バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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番外 カリオストロの城③

 

 結局、原作通りにことは運んだらしい。

 

 ルパンはお姫様奪還に失敗し、胸に銃弾を受けて三日間も意識が戻らなかった。

 明日がお姫様と悪の伯爵の結婚式当日。

 向こうも城の守りを固めるのに忙しいのか、こちらに刺客を差し向けてくることはなかった。

 

 あの時、私たちはといえば、コナン君の八面六臂の活躍により衛士のほぼ半数をダウンさせることに成功した。

 

 私は近接戦と銃弾弾きに専念し、完全な移動砲台と化していたのだが。

 それでルパンへと向かう追っ手も原作より少なくできたとは思う。

 

 それでもルパンの怪我も原作通りな辺り、やはり原作の修正力は強いらしかった。

 

「あーあ、結局クラリスの目の前で撃たれて、より心の傷を深くしちまっただけだ。指輪も盗られちまうし」

 

 俺は何やってんだか、とルパンは遠く窓の外を見ながらひとりごちた。

 次元さんはソファでタバコをふかし、五エ門師匠はただじっと斬鉄剣の手入れをしている。

 ルパンの様子は随分としょげかえっているように見える。

 

 私は五エ門師匠の隣で刃に油を塗りながら、ゆったりと口を開いた。

 

「それでも行くんでしょう?明日、傷をおしてでも」

「勿論。それが俺のやり方だしな」

 

 そう言い切るルパンに、噛み付くようにかかる声が一つ。

 

「……ねえ、それって本当に泥棒のお仕事なの?」

 

 コナン君がどこか不機嫌そうな顔で昼食の残りを食べながら問いかけた。

 

 ルパン達泥棒が紛れもない「正義」を働いていることに、そしてそんな彼らが悪党と評されていることに、不満を露わにするように。

 

「そうですとも。ニセモノを弾劾することも、お姫様を助け出すことも。これみんな泥棒のお仕事なの。ガキンチョには早かったか?」

「どこが。相手は望まぬ婚姻どころか拉致監禁までしてる。偽札作りもそう。バリバリの犯罪者だ。警察はなんで仕事をしないんだよ」

「それが大人の世界ってもんだ。正しいことがいつだって正しく受け入れられるわけじゃない」

 

 ルパンは歌うように誦じて、腕を頭の後ろに組んでベッドに寝転がった。

 

「おじさん達は泥棒で、辛い立場にある女の子を野にそっと放ってあげるのが泥棒ってやつのお仕事。そゆことね」

「…………こんな大怪我しても行くの?」

「そうそう。諦めるのはおじさんのプライドが許さない。少女のため、なんて他人のせいにして動くのだけは絶対にダメなわけ」

 

 なにせ、おじさん達は泥棒だから?

 

 そう言ってルパンはニヤリと笑った。

 ヴィランとしての誇り、そこでなお仁義を通す悪党としての心構えがそこにはあった。

 

 やっぱりブスくれたままのコナン君が視線を落とした。

 

「……じゃあ僕は、おじさん達が難しいこと考えなくてもいいように。…探偵として、真実を世に敷いてみせる」

「へえ。やってみな、探偵君」

 

 ルパンはニヒルに笑って、ベッドから跳ね起きた。

 痛いだろうに無理をしてジャケットを着て、健在であることを見せつけるように背筋を伸ばす。

 

「明日はどんな手筈で行きます?」

「不二子ちゃんにはTV局スタッフとして潜り込んでもらうつもりだから、俺らは突入するだけ、みたいな」

「なるほど。あんだけ好き勝手されたんだ。ちょっとした意趣返しぐらい考えてんだろうな?」

 

 次元さんが手入れし終わった銃をちゃきりと構え、口を開く。

 ルパンが気を取り直したことがわかったのか、僅かに安堵が滲んでいる。

 

「まあ遊び心はいつも通り満載でいくぜ?五エ門と安室ちゃんは甲冑連中を斬っといてくれ」

「承知。安室に軽く切り伏せられるような連中に遅れをとる拙者ではない」

「ええ。師匠がいるなら特殊部隊なぞ何百居ようが敵ではありませんね」

 

 私もジャキッと爪を装備してルパンへと笑いかける。

 この強さがルパン一味の醍醐味だろう。

 一人が落ち込んでも一味ならば助け合える。そんな複数としての強さがある。

 

「ガキンチョは次元と援護射撃。俺が伯爵を引きつけるから、その間頼んだ」

「おうよ。坊主、いけるな?」

「勿論。次元さんには遠く及ばないけど、僕もエイムには自信があるんだ」

 

 水鉄砲型麻酔銃をコナン君が構えれば、帽子を上げた次元さんがニヤッと笑った。

 

「確かに、オメェには才能があるからな。どうだ、弟子入りするか?」

「え、いいの?早撃ち0.3秒の次元大介って言えば、各方面で有名なガンマンだし。忙しいんじゃないの?」

「同じ一味のよしみだ。オメェもつくづくルパンと同じ疫病神体質みてーだし、あって困る技能じゃねぇだろ」

「やだなパパったら、疫病神じゃないよぉ」

「パパって言うな!!!」

 

 おお、さらっとコナン君の次元さん弟子入りが決まってしまった。

 確かに、揺れるヘリコプターの中から揺れるロープを的確に打ち抜けるコナン君なら、次元さんの弟子としての適性はピッタリだろうが。

 

 麻酔銃も相手が急に動かない限り必ず首筋にヒットさせてたし、案外お似合いの二人なのかもしれない。

 

 そこでふとあのゴート札製造工場からかっぱらって来たデータがどうなったのか気になって、コナン君に話しかけた。

 

「あ、そうだ。カリオストロ城の地下で見つけたもののデータ、解析は終わったかい?」

「うん。灰原から返信が来てた。それぞれ現代になって行方不明になった記者のデータと照らし合わせて。一応僕の方でも遡れる限りの被害者をまとめておいたよ」

「なるほど。それなら不二子さんに渡す記事としては十分だね」

「まぁ、灰原にはスゲー怒られたけど。何に頭突っ込んでるんだってさ」

 

 コナン君はまるで反省していないみたいな顔で苦笑した。

 そりゃ世界有数の暗部を突然PCに送りつけられればそんな反応にもなろう。

 昴さんからもものすごい鬼電が来たし、若干対応が大変だったものだ。

 

 一応、FBIとは相互にノータッチで話は決着した。

 

 アメリカはカリオストロ公国を切り捨てる決意をしたらしい。

 裏ではルパンの暗殺計画も出たのだろうが。

 カリオストロの闇が暴かれるまでの短い間にルパンを暗殺できると思うほど、米国上層部の頭はお花畑ではなかったようだ。

 

 しかし、灰原さん達には申し訳ないことをした。

 

 コケにされたお返しにと不二子さんがネタを欲しがっていたから、コナン君がデータの分析をお願いしていたのだ。

 

 不二子さんは多分取材記者に化けた時に一緒に全世界にばら撒くつもりだろう。

 ついでに資料として各メディアに売っぱらって金にも変える。

 まったく、強かなことこの上ない。

 

 それと、地下で見つけた印刷機からこっそり偽紙幣印刷のための原板を何枚かパクってきている。

 この情報を渡してきた不二子さんと、バレないよう偽装工作したコナン君、そして実行犯の私の三人で山分けの予定だ。

 コナン君も私も公的機関に提出する予定だから、得したのは不二子さんだけになる。

 

 

 ルパンが胸の傷の痛みを堪え、それでも陽気に笑って見せた。

 

「じゃあ、当日は予定通りに。とっつぁんを招き入れてメチャクチャにするから、各自動きには気をつけろよ」

 

 

 

 

 

 というわけで、当日。

 

 式場、大・混・乱!!!

 でございます。

 

 石造りの建物の中で打ち上げ花火約百発が縦横無尽に駆け巡り。

 偽札は舞い散り、衛士と日本警察が激しい鍔迫り合いを繰り広げている。

 うーん乱世乱世。

 

 私たちはそんな中、特殊部隊の連中を斬っては捨てての大立ち回りを演じている。

 コナン君も小さい体で逃げる客達に混じって敵を翻弄し、的確に敵を麻酔銃で射抜いている。

 この暗い中よくもまあここまでエイムを定められるものだ。

 

 TV中継は不二子さんと銭形警部に任せておけばよかろう。

 ひとまず銭形警部とは連絡はついていて、すでにこの件の間は休戦が約束されているから特に気にする必要はない。

 

 一瞬降谷さんと共に同時に表へ浮上して、変わってTVカメラを狙う人員を鋼鉄製ブーメランで吹き飛ばす。

 遠目にルパンがお姫様を助け出して式場外に逃げ出すのが見えたので、私たちも撤退を決意した。

 

「小狐君!ずらかるぞ!」

「わかった!」

 

 阿吽の呼吸でコナン君を肩に乗せ、巻取り式フックを使ってルパンの後に続く。

 後方からの銃撃は振り向きざまに切り捨てて、コナン君に掠らないよう注意は怠らない。

 

 その間にコナン君が狙撃手全員に麻酔銃を当ててダウンさせる。

 一瞬の間だったが、なかなかの早業だ。

 

 そのままロープを伝って降りてゆけば、追加の増援が銃弾の雨を降らしてきたので一時建物の影に隠れることに。

 

 そこには先に逃げていたはずのルパンとお姫様がいて、お姫様は真っ先にこちらへと駆け寄ってきた。

 

「ボク、結婚式の時に私に花をくれた子よね。まさかおじさまのお仲間さんだったなんて!」

「クラリスさん、きっとルパンおじさんがあなたを助け出すから、安心して。僕たちも力になるからさ」

「………ありがとう。それに次元様も、そちらの狐のお方も、お侍さんも。私は幸せ者だわ」

 

 にこっと笑う姿は実に無垢で麗しく、野に咲く可憐な一輪の花といった鮮やかな強さを持つ。

 クラリスさん、いい子だのぉ。

 さすがはルパンが惚れるだけはある。

 

 「任せたぜ、次元、五エ門、安室ちゃん」とルパンがウィンクした。

 

「それに、小狐君。敵は頼んだ、抜かるんじゃねぇぞ?」

「はっ、当たり前だっつの。ここで動けなきゃ付いてきた意味がねぇ。やってみせるさ!」

 

 コナン君は高らかに吠え、強い視線をルパンと交わし合った。

 

 そのまま、ルパンはするするとロープを降りて見えなくなった。

 降谷さんが眉間に皺を寄せて言葉を落とす。

 

「───どうする?相手の兵力は相当数がまだ健在だ。このままではかなりの数を抑えられなくなるぞ」

「それでも拙者と次元で敵を掃討し続ければ、ルパンへと向かう兵は少なくなろう」

「坊主は何かいい案でもあるか?」

「うーん」

 

 次元さんの問いかけに、コナン君は唸ってからハッと思いついたように顔を上げた。

 

「一応、この博士の作った『破裂拡散超巨大ボール』に麻酔銃のタンクの中身を全部入れれば、簡易的な麻酔煙幕みたいにはなるよ?」

「効果範囲はどれくらいだ?」

「ボールが破裂すれば半径500メートル以内の敵は眠るっていってたから、使うには十分だと思う。僕の麻酔銃残弾がゼロになっちゃうのがネックだけど」

 

 超巨大ボールって、あのハロウィンの花嫁でお披露目されたビルをみしみし言わせるデカさと頑丈さを兼ね備えたボールのことか?

 あれをわざと破裂させて睡眠ガス状にした空気をあたりに撒き散らす?

 どういう軍事兵器だよそれ。

 

 同じことを思ったのか、頭を押さえた次元さんが搾り出すような声で「OK、それでいこう」と頷いた。

 

「じゃあ打ち終わった後は僕が肩車していようか?」

「うーん。一応まだサッカーボールも残ってるけど、弾数が相当限られるからなぁ。安室さんお願い。それと、手間かけさせてごめんね」

「まさか。これが決まればMVPは君なんだから、後ぐらいは僕に任せてもいいんだよ」

 

 コナン君がふっと笑ってボール射出ベルトのソケットの部分に麻酔銃を差し込んで薬液を流し込み、構えの姿勢に入る。

 ん?これってどうやって設置するんだ?

 同じことを思ったのか、次元さんが問いかけた。

 

「坊主、ボールは普通に蹴って相手に飛ばすのか?」

「そうだよ。数秒後に相手の頭上で膨らみ始めるんだ」

「相手に気づかれたらボールが銃撃されねぇか?」

「それでもいいんだ。一定時間だったり、衝撃を受けたりしたら破裂する構造になってて……よし、風向きもOK。無風に近いし、これなら!」

 

 一瞬銃撃の止んだ隙を狙い、コナン君が立ち上がる。

 キック力増強シューズの出す青白い閃光が目を焼く。

 

「いっけぇぇえええええ!!!」

 

 そのボールはちょうど相手の銃弾を縫って敵の頭上へと到達する。

 そして、急速に膨らみながら緩やかに落下。

 

 夜であるためボールに気付くのが遅れたのだろう。

 それは敵陣の中央に見事に落下し、「なんだこれは!」「撃てっ!!」と混乱をもたらしている。

 そして小さな銃撃音と、同時にパァン!!と派手な破裂音。

 

 おー、上手くいったようだ……あれ?

 

 次元さんが急に立ち上がり、目眩を堪えるように頭を振る。

 

「おい!?こっから向こうまで500mはゆうにあるだろうが!風向きも問題ねぇ!睡眠ガス、届いて、る、ぞ……」

 

 そうしてバッタリと倒れ伏す。

 急いで五エ門師匠の方を見れば、そちらもズルズルと壁にもたれかかって落ちていた。

 

 無論コナン君もごめん寝状態。

 降谷さんも内側で行き倒れている始末で、残っているのは私だけの有様だ。

 

 博士………いけない人………!!!

 あの阿笠邸の敷地内じゃ睡眠薬拡散範囲の実験ができなかったのはわかるけど!!

 私がいなけりゃジ・エンドだったぞ!!!

 

 私はうん、と頷いた。

 ともかく、だ。

 

「………三十六計逃げるに如かず、ですね!」

 

 五エ門師匠と次元さん、そしてコナン君を無理やり俵抱きにして、私はスタコラサッサと逃げ出したのだった。

 




・睡眠薬拡散ボール
薬液をベルトに注入することでガス状に変換してボールへ込めることができる広域化学兵器。
後にルパン一味により実験用に軍事演習場を貸し出され、効果範囲半径800mに修正された。
灰原「博士、これ、効果範囲が広すぎてちょっと使いづらくないかしら」
阿笠博士「そうじゃのお。要改善じゃわい」
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