バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
書き上がった時が投稿の時だ!
現在、名古屋国際空港病院に私たちはいる。
本日は栄えあるWSG東京開会式当日だ。
それに伴い、世界初の試みである真空超伝導リニアライナーに乗るにあたり、念のため乗客の健康検査を行っている。
お、降谷さんの姿を見つけたコナン君が駆け寄ってくる。
彼もどうやら今回のリニアライナー試験走行参加者らしい。
コナン君はいつも通り蘭さんの用意したオシャレな服装に身を包み、鋭い目つきで問いかける。
「安室さん、ジョンさんの様子はどう?」
「こっちの人員からの報告は異常なしだ。それより、子供達はどうしたんだ?」
「危険だから仮面ヤイバーショーの方に誘導したよ。こっちに来たのは灰原だけ」
「そうか、ならひとまず安心だな」
ジョンさん、というのは日本有数の自動車メーカーCEO、ジョン・ボイドのことだ。
先週から毛利探偵のところに駆け込むなどの不審な行動が見られた、被害者候補の一人である。
恐らくは本人も次に狙われるのが自分だと気付いているのだろう。
実際、これからMRI機器の誤作動による酸欠で倒れたところを誘拐される定めにあるわけだし、警戒は間違っていない。
───安室、お前は近付いてくる気配を警戒しろ。俺は作業班に指示を出す
───承知しました。不審な気配がありましたら制圧しますか?
───いや、まだ泳がせておいてくれ。ないとは思うが、組織犯だった場合尻尾を掴んでおきたいからな
──了解
私は降谷さんが周囲を油断なく警戒する裏で思考を巡らせた。
犯人を捕まえるならこのタイミングが一番である。
次の機会となると、否応なくリニアの事故と直結してしまう。
もしリニアが暴走して国立競技場に突っ込むなんてことになれば、その損害は私の財力をもってして目の眩むような金額の損害がでてしまうからな。
なにせリニアも芝浜スタジアム建設も巨額の費用がかかった国家事業だ。
金額の桁が違う。
なんとしてでもここで止めなければ、降谷さんが倒れること間違いなし。
とはいえ、既に犯人によってリニアには想定されていないプログラムが仕込まれている。
これが判明すれば、安全のためにプログラムの見直しを含めて1ヶ月以上は休業を余儀なくされるだろう。
日本開催のオリンピック初日から開会式にケチがつくのが明らかになっているのは、なんともはや気分の乗らないことである。
降谷さんの日本至上主義が私にも移ってきたかな?
健康診断はつつがなく進んでいく。
簡単な身体測定のほか、視力検査、心電図、血液検査エトセトラ。
ああ、もうすぐ犯人が仕掛けてくる頃合いだ。
健康診断の順番を並んで待っている私達は、その平然とした顔の裏で神経を研ぎ澄ませた。
血圧検査のために一人ずつ前の席に呼ばれていく。
その時。
ものすごい勢いで配管から白い煙が逆流、噴射した。
爆発的な空気の圧力で空気の出入り口の金具が外れ、床へと叩きつけられる。
直下にいた女性が驚いて転び、悲鳴を上げた。
どうやら始まったらしい。
煙を確認した瞬間、降谷さんが顔色を変えて出入り口の扉を開けようと走り出した。
この部屋には窓がない。
煙を吸わないようにするには扉を開けるか壁を斬り開くしかないからだ。
しかし。
「施錠されているだと!?馬鹿な、先ほどまでは自由に出入りできていたはずだ!」
ガチャガチャと開けようと試行錯誤するが、犯人によって施錠された扉は開かない。
他の人も次々扉を叩き、パニックになった室内に悲鳴と怒号が充満する。
他の客に混じり、日本コードCEOのジョン・ボイドが「私は死ぬのか…?」と英語でつぶやくのが聞き取れた。
降谷さんが続けて施錠された扉に全力の体当たりを繰り出すが、やはり扉はびくともしなかった。
外側から施錠されていることに加えて、スライド式で防音用の頑丈な扉だったことが災いした。
視界の先では灰原さんが「これはクエンチよ!!」と悲痛な声で叫ぶ声が聞こえて来る。
降谷さんもそれでこの白い煙がなんなのか理解したのだろう。
顔色を真っ青にして内心で叫ぶ。
───安室!!!開けられるか!
───開けられます。が、ここは気絶したふりをして犯人を待ち構えようかと思います
───その前に俺たちが死んだら元も子もないぞ!?これは液体ヘリウムが急激に気化したために起きた現象だろう!このままじゃ酸欠で皆お陀仏だ!
降谷さんの言うことは最もだ。
この場において犯人に殺意がないということを知っているのは私のみ。
ここで犯人を確保しないととんでもないことになると知っているのも私のみだ。
しかし、多少無理筋でも通しておかないと、後が面倒臭い。
万が一換気設備が起動しなければ、私が死に物狂いで扉を開けて全員を外に出すしかないな。
私は慎重に口を開き、降谷さんに進言した。
───勘ですが、この現象について犯人に殺意を感じませんでした。捕まえるなら今しかありません
───………くそ、もう意識が…わかった。お前に任せる。死んだら……あの世で説教だ…からな……
酸欠によって眠るように降谷さんの意識が落ちていく。
私は転生者ゆえに肉体の外部操作で動けるが、肉体の酸欠状態を鑑みればあまり動くのは得策ではない。
そのままずるずると体を横たえて、犯人が入ってくるのを待つ。
しかし、あの世で説教、か。
当たり前のように死後も私と共にいると考えるなんて、少しばかり照れ臭さを感じてしまう。
その瞳のまっすぐな信頼感よ。
議論している時間はないから仕方なくという体ではあったが、きっと意識があったとして同じ選択を降谷さんはしていることだろう。
しばらくして、換気設備が稼働し出した。
やはり犯人はここで人死を出すつもりはないようだ。
院内中がパニックになる中、この部屋に近づいてくる気配が一つ。
それは迷いない足取りでこの部屋の施錠を開けると、部屋を見渡して意識のある人間がいないことを確認。
満足そうに頷き、ジョン・ボイドCEOとアラン・マッケンジー会長の二人を持ってきたスーツケースへと詰め出した。
よし。現行犯だな。
私は跳ね上がるように起き、そのまま犯人へとハイキックを一つ。
「んなっ!?馬鹿な、起き……ッゲフゥ!?」
「意識のない人間をスーツケースに詰めるのは流石に看過できませんよ」
なんて言ったところで、既に私の蹴りを側頭部に受け、完全に脳震盪を起こしたのか床に無様に転がった。
やや長い乱雑な髪に小太りの男。
リニアライナーの技術担当、井上治だ。
犯人の手を靴紐で縛って、あとはずるずるともう一度座り込むのみだ。
それからもう五分ほどが経ち、ガスマスクをつけた救急隊員らしき人物がこの部屋まで駆け込んできた。
これでようやく私も体の制御権を手放せる。
この部屋で意識があるただ一人である私の様子に気がついたのか、「大丈夫ですか!?」と隊員の一人が慌てて助け起こしてくれる。
「どこか痛いところや不調はありませんか!?」
「僕は大丈夫です。それより、全員が意識を失ったところに後からあの男が入ってきて、あのスーツケースに人を入れて攫おうとしていました」
「なんだって!?それは一体…」
「だから思わず反撃して、縛ってあります。警察の方に…お伝えください……」
「君!っ、しっかりしてください!」
私が力無く倒れ伏したのを見て、隊員は焦ったように「おい、早く追加人員を!この部屋の被害者の数を伝えてくれ!」と指示を出している。
頭がガンガンする。魂が軋んでいる。
少しばかり私も無理をしすぎたようだ。
あとは自分本位なあの犯人から、共犯である白鳩舞子の情報を聞き出すだけだ。
今回の犯人達の関係性を思えば、適切に対応すれば恐らくは情報をしゃべってくれることだろう。
そのまま、私も体を地面に任せ、ゆっくりと意識を手放したのだった。