バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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明日は多分更新お休みです。


骨董盆は隠せない

 

 36マスの完全犯罪は、結局死者一名で収まったようだった。

 コナン君の推理が冴え渡り、二人目の被害者を助けることに成功したのだ。

 

 私は犯人を教えなかった。

 それでも、コナン君が私の送ったメッセージを受け取りRUMもいる中ここまでの戦績を上げた事が、私には誇らしくてならない。

 

 

 

 とまあ、そんなわけで長野から帰ってしばらく。

 

 今日は阿笠邸でまったりと子供達の相手である。

 子供達がわぁわぁと駆け巡るのを背景に、阿笠博士が部屋中央の机に一枚の骨董盆を置いてみせた。

 

 阿笠博士としては、この骨董盆を売っぱらって一攫千金を狙っているらしい。

 そんなことしなくても私から資金を流し込んでいるのに……と思えど、やはり自分の金はあればあるだけ嬉しいからな。

 

 私が「それが例の骨董盆ですか?」と聞けば、ホクホク顔で阿笠博士は頷いた。

 

「そうじゃ。叔父の家から見つかったんじゃが。今は良い鑑定士は誰かいないかと探しておってなぁ」

「鑑定士、ですか」

「そうじゃ。知り合いの鑑定士に頼もうかとは思っとるんじゃが、なにぶん忙しいのか中々連絡が取れんくてのぉ」

 

 ははは、と頭をかく阿笠博士に、私は降谷さんと頷きあった。

 下手なことに巻き込まれる前に、降谷さんがちゃっちゃと鑑定してしまったほうが早いだろう。

 

 権威は無いため金額的な裏付けにはならないが。

 それが贋作か真作かぐらいなら、ルパンの教えを受けた降谷さんならすぐに判別できるからな。

 

 すぐさま降谷さんが表に浮上して、肉体操作権をバトンタッチ。

 降谷さんが私のフリをしてニコリと微笑んだ。

 

「───貸してくださいませんか。僕に少しばかり心得があります」

「おお、安室君が?良いが……ほれ」

 

 少々訝しげながら、素直に阿笠博士も骨董盆を降谷さんに渡してくれる。

 

 箱の表面には「隠すより現る」の文字が書かれているようだ。

 箱を開けて手にとって見た瞬間、降谷さんが顔を顰めた。

 

───うわっ、酷いなこれは。油絵の具か?しかも素人が全面に塗りたくっただけだ!

───開幕暗雲立ち込めてますね。どうします?

───慎重に薬液で溶かしてみるか?中が傷つく可能性は捨て切れないが、現段階での値打ちはゼロだ。表面の油絵の具だけでも溶かした方がまだ生産的だろう

 

 もし凄そうなものならルパンを呼んで本格的に鑑定してもらおうと思ったが、そんな代物ではなさそうだ。

 

 正直に「ハズレの線が濃厚ですねぇ。これ、素人が油絵の具を塗りたくったもののようですよ?」と説明すれば、阿笠博士はがっくりと項垂れたようだった。

 相変わらずわあわあと走り回る少年探偵団を尻目に、灰原さんがクールにため息をつく。

 

「だから言ったのよ。期待しない方がいいって」

「とほほ……これで焼肉行こうかと思っとったのに」

「骨董盆が本物だったとしてダメに決まってるでしょ。そのメタボなんとかしてから言ってちょうだい」

 

 

 さて、私たちが薬液の準備に取り掛かっていた時。

 阿笠邸のチャイムが鳴り響いた。

 

 代表して私が玄関に行ってみれば、見覚えのあるキャラメル色の髪の男が一人。

 怪しげなお隣さんこと沖矢昴であった。

 

 昴さんは大きな箱を二つも持って、ニコニコと読めない笑みを浮かべながら軽く肩をすくめた。

 降谷さんが私を押し退けてキレ気味に前に出る。

 

「メロンが親戚から送られてきましたので、お裾分けに来ました」

「───ッ!………何の用ですかね、大学院生がこんなところに。研究室に行かなくてもいいので?」

「やぁ降谷君。相変わらずだな。どうだ、息災か?」

 

 実にのほほんとした調子の挨拶に、降谷さんがビキッと青筋を立てた。

 その様子に気づいているのかいないのか、朗らかな昴さんが言葉を続ける。

 

「いや、流石に君がカリオストロ公国に突貫したのには驚いた。それに最近ではRUMとも親交を深めているそうじゃないか」

「FBIは帰れ」

「そう言うな。これは最高級の静岡産マスクメロンだぞ?しかも食べごろで、二玉もある」

「入れ。話だけは聞こう」

 

 己に正直かよ。

 いや、せっかくの日本の高級食材を無駄にするわけには行かないという思いなのだろうが、なんというか食欲に負けたみたいな絵面になって面白すぎる。

 

 昴さんが小さくガッツポーズした。

 これは今後メロンがよく持ち込まれることになるだろうな、などとくだらない予想が頭をよぎる。

 

 部屋に入って昴さんが「メロンを持ってきました」と言い放てば、わあっと子供達の歓声に包まれた。

 大歓迎された昴さんは実に満足そうだ。

 

 私はと言えば、骨董盆を途中かけだった薬液に入れて、あとは時間を置くのみだ。

 その間に昼食の準備といくべきだろう。

 

 降谷さんがエプロンに身を包んで、つっけんどんに昴さんに話しかけた。

 

「そのメロンを寄越せ、FBI。切り分けて昼食で出す」

「ホー、なら私も手伝いましょうか」

「結構だ。生煮えの肉じゃがを提供するようなやつに貸すキッチンはない」

「あの時は俺も急いでいてね。君のせいだぞ?」

「……牛カツ定食を作るから貸せるのは端だけだ。大人しく子供達と食事ができるのを待っていろ」

「では、お言葉に甘えてご相伴に預かりましょうか」

 

 今日の降谷さんは押され気味だ。

 たぶんカリオストロの一件で昴さんに多大な貸しを作ったので、そのあたりが響いているのだろう。

 

 一応降谷さんに私も声をかける。

 

───疲れているでしょうに、僕が作りましょうか?

───いや。今日は気分転換に俺が作りたい。あのFBIには残飯でも食わせておこう

───ははは…なら任せました

 

 ここに来る前に買ってきておいた肉類をささっと準備して、見事な手際で高温の油で揚げる。

 降谷さんの得意料理だ。

 ボリュームがあって家でもよく作っているからな。油をたくさん消費しなければならないのが痛いところだが、回転が早ければ複数回使えるからな。

 

 揚げ物の美味しそうな香りが充満し、キッチンに見にきた元太少年が「カツ丼だ!!!」と叫んだ。

 定食だから丼じゃないけどね。

 

 その声が聞こえたのか、目のキラキラとしている阿笠博士が「カツは久しぶりじゃ…!」と救われたような声で頷いている。

 しかし、隣の灰原さんが小声で「夕食はサラダだけよ」と囁くものだから再び撃沈。

 

 可哀想に……阿笠博士。

 出来上がった牛カツを皆の前に並べれば、我先にと元太君ががっついた。

 

 「うんめーーー!!!」と元太君の感嘆の声が響く。

 フードファイターみたいなかっ込み具合だ。

 

「安室さん本当に料理上手だよね!」

「プロの料理人にはならないんですか?」

 

 歩美ちゃんと光彦君が口々に賞賛してくれる。

 子供の忌憚のない褒め言葉をもらって珍しく照れくさそうな降谷さんが、困ったように笑っている。

 

「ははは。流石にプロは難しいかな」

「そうですか?これならお店開けますよ!!ねっ元太君……って聞いてませんね…」

 

 元太君、もう半分以上食べ終わったようだ。流石…大食いキャラで長年張ってることあるな…。

 

 必死でがっついていた元太君が、不意に頭を上げてニカっと笑う。

 

「安室のにーちゃんって二人とも料理すげーうまいよな!オレは和食のにーちゃんの飯が好きだけど!」

「……?………!?!?」

 

 !?!?!?!?

 いやいやいやいや、……え?

 

 なんで二重人格がバレてるの、と喉元まで出かかるが。

 それよりも和やかな空気で「何言ってるんですか元太君!」と笑い飛ばす光彦君と歩美ちゃんに助けられた。

 

「二人って、安室さんは二人もいませんよ?」

「えー、そうかぁ?」

「そうですよ!」

 

 このまま軽く流されていきそうな雰囲気だが、流されてもらっても困る。

 この話題を続けるのは非常にリスキーなことに違いない。

 が、ふとした拍子に大暴露されては困るどころじゃないからな。

 

 降谷さんが焦りを隠しきり、落ち着いた口調で問いかけた。

 

「どうして僕が二人だと思ったんだい?」

「だってよお、作ってもらったメシが全然ちげーんだもん。作ってる時の顔もちげーし、だから、安室のにーちゃんは兄弟なんだって!」

 

 元太君、恐ろしい子……!

 ほー、と昴さんがおもしろそうな顔をしつつもフォローしてくれる。

 

「これは気分の違いですよ、元太君。洋食が食べたい腹の時と和食の腹の時では、気分が違うでしょう?」

「………!!たしかに!!なら安室のにーちゃんは一人なのか?」

「ええ。そうですよ」

 

 ははは、と笑い話として場が盛り上がっていく。

 私たちは垂れそうになる冷や汗をひっそりと拭うのみだ。

 まったく、子供の直感もバカにならないと言ったところか。

 

 

 そのあと。

 油絵の具の溶けた骨董盆を取り出してみると、中から瞬間接着剤で割れ目をくっつけた値打ちものっぽい骨董盆が現れた。

 どうやらはじめから、一攫千金など夢のまた夢だったようだ。

 

 とほほ、嘆く阿笠博士は、それでも子供達に囲まれて楽しそうな空気に満ちていた。

 




次はおそらく緋色の弾丸。
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