バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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休みのつもりだったが書けたので来た。


牧場に墜ちた火種②

 

 鳩山牧場バスに乗り込んだ瞬間、殺気混じりのもの凄い視線をもらった。

 

 バスがゆっくりと走り出し、周囲の景色が流れていく。

 私達はバス後方の手すりに腕をかけ、そのまま車内の様子を探る。

 

 視線の主は小学校教師、若狭留美だ。

 向こうはすぐさま平静な顔を装って隣の小林先生と談笑に入ったようだ。

 

 降谷さんが首を捻って静かに私に問いかけてくる。

 

───気のせいか?先ほど殺気を感じたが

───気のせいじゃありませんよ。どうやらあの小学校教師が、コナンくんの言っていた「若狭留美」のようですね

 

 私の言葉に降谷さんが目の色を変えた。

 すでに若狭留美に関する調査結果は風見さんから受け取っている。

 

 どうも彼女、小学校教諭の免許を持っていないようなのだ。

 というかそもそも名前も偽名。

 

 どんな足取りで偽造したのか、住民票は確認できたが。

 その他戸籍やパスポートを含め、あらゆる経歴が嘘で塗り固められていた。

 足取りを追えば、アメリカからの渡航履歴と思しきものは確認できた。

 

 まさに不審人物というより他ない。

 

 降谷さんが声を低くして私へと視線を移した。

 

───俺たちに殺気、ということは俺たちの顔を知っているということか

───でしょうね。そして、何かしらの因縁がある。ウルフドック関連と考えるのが妥当でしょうね

───面倒だな。万が一この場で騒ぎを起こされたら風見の救出が遅れる

 

 そのまま私たちも気にした様子を見せずにバス後方入り口付近に立っていれば、最後尾に座るコナンくん達が俄かに騒がしくなった。

 

 どうも前に座る乗客と光彦くんがトラブルになったようだ。

 

 今にも殴りかかりそうな様子で、客の剣幕は尋常ではない。

 降谷さんがチラリと視線を後ろに落として、キャップを目深に被り直した。

 

───かなり興奮しているようだ。子供達が危ない。助けに入るか?それともあの若狭とかいう女の動きを見るか?

───助けましょう。向こうも同じことを考えている可能性があります。膠着状態のまま助け出すのが遅れるのはまずい

───それは光彦くん達と俺たちの仲を証明することにもなるぞ。有事の際、あの女に人質に取られたらどうする

───それは……

 

 上手い言い訳は見つからなかった。

 若狭留美は目的のためには非情になれる人間だ。

 実際問題、私たちの動きを止めるために子ども達を人質に取る程度は確実にするだろう。

 

 きゃあ!と歩美ちゃんの悲鳴がバス車内に響き渡って、にわかに車内の他の客も騒然とし出した。

 

 降谷さんが頭を振って思考を振り払ったらしい。

 

───仕方ない。あの女も動かないようだし、流石に子ども達は放っておけないからな

───すみません

───いいさ。これは俺たちの判断だ。万が一があれば、また別途俺たちで力を合わせて解決すればいい

 

 降谷さんが一歩踏み込んで、振り上げた男の手を掴んだ。

 逆上した男が「なんだテメェ!」と叫び声をあげて殴りかかってくる。

 

 動きの癖からしてキックボクサーか。

 中々の練度だが、若干の動きの鈍りが感じ取れる。

 最近現役から退いたのだろう。

 

 だが、この程度では毎朝私との特訓を繰り返す降谷さんを止めるには足りない。

 

 そのままジャブをするりといなされ、男は焦りのまま引こうとする。

 降谷さんはその隙を見逃さなかった。

 顎にアッパーを打ち込み、寸止めする。

 

「そこまで。あの子供達は隕石とは何も関係がありませんから、許してあげてください。光彦くんも、勝手にとった動画は消すこと」

「ッ……!」

 

 「これでいいですよね?」とにっこりと圧のある微笑みを繰り出してゲームセットだ。

 男は何も言えないままずるずると椅子へと座り込んだ。

 

 子供達がわあっと沸いた。

 「安室さんだ!」「すみませんでした…ところでどうしてこのバスに?」「安室のにーちゃんまた飯作ってくれよ!」と口々に叫び始める。

 飯の話は今いいだろうが元太くんや。

 バス内が一気に騒がしくなり、申し訳なさそうに小林先生がペコペコと周囲の客に頭を下げている。

 小学校教師も大変だな…。

 

 男が恐る恐る上を見上げて私たちと視線を合わせる。

 

「い、隕石のことを知ってるってことは、あんたも同業者か」

「いえ。あなたの見ていたという動画と子供達の言葉を総合して推理したまでです。僕はプライベートアイ……探偵ですから」

 

 そうかよ、と男はバツが悪そうに視線を逸らす。

 男の方も意外と強者だった。

 だからこそ降谷さんの練度がいかに高いかを思い知ったのだろう。

 

 ふう、と降谷さんが髪をかきあげる。

 

───しかし、この男のおかげで自信を取り戻せた

───……?どういう意味です?

───ここのところ、毎朝毎朝お前にブチのめされていたからな。俺はどうしようもなく弱いんじゃないかと自信喪失しかけてたところだったんだ

───大袈裟過ぎません?ちょっと転がしてるだけじゃないですか

 

 あまり怪我をさせないように全力でお手玉する感覚というべきか。

 降谷さんはにわかに憤って私に詰め寄った。

 

───馬鹿言え!お前は五秒毎に地面を這う気持ちを少しでも慮ったことがあるのか!

───え、すみません……もうちょっと手加減します?

───手加減はいい。石川五エ門はこの数倍強いと聞くし。くそ、あの超反応は反則だろ…

 

 ぶつぶつと降谷さんが文句を言っている後ろで私がオロオロとどうフォローしようか右往左往する。

 そんな私たちの愉快な内心を知らず、若狭留美の方はニコニコした顔の裏で慎重に私たちを見定めているようだった。

 

 殺意こそこもらないが、秘めた強い視線を背中に感じている。

 

 この様子だと少しばかり面倒臭そうな気配がして、私はひっそりと顔を顰めた。

 子供達を助けるのを優先したが、これを若狭留美に利用される確率は案外高そうに見えた。

 

 一応、今回はわざと対応を降谷さんに任せて実力を若狭さんに誤認させる小細工を行なっている。

 降谷さんもあの一瞬で私の意図を汲んで、自分が前に出て相手をしたのだ。

 

 これで噂されるウルフドッグも誇張して語られているに過ぎないと誤解させることができただろうが……。

 

 コナンくんがこそこそと私に内緒話の様子で顔を近づけてきた。

 

「で、安室さんはどうしてこのバスに?」

「鳩山牧場に用があってね。着いたら話すよ」

 

 ここでは内緒話には向かないからな。

 すぐに納得してコナンくんが引いていく。

 

 

 

 到着した鳩山牧場は、寂れた広い敷地内に工事中なのか車がいくつも並んでいた。

  

 見た目はどうにもうらぶれていて、時の経った建物ならではの寂しさのようなものを感じられた。

 やはりというべきか、すでに牧場としては廃業していたらしい。

 雑木林の向こう側にはトラクターなども見えて、建設中の足場も組まれている。

 

「で、どういう理由だったの?こんなところまで安室さんがくるなんて」

「うん?教えるなんて言ったか?───うそうそ。ちゃんと教えるよ。ゼロ、意地悪しない───すまんな、コナン君の表情が楽しくて」

「もー、いいから答えて。で、なんなの?」

 

 降谷さんが意地悪心を発揮してコナン君を揶揄い出したのですかさず口を挟む。

 コナン君は「この公安暇なのか本当に」という胡乱な顔をした。

 小学生に呆れられているぞ降谷さん……。

 

「実は僕の部下が誘拐されてね。その救出に来ているところなんだ」

「!?!?公安の人が!?一体どうして」

「先日掘削現場から爆薬が盗まれた件があっただろう?あの担当が風見だったんだよ」

「その犯人を追っていて犯人に……!」

「だね」

 

 コナン君と話す視界の先で、若狭さんのポケットから将棋の駒が落ちるのが見えた。

 すかさず駆け寄って彼女に話しかける。

 

「落としましたよ。これは将棋の駒ですね。お守りか何かですか?」

「え、ええ。ありがとうございます」

 

 ぴくり、と若狭さんの表情が凍りつく。

 おそらく駒を私に触れられたくなかったのだろう。

 必死で平静な顔を取り繕っている。

 

 ……これはやはり、私がウルフドッグだということがバレていると見ていいな。

 

 

 と、そうしているうちに歩美ちゃんがふらふらとニワトリを追って森に踏み入っているではないか。

 みんながみんなバラバラに動きすぎて追いきれない。

 

 降谷さんがやや焦ったような顔で振り返った。

 

───おいおい、はぐれるぞあの子!

───すこし、こっそり追ってみましょうか

───……?声をかければ良いだけじゃないか?

───僕らが着いていれば危険はないですし、これであの子も迷子の経験もできますから

───あー、教育目的か?だが風見を早いところ発見しなければ命に関わる…いや。お前

 

 じとり、と責めるような視線を降谷さんから向けられる。

 

───色々理由をつけているが、勘だろ今の提案

───ばれましたか

───わからないわけないだろ。それならそうと早く言え。勘なら俺はいつも最優先にしてるぞ

 

 一日何度も勘という名の原作知識を発動するのは不自然かなとも思ったのだが、やはり降谷さん相手に下手な言い訳は通用しないな。

 大人しく観念して「勘です。こちらの方が風見さんの行方につながると思いまして」と言えば、降谷さんも納得してくれたらしい。

 

 「行くぞ。歩美ちゃんを見失わないうちに」と言って私たちはこっそりと走り出した。

 

 

 

 さて、ニワトリを追う歩美ちゃんを追跡していると、その無秩序な軌道にかなり苦戦させられた。

 全方向唐突に振り向くので、バレないというのが絶妙に難しいのだ。

 ルパンに鍛え上げられた降谷さんがいなければ、私では見つかっていたことだろう。

 

 そうしてたどり着いた山深い先には、少しばかりひらけた空間があった。

 焼けた枝がパラパラと散り、その周りの木々には濃密な火薬の匂いが鼻をつく。

 

 それが何かわかっていないのか、歩美ちゃんが布に覆われたダイナマイトをしげしげと見つめている。

 

───ダイナマイト…!?どういうことだ!これは…盗まれた解体用の爆薬か!なぜこんなところに!

───ッあそこにいる男、公安から報告のあったこの牧場主の弟ですね。どうします?

 

 ここでずっとダイナマイトの設置作業をしていたのだろう。

 不審な男が歩美ちゃんの前に立っていた。

 

 男はスタンガンを手に持って、止める間もなくさっと歩美ちゃんを気絶させて立ち尽くしている。

 

 倒れ伏した歩美ちゃんを見て、降谷さんがギリと歯軋りする。

 

───!!!……奴を気絶させられるか、安室

───もちろん。今僕らは死角にいます。これで一撃で意識を刈り取れなかったら五エ門師匠に怒られてしまいますよ

───頼んだ。あのままでは歩美ちゃんが危ない

 

 降谷さんの指令を受け、さくっと表へ浮上して肉体の操作権をバトンタッチ。

 そのまま樹上から音もなく忍び寄り、飛び降りて死角から首へと一撃入れた。

 

 ガン、という肉を打つ重い音。

 歩美ちゃんをリュックに入れようとしていた男は無惨に昏倒して木の根元へと転がった。

 

 その後一応男の身元確認のために荷物を漁ったのだが。

 出るわ出るわ、スタンガンの他に刃物や起爆装置、鈍器などなど。

 降谷さんがバールのようなものを軽く手の中で転がした後、大きなため息をついた。

 

───こいつが今回の爆薬の窃盗に関与したことは間違いないな

───風見さんを監禁したのもこの男かもしれませんね……ああ、荷物にありました。不自然な鍵。車と自宅、あの牧場の建物の鍵以外と思われる鍵です

───大きいがシンプルな作りだ。大型の南京錠の鍵か?

 

 なるほど、現行犯で捕まえられてよかった。

 ひとまず部下に連絡する……と思ったが、風見さんがいないので若干気軽さが落ちるな。

 

 他に部下がいないわけではないのだが、公安に若干距離を置かれている現在、こちらも多少連絡しづらいというべきか。

 

───ひとまずコナン君に連絡して、風見の救出を先にするか

───そうですね。この男は牧場の柱にでも括り付けておけばいいでしょう

───だな

 

 それから30分後。

 無事助け出された風見さんは、「やったー!信じてましたよ降谷さん!!」と涙ながらに微笑んだ。

 

 「暗いのでどなたかと勘違いしてしまったのでは?僕は安室といいますが」とキレ気味で威圧する降谷さん付き。

 これに慌てた風見さんが「しっ、失礼しました!!初めまして、私は飛田男六といいまして、その」とわたわと言い訳する光景が見られたのだった。

 




・転がされる降谷さん
毎朝30分の訓練でお手玉みたいに転がされている。
実はバボ主も五エ門師匠にやられた特訓で、本人的にはかなり善意で降谷さんのプライドをバキバキにへし折っている。
一週間に一回は武器ありで行われ、その時は拳銃とナイフを持って挑むも全身武装解除斬りで丸裸にされる定めにある。
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