バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
現在、地下の処刑牢にいます私達なり。
というのも、私達はルパンとは別ルートでカリオストロ城に侵入することになったのだ。
ルパンと次元は水道橋から内部に。
私は水道橋の途中から壁伝いに外側へと降りて、壁面を斬鉄爪でくり抜いての侵入という計画だ。
事前に設計図を入手してあり、その設計図によると、そこは「何もない土の中」に通ずるはずである。
だが、そんなわけはないとルパンが見立てたのだ。
もちろんルパンの見立ては大当たり、こうして「何もない土の中」のはずの場所に処刑牢が見つかった。
そこは夥しい人骨と処刑・拷問道具で溢れていた。
古い時代には貴人の処刑場にも使われていたのか、美しい冠や髪飾りなど貴金属がそのままに残されている。
これだけでも一財産になりそうだが、流石に非業の死を遂げた人の遺骨を漁るなんて非人道的な真似はできそうにない。
しかるべき時が来れば慰霊碑に手を合わせるくらいはしてやろうとは思っている。
一緒に来たコナン君は、小狐面の下で暗い顔をしながら、私と一緒に遺骨に手を合わせている。
「……比較的新しい骨もある。カメラを持ってるし、記者の人かな」
「だろうね。どうやらルパンの話によるとゴート札の製造拠点みたいだし、ネタをすっぱ抜こうとして帰らぬ人となった事例も多そうだ」
「うん。まさかこんなに犠牲になった人がいるなんて」
探偵バッジのデザインが反転して黒くなったバージョンがルパンに渡されていて、そこから先ほど伝えられた情報だ。
コナン君は決意の籠った瞳で私を見上げた。
「安室さん。この事件、必ず解決しようね」
「そうだね。───俺としても、こういう組対の真似事をする分には気分がいいしな」
「ゼロさん言い方」
くすくすと降谷さんが笑ってから、ふっと笑って肩をすくめる。
「ならさっさと中のマッピングを済ませて退路を確保しよう。どうせルパンがこの道を通るつもりのようだしな」
「そうだね。あんまり時間はかけられないから、手早くだね」
ちょうどこの処刑牢と隣り合うように偽札の印刷工房があるようで、そちらはすぐに見つかった。
そちらでは原盤の写真から印刷の稼働状況までデータを全て引っこ抜くことに成功。
世界の紙幣製造状況と合わせれば、流通している紙幣の何割が偽札なのかこれで正確に把握できそうだ。
また、偽札の送り先や流通経路なんかも一緒に収集。
意外と裏組織に流れている分が少ないのが闇の深さを物語っている。
そのほか通常空間へ続く抜け穴、水路の繋がりなどなどマッピングを続けること30分。
突如、上からどでかい気配が降って来た。
上から降ってきた男──絶対銭形警部だこれ──は「ぬわあああああ!なんじゃあこりゃあ!!!!」と野太い声をあげて人骨の山に顔から垂直落下した。
流石の銭形警部も何十メートルと言う高さから落下したらひとたまりも…無いわけないんだよな。
そのまま警部はひょいと起き上がって左右を見渡し、「お前はっフォックステイル!!!それに小狐まで」と無傷でぶるぶると全身を震わせた。
生命力が意味わかんないんだよなぁ。
ビクッとコナン君が恐れ慄いて私の後ろに隠れた。
小動物みたいな動きだ。
「逮捕だフォックステイルっっっ!!こんな幼い子供まで犯罪に手を染めさせおって!」
「まあまあ。周囲を見てください。すごい数の死体ですが、こちらは刑事として確認せずにいいんですか?」
「……ん?お、おお!?なんだ一体これは!どういうことだ!」
今気づいたみたいな顔で銭形警部が叫ぶ。
どれだけルパン一味一筋なんだ。
とはいえ、ルパンと違って私は逮捕の数も逃走の数も少ない。
一応銭形警部としても聞く耳は持ってくれるようだ。
「この城に後ろ暗いところがあるのは薄々気づいてらっしゃいますよね?」
「ん、ああ。伯爵の様子は何かおかしかったからな。だが城の地下にこんなものがあるなど…」
「しかも古い人骨ばかりじゃない。現代の記者や警察官なんかの骨もかなり混じっている」
「ッ!!!なんだと!?」
人骨の中からかなり新しい部類のものを指で指し示す。
銭形警部が亡骸をひっくり返し、その持ち物を見聞して目を見張ったようだった。
「日本の警察官じゃないか!しかもこの手帳……偽札の生産拠点だって!?」
「ええ。真っ黒ですよこの国。しかもその全てを握るカリオストロ伯爵は、大公家最後の姫君を無理やり娶って国を乗っ取ろうとしている」
「………お前たちは何が狙いだ」
銭形警部が鋭い声で問いかけてくる。
訝しげ、というより何を企んでいるかを聞きたいようだ。
私はコナン君と頷きあって、正直に答えることにした。
「カリオストロ公国の財宝……と言う名目ではありますが」
「が?なんだ、違うのか」
「ええ。なんと言いますか、その。ルパンに春が来ているというか、姫君のことを割とマジに救おうとしてます」
「……いつもの女ったらしじゃないか」
いやまぁ確かにいつも割とマジに救おうとはしてるんだけど、それとは違うというか、いや結果は一緒なのか?うーん……。
ごほん、と咳払いして。
ようやく銭形警部の存在に慣れてきたのか、コナン君がこっそり顔を出してか細く蝶ネクタイ型変声機越しに女の子の声を出した。
「おじさん、協力してくれない?偽札の摘発は警察の人しかできないから」
「う、うーん。だがルパンに協力などと言うのはワシとしてはできないというか」
「じゃあ、オジサンは今回だけぼくたちを邪魔しない。僕たちは偽札の情報とここからの脱出方法を提供する」
「……ふぅむ。今回の事件が終われば逮捕するが、それでもいいな、君」
「うん」
こくり、とあどけなく見える様子でコナン君が頷いた。
徹底的に子供としての立場を道具に使っている様子にコナン君の強かさが光る。
これがコナン君でなければここまで取引はうまくはいかなかっただろう。
その後の流れはスムーズだった。
一応一通りの情報共有と、私が切り開いた外に通じる穴の位置を教えて。
そこからゴート札の印刷工場についても案内した。
世界各国の偽札がよりどりみどりの様子には銭形警部も驚愕したようだった。
それからさらに20分ほど。
上からチカチカと点滅する謎すぎる気配が降ってきた。
持ってきたカロリーメイトを銭形警部にも振る舞って三人で小休憩をとっていたので、その気配はすぐに察知することができた。
おそらく私に分かりやすいようにルパンがわざと気配を消したりつけたりしているのだろう。
そんな懐中電灯じゃないんだから気配をつけたり消したりなんて普通はできないはずなのだが。
まあ、ルパンが普通ではないのは今更か。
途中から落下を防ぐためか、巻取り式のフックを使ってゆっくりとルパンは降りてきた。
彼は水に流されたのかぐしょ濡れの上着を脱いで絞った後、きょとんとした顔で私達の様子を見た。
「あれ、何コレ。まったりした集まりじゃないの」
「よう。来たかルパン」
「しかも銭形のとっつぁんが逮捕にも動かない。いよいよもって壊れた?」
「小狐君に免じて一時停戦してやるだけだ」
むっつりと銭形刑事が不機嫌そうに言い切ったので、賄賂がてら追加でコナン君がカロリーメイトを銭形刑事に渡した。
銭形刑事は「おお、すまんな」といってカロリーメイトを受け取り、もしゃっと一口で食べ切った。
「おー、もう話がついてるとか、やるじゃねーか小狐君。んじゃフォックステイル君、俺もちょーだい」
「どうぞルパン。では、いったんずらかりますか?」
「いや。クラリスがまだ助け出せてねぇ」
「………、ものは相談なのですが、いったん引いて四日後の結婚式を襲撃しませんか?」
ルパンの眉間に皺がよった。
私の提案は宝を前に「手を引け」と言っているようなものだからな。
そりゃルパンは侮辱されたように感じるだろう。
「どういうつもりだ?」
「ここの人間はお姫様が生きていても死んでいてもいいと考えている節があります。ここでドンパチすれば、僕達は生きていてもお姫様の命は保証できない」
「……結婚式を襲撃するのは、相手の手を少なくするためか」
「ええ。それに、少しここから情報を収集しましたが、結婚式にTVカメラを入れる計画までありました。いい機会じゃありませんか、銭形警部」
「ほぇ?」
銭形警部がさっぱりわからん!とでも言うように首を傾げた。
しまった。探偵ばかりの空間に身を置いて誰も彼も察しが良いものと思い込んでいた。
咳払いして説明を続ける。
「つまり、ルパンの出るところに銭形警部がいても何もおかしくないし、そこでついうっかりTVカメラが偽札工場を映せば国際社会はそれを捜査せざるを得なくなると言うことです」
「ふうむ…しかし、なにもそんなことせんでもワシがインターポールに報告すれば…」
「それじゃだめだよ」とコナン君が首を振った。
銭形警部が報告した場合、インターポールがどう言う対応を取るか、コナン君はよく理解しているらしい。
「国家ぐるみで偽札製造なんてやってて、インターポールが気づかないわけないよ。分かってて黙ってるんだ。黙らされてるんだ」
「ど、どういうことだね!?」
「弱みを握り合ってる、ってことだね。各国はいざという時偽札を利用させてもらう代わりに、偽札製造をお目溢ししてるんだ」
「なんと!!そんな……そんなバカな!」
「普通にインターポールに報告しても握り潰されるだけだよ。もっと決定的に世論を動かす証拠…例えば、TVの生放送なんかが必要だ」
ぐぬぬぬ、と銭形警部がカロリーメイトのから袋を握りつぶした。
彼も正義感の強い人だ。正義と真実が握り潰されるなんて許すことができないのだろう。
ルパンがふぅ、とタバコを取り出して咥えた。
「だから仕切り直しが一番早いってか」
「ええ」
「話はわかる。だが、手を引くことはできねぇな」
「!」
すぱー、とタバコをふかし、ルパンはどっしりと腰を下ろした。
タバコの火が暗い室内に灯る。
「それまでクラリスを放っておくわけにはいかねぇよ。あんなに震えて、気丈に振る舞ってんのに。ここでおじさんが見捨てたみたいに映ったら、どんなに傷付くことか」
声は切実さと、なにより心配の色を含んでいた。
私は己の分のカロリーメイトを口に含んで、一拍間を置いてから答えた。
「なら仕方ないですね。お姫様、助けにいきましょうか」
「………いいのかよ?」
「良くはないですけど、効率重視が必ず正解とは限りませんしね。お姫様の心情を考慮してなかった僕のミスです」
確かに、思えば原作ではルパンが助けに来なかった三日の間に完璧にレイプ目になるぐらいお姫様は追い詰められたもんな。
それを思えば、ルパンが放って置けないのもわかる。
ルパンはどうにも居心地悪そうにみじろぎした。
なぜか呆然とした銭形警部が、噛み締めるように顔をくしゃくしゃにして言葉を落とす。
「なるほど、これが春か……ルパン、お前も人間だったんだなぁ…!」
「ナニソレ。とっつぁんそれどういう反応?」
「ワシは立場上応援はできんが、うむ。いいんじゃないか、そういうの!」
「だからなんなの」
困り切ったルパンとか言う珍しい光景を見ながら、私と降谷さんはうむうむと頷きあった。
「では、私は小狐君と共に正面から脱出します。敵を引きつけますので、その間にルパンと銭形警部はお姫様を助けてください」
「えっ、僕も陽動役なの!?」
「僕が肩車するからひたすら麻酔銃で撃ちまくって。銃弾は僕が弾くし、近距離まで敵が来たら排除しておくよ」
「了解。任せて」
「オッケー、敵は二人でよろしく!とっつぁんは頼むぜ、今だけ休戦ってことで」
そんなわけで、私たちはしばらくの間今後の計画を練り直し、方々に動き出したのであった。
・その頃、阿笠邸にて
灰原「私のパソコンに国家機密の山が送られて来てるんだけど…ゴート札?どういうことよコレ!」
博士「新一ぃ……ワシらにどうしろと……」
灰原「今すぐこのPCはオフライン専用機にするわよ!それとカーテン全部閉めて!」
唐突に現れた昴さん「肉じゃがの差し入れです!!!」(バタァン!)