い物なんかをしていれば、「お兄さん、弟君と一緒に買い物かい?」「弟君とセットで買えば安くしとくよ!」と完全に兄弟に見られるバグが発生。
確かに血縁と思われるように降谷さんは髪を黒く染めていたのだが、兄弟は歳が離れすぎていると言うかなんと言うか。
青筋を立てた降谷さんが日本語で吐き捨てた。
「───俺と君では親子が妥当だと思うんだがなぁ…目が腐っているのか?あ?」
「ははは……ゼロさん落ち着いて」
美しい薔薇の陶器の小物入れを蘭ちゃん用に購入したコナン君はといえば、頬を染めたホクホク顔だ。
綺麗にラッピングしてもらった小包をそのまま郵便局へ持っていき、国際便で直送。
ルパンと共にいると厄介ごとが転がり込んできて、大騒乱のうちにお土産が粉砕しかねないからな。
観光を済ませて戻って来た宿屋は、一階が食堂、2階が客間という実にファンタジーヨーロッパ味のある作りだった。
結構賑わっていて、料理は大味ながらも量があって満足感が高い。
私達がラザニアを一皿頼んで、一部をコナン君がもらうことで話がついた。
途中からルパン達も合流したが、これまた予想通り傷だらけの煤だらけ。
コナン君がルパン達の雰囲気の違和感を感じ取り、日本語で話しかけた。
「どうしたのおじさん!?」
「なぁに、ちょいと逃亡する可憐な花嫁さんを助けようとしたまでさ」
「意味わかんないんだけど」
ブスッとしたコナン君に、次元さんが補足した。
「つまりまた厄介ごとってわけだ。具体的には、何やら後ろ暗いところのあるこの国の伯爵に目をつけられたってところだな」
「半日のドライブでどうすればそうなるの!!」
「仕方ねーだろ。銃火器持ったむくつけきオジサンどもに可憐な少女が追い回されてんだ。人として助けるだろ?」
「まぁ……それはそうだけど」
コナン君もその辺は疑ってはいなかろう。
少し行動しただけでも、ルパン達が意外と筋を通す方なのだと分かっただろうし。
ただ、コナン君も自分を棚に上げて人の事件遭遇率を嘆くのは如何なものか。
お、ここでルパン達が頼んだスパゲッティの大皿が届いたようだ。
給仕さんと少しばかり現地の言葉でルパンが会話して、指輪を見せながら情報を収集している。
まるで現地人さながらの滑らかな喋り口に、コナン君が目をまん丸にしている。
ルパンが会話を終えてから、ぐるぐると一気に自分の皿にスパゲッティを山盛りにした。
「多分今夜あたりに殺しに来ると思うから、オメェらも気をつけとけよ」
「承知しました。近接戦はお任せください」
「僕も一応銃撃戦が起きた時のために腕時計型麻酔銃とボール射出ベルトを阿笠博士に改良してもらって来たから、少しの自衛ぐらいはできると思う」
じゅ、銃撃戦対応に阿笠博士が改良した秘密道具…だと……!?!?
うげぇっとルパンと次元さんが同時に喉を締められたような声を出した。
私も息を呑んだのが伝わったのか、コナン君から「そんな大袈裟なものじゃねーよ」と頭をかいている。
嘘だッッッ、膨らませたボールが硬化して銃弾を弾く盾になるぐらい余裕でやってくるのが阿笠博士だろ!!
ほら!降谷さんも内側で身震いしてる!!
次元さんが気を取り直してタバコを咥えた。
「まぁなんだ。坊主が戦力外にならないのはいいこった。相手は銃火器装備が予想される。いざとなったら一人で逃げろよ」
「うん。足手纏いにはならないから安心して」
ぽすんとコナン君の頭を撫ぜる次元さんに、コナン君も恥ずかしそうな顔をしている。
「せいぜい人質にされないよう立ち回るとするか」と言われてそれを受け入れるのだから、次元さんとコナン君も奇妙な関係には違いない。
そうして夜も更け、シンと静まり返る街並みに。
小さく掠れる金属音が、静かなざわめきの如く広がるのだ。
夜半。
襲いかかって来たのは、奇妙なグローブ状の鉄爪を装備した黒ずくめの軍団であった。
「わぁ、安室ちゃんとお揃い!」
「言ってる場合ですか!ちょっと、絶対これ特殊部隊ですよね!?コナン君は退路確保!で、全力で蹴散らしますか?それとも逃げます!?」
「とりあえず逃げる方向で!」
ルパンが指示をくれたので、私も斬鉄爪を出して構える。
どうやら顔まわりを含め全身を覆うように金属甲冑を纏っているようで、銃弾は効果が薄そうだ。
先ほど次元さんが撃ったのに銃弾が効かなかったのはこれのせいらしい。
だが、斬鉄剣に使われているような特殊な金属というわけではないようで、私がえいやっと力を入れれば容易に切断可能な程度であった。
身に纏って軽々と動いているあたり、普通の金属より軽く丈夫でありはしそうだが。
「舐め、るなぁ!!」
「!!!」
思いっきり前にいる三人の装甲を斬り開けば、鉄爪の軍団が狼狽えた。
なんとも、思ったより練度が低い連中だ。
いや、訓練自体はかなり過酷に実戦形式で行っているんだろうが、想定外の事態に弱いと言うか。
もしかしたらあまり実戦経験のない部隊なのかもしれない。
確かに、思えばカリオストロ公国の立ち位置はかなり絶妙なバランスの下にある。
各国上層部にはすでに薄々ゴート札の存在を察されているし。
各国の弱みを握っていると言えば聞こえはいいが、目の上のたんこぶでもあると言うこと。
世界中の大国から睨まれている立場なのだ。
そこの諜報員が大手を振って他国で行動を起こしたりなんかすれば、いよいよ持って国の立場が危うい。
だからこそ彼らは自国の中でしか活動できず、しかるに練度も低いということなのかもしれない。
八人ほど武装解除真っ裸にしたあたりで向こうも自身が劣勢であることを認識したらしい。
じり、じり、と後退し始めた。
この辺が潮時か。
「逃げるぞ安室ちゃん、次元!」
「おわぁっ!?」
コナン君を後ろから抱き上げたルパンが盛大にジャンプ。
あ、もちろんだが私とコナン君は狐面で顔を隠している。
あとでこの鉄爪軍団から写真がICPOに提出されでもしたら大問題になるからな。
向こうも追ってくる気配はなく、無事に…いや、隊長らしき人物が一人こちらを追いかけようとして……あ。
背負われたコナン君がゴツい水鉄砲みたいな形の銃を取り出して、パシュリと一撃。
透明な甲冑の目元部分を貫いた麻酔銃の針を受け、そのまま隊長らしき不審者は崩れ落ちた。
次元さんがドン引きみたいな声を出した。
「おいおいおいおい…なんだそりゃ」
「なにって、腕時計型麻酔銃の改良版だよ。タンクの中は麻酔薬で、針生成機能も兼ね備えてる。500発は打てる優れものだぜ」
「何それオジサンも欲しいんだけんども」
「腕時計とはなんだったのか。流石の僕もこれは予想していませんでした」
いや腕時計型って名目はどこへ行ったんだよ。
というか500発って。そもそも針生成ってなんだ。麻酔薬から針を生成してんのか?嘘だろ?
強化プラスチックと思しき目元部分を貫いた威力も相当エグかったが、本当に麻酔銃なのかこれ?
「普段は水鉄砲に擬態できるから安心なんだぜ?」と笑うコナン君だけが銃の頭おかしいスペックを知らないのである。
車にたどり着き、エンジンをかける段階になってもまだ、水鉄砲型麻酔銃については審議中の空気が漂っていたのであった。
・水鉄砲型麻酔銃
貫通力が高すぎて肝心の針が体を貫通してしまうこともあった。
が、そもそも刺さったら一瞬で眠りに落ちる強力な麻酔薬を固めて作った針が体を通り抜ければ、その段階で眠りに落ちるので特に問題にならなかった。
阿笠博士「実は射出などの動力は麻酔銃側面に取り付けた太陽パネルからの電力で賄っとるぞい!」
灰原さん「新しい麻酔薬については私が手掛けてるわ。固形化しているけど、体組織と化学反応を起こして体内で瞬時に溶けるわ」
コナン君「サンキュー!ありがとな博士、灰原!」
バボ主「??????????」