バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
カリオストロの城から帰り、日常へ戻ってしばらく。
長野に一緒に行くはずだった園子嬢が熱を出したため、急遽代打で毛利探偵たちの仕事旅行の付き添いをすることになった私です。
一泊二日の旅だが、この間は特に私も組織の仕事等は無いため付き合える日程だ。
とはいえ、昨日までの仕事の忙しさと言ったらなかった。
日本国内は政治に経済に大混乱。
連日偽札をめぐる特集で昼のニュースは大賑わい。
銀行には自身の金を鑑定してもらおうとする一般市民でごった返し、業務も成り立たない有様だ。
もちろん、私も組織の目を盗んで大混乱の公安の事務処理に追われることになった。
ゴート札データ提出から経緯の報告、ゴート札輸入の中継地点の特定、お偉方のネチネチとした嫌味、エトセトラ。
あまりの忙しさにあと少しで降谷さんが液状化するところだったほどだ。
組織は組織で内部の札束を組織総出で確認する処理が待っている。
こちらの私は口頭での報告ぐらいしかやることがないが、NO.2たるRUMはそうではない。
RUMもよく「脇田兼則」としての業務と旅行を両立できたものだ。
吐きそうなほど忙しかっただろうに、あの老体で体力のあることよ。
そこでようやく処理が落ち着いたところでこの旅行で、微塵の疲れすら見せないと言うのだから、やはりRUMも相当鍛えているのだろう。
というわけで現在、長野へ向かう新幹線の中なり。
流れる景色は日本の山々に囲まれ、遠く都会の喧騒を離れてどんどんと雪深くなっていく。
凍えるほどの一面の雪景色は、これから電車とタクシーを乗り継いでどんどん深くなっていくのだろう。
さて。
そんなわけで、なごやかにババ抜きをやっている最中。
メンバーはRUM、私、毛利探偵、コナン君だ。
とてもババ抜きが楽しめるとは言えない緊迫感のある人選である。
RUMならどのカードがどこに行ったのか全て覚えて、そこからカードの組み合わせを逆算できるはずだ。
現に今もチラリと視線を這わせる姿は全てを計算づくのように見える。
とはいえ、こんなお遊びに本気を出す必要性は本来無い。
だというのにわざとらしく振る舞うのは、私へ「これだけの実力のある指示者だぞ」と見せつけるためにあえてしていることだろう。
そのため毎度コナン君と私の二人が残る戦績となっている。
毛利探偵は謎に鬼強で、なぜか毎回一位上がりとかいう豪運であった。
これにはRUMも素直に驚いていた。
なお、降谷さんはやさぐれて。
───なんだこの地獄みたいなババ抜きは。なんでRUMもおとなしくババ抜きやってんだ
───無害でいいじゃありませんか。腹の探り合いもこれなら可愛いものですし
───これが可愛いと表せるなら、虎もクマも愛玩動物に違いないな
などと眉間に皺を寄せていた。
ちなみに、新幹線の中での昼食はRUMの持って来た寿司弁当だ。
本職が握っただけはあり、ネタも新鮮で実に美味しいんだよな。
隣に座るRUMと歓談してると思うと味がしないんだけど。
RUMがからからとわざとらしく笑ってこちらを見る。
「それにしても、安室の兄さんと師匠が家族ぐるみの付き合いとは思いやせんでした!」
「おー、安室には家事から何まで世話になってっからな。俺も助かってるってもんだ」
「へぇ……そいつぁ随分と親切だ。他人の家事まで手伝うなんてよぉ」
RUMの視線は鋭くべっとりと這い上がるような威圧感に満ちている。
ここは……どう出るべきか。
いや、薄っぺらな嘘をついてもすぐにバレてしまうことだろう。
正直に出てみるか。
私はぺろりと唇を濡らしてから、にっこりと困ったように笑って見せた。
「蘭さんが家事を一手に担ってると聞きましたので。まったくの他人というわけでもなし。なら、大人として僕が力になろうかなと」
「コイツは根がいいやつというか、正直で親切なんだよ。それに助けられる俺が言うのもなんだが、もうちっと世間とのズレを直したほうがいいと思うんだがな」
「そんなに僕、ズレてます?」
「ろくな報酬も貰わないで人ン家の家事をやってる奴なんてズレてるに決まってんだろ。せめて俺の渡す金は受け取れ」
半目で毛利さんに睨みつけられて私はついしゅんとなった。
金には困ってないから本当にいいのに。
ぱちくりとRUMは瞬いて、しばらく考え込んだ後に「そうでやしたか!」と答えるに留めた。
納得してもらえたというか、「相変わらず…程々にしておきなさい」というメッセージを含めた視線を貰ってしまった。
まあ、ようはサイコパス演技の一環だ。
親切心と殺意は完璧に切り離してるというアピールである。
やっぱり味のしない高級寿司をもそりと一口含んで噛み締める。
「それで、暗号とは?」と聞けば、毛利さんは懐から一枚の紙を取り出した。
それを皆で一斉に覗き込む。
36マスに区切られたマスにカタカナが乱雑に並んでいる。
これは……たしか読み方を提示しても推理には影響のない内容だったから、開示しても問題なさそうだ。
私は紙を毛利さんから受け取って、首を捻るポーズと共にポツリと呟いてみせる
「『さぁ、プレイゲームだ』?どう言う意味でしょうね」
「!!わかるのか安室、その暗号が!」
「勘ですよ?本当にこの読み方で合ってるのかもわかりませんし」
場が思った以上にざわっとした。
そりゃ、これは「野球に関係した暗号だ」という事前情報がなければ解くのが非常に難しいタイプの暗号だからな。
私は勘ということでゴリ押ししたが、ノーヒントではコナン君でも解くのはむずかしかろう。
「要は野球です。マスを内野と見立てて、一般的な背番号順に読んでいくんです」
「なるほどォ!流石毛利小五郎の一番弟子!」
RUMがいよっ!と囃し立てた。
そんなことありませんよ、と照れて見せるが、普通に視線が鋭すぎて穴が開きそうだ。
降谷さんが不機嫌そうに苦言を呈した。
───RUMの前でわざわざ力を見せる必要があったか?
もっともなお言葉だ。
私としてはこれから起こる殺人事件の阻止の布石のために開示したまでなのだが。
それに、RUMへのアピールも兼ねている。
そのように降谷さんにも説明すべきだろう。
───RUMには頭脳面での優秀さは適宜アピールしておきませんと、使い潰す計画を立てられかねませんので。いい機会かな、と
───そうか。フォックステイルの立場も厄介だな。RUMにとって油断ならない監視対象になっているようだし。例の殺戮ショーの件もある
───来週ですね、二回目。………次は武器有りで来ます。抵抗されて殺し損ねたという体で幾らか助けられればいいんですが
つい大きなため息が出そうになる。
罪のない被害者を追い回して斬り殺して、あげく彫刻作品にまで貶めるのだから。
気が乗るはずもなかろうよ。
私がわざと推理を披露したことの意味を読み取ったのか、コナン君が何かいいたげに私へとわずかに視線を寄越した。
すでに彼にはRUMの正体もその目的も教えてある
それでも動揺せずどっしり構えているあたり、ルパン達との体験は彼を一段と成長させたらしかった。
それでも、ああ。
殺戮ショーなんて非道がコナン君にバレたら、なんて言われることだろう。
ゆらりゆられて新幹線での旅は冬の長野まで一時間半。
奇妙な緊張状態の続く車内は、それでもつつがなく目的地へと到着するのであった。