バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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いつもの投稿時間に戻ってきてしまった…。


安室ハロ

 

 ところで、3ヶ月前のことになるのだが。

 

 毎朝の日課中、犬を一匹見つけた。

 日課とは降谷さんの朝のトレーニングのことで、土手沿いを走ったり腕立て伏せしたりとみっちり一時間体を扱き抜くことを指す。

 

 その最中、真っ白な小型犬が一匹私たちの元に駆け寄ってきた。

 

 それは外暮らしに薄汚れて薄茶色に染まってしまっていたが、たくましく外を生き抜いてなお好奇心旺盛。

 人懐っこく私たちの手のひらを舐めて尻尾を振っている。

 

 思いっきり顔を擦り寄せられ、降谷さんが困ったように眉を下げた。

 

───都内で野良犬は珍しいな。迷い犬か?

───ですね。一応交番に届けましょうか

───そうだな。ここまで人懐っこいということは飼い犬だろうし、飼い主も探していることだろうさ

 

 降谷さんが両腕を広げれば、犬は大喜びといった様子でジャンプ混じりに飛び込んできた。

 抱っこも好きなようで、へっへっと随分と満足げだ。

 

「よし。一応交番に届けるから、いい子で飼い主を待っていろよ───大丈夫、すぐにご主人も見つかるからね」

 

 二人で交互に声をかければ、犬は「アンっ!」と元気よく返事をした。

 まるで人の言葉がわかっているように見えて、どうしても情が移ってしまう。

 

 おそらく彼の飼い主が見つかることはないだろうと、私は原作知識にて知っている。

 この犬の名前は安室ハロ。

 降谷さんを追って東都中を駆け回るガッツと鼻の良さと運とを兼ね備えた、ハイパー犬である。

 

───しかし可愛いですね、愛嬌もありますし、賢そうです

───犬か。癒しにもいいと聞くが、生き物は家を開けがちな俺らには向かないな

───ですね。僕らに何かあって餓死しても可哀想ですし、ペットには憧れますが世話ができないのでは仕方ないですね

 

 ふむ、と考えた様子の降谷さんが人差し指をピンと立てて口を開く。

 

───俺らの屋敷にある鯉なんてどうだ?

───あれはロボットというか、情景の一部でしょう。生き物には入りませんよ

───やっぱりそうか。難しいな。世話のいらない生き物か…サボテンなんかもいいかもしれないな

 

 なんかやけに降谷さんが生き物を飼うことに乗り気だ。

 どういう意図か分からないが───いや嘘だ。分かる。私を思ってのことだ。

 気恥ずかしくてどうにも視線を合わせられない。

 

 それを察した降谷さんがニヤニヤと悪質な笑みを浮かべてこちらを見ている。

 

───ゼロ、意地悪はやめてください。訴えますよ

───悪い悪い。まぁなんだ。生き物は縁があったら考えよう。前と違って俺らも比較的暇ができている。場合によっては犬も飼えるかもしれないぞ

───……今はお留守番グッズも多いですしね。はぁ

 

 

 とまぁ、そんな会話をしたのが3ヶ月前のことだ。

 

 やはりというべきか飼い主は見つからず。

 保護から3ヶ月が経ち、迷い犬の所有権が私たちに回ってきたのだ。

 いくつかの治療費やワクチン代はすでに私たちが出している。

 

 あとは里親に出さなければ私たちが飼い主となることだろう。

 

 長い交番暮らしでやや不機嫌そうな白いわんちゃんが、目の前で私たちを見てキラキラした目で訴えかけてきている。

 

 降谷さんがそのキラキラしい視線に耐えられず、うっと手で視線を遮った。

 

───どうする?そのまま里親に出すのもいいが

───ここまで懐いているとなると、保護先からまた脱走してここまで来てしまいそうですね

───それは困る。道中で事故死したりしたら目も当てられない

 

 実際、一回脱走してはるばる交番からここまでやってきたからな。

 それはそれはしぶとくて、仕事中だった私たちの車を首都高速道を爆走して追ってきたぐらいだ。

 そのせいでえらい騒ぎになってしまった。

 

 降谷さんは大きくため息をつき、目の前の子犬を抱き上げた。

 犬の世話でヘトヘトになっていたらしい交番の人の目にも生気が宿る。

 どうやらかなりのやんちゃをしたらしいな…。

 

───乗りかかった船だ。俺たちで面倒を見てやるか。長期任務の時は風見にでも預けよう

───そうですね。いや、普段お世話になっていますし、毛利探偵の家に資金を流し込む建前として犬のお世話を任せましょうか

───それはいいな。一日預けるのに20万ぐらい渡せば引き受けてくれるだろう

───あはは。逆に断られそうですけどね

───違いない

 

 引き取りの手続きをしてから、私達は犬を連れてペットショップへと直行した。

 

 取り急ぎ餌とペットシーツ、犬用の家、座るベッドが必要だからな。

 店員さんにおすすめを聞いて良さそうなものをひょいひょいとカゴに放り込んでいく。

 家に関しては折りたたみ式を購入予定だ。

 

 一応メゾン木馬がペット可であることは確認済み。

 だが、大家さんにも念のため挨拶がてら見せに行く予定も立てておくべきか。

 

───この犬の名前はどうする?

───やっぱりハロでしょう。安室ハロ。これで決まりです

───やっぱりって何だ。そんなこだわりがあるなら俺もそれでいいが…

 

 目の上の眉毛のような白い模様。間違いなくコイツは安室ハロだ。

 だが原作知識のない降谷さんにそれを伝えるわけにもいかず。

 しかしハロ以外の名前になるのもなんだか癪だ。

 

 私が何やらモゴモゴと言い淀んでいれば、降谷さんは困ったような顔をしてそのまま「安室ハロな。いい名前だ」と飲み込んでくれた。

 優しい……すまぬ……。

 

 

 そんなわけで、用具を買ったらあとは今日の散歩である。

 

 ハロは新居に大喜びで入場し、ひとしきり走り回った後水をがぶ飲みした。

 念のためペット用クッションマットも敷いたのだが、頭の良いハロはしっかりそこから出ずに遊んでいたようだ。

 粗相をすることもなく、リードを嫌がることもなくおとなしく首輪をされることの何とできた犬よ。

 

 散歩に出て米花町をぐるぐると歩いて回っていると、買い物帰りらしいコナン君と蘭ちゃんの二人組に出会ったのもハイライトか。

 

「あ、安室さん犬飼ってたんだ」

「可愛いー!なんて名前なんですか?」

「今日引き取ってきたばかりだけどね。名前はハロ。可愛いだろう?」

 

 しかし今考えるとアムロがハロを飼ってるって、完全に宇宙世紀なんだよなぁ。

 シャアもいるしカミーユもいる。こう思えば私も何かしら宇宙世紀に擦った名前を持っておくべきだったか、などとくだらないことを考え出す。

 

 私の煩悩を知ってか知らずか、蘭ちゃんの注意がハロに向かっていることを確認してからコナン君が静かに話しかけてきた。

 

「そういえば、安室さんは若狭留美って人、知ってる?」

「んー、聞いたことないな。女性のようだけど、コナン君の知り合いかい?」

「新しく小学校に赴任してきた先生だよ」

 

 その言葉に降谷さんが「ふぅん?」と首を傾げた。

 わざわざ小学校の先生を降谷さんに聞く意図が分からなかったのだろう。

 

「気になるならこっちで調べようか?」

「うん。お願いしていいかな。取り越し苦労かもしれないけど、あの先生には何かありそうだから」

「了解」

 

 降谷さんは一つ頷いて目を細めた。

 

───若狭留美?コナン君がそんなに気になるというのだから、何もないと言うこともないのだろうが

───……名前を変えているのかもしれませんね。慎重に調査した方が良さそうです

───そうだな

 

 若狭留美、本名レイチェル・浅香は17年前の事件にて雇主をRUMに殺された、バリバリの黒の組織の関係者だ。

 おそらくその目的は組織への復讐だと思われる。

 

 17年前の事件に私は関わっていないが、場合によっては私も彼女の攻撃対象になるわけだ。

 

 考え込んでいれば、「きゅうん?」とハロが不思議そうにこちらを見上げているのに気がついた。

 飼い主が難しい顔をしているのが分かったのか、それとも存分に蘭ちゃんに撫でられまくったので満足したのか。

 ホコホコの顔で足元まで来て、靴に足をかける姿の愛らしいことよ。

 

 しゃがみ込んだままの蘭ちゃんが笑顔で私を見上げてくる。

 

「ほら、安室さんにも撫でてほしいみたいですよ」

「………そうみたいだね。はは、家を出る前に存分に撫でてやっただろうに」

「それじゃ全然足りないみたいですね!」

「まったく、ハロは欲張りさんだな。そら!」

 

 降谷さんが撫でまくれば、ハロは大喜びでアスファルトの上にコロンと転がった。

 

 どうもハロ君は私と降谷さんを見分けている感じなんだよな。

 私にはいまいち懐いていないというか、外向きの顔を見せるというか。

 少しばかり寂しくてしゅんとなる私である。

 やはりこういう時は美味しいもので釣るのが一番か。

 

 そんなことを思案しながら、私達は初めての散歩を終えて家へと帰還したのであった。

 

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