バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
その後、推理は予定調和のように順調に進んだ。
なにせこの場にはRUMとコナン君が揃っている。
RUMはああ見えておしゃべり好きというか、物事を自分自身が掌握していなくては我慢ならない慎重派なタチだからな。
コナン君を放っておくことができず、必ず推理に口出してくることはわかっていた。
事件の真相としては、単純に復讐劇にDVと三角関係が絡んだよくある展開だったらしい。
被害者に同情も何もない自業自得なものだったし、特に気にすることもなさそうだ。
RUMがちらり、とこちらを見て意味深に笑みを深める。
「お兄さん、あんたもわかってやしたでしょう。どうして何も言わないんで?」
「コナン君の見事な推理に聞き惚れてたんですよ。僕ではわかってはいても、こうも見事に順序立てて説明はできませんから」
「へぇ。そういうもんですかい」
「僕の勉強不足ですね、コナン君を見習わないと」
殊更コナン君を持ち上げて、にっこりと微笑んで見せる。
私の意図はどうあれ、自然とRUMの注意もコナン君に向く。
コナン君も小学生らしく得意気な笑みを浮かべているが、その裏で「キラーパスを回すんじゃねーよ!」とでも憤っていそうだ。
事件の真相を知り、プロデューサーにあわてて電話する沖野さん。
お茶菓子を片付けにキッチンに戻った蘭ちゃんで、この部屋には私とコナン君、そしてRUMしか居ない。
つまり、3人で内緒話をするにはうってつけの時間ということだ。
コナン君がわざと今回の推理で子供のふりをしなかったのは、RUMへの挑発の意味合いが大きいだろう。
蘭ちゃんが少し疑問に思うくらいには推理速度を全開にしていたからな。
RUMの興味深げな視線がコナン君を捉える。
「ボウズも随分と頭が良いようで。将来はあっしの探偵助手にでもやりやせんか?」
「探偵助手?脇田さんは板前さんじゃないの?」
「いやぁ、やっぱりこうして皆さんの推理を見ていると、若き日の憧れってもんが湧き立って来ちまいやしてね」
にや、とRUMが薄ら笑いを浮かべる。
その無感動な右の目玉がコナン君を余す事なく観察している。
「このボウズがいればあっしもちぃとは名の知れた探偵ってもんになれそうでして。どうですかい?」
毛利小五郎のバックにいるのがコナン君だと気付いた上で、「自分の部下にならないか?」と勧誘しているのだろう。
ただし、本気度は一割未満。
私という武力をかなり危険視しているRUMが、これ以上の厄介ごとを抱え込みたいと思うはずもない。
これは私達に対しての牽制に間違いない。
お前達の正体は分かっているぞ、下手な動きはするなよというギリギリの忠告なのだと思われる。
これ以上踏み込んだ発言をすればルパン一味との全面戦争にもなりかねないともなると、RUMとしては随分攻め込んだ方なのだろう。
コナン君が子供っぽい満面の笑みで小首を傾げてみせた。
「ごめんね、僕小学生だから、宿題とか友達と遊ぶので忙しいんだ」
「大人になってからでもかまいやせんぜ?」
「あはは。嬉しいお誘いだけど、僕の進路は決まってるんだ」
輝くような挑戦的な瞳がRUMを捉える。
「というと?」
「世界一の名探偵になる。もしおじさんが板前を辞めて僕のところに来るんなら、雇ってあげるけど」
「………そいつは勘弁してくだせぇ。今の店には恩義があるんでさぁ」
おお、組織を抜けてこちらに来いと逆勧誘までし始めたぞこの主人公。
中々に踏み込んだ挑発だ。
RUMが挑発に呑まれないかなりの慎重派だとわかった上での発言のはずだ。
本意としては「その忠告、そっくりそのまま返すぜ?」ぐらいの意味合いとなるだろうか。
相変わらずコナン世界の人間はみんな迂遠な会話をするんだよなぁ。
それは残念、とRUMが一言おいた頃に、毛利さんがトイレから復帰してきた。
さっき紙を差し入れしておいたからな。
先ほどわざわざ暗号を使って「紙をくれ!」と送って来ていたので気を利かせて私が紙を渡しに行ったのだ。
なぜみんな紙が切れてヘルプコールを入れてる毛利さんを放って事件に集中してるんだ。
可哀想だろうに。
その後。
自然と解散の空気になったので、私とRUMが連れ立って事務所を後にすることになった。
手を振って私を見送るコナン君を尻目に、RUMが迷いない足取りで先導する。
夕暮れの日差しが差し込み、辺りは紅に包まれている。
駐車場まで歩く道のりは短いが、どこまでも伸びる長い影が建物までかかって自然と足取りも重くなる。
視線で「アジトまで送れ」と言われてしまったから、足として私たちのRX-7に向かっているのだが……。
この後自宅に直帰のつもりで料理道具がそのまま後部座席に乗せてあるんだよな。
若干狭いがRUMには我慢してもらうしかないだろう。
ぽつり、とRUMが口を開く。
「あの子供があなたの秘蔵の子供ですか」
「ええ。ルパン一味でも期待されている世界最高峰の頭脳ですよ」
「それはそれは。勧誘できなくて残念です」
全く残念そうに聞こえない口調でRUMは目を細めた。
ルパン一味の子狐がどの程度のものか確認しようと思っただけだろうに、よく言うよ。
RUMが目線だけジロリと動かした。
どうにも気味が悪い、威圧的な視線だ。
「なぜ報告しなかったんです?」
「幼くとも彼もルパン一味です。本人の同意なく仲間を売れば、粛清の対象になりかねませんから」
「それは怖い。ルパン一味の粛清ともなると、それはそれは苛烈なことでしょう」
案外仲間を売ってばかりの不二子さんが不問なあたり、その辺は割と緩かったりするのだがそれはそれ。
あの人は例外枠だろう。
駐車場に辿り着けば、そのまま車のドアを開けてRX-7の後部座席にRUMを誘導する。
料理道具のせいでややゴミゴミしい後部座席にRUMは眉間に皺を寄せたが、特に何も言うことはなかった。
そのまま、緩やかに車が走り出す。
降谷さんに運転を任せる事もできるが、この局面でRUMに隙を見せたくない。
久しぶりに私が前へ出たまま車を運転することとした。
駐車場を出て右折し、信号へ。
RX-7の美しいエンジン音が静かに響いている。
「しかし、あの『子供』、私と同じ速度で思考ができるとは本当に驚きました」
「そうですか?」
「子供」のトーンが少しばかり意味深だ。
これは「本当は子供じゃないだろう?」と言う意味か……いや、違うな。
「高校生も子供のうちだ」という意図を載せた意味合いで話しているのだろう。
やはりRUMも彼が工藤新一だと分かっているのだ。
私は平静を装って気軽な調子で応えた。
「今時の子供はマセていますからね。跳ねっ返りは子供の特権でしょう」
「そのようですね。いやはや、世間は広いものだ。最近の若手は小ぶりで野心に欠けていますから。あのぐらいギラギラした人材がいるといいのですが」
「居ましたけど大体ジンに殺られてますよね」
おっと、ついつい本音がぽろりと漏れてしまった。
珍しく本音をはらんだ大きなため息をRUMが漏らす。
「あの子には困ったものですが。とはいえ、ジンにやられる程度では組織を引っ張る次世代の人材にはなれませんよ」
「それもそうですね。まぁ、僕はジンに嫌がらせされた経験はありませんけど」
「ほう?」とRUMが興味を惹かれたような声でこちらをバックミラー越しに見る。
実際、かなり初期から私はジンに何かしらのアプローチをすることで彼の嫌がらせを回避してきたからな。
私の強襲任務メインという性質上、NOCである確率が極めて低かったのもあるだろうが。
それに加えてあらゆるアプローチでバレない程度に好感度調整をしまくったからな。
ウォッカを挟んで色々挨拶したり。
そのせいもあって、新人殺しと名高いジンから私は逃げ切ることができたのだ。
「排他的なあの子が?興味深いですね。一体どういうカラクリで?」
「媚売ってただけですよ。一緒に飲み会したり、ドライブしたり、カラオケに行ったこともありましたっけ」
「ほう……あの子も人らしい一面があったのですね。予想外でした」
「彼、クラフトジンが好きなんですよ。好きな銘柄教えましょうか?」
「お願いします。今度任務成功のお祝いとして贈ってあげましょう」
なお、カラオケの話を出した段階で内側で降谷さんが「ブッ!?!?」と吹き出した。
取り戻した記憶の中にあったんだよ、黒の組織チキチキカラオケ大会。
まだ降谷さんが眠っている頃だったが、カオスすぎてここでは紹介できない内容であった。
一つだけ言うことがあるとすれば、ライはいい声で音痴していたということだけだ。
夕日がビルの間に沈んでいく。
私たちはRUMと多少の情報交換をした後、各々の棲家に帰っていったのであった。